#1267 〈金箱〉回!新たな共同作業ロリレンジャー!
「分かってた! 守護型も徘徊型も空ぶったときからここで〈金箱〉がくるって分かってたぜーー!!」
〈幸猫様〉はよく分かっていらっしゃる!
攻略者の証が手の中に輝く中、それをパチンと一瞬で胸に装着し〈金箱〉へと足を踏み出す。
「わ、〈金箱〉じゃない!」
「わーいなのです!」
「今回は何が入っているのでしょう?」
「ランク9の最奥ボスの〈金箱〉ですからね。気になりますね」
ぞろぞろ集まってくる子どもたち、じゃなくてエリサたち。
4人とも〈金箱〉の中身が気になって仕方のない様子だ。
「結構掛かったわねゼフィルス!」
「5人ともお疲れ様でした。まぁ、今回も〈金箱〉ですか?」
〈金箱〉の前に集まっていたらボス部屋の門からラナやエステルを始め、〈エデン〉メンバーが続々と入ってきた。
エステルが〈金箱〉を見て口を押さえて驚いていたな。
初めての最奥ボスに勝利すると〈金箱〉率がとんでもなく上昇する(気がする)。
ゲームではそんなシステムは無かったはずだが、ここにはリアル〈幸猫様〉がいるからな。
やはり直接声をお届けできるというのは大きいよ。画面越しだとどうしてもお祈りが届きにくくなってしまう気がするしな。
「では今回も最初に〈金箱〉を開ける名誉を――」
「あい! ルルが開けてみたいのです!」
「!?」
そのまま「――賜りギルドマスターである俺が開ける!」と続けようとした半ばでまさかのルルの「あい!」に阻まれた!!
ヤバい、いきなりピンチ到来。
今まで新しいダンジョンを攻略したときの〈金箱〉は俺が開けていた。ギルドマスターとして!
しかし、その常識が今にも崩れ去ろうとしている。
これはいけない。
すぐに修正しなくては!
「そうだな。じゃあ一緒に開けるかルル!」
「お待ちくださいゼフィルス殿。それでしたら、私が」
いやシェリア、「私が」じゃない!
それってルルと開けたいってことだよな? 俺と開けたいってことじゃないよな?
共同作業であればギルドマスターの矜持も保たれるというもの、でもシェリアが完全にルルと開けにきている!
もしかしなくてもシェリアもルルも俺が最初に開けるということを忘れているな?
今一度思い出させてあげなくてはなるまい。
「待て待てシェリア、新しいダンジョンを攻略したとき、その〈金箱〉はギルドマスターが開けるものだというのを思い出してくれ」
「そんな慣習、ルルと宝箱を開けるためなら打ち破ってやります」
打ち破らないで!?
ギルドの秩序が崩れちゃうから!
仕方ない、シェリアには悪いが最後の手段だ。
「そうだなぁ。――ルルは〈金箱〉を誰と開けてみたいかな?」
「あい! ルルはゼフィルスお兄様と開けてみたいのです!」
「くふっ!?」
今、言葉のナイフがシェリアの急所に深々と刺さった!!
致命傷か!? 傷は深そうだ。
シェリアは悲鳴を漏らさないために手で口を塞いだか。その覚悟、見事!
俺にこの必殺技を使わせてしまうとは、恨まないでくれよ。
「ちょっと待って! そういうことなら私もご主人様と開けたいわ!」
「そういうことでしたら姉さまには任せられません。私が代わりを務めます。教官、私の隣はいかがでしょう?」
「ちょ、フィナちゃん、私に任せられないってどういうことなのかな!?」
なんと、シェリアが敗北すると今度はエリサとフィナが来ちゃった!
あ、さらにはラナまで来そうになってエステルに抑えられてる。エステル、マジグッジョブ! ついでにシェリアも回収しておいてくれ。
「それならエリサお姉ちゃんたちも開けるのです!」
「え? 一緒にってこと?」
「4人で、ですか。頑張れば、いけますか?」
おっとここでさらに超展開!
今まで定員2名までだった宝箱の開錠を、4人でやるようなセリフがきたー!!
シェリアがナチュラルに入ってない!
エステル、すぐにシェリアを引き取ってくれ! ここから先はとてもシェリアには聞かせられない!
アイコンタクトを経て頷いたエステルがシェリアを引きずっていったのでホッと一安心。
「あい! まずはやってみるのです! ゼフィルスお兄様は真ん中に来てください!」
「おう」
よし、いっちょ流されてみよう!
ルルの主導で俺はするすると〈金箱〉の前にしゃがみ込む。
「ルルはここ、エリサお姉ちゃんは左側で、フィナお姉ちゃんは右側なのです!」
「なるほど~」
「これなら4人でもいけそうですね」
ルルが俺の前にしゃがみ込み、俺の左側にはエリサが、右側にはフィナがしゃがみ込む。みんな小さいからこそできる巧みな陣形だ!
