#1280 上級職ランクアップ! トモヨ編! 2回目!?
今回のラストはトモヨだ。
確か〈下級転職〉したのは2週間前のことだったのに、もう〈上級転職〉!? 早ぇ。
まあ、1日でLV60までいってたしな!
あれだけでも世界新記録なのではなかろうか?
「どうだトモヨ、上級職に戻る気分は? 間違いなくパワーアップできるぞ」
「いやぁ、なんだか複雑な気持ちだよ。私ね、下級職からやり直すの、相当な覚悟だったんだよ? ぶっちゃけ上級職の別の職業に〈転職〉するのかと思ったらまさかの〈下級転職〉だったんだからね? というかそもそも〈上級転職チケット〉を1人で2枚も使うこと自体偉いことなんだけどね!?」
トモヨが複雑な心境を吐露する。
ああ~、そういえばこの世界では〈転職〉自体が御法度だったし、上級職からまさかの下級職なんてまだまだ想像の埒外だったっぽいな。
また、まだまだ〈上級転職チケット〉が少ない昨今、1人で2枚も使うこと自体に葛藤があった模様だ。
そんなもの、捨ててしまえば楽になるよ!
俺も最近自重さんがまた家出して、なんか気分が楽だもん!
「それで「ゼフィルスがまた非常識なことやり始めたわ」ってシエラさんと語り合ったり、シエラさんから「大変だろうけど頑張ってね、悪いようにはならないはずだから」って激励を受けたり、シエラさんから――」
トモヨはシエラと仲良すぎじゃない?
あと俺が居ないところでシエラは何をトモヨに吹き込んだのだろう?
いや、聞く限り言葉からは信頼が感じられる。きっと俺の居ないところでトモヨを励ましていたのだろう。そうであってほしい!
「なのに2週間で上級職に舞戻りってどういうことさ? 下級職に就いて2週間で〈上級転職〉なんて話聞いたことも無いよ!?」
「これもシエラたちの協力のおかげだな!」
実は俺ももう少し掛かるだろうと思っていたのだが、シエラたちが凄い協力的だったからな。俺だけのおかげじゃないぞ?
「もう、シエラさんには頭が上がらないよ~」
「だな。後は実力を上げて結果で恩を返していけばいいさ。ということで、そろそろ始めようか」
「はーい」
色々胸の内をぶっちゃけたようでトモヨは晴れ晴れとした表情だ。
これなら気持ちよく上級職になってくれるだろう。
「では改めて、【天使】系であるトモヨの上級職は、タンク特化職である【ガブリエル】だ!」
「はい! お願いします!」
前々から言っていたからな。トモヨも右手を挙げて元気良く了承する。
タンク特化型の【天使】系上級職、高の上――【ガブリエル】。
前に話したとおり、万能型の【ミカエル】が攻撃も出来るのに対し、【ガブリエル】はタンクと回復をメインに使う最強タンクの一角だ。
何しろタンクが自己回復できれば最強と言われているのに、【天使】系というのは天使特性で回復魔法を覚えてしまうのだ。まさに最強のタンク職群。その中でもさらにタンクに特化しているのが【ガブリエル】だ。
どれだけ【ガブリエル】が強いのかが分かるだろう。
ちなみに【アークエンジェル】からはさらに【ラファエル】と【ウリエル】にも〈上級転職〉が可能だ。
【ラファエル】は癒し系。ただでさえ天使特性で回復魔法が使えるのに、さらに強力な回復魔法が使えるのが【ラファエル】だ。なお、攻撃魔法やバフも覚えるので戦い方はラナに似るな。
【ウリエル】はアタッカー系だ。特に属性に通じていて、相手の弱点を見切り、それに合わせた属性に変化して攻撃する。さらに『大天使フォーム』を発動すればマジとんでも無双アタッカーに変貌してガンガン敵を屠りまくる夢の職業だった。
ただ、この2職は割と代用が利いてしまうので1人しか加入させられない【天使】を【ラファエル】か【ウリエル】に〈上級転職〉させる〈ダン活〉プレイヤーは少なかったんだけどな。
しかしここまで来ると、なんか4人揃えたくなってくるな~。
おっと話がそれた。
「ではトモヨには〈天聖の宝玉〉を使ってもらう」
「ありがとうございます! 使います!」
「おう」
フィナの時にも使われたが、やはり天使と言えば天聖だ。
テンションが徐々に高くなっていくトモヨが高らかに宣言すると、俺が差し出した〈天聖の宝玉〉を抱えて発動する。
ふわりと髪が持ち上がり、粒子が溢れトモヨの中に溶け込むようにして消えていく。
なお、トモヨは〈宝玉〉を手に持つのではなく抱きかかえるようにしているのでノーアの時のように目のやり場には困らなかった。でもちょっと残念に思うのはなぜだろう?
