#1293 参戦現象再び!守護型ボスVS〈エデン〉10人!
上級中位ダンジョンからはルートが増える。
なんと階層門が増えるのだ。
だんだん本格的になってきた感じだな。
この〈謎ダン〉が上級下位よりも狭い空間なのは、ランク1ダンジョンということもあるが、ルートが増えることで探索範囲も増えるため1層の広さが小さくなっている、ということでもあるのだ。
話し合いの結果を持って帰り、〈エデン〉メンバーへ共有する。
「ということで話し合いの結果、まずは片方へ全部隊で潜ることになった!」
「私たちは調査団だもの、妥当なところね。何か問題があればすぐに戻ればいいのだし」
「ですが、片方が行き止まりということもありそうですね」
「それも話し合ってきたぞ。どちらかが行き止まりなのか、それとも奥で合流する2ルートどちらも正解型なのか、まあそれも潜ってみなければ分からないという結論になった」
「そうね。議論を重ねるのはもちろんいいことだけど、実際見てみないことにはどうなっているのか分からないものね。案外、両方とも同じ21層に繋がっていたりするかもしれないわ」
「だな」
シエラとセレスタンの疑問ももっともだ。
ちなみに正解は――変則的な片方が行き止まり型だ。
2つのルートのうち、片方はハズレ、もう片方からじゃないと先へ進めない。
まだ秘密だけどな。
とはいえ「変則的な」と付いているのがポイント。実はこの2つの階層門、両方へ行かないと先へ進めない仕組みになっているんだよ。当たりだけ選んでも先へは進めない、というわけだな。
というわけで今回はハズレの方の門へシグマ大隊長を誘導しておいた。
こういう時ギルドマスターって便利だと思うぜ。
「ねぇねぇご主人様、それで守護型は誰が倒すの?」
「2体いると聞きました。私たちもそろそろ活躍したいです」
「ルルも活躍がしたいのです!」
おっとここで幼女組が元気良く挙手!
3人寄れば幼女も立派な淑女(?)。ボス戦だって任せられる!
「それも任されてるぞ。1体は〈エデン〉が担当だ」
「「やったわー(のです)!」」
幼女が喜んで〈トリプル小さなてのひらハイタッチ〉を決める。
和み度が相変わらず凄いです!
「私も参加するわ! 罠は出てきたけれどモンスターはまだ自然発生しないし、ちょっと気が緩みそうだったのよ!」
「わ、分かりますラナ殿下。わ、私も気を引き締め直したいと思っていました」
「私はもうちょっとおしゃべりに興じてもいいと思いますが?」
「シズと話してるとだらけてしまうのよ!」
「良いではありませんか」
ラナとラクリッテも元気に挙手!
シズがラナをだらけモードにしようと画策しているが、ラナはそんな誘惑にも目もくれないようだ。シズが「ご立派です」とか言ってる。これはシズなりの教育なのだろうか?
まあだらけモードにしないよう、俺も適度に色々刺激を与えたいと思っているので、こうしてたまにはボス戦の機会を与えてダレないようにしている。
どうやら〈謎ダン〉はラナたちにとってちょっと退屈なようだ。調査だしな。
しかし、20層のボスは結構凄いので退屈もしのげるだろう。
ということで、2つある階層門の内、西側を守っているボスへと挑む。
それは金剛力士像にも似た、厳つく迫力のある顔とポーズを決めた門番的なモンスターだった。あと、これでもかと筋肉が盛られている。
端的に言えばマッチョだった。
名前もまんま〈金剛マッチョ(西)〉という。ちなみに東側の門にも似たようなのが居て、そちらは〈金剛マッチョ(東)〉だ。
「はわわ、なんだか迫力があるのです!」
「やーん、ご主人様、エリサ怖ーい――へぶっ!?」
「させませんよ姉さま? 私は教官を守るタンクです」
「フィナちゃん!? お姉ちゃんも守ってくれないかな!?」
「ゼフィルスお兄様~!」
「おう! ――怖かったなぁルル。よ~しよし」
「「あ!」」
「…………」
守護型〈金剛マッチョ〉を見たルルが抱きついてきた。おっと正面からはダメだぞルル、そのおでこを仕舞いなさい。ギリギリ『直感』の言うとおりにポイントをズラして直撃を回避。そのままルルを撫でる。
すると出遅れたと言わんばかりに左からフィナが、右からエリサが抱きついてきた。
一気に幼女に囲まれる俺。それをシエラがジトッとした目で見つめていた。
「シエラも一緒に抱きつくのです!」
「……え?」
おっとここで超展開! みんなで抱きつけば怖くない。
ルルがシエラを誘ってしまった!! これはシエラも抱きつくパターンなのか!?
