#1278 上級職ランクアップ! クラリス編!
ノーアが上級職、【革命姫帝王】に就いた!
革命とか帝王とか、とんでもない名前が散見されるが安心してほしい。何度も言うがこの世界では職業と仕事、もしくは地位は別物だ。
【革命姫帝王】に就いたからといって本当に革命しちゃったりするわけではないし、王になったわけでもないのだ。うむ。
というわけで、次にいこう。
「さて次は――」
「私でお願いいたします」
「お、クラリスか」
俺の言葉にスッと前に出るクラリス。
その動作は凜々しくもかっこよく、従者であり、そして護衛のように力強かった。
―――しかし。
「早速モンスターを狩りに行きたいですわね~」
「失礼」
そんな言葉が後ろから聞こえたかと思うと、クラリスが突然俺に断ってスススと高速で後ろへ下がりノーアの前へ素早く移動した。思わず「うお!?」っと驚いてしまうほど無駄のない動きだった。
「ダメですよお嬢様。慎んでください。せめて私の〈上級転職〉が終わるまで待っていてくださいね」
「もちろんですわクラリス。もう、私だってみなさんの職業が見たいんですのよ。そんな勿体ないことはしませんわ」
「……ならよろしいです」
そう言うとまたスススと無駄のない、むしろどうやって進んでいるのだろうという動きで俺の前にやってくるクラリス。
「失礼いたしましたゼフィルス様。ということですので、お嬢様がどこかに飛んで行かないうちにまずは私にお願いしたく」
「従者も大変だなぁ」
「はい。それはもう大変なんです。お嬢様が勝手に動き回るので」
「ちょっとクラリス、聞こえていますわよ! というかゼフィルス様にあることないこと言わないでいただけます!?」
「私は事実しか言っていませんよ」
ノーアの抗議も華麗に受け流すクラリス。仲いいなぁ。
「それじゃあ始めよう。【剣姫】には2つの〈上級姫職〉ルートがある。通常ルートの【撃滅の剣姫】と特殊ルートの【操千の剣姫】だ」
「はい。存じています」
俺の言葉に頷くクラリス。
【剣姫】の上級ルート。
特殊ルートの【操千の剣姫】は知っているだろう。カノン先生の就いている職業だ。基本となる4本の剣を装備し、それを元にした千本の分身剣を操って攻撃する。4本の武器を装備できることからも分かるように非常に攻撃寄りの強力な職業だ。
続いて【撃滅の剣姫】は攻められる側になると強力なバフが掛かるところが魅力的な職業で、よく【盾姫】の通常ルート〈上級姫職〉【国守護の盾姫】と組ませて城の防衛に当たらせていたっけ。
【盾姫】と【剣姫】は非常に似た傾向の職業で、通常ルートだと防衛に非常に強い職業へ、特殊ルートだと自在盾、自在剣を有した変幻自在の強力な職業へと〈上級転職〉できる。
俺のお勧めとしては、うん、やっぱり【操千の剣姫】だな。単純に強い。
クラリスの答えも決まっていて。
「私は【操千の剣姫】に就きたいです。お嬢様はきっと前に出られますので」
「だろうなぁ」
わかりみが深い。
ほら、後ろのノーア本人もうんうんと頷いてるぞ。ギルドバトルでは前に出る気満々だな。
その従者であるクラリスも前に出ざるを得ない。
防衛こそその真価を発揮する【撃滅の剣姫】には用はなかったようだ。
「了解だ。じゃあ、クラリスをこれから【操千の剣姫】に就かせる」
「お願いいたします」
「じゃあ、渡すのは〈天聖の宝玉〉だな。後は剣を4本。これは装備から外し〈竜の像〉の横に置いてくれ」
「はい」
なんの疑いもなくクラリスは〈天聖の宝玉〉を使用する。
実はカノン先生が【操千の剣姫】に就いているように、この世界では【操千の剣姫】の発現条件はある程度分かっているらしかった。
まあ、【盾姫】系統に比べて条件はあまり難しくないからな。
【操千の剣姫】はとにかく剣をたくさん使う職業なので、それを知っていればたくさんの剣を装備しようとするだろう。
