#1286 時は来た、調査団結成決定!ガシッと固い握手
「これが【嫉妬】のステータス、ですか」
「キキョウ、大罪強そうだよ?」
「そうだね。【嫉妬】であればアリスだって守れるもん! 一緒にもっと強くなろうね!」
「おお~!」
くおぉ尊い!
キキョウは早速【嫉妬】のスキルを確認したのだろう。
【大罪】はとんでもないスキルや魔法をわんさか持っているからな。
本来制限が入っている職業だ。四段階目ツリーですら破格の性能を誇っている。
これで〈エデン〉には【大罪】職持ちは3人目だ。
フラーミナやミサトみたいな大活躍が期待できるぜ。
早速練習だな!
ギルドハウスへと向かい、そのままアリスとキキョウを連れて、慣らし運転へと向かおうとする。――しかし、そこでシエラに呼び止められた。
「ゼフィルス、先程研究所から連絡があったわ。すぐに来てほしいとのことよ」
「研究所が?」
おっと研究所から呼び出しなんて珍しい。いつもはメッセージで済ますのだが。
そう思って〈学生手帳〉を見てみると、未読の研究所からのメッセージが何件もあった。
アリスとキキョウの〈上級転職〉に夢中で気が付かなかったようだ。
「了解だ。サンキューシエラ、これから行ってみる。キキョウたちのこと、お願いできるか? すでに最強育成論は渡してある」
「……わかったわ。こっちは任せて。ゼフィルス、いってらっしゃい」
「おう!」
「お兄ちゃん行っちゃうの?」
「ゼフィルス先輩?」
「悪いな。ちょっと呼び出しがあった。この埋め合わせはまたするから」
「絶対だよ?」
「絶対ですからね?」
「おう」
「…………」
シエラに2人を任せ、2人にもすまんと告げてその頭に手を伸ばす。
するとアリスはむしろ頭を手に押しつけるように背伸びしてきた。何この可愛い子。
そしてキキョウ。いつもは耳のガードが堅いはずのキキョウだが、今日は素直で。
「んー」
「ん。これ、思ったよりくすぐったいですね」
なんと素直に撫でさせてくれたのだ!
イエス狐耳バンザイ! おお~、髪はさらさらなのに耳だけふわふわしてる。これは意識を持っていかれてしまう!? 手が吸い付いて離れないよ!?
「……ゼフィルス?」
「はっ! っとそうだった。行かないとな。悪いな2人とも、じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃいお兄ちゃん」
「早く帰って来てくださいね」
「お、おう!」
キキョウはいったい何があったんだ? なんか凄く素直なんだけど。狐耳がぴこぴこ動いてる! 俺は名残惜しい気持ちを押し込めてなんとか吸い付いた手を2人の頭から離し、Uターンしたい気持ちをグッと押し込めてギルドハウスを出たのだった。
これでシエラがジト目をしていたら俺は引き返していたことだろう。
危なかったぜ。
「ゼフィルス氏! よく来てくれたな」
「ミストン所長!」
所変わってここは研究所の所長室。
アリスとキキョウの誘惑(?)を振り払うためやや急ぎ足でやって来た。
もちろん急ぎ足で来たのはそれ以外にも理由がある。
俺は〈学生手帳〉に先程のメッセージを表示しながらミストン所長に聞いた。
「早速ですが、この話は本当ですか?」
「うむ本当だ。ついに上級中位ダンジョンの調査団が組まれることになった」
「!!」
そう、先程来ていたメッセージ。
それは、上級中位ダンジョンの調査団が組まれるというお知らせに関する内容だったのだ!
「来たか! ついに来たか!」
「ふふふ、我々も気分が高揚しているよ。我々の働きかけが、ついに実を結んだのだ!」
思わずガタッと立ち上がって嬉しい思いを吐露すると、ミストン所長もガタッと立ち上がって盛り上がる。
上級中位ダンジョン。そこは開かずの間。
以前上級下位ダンジョンですら過疎化が進み、〈上下ダン〉にはケルばあさんしかいないという事態になっていた。
当然上級下位攻略者もほぼ居ないため、そもそも上級中位ダンジョンのある建物、〈ダンジョン門・上級中伝〉、通称:〈上中ダン〉すら締め切られていたのだ。封印されていたと言ってもいいかもしれない。
そんなことだから上級中位ダンジョンの解放にはえらい時間が掛かったのだ。
俺も出来る限りのことはやった。ケルばあさんには〈上中ダン〉の受付をやってほしいと頼んだし、学園の教師や〈救護委員会〉のレベルを上げて安全性を高めさせた。他にも色々根回しやらなんやらやったなぁ。
そして先日、先生方や〈救護委員会〉の方々、さらに〈ハンター委員会〉までもが〈35エリア〉、〈氷ダン〉の攻略に成功したというのである。
つまり上級中位ダンジョンへの入ダン条件が満たせたのだ!
上級中位ダンジョンの入ダン条件は「〈26エリア〉の攻略者の証が2つ」「〈31エリア〉の攻略者の証が2つ」「〈35エリア〉の攻略者の証が1つ」必要だ。
ちなみに攻略者の証がない状態だとダンジョンへ入るための門が潜れない。
〈上中ダン〉には入れるものの、いざダンジョンへ潜ろうとすると、証がなければ門の前に戻されてしまうのだ。
ダンジョンの門は転移門みたいなもの、それを起動するのが攻略者の証だな。
先生方や〈救護委員会〉がダンジョンの門を通れるようになったことで万が一遭難しても助けに行けるようになった。
ケルばあさんの死期を見る能力でも上級中位ダンジョンに潜っても大丈夫と出ている。
これらが合わさり、上級中位ダンジョンの攻略、調査団の派遣が決定したのである。
これから調査団を結成し上級中位ダンジョンからでも〈転移水晶〉の発動はできるのか、〈煙玉・特級爆〉は効果があるのかなどを調べるのだ。
そしてミストン所長は、俺にその調査団に加わってくれないかとメッセージを送ってきてくれたのだ。そんなの答えは決まっている。
「それでゼフィルス氏、メッセージの答えを聞かせてくれないか?」
「もちろん――イエスです! イエス以外ありません! その調査団、〈エデン〉も加わらせていただきますよ!!」
「頼もしいな! そう言ってくれると信じていたぞ!」
ガシッと確かなハンドシェイク。
ミストン所長の思いが伝わってくるかのようだ。
え? 即答なんかしてギルドメンバーに相談しなくていいのかって?
もちろん、良い。
今まで上級中位ダンジョンに潜るために様々な取り組みをしてきたしちゃんと話してきたんだ。まったく問題ない。
「調査団は次の土曜日から。6月のダンジョン週間を使い9日間を費やして行なう。向かう先は上級中位ダンジョンのランク1――〈謎室の古跡ダンジョン〉だ」
「了解! よろしくお願いいたします!」