俺は手を広げてウェルカムした。4人抱きついても耐えてみせらぁ! しかし。
「……3人とも? これからボス戦よ。気を引き締めなさい」
「「「は、はい!(なのです)」」」
「うっそぉ!」
シエラの鋭い眼光と言葉に俺に抱きついていた人はゼロになった。
うっそだろおい!?
あ、でもシャキッと敬礼する3人の幼女。これは良い。
「もーゼフィルス! 何デレデレしてるのよ! 油断しすぎだわ!」
さらにラナ襲来。
な、なにおう? このままラナを攫ってクルクル踊っても良いんだぞ? シズが睨みを利かせているのでやらないけど。
ふう、冗談は置いといて、ボス戦だ。
ここのボス。油断していると結構危険なので10人でいく。
カイリもボーガン系武器で攻撃に参加してもらうことにした。
表向きはみんなが戦いたいから、としているが実際は違う。
〈金剛マッチョ(西)〉、通称〈西金〉に攻撃を仕掛けると、やつは動き出す。
こちらに怖い顔を向け素早さを下げるデバフを使って来た。
「コンゴウー!!」
「マッチョ!!」
あ、しまった。あいつが「コンゴウ」とか叫ぶもんだからついゲームの時のクセが!
シエラがチラっと横目で見てきました。
「コンゴウー!!」
「もう騙されないぞ。――やつの顔はデバフ効果があるようだ!」
「……『オーラポイント』! 『シールドフォース』!」
「デバフならルルも負けないのです! 『魅惑のラブリーヒーローソード』!」
「わ、私もです! ポン! 恐怖の半壊弱体化――『ポンコツ』!」
「私はバフね! 『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』! 『病魔払いの大加護』!」
ルルのデバフ斬りが突き刺さり、続いて近づいたラクリッテが恐怖の全デバフを食らわせる。ルルの『魅惑のラブリーヒーローソード』は重複可能効果を持つ。
攻撃力と防御力がかなり下がったな。
さらにラナのバフで俺たちは能力値アップ。
「マーーーーッチョ!」
「『城塞盾』!」
相手が手に持ったメイスをぶん回して攻撃してくるが、シエラがタゲを取り完全に防御。
さすがはシエラだ、硬い!
俺たちアタッカー陣も攻撃に参加する。
「ゼフィルスさんたち~がんばれー」
「応援ありがとうタバサ先生ー! うおおおお『勇者の剣』!」
「マチョ!!」
いつの間にか俺たちのボス戦を観戦しようと〈攻略先生委員会〉のみなさんが集まってきていた。
タバサ先生の応援に気合いが入る!
「むう! ご主人様はタバサ先生に甘い気がするわ! 『ダークエクスヒール』!」
「姉さまに同感です――『ミカエルラッシュ』!」
「ゼフィルス、後で話があるわ! 『大聖光の十宝剣』!」
「そんなことはない、さー! 『ライトニングスラッシュ』!」
〈西金〉の動きが速く、筋肉を活かしてガンガン暴れ回っているが、シエラのタンクが優秀すぎて抜けないので俺たちは余裕を持って攻撃できる。すごくいい。
しかしHPが半分を切ると、〈西金〉が突如止まり大きな声で「マーーーッチョ! マーーーッチョ!」と叫び始めた。
ついに来るか!
