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#1295 行き止まり?ハズレ?否、ボーナスステージ!




〈金剛マッチョ〉を撃破した俺たちはそのまま西階層門へと進み、とうとう問題である25層へとたどり着いていた。

 そしてそこには、おかしなことがあった。いや、()かったというべきか?


「全部屋の確認完了しました! しかし、階層門は発見できませんでした!」


「他にコンソールがある可能性は?」


「ここにあったのは25個でした! 今まで階層数を超えるコンソールがあったことはありませんでしたし、おそらく全ての部屋が開放されていると見て良いと思います!」


「こちらカイリです。シグマ大隊長、私のスキルでもおかしなところはありませんでした」


「はぁい。私も輪で確認したけど、各部屋の天井や壁にも隠されたコンソールなどは無かったわ」


「……どういうことでしょう? 階層門が見つからない?」


 次々来る報告に頭を悩ませるシグマ大隊長。

 ダンジョン週間5日目、この25層で俺たちは足止めを食らっていた。

 というのも報告の内容通り、26層への階層門が見つからないのだ。

 今までは当たりのコンソールを正解すれば、階層門のある部屋が開かれていた。

 しかし、それがここにはない。確認できた25個のコンソール全てを正解して部屋を開放しても階層門が無かったのである。由々しき事態。


 そこでカイリやユミキ先輩を始めとする、上級職の斥候メンバーが部屋を隅から隅まで探したのだが、やはり見つからない。

 難しい顔をして腕を組むシグマ大隊長がゆっくり顔を上げて――なぜか、こっちを向いた。


「ゼフィルスさん、どう思いますか?」


 その言葉に周囲の注目が集まった気がした。

 シグマ大隊長、ここ数日で気が付いたが、なぜか未知の先へ進むときの判断や、何か分からないことがあって詰まった時なんかに俺によく話を振っている気がする。気のせいかな? いや、気のせいではあるまい!

 参っちゃうなぁ。(←全然参ってない)


 まあ、この階層も調べ尽くした感じなので一向に構わない。

 俺はみんなが悩む問題に一石を投じた。


「報告の通りじゃないですか?」


「というと?」


「つまり、ここの階層には階層門は無いんですよ」


「おいおいゼフィルス。そんなことあり得るのか? 階層門がなくちゃ先へ進めねぇじゃねぇか。また何か未知の謎解き要素が部屋に残っている可能性もあるぞ?」


 アーロン先輩が困惑の表情だ。

 可能性()あるぞと言っている時点で自分でもその可能性が低いことに気が付いていることだろう。しかし、信じられないのだ。


 今までのダンジョンでは、フィールドに必ず行きと帰りの階層門があった。

 しかし、ここには帰りの階層門しか無い。こんなことはみんな初めてのことなのだ。必ず階層門があるはずだ、という固定観念が崩れかけていて困惑を隠せないのである。

「もしかしたら本当に無いのかも」そう思ってもなかなか重い腰が持ち上がらない。そんな空気を感じる。


 ということで俺はみんなを説得して誘導することにした。


「カイリやユミキ先輩たちの謎解きや索敵、探索能力は学園トップクラスだ。彼女たちが痕跡を見つけられないというのだからこれ以上探すのはどのみち難しい。それに、先に進めないわけではないぞ。俺たちにはまだ可能性が残っているじゃないか。そう、20層に」


「! あの2つあった階層門か?」


「ああ。何かあるとしたらあっちが怪しい。なにしろ俺たちはここ25層はしっかり調べ尽くしたんだから、何かあるとすればもう1つの階層門だろう。ひょっとしたら2箇所同時に何かのスイッチを押して扉が開くギミックだったりするかもしれないぜ?」


「なるほど、確かにゼフィルスさんの意見は理にかなっています。我々は確かにこの25層を探索しました。それなりのドロップはありましたが階層門はどこを探しても見つかりません。であれば一度未探索エリアを探索する方が建設的な行動と言えるでしょう」


「確かに、ここは凄くドロップが良かったわね。宝箱も他の階層より多かったし、〈金箱〉なんて8個も見つけちゃったわ」


 それが行き止まりの証拠ってやつですよタバサ先生!

 ゲームでは行き止まりにお宝があるのはお約束。

 この25層では、道中11個や12個に減っていたコンソールが25個と爆発的に増え、正解するとほとんどの部屋に宝箱が設置されているというボーナス階層だった。

 その代わり階層門は無し。それが行き止まりの証拠である。


 ちなみに〈金箱〉は各ギルドで2個ずつ分け合ったぞ。

 ユミキ先輩には学園の方で別途報酬を上乗せするらしい。そっちも興味あります。


 そして、その〈金箱〉の中に実は特殊な、何に使うか分からない〈石版〉が1つ入っていたのだが、これを向こう(東門の先)の25層のコンソールの起動キーで使うんだよ。

 20層の2つの階層門。その内行き止まりである西門で石版を入手し、沈黙のコンソールに乗せると、晴れて26層への階層門が現れる。

 それが25層ギミックの正体だ。


 まあちょっと面倒と言えば面倒ではあるが、行き止まりはボーナスステージだと考えればそう悪いことでもない。


 結局俺たちは一度20層へと引き返し、東階層門を潜ることにした。

 ここには階層門が無いので当然守護型ボスもショートカット転移陣も無い。

 戻る時ちょっと面倒だが、そこで活躍したものがあった。それが。


「おお! 〈クマライダー・バワー〉、相変わらずの迫力じゃねぇか! 俺のところにも早くほしいぜ」


「クマだ!」


 アーロン先輩とミューが唸った。

 そう、そこにあったのは2台の巨クマの乗り物。

 体毛はそれぞれ白と黒で染められており、シロクマが〈救護委員会〉の、そしてクロクマが〈攻略先生委員会〉が所持している。

〈上級乗り物〉として絶賛活躍中の〈クマライダー・バワー〉である。

 

