#1283 新メンバー4人組VSバトルウルフ戦が熱い。
「ウォーン!」
「おーっほっほっほ!」
「お嬢様、油断、だけは、しないでください、よ!! 『スターセイバー』!」
「もちろんわかっています、わ! 『カウンタープロミネンス』!」
「ウォン!?」
おっとこちら側ではボス対ノーア、そしてクラリスが相手をしていた。
〈バトルウルフ〉のタゲはノーアに向いている。
タンクじゃないノーアがタゲを向けられて大丈夫なのか!? と思うかもしれないが、これが意外にも大丈夫なのだ。
その正体こそノーアの職業の真骨頂。
「『カウンタースロースタンス』ですわ!」
ノーアがスキルを使うと両手に持った大剣と槍が乱舞する。
もちろんボスはそんなのお構いなしに攻撃するが、その攻撃は受け流されカウンターの直撃を受けた。
「ウォン!!」
「『逆襲』!!」
「ブォオン!?」
こんにゃろーと〈バトルウルフ〉が突撃を仕掛けると、今度は強力なカウンターの一撃でズドン。ボスのスキルを失敗させてさらに大ダメージまで与えてしまった。
ノーアの職業【革命姫帝王】の持ち味はそのカウンター。
リカが防御スキルタンクなのに対し、ノーアはカウンタータンクが出来るのである。
これが決まったらもうマジ強い。さらには。
「『トルネードレボリューション』ですわー!」
縦横無尽の乱舞攻撃。
ノーアはカウンターだけではなく普通の攻撃スキルまで兼ね備えている。
そのダメージはもう本当にとんでもないレベルだ。同レベル帯の新メンバーの中ではトップのダメージディーラーと言えるだろう。
え? カウンタータンクは強すぎるだろう、リカの上位互換じゃないかって?
実は、そうでもない。
何しろ【革命姫帝王】には挑発スキルが無いのである。ヘイトを稼ぐことがダメージくらいしかないのでタンクをするにはちょっと難しい部分があるのだ。
まあ、【革命姫帝王】をメインタンクに置いた、実質アタッカー5人パーティという尖りまくった戦法も存在したけどな。
かなりシビアではあったが嵌まると恐ろしく強く、動画でも盛大に人気を博していたっけ。
難易度が高いため〈上級転職〉したてのノーアではカウンタータンクは難しい、と思っていたんだが1日ですでに様になりつつあるのはどうしてだろう? 職業補正か、それともノーアの天性の才能か。
〈バトルウルフ〉を相手にむっちゃ優勢にことを運んでいる。マジやべぇ。
また、別にタンクに拘らなくても【革命姫帝王】は普通に攻撃力が高いため、アタッカーで十分やっていける。
両手武器を2つも装備できるのは伊達ではない。その攻撃力は絶大だ。
これは下級職【革命姫】のユニークスキル『両手二振り限界突破ですわ』のパッシブ効果だ。
本来両手で扱う両手系の武器が片手で扱えるようになり。スキルLVが上がるほど武器本来の力を発揮できるようになる。
左手で武器を持っても性能が落ちず、マルチウェポンでどんな武器も装備できる。
両手に武器を持っていた方が威力が上昇する。
などの効力を持つ、とんでもユニークスキルである。
とはいえカウンターが強いのは周知の事実。できればカウンター連打したいというのが人情だ。強力な攻撃力を誇るノーアがさらにカウンターなんかしたらもうどれだけ素晴らしいダメージが出るのか、もう目の前の光景から分かる通りである。
しかし、ターゲットにされていなければカウンターは打ちづらい。偶然きた攻撃に対してしかカウンターが打てないからだ。
だからこそ【革命姫帝王】には攻撃を呼び込む『攻撃してみなさいな』などのスキルが搭載されている。これはシエラの『完全魅了盾』には及ばないものの、次の一撃だけターゲットを自分にするという効果でなかなかに使い勝手が良い。発動すると敵がヘイト関係無くタゲを切り替えて攻撃してくるのである。
そこにカウンタースキルを使ってズドンするのが通常の戦術だな。
また、攻撃を呼び込むスキルはまだあり、それを組み込んだやり方も、しっかり伝授しておいた。
「行きますわ――『革命モード』! いいですわね! 『カウンタープロミネンス』!」
「ウォン!?」
先ほども使っていた強力な火属性のカウンタースキルがズドンして大きなダメージが入った。
これはそこそこクールタイムが長いはずだが、ノーアはもうクールタイムを終えている。
その正体が『革命モード』。一定時間、ヘイト関係無く自分にタゲを時々向けさせるとともに、カウンター系スキルのクールタイムを大きく軽減させてしまう強力なスキルである。
これはボスの怒りモードでよくある〈ヘイト関係無く暴れ回る〉の親戚みたいなもので、〈ヘイト関係無く時々気になって攻撃してしまう〉という効果だ。
