#1272 新たな企画始動!?マリア編がスタートする!
今までほぼ固定パーティを組んでいた新メンバー組だったが、トモヨのパーティ加入を機にシャッフルを提案してみた。
これはトモヨの自信を取り戻すこともそうだが、新メンバーにもトモヨと触れ合う機会を増やすのも目的の1つだ。
新メンバー組もトモヨから色々と学びたいという欲求を感じるし、トモヨもここまでパワーレベリングであっという間に育ってしまったので、ここからは色々な職業と組んだ立ち回り方を学んでほしいところ。双方に利点がある。
特にトモヨはポジションチェンジしてヒーラーもこなさなくてはいけないため、タンクはともかくヒーラーの仕事は初めてのことだらけだろう。とはいえ身近にフィナという先駆者がいたし、そもそもトモヨは上級ダンジョンの攻略者でもあるのだからイメージや感覚はすぐに掴めそうな気がするけどな。
「さてそうなると、新メンバー全員を運べる〈乗り物〉スキル持ちが必要になるな」
「そういえば新メンバー組は〈馬車〉を使っているのですか?」
そう聞いてきたのはエステルだった。
エステルは初期の頃から〈からくり馬車〉の〈サンダージャベリン号〉で〈エデン〉を高速で引っ張って行ってくれた頼りになる騎士だ。
その観点から、エステルたちがいない新メンバー組の〈馬車〉事情が気になった様子だった。
それに答えたのはアイギスだった。
「アルテには私の〈シャインブレイカー号〉を貸していますので8人までは乗車可能のはずですよ。事実、中級ダンジョンでは罠を蹴散らしながら猛スピードで攻略しているとか」
「うん! アイギス姉さまの馬車、もうすっごいんですよ!? なにあれ? 〈エデン〉ってあんなので攻略していたの!? そりゃ早いよね!? ってなりましたもん!」
「ですが、8人しか乗れないのは困りますね。今回のことで新メンバー組も13人になりましたし、もう1人馬車を扱える人材がほしいところです」
トモヨが入ったことで新メンバー組は13人になった。
とはいえそもそも新メンバー組は一緒に行動していないので〈シャインブレイカー号〉で移動していたのはノーアのパーティだけのようだ。このままだとノーアのパーティだけ突出してしまうだろう。それはいけない。
新メンバー組のLVは50から60、実はヴァンたちのパーティはクイナダが加わったことで一時期突出して高かったのだが、先日アルテがLV40になって〈馬車〉での移動が可能になってから目覚ましい速度で追いついてきていた。
そしてシュミネたちのパーティとは結構LVに差がある状態だ。
ここからはできれば足並みを揃えてもらいたいところ。
エステルの言うとおり、俺たちがいない時でも高速移動が可能になってもらっていると非常に助かる。
「騎乗系が使えるのはアルテと、あとはミジュなんだが、上級乗り物である〈クマライダー・バワー〉を操縦するには上級職にならないといけないしなぁ」
「うん?」
俺の言葉にミジュが首を傾げる。
ミジュが〈クマライダー・バワー〉を運転できるようになれば話は大きく変わるのだが、まだまだカンストにはLVが足りていないので無理だった。
さてどうしようか。とりあえずここは解散だな。
そうして〈エデン店〉の近くを通りかかったときだった。後ろから声を掛けられたのは。
「ゼフィルスさん、話はアイギスさんたちから伺いました、よろしければ私がお手伝いしましょうか?」
「んお?」
ちょっとびっくりして間の抜けた声が出てしまったが、それも仕方ないだろう。
その声の主は〈商業課2年1組〉、〈アークアルカディア〉所属のマリアだったのだから。
さらに後ろを見ればアイギスが控えている。なにごとだ?
