#1277 上級職ランクアップ! ヴィレルノーア編!
「ではこれより、新メンバーたちの記念すべき〈上級転職〉を開始する~!」
「どんどんぱふぱふ~」
「いいぞ~」
「待ってましたー」
俺の言葉にノリよく反応を返してくれたのはサチ、エミ、ユウカだ。
さすが、こういうノリの欲しい時は真っ先に反応してくれて嬉しいぜ。
「いや~、もう後輩ちゃんもカンストか~」
「時が流れるのは早いよね~」
「いや、早すぎですの!」
「まあ〈エデン〉だからね~、サーシャも早く慣れた方が楽になるよ?」
ミサトとノエルがしみじみ~みたいな反応をしているとそれにサーシャが反応する。
しかし、同じパーティのカグヤがこっちの道へ引き込んでいた。
カグヤは〈エデン店〉の従業員だったからこの辺慣れたものだな。
「〈エデン〉は短ければ2ヶ月で上級職に持っていくんですよ」
「私は2週間ちょっとだけどね!」
「早いですのっ!? 2週間で上級職なんて聞いたことないですの!」
「2ヶ月の方も大概早いですけどね~」
おっと今度はマリアとトモヨまで加わってサーシャをどんどん染めに掛かっていた。
サーシャがこっち側になるのも時間の問題かもしれない。
あとマリア、エデンの最速育成記録はトモヨだぞ。トモヨは、マジ〈エデン〉最速。2週間ちょっとというとんでもない速度で下級職をカンストまで上げたからな。〈道場〉のランク6まで使った成果である。攻略者の証を潤沢に持つ〈転職者〉だからこそできる速度だ。
「とはいえまだまだ職業の性能は勉強中だけどね。できることが多すぎて練習足りないし」
「それは分かる~。2ヶ月ダンジョンに通い詰めてようやく掴んできたくらいだもん。トモヨ先輩はまだ2週間なんだから全然でしょ」
「ヒーラーなんか完全に立ち回り初心者だもん。でも最近ようやく掴めてきたかなと思っていたら」
「まさかの〈上級転職〉ですからね。トモヨちゃんはまた覚え直しかな」
「トモヨ先輩なら楽勝ですよ」
「話が大きくなり過ぎてついていくのがやっとですの。あとカグヤはなんで先輩方の会話に普通に入っているですの!?」
「慣れかな?」
まずはとにかくレベル上げを優先してしまったからなぁ。
とはいえトモヨはタンクだけならレギュラーメンバー並のプレイヤースキルなので掴むのも早いだろう。割と余裕が見られるので大丈夫そうだ。
さて、早速の〈上級転職〉。
今回はアルテを先に〈上級転職〉させたいと思って重点的に周回してもらった。その影響でここのところアルテとパーティを組むことが多かったトモヨ、ノーア、クラリスの3人もLVがカンストしていた。
最近はここに俺も加わって周回していたからな。
4人が新メンバーでLVトップだった。
アリスとキキョウは最近シュミネのパーティに入っていたがもうちょっとでカンストに届くだろうな。
それをヴァン、カグヤ、サーシャが追いかけ、さらにシュミネ、ナキキ、ミジュが続く感じだ。
予定通り、夏休みまでには全員上級職にできそうである。
そして予定していたとおり、カンストした者からどんどん〈上級転職〉してもらおう!
「ということで俺は4人と一緒に〈測定室〉に行ってくる!」
「…………いってらっしゃい」
なぜかジト目のシエラに心地よく見送られ、5人で職員室に直行し鍵をもらい、すぐ隣の測定室へと入室する。
ちなみに俺以外は装備着用済みだ。
「じゃあまずはノーアからいこうか」
「私ですわね! もちろんよろしいですわ! よろしくお願いいたしますゼフィルス様」
誰から〈上級転職〉するのかは割と重要な部分。
そこで俺がまず声を掛けたのは――ノーアだった。
新メンバーのリーダー的存在だからな。
「任せろ! すっげぇ職業に就かせてやるぜ! ノーアに提案したいのは上級職、高の上――――【革命姫帝王】だ!」
――――【革命姫帝王】。
公爵が就ける最高峰の職業のうちの1つ。
【革命姫】の完全上位互換で、両手にそれぞれ両手武器を持って敵陣に突っ込み暴れ回る無双系のとんでもアタッカーだ。
さらにカウンターに非常に大きな適性を持ち、相手が不用意に攻撃してくれば何倍にもなってズドンしてしまうロマンのどんでん返し職業でもある。
タンクでもないのにカウンター? と思うだろう?