そして幼女たちに囲まれた空間ができあがった。ヤベぇ。
え、シエラどうしたの? え、スクショを貸して? 記念に撮る?
なぜか『直感』が警報を鳴らしているので俺は首を横に振った。
この初の4人で〈金箱〉を開ける記念。なぜかスクショに収めてはいけない気がした。
シエラのジト目が止まりません!
あ、シェリアには先程の二大変身スクショで許してもらいたい。まだゼフィルス様って言われてないけど、先んじて制す!
「では開けるのですよ! ゼフィルスお兄様は両側、ルルの手に重ねるように添えてくださいなのです!」
「ここまではいつもと同じだな」
「エリサお姉ちゃんは左側、フィナお姉ちゃんは右側から蓋を開けてくださいなのです!」
「わかったわ! こんな方法を思いつくなんてさすがルルちゃんね」
「姉さま、教官にくっつきすぎです」
「フィナちゃんも同じだよ!? むしろ私よりくっついてるよ!?」
「よーし、準備は調ったな。ではお祈りするぞ!」
「「「はーい(なのです)!」」」
「「「「良いものください! 〈幸猫様〉〈仔猫様〉!」」」」
お祈りの言葉にみんなも真剣に祈る。先程の騒ぎは一瞬で収まった。さすがは〈幸猫様〉たちへのお祈り!
邪念は入れてはいけないんだぜ。
「じゃ。行くぞ? せーの」
あまり速く開けすぎると付いてこられない人が出てくる。
ちゃんと全員で開けている感じを出すために敢えてゆっくりと開けていった。
そして完全に箱が開かれると、みんなで中を覗き込む。
「これは、かっちょいいマントなのです!」
「これはまた、火に強そうなマントね! 竜の絵が描いてあるわ!」
「ここのボスは溶岩すら使ってきましたから。耐火装備でしょうか?」
そう、今回の〈金箱〉産は装備品、しかも体②のマント系装備だった。
火のように赤く、高級そうな白のファーが付いている上等な見た目。
こんなマントを着て歩いたらかっこいいだろうなとか思う、なんか王様なんかが着けるようなマントだった。
「エステル――は忙しそうだな。誰か『解析』を!」
「それなら私がするね」
いつもならエステルが〈幼若竜〉で『解析』してくれるところだが、現在シェリアを捕まえて忙しそうなのでカイリに頼んだ。
「これは、〈軽装〉の〈溶岩竜マント〉というみたいだよ。耐火性能が高くて50%カット!? これすごいね!?」
カイリが言ったとおり、これは〈溶岩竜マント〉。まさかの〈竜〉の名の付く装備である!
防御力と魔防力もかなり高い上に〈火属性ダメージ50%カット〉が非常に強い!
これに以前当ててアイギスに装備させている盾〈炎武・鳳凰盾〉の〈火属性ダメージ70%カット〉が加わると、なんと夢の〈火属性ダメージ100%カット〉! つまり〈火属性無効〉を実現させる超優秀な装備なのだ!
もちろん〈火属性〉のみカットなので、例えば物理攻撃を内包する『火の剣』みたいな攻撃だと無効ではなく、斬撃ダメージだけは入ってしまう感じにはなってしまう。しかし、火炎放射や今回の〈オビサルス〉の熱線や火の球みたいな〈火属性〉オンリー攻撃は完全にダメージを無力化してくれるので非常に優秀だ!
これ、実はレシピでは存在しない。火山系ダンジョンでしかドロップしないマントである! ちょっと欲しくて狙っていたのだが、まさか初っぱなから来てくれるとは!
早速アイギスに装備させよう!
アイギスは元々赤系の装備なのでこれは似合うこと間違いなし!
今後は上級中位ダンジョンで竜と空中戦をしてブレスを受けることもあるだろうが、これがあればタンクじゃなくても安心だ!
「ほ、本当に私が装備してもよろしいのでしょうか?」
「あい! ルルにはこの〈勇敢のマント〉があるのです!」
「もちろんだ! そのマントと盾があれば〈火属性〉攻撃なんて怖くないだろうぜ!」
結局〈溶岩竜マント〉はアイギスが装備することになった。
「アイギスお姉ちゃん、似合っているのです!」
「赤が凄く映えるわね~」
「本当によくお似合いですよアイギスさん」
「ありがとうございますゼフィルスさん。ルル、エリサさんにフィナさんも。大切に使わせていただきます」
よーし、これで〈火口ダン〉の攻略も完了だ!
情報を共有して周回するぞ!
全員で〈火口ダン〉の攻略者の証をゲットしよう!
なお、致命傷を受けてエステルに運ばれたシェリアは、二大変身スクショを渡すと言ったら息を吹き返した。