「マリア?」
「ええ勇――じゃなくてゼフィルスさん、マリアです! その役目、是非私に勤めさせてくださいな。私の職業は【マーチャントキャラバン】。馬車を乗りこなし、商売もできる優良職だと以前ゼフィルスさんにお伺いしまして、ずっと試してみたかったのです! そしてつい先日、私専用車が完成したと連絡がきました!」
相変らずの凄いやる気と商人魂。
そうか、そういえばマリアがいたな! 乗り物もちょうど良いのがあったんだった! 〈クマライダー・バワー〉のことがあってすっかり抜け落ちていたぜ。
マリアの職業は彼女が言ったように【マーチャントキャラバン】。当然モンスターへの攻撃はできないが、隠密性に優れ、モンスターを回避しながら進むにはうってつけの能力を持っている。
「商品を運搬するってことは、マリアもしかしてダンジョンでの商売を考えているのか?」
「さすがゼフィルスさん! お察しの通りです! 〈エデン店〉本店が〈商業課〉の学生たちをたくさん雇ったおかげで私たちの手を離れて回り始めましたから、新しい商売に着手しようと考えました! その第一弾として私の職業の特性を活かし、ダンジョンでの商売を始めようと考えたのです! とはいえいきなり上級ダンジョンは厳しいのでまずは中級ダンジョンから試したいのです!」
さすがの熱意だ。マリアのやる気にはいつも頭が下がる。
しかしそうか。〈エデン店〉がいつの間にか本店呼ばわりされているのも気になるが、以前雇った〈商業課〉の学生が使えるようになってきてマリアたちが自由になりつつあるのか。すごい進歩を感じるんだぜ。
まさかこんなことになっているとは予想外過ぎた。
一応ゲーム時代でも【マーチャントキャラバン】に戦闘メンバーを運んでもらうということは出来た。
ただ、戦闘職の〈乗り物〉使いとは違い、モンスターをなぎ倒しながら進むことはできないので数歩劣るという評価ではあったが。しかし、リアルでは結構行けるのでは? 何しろアルテの後ろに付いていくだけでいい。
それに【マーチャントキャラバン】の特性は運搬だけではない。
【マーチャントキャラバン】はダンジョンでダンジョンショップが開けるのだ。
現在、このリアル世界にはゲーム時代にあったようなダンジョンショップなるダンジョン内で物を売り買いできる場所や施設は無い。その筆頭である【マーチャントキャラバン】がいないからだ。
これはゲーム時代にはあったダンジョンショップを普及させることも可能な、良い案かもしれない。
「それはとても良い考えだなマリア!」
「ありがとうございます!」
「それで、マリアの今の攻略者の証の数は?」
「実はまだ初級下位のものが3つだけで―――」
「任せておけ! マリアは馬車を走らせてもらえればボスは戦闘メンバーで全て承ろう!」
「さっすがゼフィルスさん! 頼りになります!」
「ははははは!」
新しいことをしようとするとなんでこんなに楽しくなるのだろう?
俺は通りかかったエステルも捕まえてお願いする。
「エステル、アイギス、すまんが新メンバーの方は一旦任せていいか!?」
「またゼフィルス殿は何かとんでもないことをしようしているのですか?」
「はい。マリアさんが追いつくまで私たちで新メンバーのキャリー役をすればよろしいのですよね?」
「エステル気のせいだ! アイギス頼む。――メルト、ミサトはついてきてくれ!」
「ああ。また何かやらかすのかゼフィルス?」
「たはは~ゼフィルス君だもんね」
近くにいたメルトたちもちょうど良いと声を掛けたら、なんかメルトたちの評価が妙じゃない? 気のせいかな? うん、気のせいだな!
「よろしくねぇ商人ちゃん。まさか一緒にダンジョンに行くことになるとは思わなかったよ~」
「私もです賢兎さん。――ふふ、待っててね盾ちゃん、すぐに合流しますからね」
向こうはなんか盛り上がってるなぁ。ミサトとマリアってかなり仲が良いんだよ。
なぜだろう?
「まあいいか。よし、マリア、行くぞ!」
「はい! マリア、いってきまーす!」