#1265 幼女VS恐竜!首が凄い捻れる〈オビサルス〉!
最初にボス部屋に入ったのはフィナ。
今回のタンクは避けタンク兼受けタンクというとんでもタンクのフィナだ。
「あ、いますね。あれは……大きなヘビ、でしょうか?」
「確かにヘビっぽいが、ただむちゃくちゃ首と尻尾の長い恐竜だな」
「あれも恐竜ですか」
そうフィナと会話する視線の先に居たのは、首と尻尾がやたら長い、首長竜にも似たフォルムの恐竜。
全身が赤茶色をしており、所々溶岩が固まったような岩盤がこびり付いている、4つ足のモンスター。
「出たわよフィナちゃん! あれは〈溶岩遊恐竜・オビサルス〉。確かに〈恐竜〉カテゴリーが付いているわ」
「溶岩遊? 溶岩を泳ぐということですか?」
エリサが〈幼若竜〉で『看破』してくれたようにあいつの名前は〈溶岩遊恐竜〉。つまり溶岩を泳ぐ恐竜だ。
実はこのボス部屋はいつものボス部屋よりも格段に広く、そして所々に溶岩が流れていたりする。その溶岩を〈オビサルス〉は泳ぎ、襲ってくるのだ。
また、俺たちが溶岩に落ちたら一発で戦闘不能、敗者のお部屋に転移してしまうので気をつけろ。
あと、どう考えても溶岩から襲ってくるモンスターとか、溶岩の飛沫で熱いどころの騒ぎじゃなさそうなものだが、そこは安心の〈ダン活〉設計。溶岩の滴に触れようがHPバリアが仕事をしてなんのダメージも熱さもない設計になっていたりする。
〈オビサルス〉が溶岩に飛び込んでざっばーん溶岩の飛沫を上げてそれに巻き込まれようがノーダメージだ。まあ、攻撃判定が乗っているとダメージが入る仕様なのだが、細かいことは考えないようにしてあげよう。
俺たちを視認した〈オビサルス〉は一気に警戒し、ずるずると体を引きずりながらも力強い足の動きで進み溶岩へと入っていく。
「あ! 溶岩の中に入っていくのです! 熱くないのです!?」
「溶岩なら、凍らせますか?」
ルルよ、多分溶岩の中に入ったら普通は熱いじゃすまないんだぜ?
「まずはヘイトだな。フィナ、空中からヘイトを取ってくれ」
「わかりました! 『天空飛翔』! 『天使の敵』! 『宣戦布告』!」
「グギュギュギュゥゥ!」
溶岩に入れないのなら空からヘイトを稼ぐ。
フィナは対空中戦に適応したステータスをしているため、地上のモンスターからしても超厄介なのである。
もちろん俺も含め全員が〈ヒエヒエドリンク〉を飲んでいるので暑さは感じない。
十全な体制でボス戦に挑む。
ヘイトを稼がれた〈オビサルス〉は空中にいるフィナにタゲを向け、まずは口から火炎球を3発放った。
「当たりません」
もちろんフィナは軽々と避ける。空中の避けタンクとかマジ当たらん。
それに唸った〈オビサルス〉がフィナへ次々と攻撃を開始した。
主に火炎弾をばらまいて攻撃していく。
「よし、上手く引きつけたな。俺たちも攻撃開始だ! 『サンダーボルト』!」
「ルルは『エネルギーチャージ』中なのです!」
「じゃんじゃん叩き込むわ! 『暴風雪』!」
「まだフィナさんはあまりヘイトが稼げていません。やり過ぎないようまずは1体でいきます。―――『精霊召喚』! 『大精霊降臨』! 『グラキエース』! グラキエース様、あちらを凍り付かせてくださいませ」
「――――!」
溶岩は凍らせることが出来るのが〈火口ダン〉のギミックだ。
エリサは唯一の攻撃手段が〈氷属性〉だし、シェリアも属性に特化している。
こういう時非常に役に立つのだ。
「グギュギュギュゥゥ!」
「あ、出てきたのです!」
ある程度〈氷属性〉で溶岩が冷やされ固まってくると、それを嫌がった〈オビサルス〉が溶岩から出てきた。
時間経過でも出てくるが、それを待つのは面倒なので早々に出てきてもらった。
陸地にいるのならチャンスだ!