これがとんでもないことに、【革命姫帝王】はシエラのユニークスキル『完全魅了盾』と同じような自分に攻撃させるスキルが使えるのだ。
それで攻撃を誘発し、カウンターを取ってドカンである。
マジとんでもない職業だぜ。
さらにはカウンター系スキルのクールタイムを軽減するスキルも持っているのでカウンターが撃ち放題。
「へ? これどのタイミングで攻撃すりゃいいの?」状態になるはちゃめちゃっぷりだ。
モンスターなんてタイミングを計るなんてことはしないので、敵集団に突っ込んでカウンター連打するだけで勝ててしまうアンビリーバボー動画がいっぱいあったんだよなぁ。カウンターに成功するとノーダメージだから、下手すりゃボスにソロでも勝ててしまう。そんな職業だ。
さらに〈五ツリ〉で覚える『ドロップ革命』が神。マジとんでもないぜ。
「来ましたわ! 来ましたわクラリス! 【革命姫帝王】ですわよ!」
「色々とお嬢様にぴったりの職業ですね」
「そうでしょうそうでしょう。――ゼフィルス様。私、【革命姫帝王】にずっと就いてみたかったんですの」
「そうなのか!」
「公爵の家系で僅か2例ほどしか登場した記録のない【革命姫帝王】ですが、その力は絶大で、上級ダンジョンのモンスターもバンバン討ち取って多くの宝を持ち帰ったという話がありますの!」
「昔は上級ダンジョンもある程度攻略が進んでいたらしいですが、当時【革命姫帝王】の方が多くのエリアボスを倒し、多くの財宝を持ち帰ってきたようなのです。ゼフィルス様が持つスクショもそのうちの1つだったとか」
「スクショもだって!?」
まさかのスクショのルーツが判明。
公爵の姫さんが上級ダンジョンで狩りまくってゲットしたものだったとは。
意外すぎるルーツだぜ。
「じゃあ、記念に【革命姫帝王】への〈上級転職〉シーンはスクショに撮らなければいけないな!」
「是非!」
「早速進めよう! ノーアにまず使ってほしいのは、〈天廊の宝玉〉だ!」
「はい!」
俺が〈空間収納鞄〉からそれを取り出して渡すと、ノーアは躊躇なくそれを使用した。
最近は値段も徐々に下がってきているが、まだまだお高いそれをなんの躊躇もなく使えるところが公爵の姫である。
粒子となりさらさらと溶けながらノーアに吸い込まれていく宝玉。
その多くが胸元に吸い込まれていくので大変目のやり場に困る。
「なんだか温かくて、気持ちいいですわね」
「そうなのか」
「ゼフィルス様? どこを見ているのですか?」
「――もちろん、ノーアと〈天廊の宝玉〉だ」
「…………」
思わずノーアの声に反応すると近くにクラリスがいて問い詰められた。
だが俺はなんら疚しいことはないので堂々と告げる。
クラリスはじーっと俺を見つめていたが。
「あまりお嬢様の胸を見ないようにしてくださいね。いえ、つい見てしまうのは女性でも同じなので、せめて気をつけてください」
「大丈夫だ。ちゃんと微妙に目を逸らしているさ」
とりあえず危険判定は出なかったようでなにより。クラリスって無言の「じー」はなかなかに迫力あるよな。
「? どうしましたのゼフィルス様?」
「いや、こっちの話だ。じゃあ後は〈上級転職チケット〉だな。これで【革命姫帝王】が出ているはずだぜ」
「ありがとうございます!」
もちろんここ数日で彼女たちの条件はさりげなく達成済みだ。
特殊条件である〈両手持ち系の装備、全種類を使ってモンスターを倒す〉も達成済みである。これ本装備やタリスマン装備も該当するので普通にやるだけじゃまず見つからないんだよ。ノーアには本の角を使ってスライムを倒してもらったり、タリスマンを装備しながらグーで倒してもらったりしたのだ。こういう時もスラリポマラソンが便利。
後は宝玉を使ってチケットを渡せばコンプリート。
ノーアは俺から〈上級転職チケット〉を受け取ると、迷いも見せず堂々と〈竜の像〉へタッチした。
「あ、ありましたわ! 【革命姫帝王】ですわ!」
パシャパシャ!
スクショで撮影は忘れない。
「ゼフィルス様、この辺、少しローアングルからの撮影お願いします」
「お、おう!」
なんかクラリスから注文も受けつつパシャパシャ。
しかしこの角度だとノーアのとある部分の迫力が凄く強調されているのだが、いいのか? いいらしい。その代わり絶対自分以外には写真を渡さないようにと厳命された。
まあいいだろう。ギルドメンバーの願いを叶えるのもマスターの仕事だ。
「ではいきますわよ」
それまで撮影が一段落付くまでポーズを決めながら待ってくれていたノーアがついに【革命姫帝王】をタップする。
すると他の職業は消え、【革命姫帝王】だけがノーアの上に輝いた。
「きゃ!」
そして起こるのは覚醒の光。【革命姫帝王】は当然のように覚醒の光が発生する。
「覚醒の光ですわ! 見てクラリス、ゼフィルス様、浮いていますわよ! ふわ、なんだか心地よいですわ! この中で剣を振ったらどうなるのでしょうか?」
さすがはノーア。初めての覚醒の光に臆することなく全力で楽しんでいた。最後のはちょっと物騒だったが。
しかしこの覚醒の光こそがスクショの出番。
今まで覚醒の光を取り逃していた分を取り戻すかのように切れの良いシャッター音を響かせる。パシャパシャ、パシャパシャ。
「ふふ、こんなポーズはいかがでしょうかゼフィルス様?」
「勇ましい! まさに【革命姫帝王】という勇ましさと高貴さと美しさが調和しているぜ!」
俺がスクショを撮れば、ノーアはポーズを決める。息ピッタシ!
クラリスはレフ板でもあれば上げてそうな雰囲気だが、なぜか俺の方をじーっと見つめていた。見るのはお嬢様の方じゃなくていいのかな?
やがて覚醒の光も終わる。
「むふぅ。堪能いたしましたわ!」
地面に降り立ったノーアは、腰と胸に手を当て非常に満足そうな顔をしていた。
「お嬢様〈上級転職〉おめでとうございます」
「おめでとうノーア。これでノーアは【革命姫帝王】だ」
早速お祝いの言葉を贈る。
するとノーアは花が咲くような笑顔で。
「ありがとうございますゼフィルス様」
そう、お礼を言ってきた。




