#1284 上級職ランクアップ! アリス編!
アリスとキキョウがLVカンストした翌日。
ギルドハウスには興奮した様子の2人の姿があった。
「あの、ゼフィルス先輩、今日はよろしくお願いします」
「お願いお兄ちゃん」
「もちろんだ! 全てお兄ちゃんに任せておけ!」
「……ゼフィルス先輩はアリスに甘い気がします」
何を言う。俺は後輩全員に甘いのだ。もちろんキキョウにも甘いと思う。
そしてアリスとキキョウ以外の後輩なのだが、現在は中級上位ダンジョンを攻略中とのことだ。
まあ中級上位って50層まであるからな。そりゃ〈イブキ〉でも1日で走破は無理だわ。あっちはもうちょっと掛かりそうなので先にこっちに取りかかりたいと思う。
「こほん。それはともかくだ。今日は2人の〈上級転職〉を行なうぞ!」
「「はい!」」
そう。LVがカンストしたら上級職。これ常識。(←非常識)
すでにギルドメンバー分の〈上級転職チケット〉は確保してあるのでLVがカンストし次第次々上級職になってもらおうという心算だ。
というわけで2人を連れ、早速〈測定室〉へと向かう。
「〈測定室〉。なんだか久しぶりに来た気がしますが……実際は2ヶ月しか経っていないんですよね」
「【雷子姫】に就いた時以来だよ~? 2ヶ月だっけ?」
実際〈測定室〉に入るとキョロキョロ周りを見渡す2人。とはいえ〈竜の像〉とそれが置いてある台くらいしかないんだけどな。
キキョウはそんな殺風景な室内を見てなにか思うことがあった模様。アリスはもっと前の出来事だった気がしたのか首を傾げていた。可愛い。
まあ、1日の内容が濃いとそうなるよな。俺も覚えがある。楽しかった思い出がいっぱいだ!
「じゃあ早速やろうか。どっちからにする?」
そう問うとキキョウとアリスは視線を合わせた。
先にこっちに向いたのはキキョウだ。
「では、アリスからでお願いします」
「わーい。ありがとうキキョウ~!」
え? 今何があったの? アイコンタクト? 心で通じる何か的なものをやり取りしたのだろうか?
喜んだアリスがキキョウに抱きついていた。尊い。
「今何をやり取りしたんだ?」
「? いえ、ただアリスが先にやりたそうだったので」
「やりたかったの」
「そうか~」
もっと単純なことだったようだ。だが、さすがはアリスの保護者。アリスには甘いな。さっき俺を甘いと言っていたがキキョウも俺のことは言えないと思うぞ?
「お兄ちゃん、アリスを、アリスをよろしくお願いします」
「おう、任せてくれアリス」
でも2人とも尊いからいっか。(激甘)
「それでアリスの職業だが【雷子姫】から伸びる〈上級姫職〉は2種類だ。1つは【豊雷の稲妻姫】。デバフアタッカーで、相手の防御力や魔防力を削りながら攻撃していく職業だ」
さらにショタ系の【黄金のショタ】と組み合わせることでコンボスキルが発動出来るようになる。何しろ妻と名前が入っているからな。【黄金のショタ】の黄金は稲穂を指していると思われる。2人合わせて稲妻だ。
「男爵」や「子爵」が男女で職業名が分かれているのは、男女でコンボスキルを発動できるからなんだ。
……やっぱりダメだ! アリスは妻にやれません!!
「そしてもう1つが非常に攻撃に特化している職業――【雷神姫】だ。俺としてはこっちになってほしい気持ちがある」
こちらは単体で完成している。ショタとのコンボスキルはありません!
是非こっちに来てほしい。
【雷神姫】は〈雷属性〉専門の魔法使い。相手の〈雷属性耐性〉を低下させ、例え〈雷属性ダメージ100%カット〉を持っていたとしてもダメージを与える事の出来る強力な貫通系スキルを持っている。〈六ツリ〉になれば例え相手が『雷属性無効』を持っていてもそのスキルを無力化してしまうというとんでもなさだ。
これが非常に強力で、たまに属性を全部無効にするボスとかいるだろ? ラスボスなんかによくある弱点以外攻撃が効かないとか。ああいうのとも普通にやり合えるのが【雷神姫】だ。
無論、デフォルトで『魔法無効』とか意味不明なスキルを持っているレアモンスターにも攻撃が通るぞ。アリスがレアモンスターを見つけたが最後。雷の速度で狩られてしまうことだろう。
そして、これが一番のポイント――単純に威力がデカい。
何しろ〈雷属性〉の最高峰の魔法使いなので、誰にも負けない〈ダン活〉で最高威力の〈雷属性〉魔法を覚えるのである。つまり――最強魔法だ。
つ、使って見てぇ。是非この世界ではまだ誰も見たことのない最高峰の一角をぶっ放してみてぇ。
観客のみなさんどんな反応するんだろうね? とても気になります!