本来ならタンクに攻撃するボスが、タゲ関係無く時々ノーアにも攻撃する。そこをカウンターでズドンするのが『革命モード』時の戦術になる。とはいえ今はノーアがタンクなので主に使用しているのはクールタイム軽減の方だな。
これによりクールタイム問題が解消された【革命姫帝王】は止まらない。
バンバンカウンターを放って自身はダメージ軽微、相手は大ダメージという派手な戦術を披露したのだった。
しかし、それも時間経過で終わりが来る。
「あ、あら。切れましたわ!」
「お嬢様、回避です!」
「分かっておりますわ!」
『革命モード』はアクティブスキル。故に終わりも来てしまう。
というか『革命モード』が切れたときこそタンク終了の時間だ。
防御スキルも盾も無いノーアに〈バトルウルフ〉も好機と睨んだのか飛び掛かろうとした。
しかし、そこへ割り込む者がいた。
「はーいタンクさんお待たせしました! トモヨ先輩、お願いしま~す」
「アルテさん!」
「任せて!」
〈戦車鳥ピュイチ〉に騎乗するアルテだ。
それもトモヨを乗せて〈バトルウルフ〉の前に立ちはだかったのである。
トモヨがすぐに、降りて2枚盾を構える。
「行くよー! 『ガブリエルの盾壁』!」
「ウォン!?」
「『敵対予告』! 『終わりの予告』! 『宣戦布告』!」
「ウォン!!」
そして飛び込んで来た〈バトルウルフ〉の前に立ちはだかるのはトモヨ。
非常に強力な防御スキルを発動し、防御勝ちを決めると、挑発スキルを使いタゲを奪ったのだ。あれだけカウンターでダメージを稼がれていた〈バトルウルフ〉がトモヨにタゲを向ける。
「そしてノーアさんはこっちでーす! 『ユニットスイッチ』!」
「ほわ~」
「『正常快癒』~!」
そして狙われていたノーアは無事アルテが回収。
そのまま癒しながらクラリスの近くまで連れて行った。
アレがアルテの【聖乗の姫騎士】の真骨頂。『ユニットスイッチ』スキルだな。
効果範囲内の仲間を乗せて運び、好きな場所に置くことができる。1人乗りの〈ピュイチ〉だろうが荷物扱いにして仲間を運べてしまえる超スキルだ。
この効果範囲というのが意外に広くて、5メートルくらい離れていても、どう考えても手どころか槍を伸ばしても届かないところにいる味方をひょいと拾って騎乗させてしまう。マジとんでもスキルである。どうやっているのかは不明。
さらに騎乗者自身が回復持ちということもあって、荷物化した味方を回復しつつ、適切な場所に送ることができる。ほんとヤベぇ職業である。
「お供は片付きました。後はトモヨさんがタンクします」
「了解しましたわ!」
ノーアのタンクはここで終了だ。
元々お供とボスを切り離すための一時的なタンクだったのでここからは本職にバトンタッチである。
「素晴らしいタイミングでした。では、私も本気で行きます――『千聖操剣』!」
ここでクラリスはカノン先生も使っていた操剣を発動する。
今まではノーアのヘイトを超えないように敢えてダメージを抑えていたが、タンクをスイッチした今、クラリスも解放だ。
「ウォン!?」
クラリスが『四剣装備』で装備していた、腰に刺さった2本の剣が放たれ空中に浮き、分身の剣が次々と出来ていく。その分身の数996本。
クラリスが手に持つ2本の剣、そして空中に浮かぶ998本で計千本。
その剣先が、全て〈バトルウルフ〉の方へ向く。
「『千剣突撃』!」
「ウォーン!!」
発射。むしろ突撃。
998本の自在剣の突撃はまさに剣山。
やっべぇ。マジやっべぇ。もうやべぇとしか言えない圧倒的物量。
〈バトルウルフ〉は回避しようとジャンプして身を翻すが、無理だ! あんなの回避出来ないよ。
そして直撃。
ズドドドドンとやっぱり回避しきれずにダメージを食らった〈バトルウルフ〉へノーアが接近する。
「『閃光の一撃』ですわ!」
「ウォン!?」
「『千剣大軍』!」
「おっと、今度は逃がさないよ『エルシール』!」
「ありがとうございますトモヨさん。――そこです!」
「ウォーン!?!?」
ズドンとノーアの攻撃が突き刺さり、新たにクラリスがなんか剣をまとめ上げて突っ込んでこようとしているため、避けようとした〈バトルウルフ〉をトモヨが『エルシール』でピトっとくっつけて離さなかった。そして逃げられなかった〈バトルウルフ〉に一点突破のような纏まった千剣が激突した。
いや、あの『エルシール』つっよ! ほとんど拘束効果だからな。効果時間は短くてほんの3秒くらいだけど、強力な一撃をヒットさせるためならば十分使える。
『エルシール』って本来防御スキルで攻撃を盾で防ぐスキルなのだが、盾で接触中に発動すると、まるでシールのように3秒くらい相手にピタッと張り付いて離さないスキルに早変わりするのだ。クリンチみたいなスキルだな。
さすがは上級職4人組。
俺の助けはやっぱり要らず、4人だけで〈バトルウルフ〉を翻弄し、とうとう撃破してしまったのだった。