条件は〈剣を4つ装備してモンスター300体倒す〉〈〈上級転職〉の際、4つの剣を〈竜の像〉の近くに置く〉〈ステータス値【STR】を500と【AGI】が300を超える〉〈〈天聖の宝玉〉の使用〉。最後に〈【剣姫LV75】からの〈上級転職〉〉の5つだ。
〈上級転職〉にステータスが関係していることがあるというのはこの世界でも知られているため、【操千の剣姫】に就いたときのステータスは公開されていたりする。
なら後は簡単で、4つの剣を装備するのも、シエラの時の〈無限盾〉と同じようにアクセサリー枠を消費して装備できる〈アクセ剣〉なる装備があるのでそれを使用。
最近は腰に4つの剣を装備したクラリスが飛び回り跳ね回りながらモンスターを狩りまくっていた。
結構かっこよかった。
今後はあの姿がデフォルトになるかと思うと少し口元が緩んでしまう。
だってかっこいいんだもん。
カノン先生はその、ちょっと小柄なのでかっこいい感じではなかったからな。本人も「かっこいい枠はキリちゃんにお願いしているから!」と言ってたし。
ここにかっこいい【操千の剣姫】が誕生しちゃうのだ。
とてもワクワクする。
「終わりました」
「じゃあこれ、〈上級転職チケット〉だ」
「はい。ありがとうございます。いってきます」
「あのクラリスがいつになく緊張していますわね」
「あれって緊張しているのか?」
「そうですわ。普段はもっとストレートに物事を言いますのに、言葉遣いが凄く丁寧ですもの」
「ストレートに言うのはお嬢様に対してだけです」
「まあ! それだけ元気でしたら大丈夫ですわね」
「…………」
本当にこのお嬢様と従者は仲が良いなぁ。
なんというか信頼関係が見えるようだ。
クラリスはノーアに対してだけは素直なのか、メモメモ。
「ゼフィルス様、今何をメモしていましたか?」
「思いついたことをちょっとな。なに、大したことじゃないさ!」
「(じーっ)」
「それよりも〈上級転職〉してしまおう!」
「…………はあ。お嬢様とゼフィルス様が並ぶと、余計に疲れる気がします」
「「気のせいさ(ですわ)!」」
「はぁ」
1つ溜め息のようなものを吐き出すと、キリッと身を引き締めたクラリスが〈竜の像〉の上に手を乗せる。
するとそこには【操千の剣姫】の名が確かにあった。
パシャパシャ!
先ほどと同じようにクラリスも激写!
クラリスがこちらを向いたので1つ頷くと、クラリスは視線を前に戻し【操千の剣姫】にタッチした。
他の選択肢が消え、そして【操千の剣姫】だけがクラリスの上に輝く。
パシャパシャ。
そして続くように覚醒の光がクラリスを包み込んだ。シエラの時のようにクラリスの周りに4本の剣が踊り出す。
これは凄まじく映えるな! パシャパシャ。
「もっと、もっとですわゼフィルス様! 次はこちらから、クラリスもぼーっとしてないでポーズを決めるのですわ!」
「クラリス、こっちに目線くれー!」
「…………(じーっ)」
良い、実に良いぞクラリス! じーっと見つめるその瞳。
なんだかクセになりそうだ! パシャパシャ。
しばらくの撮影会ののち、とうとう覚醒の光が収まってしまう。
「ふー」
「堪能しましたわ」
「だな!」
「堪能しすぎですお嬢様。ゼフィルス様も」
「いやー、せっかくの覚醒の光だし、これは張り切らないとと思ってな~」
「そうですわ」
「なー?」「ねー?」
「本当に似たもの同士です……。これは私の手に負えるのでしょうか……やはりシエラ様に応援を頼まなければ……」
「おっとアルテたちも待ってるからそろそろ移動するか。クラリス、改めて【操千の剣姫】への〈上級転職〉――おめでとう」
「おめでとうですわクラリス」
「……ありがとうございます」
うむうむ。何はともあれ、新メンバーで2人目、クラリスもこうして上級職に就いたのだった。