 速度に難のあるメンバーはこれに乗って移動した。足が速い人はダッシュである。


 移動する度に轟々と雷が(ほとばし)る。

 外側から見ればまるで雷の中をクマが疾走しているようにも見えた。


「雷がすごいね! これかっこいいよ!」


「でもモンスターいないから無意味だねこれ」


 リャアナが目を輝かせてミューに振ったが、無情にもミューは実用性重視だった模様だ。

 そんな調子で即で20層に戻ってきた。

〈謎ダン〉のフィールドは狭いからすぐ階層移動ができるのが魅力!


 20層階層門には昨日倒したはずの〈金剛マッチョ〉の〈西金〉と〈東金〉が復活していたので今回は〈ハンター委員会〉が戦うことになった。

 さらに〈金剛マッチョ(西)〉が合流しないよう、西階層門では〈攻略先生委員会〉が同時に戦闘を仕掛けることになっている。


 結果、両方の〈金剛マッチョ〉は合流することはなくそれぞれの場所で倒されたのである。


「どうやら片方に集中すると合流してくるようですね」


 俺もシグマ大隊長の意見を支持しておいた。

 そう、これこそ〈守護型参戦現象〉の対処法。同時攻略である。

 2箇所で戦闘中だと守護型は合流してこないのだ。

 守護型ボスはまさに守護型。階層門を守るために戦っているので敵襲来中に持ち場を離れることはしないのである。


 ということで東21層へと潜った。


 内部は……西21層と同じ系統だったので攻略法は分かっている。サクサク進んだ。

 そして東25層に到着。そこには25個のコンソールがあり――1個だけ何を嵌めるか分からないコンソールがあったのだった。

 それにはボタンが無く、ただ何かを嵌める窪みだけがあるという形状。

 如何にも何かありますという形状にシグマ大隊長たちは集まっていた。


「これは、先程〈金箱〉で当たった〈謎の石版〉に似ているような気がします」


「やはりか! 誰か、西25層の〈金箱〉に入っていた石版を持って来てくれ!」


 あの石版は〈救護委員会〉が引き取っていた。今日が終われば研究所に送る予定だったらしい。あぶねぇ!

 しかしセーフ。石版は無事にシグマ大隊長の前へ届けられたのだった。


「これを嵌めてみます。――これは!」


「飲み込まれた! コンソールが消えました!」


「壁が開いていくぞ! 気をつけろ!」


 コンソールに石版を嵌めると、壁の中にコンソールが消え、その後ガラガラガラという歯車が回転するような音と共に壁が開いたのだ。このギミック好き。


「通路です!」


「索敵、問題ありません! 敵無し!」


「中に輪を送り込むわ!」


 すぐに入念に道が調べられると、それはすぐに見つかった。


「あったわ! 階層門よ! 守護型ボスも居るわ!」


「ありましたか! 行ってみましょう!」


 コンソールをクリアして入ったら階層門発見! ふはははは!

 上手く誘導できたぜ!

 シエラがなんとも言えない目で俺を見つめていたが、今回は俺じゃないよ? 偶然だよ? でもジト目はしていいよ?

 そんな願いは届かず、シエラはジト目をしてくれなかった。グスン。


 ちなみに飲み込まれた石版は翌朝には元の〈金箱〉にリポップしているぞ。

 誰かが持ち帰って迷子になってしまっても安心だ。


「東25層を調べ尽くしましたが、作りは西25層と酷似していますね。ですがこちらにはちゃんと階層門があり、宝箱はほとんど無かったです。ということは西25層は――」


「ハズレですね」


 俺は誰かが何か言う前にそうぶった切った。


「ハズレ……」


「この〈謎ダン〉には階層門の無い階層、つまりはハズレ階層があるということでしょう」


「「…………」」


「まさか……」


 みんなの「階層には必ず次への階層門がある」という固定観念をぶっ壊すべく、俺は敢えて「ハズレ」という強い言葉を使ってぶった切った。

 まあ実際はハズレというよりボーナスステージなんだが、それを言うと固定観念が壊れるどころかこんがらがりそうだったのでハズレを採用。


 そして、タバサ先生以外のみんなは何やら難しい顔をしていたが、最終的には固定観念にヒビが入ったらしく頷いていたのだった。よし成功!


「しかし、西25層で手に入れた石版が鍵というのは完全に盲点でした。そういうギミックなのでしょう」


「ハズレの奥にある宝箱に入っているものが、当たりの先へ進むためのキー、というギミックということですね」


 シグマ大隊長の言葉に補足する形で言葉を添えて周知しておく。

 まだ多くのメンバーが半信半疑だったが、しかしそれは35層で確信に変わる。

 30層にも北階層門と南階層門の2つの階層門があり、南階層門の先にある35層にはどこを探しても階層門が無かったためだ。そしてそこにあったのはまた石版。

 そして北階層門の先にある35層ではその石版を嵌めるコンソールが見つかった。

 もちろんそれを嵌めると36層への階層門のある部屋が開かれた。


 こうして〈謎ダン〉にはハズレ階層なるボーナス階層があることを確信させたのだった。


 そして、36層で折り返し。

 ふう。半分攻略したか。そうか。

 ……あと半分だし、ここからはスピードアップしてもいいよね?



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