「行きます! 『天罰』!」
最初に動いたのはフィナだった。
一番近くに居たフィナが剣を掲げたかと思うと、急降下しながら天罰の剣を叩き込む。
「ギュア!?」
「『エルアサルト』!」
いきなり高威力の攻撃を叩き込まれ、さらにヘイト攻撃の追撃を受けてどんどん〈オビサルス〉のヘイトが溜まっていく。
「『グラキエース・ストリーム』!」
「とう! 『ヒーロー・バスター』!」
「『テンペストセイバー』! からの『ハヤブサストライク』だ!」
フィナが離れた瞬間、超威力のグラキエースの魔法が叩き付けられ、追い打ちにルルの『ヒーロー・バスター』(チャージ半分)が発射。
大ダメージを与えたところで俺が接近してぶった切っていく。
「うお、硬いな!」
さすがはランク9の最奥ボス。HPの減りがだいぶ少なかった。
しかし〈氷属性〉の攻撃は良く効くようでシェリアのグラキエースの攻撃がかなりの威力を発揮しているな。俺も〈氷属性〉にしよっと。
「『属性剣・氷』!」
「ルルも行くのです!」
「フィナは空中移動しながらタンクに集中してくれ! ルルは尻尾に気をつけろ! かなり長いぞ!」
「わかりました!」
「あい!」
「ギュルルルルル! ギュアオ!」
フィナは遠距離攻撃手段に乏しいのでヘイトを稼ぎつつ空中移動で気を逸らせる。
〈オビサルス〉の周りをグルグル回る軌道を変則的に行ない攪乱した。
この時遠くへ移動して距離を取ってはいけない。ヘイトが溜まっている〈オビサルス〉も追いかけに移動していくので近距離担当の俺たちが大変だからだ。
避けタンクは距離を取って逃げ惑うのではなく、避けながら反撃するから避けタンクなのだ。
「あうちっなのです!?」
「うはぁ、尻尾がマジ長いな。ちょっと方向転換しただけでも結構伸びてきやがる」
フィナにタゲを向けているからといって俺たちに攻撃しないわけではない。
攻撃されれば、うっとうしそうに自分の周囲へと攻撃もしてくる。
尻尾を遠心力に任せて叩き付けるだけでも相当な威力だ。
ルルもノックバックに強い耐性があるから無事なだけで、直撃していたら吹っ飛ばされた上でダウンしてしまい、そこに追撃を仕掛けられる可能性も高かった。
え、俺?
俺は問題ない。尻尾が来るタイミングは『直感』で分かるから、後は『自動防御』が仕事してくれるというわけだ。
「ギュワアアア!」
「! ここです、『ミカエルラッシュ』!」
「『大地の怒り・エレメントテラ』!」
「ルルちゃん回復送るよー! 『ダークハイヒール』!」
隙があればじゃんじゃん攻撃。それは避けタンクのフィナであっても変わらずだ。
上空から剣の連撃で攻撃する。
同時にシェリアは下からの攻撃。大地とは言っているが、属性によって攻撃の内容が変わる。今回は〈氷属性〉攻撃だ。地面が凍り、ひび割れ、青白い光のようなものを輝かせて〈オビサルス〉にダメージを与える。
エリサはヒーラーとしてフィナやルルを回復。
また〈オビサルス〉が溶岩に飛び込んでも、溶岩を〈氷属性〉で冷やして釣り、再度ダメージを与えていった。
ちなみにここでも救済アイテム〈鎮火の秘薬〉は使えるのだが、今回は敢えて使っていない。使わなくても勝てるというところを示したい形。
まあ、〈鎮火の秘薬〉を使ってもボス部屋だとすぐに溶岩が押し寄せて元に戻ってしまうので勿体ないというのもある。消耗品を湯水のように使うと、恐ろしいことになるんだぜ。
良い感じに回り始めてきたな。そう思っていたらHPバーの1本目が消え、第二形態へと変化する。
おう、もう一本目消えたのか。だが、こいつの本領(?)はここからだ。気をつけろ。
「ギュオオオオオ!!」
「尻尾で立った!?」
「お前、立てるのか!?」
そんなツッコミを思わず多発させてしまう第二形態。それは長い尻尾で器用に体を持ち上げたよく分からない形態だった。
しかし侮るなかれ、無駄に長い首と尻尾を持つこいつがこれをすると、なんと天井まで背が伸びる。
空中戦をしていたフィナと同じフィールドで戦えるようになる他、上空から火の雨を吐いてくるようになるのだからなかなかに手強いというのが分かるだろう。
尚且つ尻尾だけだと動きがすごく分かりづらいんだ。
どうやってかは知らないが、尻尾が1本しかないはずなのにヌルヌル滑って移動してくる。移動速度もそこそこあり、動きが変則的で読みづらいんだ。
ああ、尻尾切断したい。でも第二形態まではなぜか切断できないんだよなぁ。
ということで攻撃開始。
「ギュオオオオオ!」
「『天空瞬動』!」
いきなり長い首を使い噛みつき連打をフィナに放つ〈オビサルス〉。
それを避けつつ後ろに回り込むが、長い首も器用にそれに付いてくる。
「え!? 540度以上ねじってるのに!? きゃ!?」
びっくり、脅威の一周半首をねじっても大丈夫。フィナがグルグルと一周半も〈オビサルス〉の体の周りを回っても、難なく付いてくる首。いったいどんな構造しているのか気になるところだ。
驚いたフィナが思わず噛みつき攻撃を受けてしまったぞ。盾でガードしたけど。
「な! よくもフィナちゃんをー! 『ダークハイヒール』! 『悪魔の微笑み』! 『悪魔の投げキッス』! 『ダークバインド』!」
「ゴオオオオオ!!」
憤ったエリサがフィナを回復後、状態異常攻撃のオンパレードで〈オビサルス〉を攻撃するが、残念ながら状態異常に強い耐性を持っているか無効を持っていて入らなかった。
「なんだか、こうなったらどれだけ首がついてくるのか見たくなってきました。『宣戦布告』です! こっちですよー」
「ギュオオオオオ!」
すぐに持ち直したフィナだが、逆にこの首長〈オビサルス〉の首はいったいどれだけねじっても大丈夫なのかという好奇心が沸いてしまったようだ。
それ、俺も興味あります。「いったれフィナー」と応援してあげたよ。もしかしたら、新たな〈ダン活〉の戦法が見つかるかもしれない!?
なお、フィナがグルグル、グ~ルグル回って18周首の周りを飛んだが、結局首は付いてきた。むっちゃねじれてる。
マジでどんな構造してるんだろうねこれ!?