だがその姿は隙だらけだぜ!
「今だ! 総攻撃ー!」
隙だらけの〈西金〉に全力攻撃をお見舞いしていると、急に1つしかない部屋の出入り口からざわめきが聞こえてきた。隣の大部屋でなにか騒いでいるようだ。
――来たな!
「!? なにこれ!? 『危険感知』が!?」
「カイリ! シズを連れて『潜伏』だ!」
「う、うん! 『潜伏』! 『フォロー・ミー』!」
カイリが、おそらく『危険感知』が反応したのだろう。危険が迫っているということだ。
そこへ俺が指示を出しインビジブル系で隠れてもらう。『フォロー・ミー』は自分に掛かっている隠蔽スキルや環境耐性スキルの効果を付いてくる者に付与するスキルだ。シズもコクリと頷き静かにカイリと身を隠す。すると次の瞬間には部屋の出入り口に〈西金〉とほとんど同じ姿の守護型ボスが姿を現した。
「へ? 何あれ!?」
「あれは、〈東金〉だ!!」
「〈東金〉!?!?」
ラナのびっくりした声が響く。
そう、あれは東の階層門を守っていたボスだ。
実はここの守護型ボス〈金剛マッチョ〉は、どちらかと戦闘しHPを半分以下にすると、別の門を守っていた〈金剛マッチョ〉が助けに現れるギミックが発動するのである。
2体ボスだ! これは〈徘徊型参戦現象〉によく似る現象、〈守護型参戦現象〉と呼ばれている。階層門が2つ以上現れる上級中位以降から現れる現象だ!
守護型が持ち場を離れちゃっても良いの!? 侵入者排除が優先か!?
そしてこの現象の恐ろしい所は、参戦してきた瞬間のヘイトが乱れ、〈東金〉は近くにいる敵に攻撃するところにある。
敵とは〈西金〉の敵だ。〈攻略先生委員会〉は含まれず、なんと〈エデン〉の後衛が狙われるという意味である。恐ろしい。ボスが後ろから来ちゃ行けないんだぞ!
まあ、カイリたちは隠れているので問題無し。ラナとエリサはちょっと出入り口から遠かったためセーフ。
そして〈東金〉が向いたのは、フィナだった。
フィナはタンクもできる万能型だ。〈東金〉をフィナに任せ、その間に集中してまず〈西金〉を倒す。
「ここは私に任せてください!」
「頼んだフィナ! ラクリッテはフィナのフォローへ! 〈東金〉のヘイトを取ってくれ!」
「は、はい! 『たぬたぬポン』! 『たぬきだまし』!」
「他のみんな〈西金〉に集中攻撃! こいつからまず倒すぞ!」
「びっくりしたなぁもー! 私だって攻撃できるんだかんね! 『インフェルノショット』! 『レフトハンドアイテムチャージ』!」
カイリも攻撃に貢献する。『インフェルノショット』は武器スキルだ。
続いてやった『レフトハンドアイテムチャージ』は左手でアイテムが装填できるようになるスキル。「特殊矢」カテゴリーのアイテムが使えるようになるなかなかのスキルだ。特殊矢はシレイアさんやアルストリアさんが大量に作ってくれたのでガンガン使っていく。
一発一発がスキル並の威力だ。結構お高い矢ではあるが、値段に見合った威力である。
「コ、コンゴウ~~……」
「マッチョーー!?」
そしてついに〈西金〉のHPがゼロになる。
膨大なエフェクトとなんだかよく分からない言葉を発しながら沈んでいった。俺たちは続いて消えていく〈西金〉に驚愕の目で見つめている〈東金〉へと攻撃を仕掛けた。