「お兄ちゃんは、アリスに【雷神姫】になってほしいの?」
「なってほしい!」
「じゃあアリス【雷神姫】になるね!」
「あ、アリス~!」
「にぃ~」
アリス、素敵!
俺は感動のあまりアリスを抱っこした。
瞬間『直感』に警報!
キキョウがジトーッとした視線を向けながら自分の〈空間収納鞄〉をまさぐっている様子が目に入る。
な、何を取り出そうというのだ!? ま、まさか、防◯ブザーか!?
ここ個室。ロリ2人。危ない。
俺はそっとアリスを元に戻した。
「こほん。ではこれよりアリスの〈上級転職〉を始める!」
俺は少し誤魔化すように〈空間収納鞄〉の中から〈宝玉〉を取り出した。
それを見てキキョウの手も止まる。
「アリスには〈天聖の宝玉〉だな」
「うん! ありがとうお兄ちゃん!」
「重いから落とさないようにな?」
「大丈夫だよ? アリス、力強いもん」
「そうか~」
アリスは見た目が完全に幼女、しかも魔法職なのでSTRは初期値。
うん、強いね!(激甘)
「えっと、宝玉さん。アリスの中に来て?」
アリスが〈宝玉〉に語りかけるように言うと、〈宝玉〉が粒子に溶ける。
あ、それで使ったことになるんだ。
さらさらと粒子になってアリスの中へ溶け込んでいく様子は、なぜかいけないことをしているようにも見えるから不思議だぜ。いいえ、これは神聖な行為です! パシャパシャ!
キキョウをチラリと見るがその手は〈空間収納鞄〉の入口をうろうろしていた。セ、セーフのはずだ!
「できたよ~」
「おう、そうかそうか~。じゃあ続いて持ち物だがやはり太鼓は欠かせないな」
アリスの〈上級転職〉先は2職のどちらかだったのでちゃんと両方持って来ていたさ。
太鼓なんて〈ダン活〉では異色を放っていたため、絶対何かの〈上級転職〉で使われるものだって言われていたからな。【雷神姫】はかなり早い段階で条件が見つかっていたんだ。
ただここの世界ではまだ見つかっていないらしいんだよ【雷神姫】。
どうも未発見職業っぽい。
なぜ【ロリータヒーロー】の特殊条件〈その場でくるくる300回る〉を満たした例があるのに【雷神姫】は無いのか。子爵って不思議!
「後は『雷属性威力上昇』のスキルが付いた武器を装備していればOKだ。これは手に持たなくて良い。太鼓はなんでもいいから腕に付ける小さな玩具サイズを用意したぞ。後は〈上級転職チケット〉を持ってタッチすれば【雷神姫】が現れているはずだ」
「わかったよ~」
「私が着けてあげるね。アリスはそのまま後ろ向いてて」
「はーい」
太鼓の装着にはキキョウも手伝ってくれて、二の腕近くに取り付けられた。太鼓のサイズは10センチくらいだからな。う~ん玩具。もしくはアクセサリー?
でもこれで行けるハズだ。ゲームでも太鼓と言えばこのサイズだったしな。
実は武器にも太鼓はあるにはある。ドンと叩くと敵を吹き飛ばす攻撃用の音楽装備だ。しかし、【雷子姫】は音楽系武器を装備できないため【雷神姫】の発現条件を満たせないという巧妙な罠が仕掛けられていたんだ。
なので玩具が正解。
初期の〈ダン活〉プレイヤーはこれに見事に騙されていたっけ。おのれ開発陣!
アリスはキキョウに太鼓を取り付けてもらうとそのまま俺から〈上級転職チケット〉を受け取り、〈竜の像〉へタッチする。
「あ、あったー」
「よーしアリス、タッチだ!」
「そーっと、そーっとですよアリス。落ち着いてね」
「うん!」
そしてアリスはあまりそーっととは言えない動作で【雷神姫】をタッチした。
キキョウがヒヤヒヤしていたが、これでアリスは無事【雷神姫】だ。
続いて起こる覚醒の光。
「ふわー!」
「激写チャンス!」
パシャパシャ、パシャパシャ。
俺も新メンバーの〈上級転職〉ラッシュで慣れたものだ。
アングルを変えて、ブレないようにピタリと止まってパシャリ、さらに位置を変えてパシャリ。向きを変えてパシャリ。移動してまたパシャリ。
「アリス~目線くれ~」
「うん~」
アリスも協力的でずっと目線をくれていたので激写が超捗った。
もしかしたら過去一番撮ってしまったかもしれない。後で厳選するのが大変そうだ。
シェリアにも協力してもらうとしよう。
そして覚醒の光も終わりを迎える。
「あ、終わっちゃった~」
「だがこれでアリスも【雷神姫】だ。おめでとうアリス」
「おめでとうアリス~」
「うん。ありがとうお兄ちゃん、キキョウ!」