げふんげふん!
俺は心の中で咳払いすると今のうちに〈空間収納鞄〉から1本の花を取り出した。
「――あ、それユリの花? 綺麗~」
「だな。【ガブリエル】と言えばユリの花だ。これを持って〈上級転職〉してもらうぞ」
「はーい!」
完全に〈天聖の宝玉〉を取り込んだトモヨに渡すのはユリの花。
【ミカエル】に〈上級転職〉するときに天秤が必要だったように、【ガブリエル】に〈上級転職〉するときはユリの花が必要、というわけだな。
今は6月の後半なのでまさに時期的にも見頃で良い感じ。とはいえユリ自体はダンジョンでも採集可能なのでいつでも手に入ってしまうのだが。
「他の条件は満たせているはずだから、後は〈上級転職チケット〉を持って〈竜の像〉にタッチしてみてくれ」
「シエラさんも言ってたけど、なんでゼフィルス君はそんなことを知っているのかな?」
「勇者だからな!」
「勇者ってすごいんだね~」
シエラにいつも言っているセリフをトモヨに初めて言ってしまったぜ。
「あれは、答えなのですか?」
「いいじゃありませんのクラリス。勇者だから、まさに非の打ち所のない理由ですわ」
「なんかすっごく納得出来るのが不思議です!」
おっと後ろではクラリスが相変らずじーっとした視線で見つめてくる。しかしノーアとアルテの言葉に首を傾げながらも頷いていた。
「じゃあ、行っくよ~!」
トモヨが気合いを入れて〈上級転職チケット〉を持ちながら〈竜の像〉にタッチした。
すると現れるジョブ一覧。その下の方にはしっかりと【ガブリエル】の名があった。
「あった! タッチタッチ!」
もうかなり熟練の動きを見せているトモヨが【ガブリエル】をタップする。
非常に勢いのあるいいタッチだった。なぜか慣れているように見えなくもない。
まあトモヨが前に〈転職〉したのは2週間前だったからな。他の子は最低でも2ヶ月は期間が開くのが普通だし、うん、これは慣れてもいいことなのかという疑問はスルーの方向で。
「あ、キタ! 覚醒の光キタ!!」
「おおー!」
そして起こる黄緑色の覚醒の光。
トモヨはそういえば初めてだったな。ノーカテゴリーが覚醒の光を起こすには「天使」か「悪魔」になるしかない。究極の選択肢。
トモヨは初の覚醒の光体験だった。
もしかしたら他のメンバーの覚醒の光のことを聞いて羨ましかったのかもしれない。かなりのはしゃぎっぷりだった。
俺もパシャパシャスクショを撮る。
「ひゃー、なんだか恥ずかしいねこれ!」
「トモヨーこっちにポーズ決めてくれ、ポーズ! なんでも良いぞ!」
「オッケー、イエーイ!!」
俺がポーズを求めるとトモヨは少しも考えることなくピースしてきた。
その後は次々とポーズを決める。
覚醒の光が起こるとは前もって俺が言っておいたからな。もしかしたらトモヨは覚醒の光に備えて密かにポーズの練習をしていたのかもしれない!
大体のポーズの撮影が終わった頃、トモヨの体に少しずつ重力が戻っていく。
「ああ~ん、終わっちゃったぁ」
「いやぁ良かったぞトモヨ。良いスクショがたくさん取れた!」
「本当! 後で見せてね!」
「もちろんだ。それと、〈上級転職〉、おめでとうトモヨ」
「ありがとうゼフィルス君!」
これで4人の〈上級転職〉――完了だ!




