#1254 〈ビリビルクマサブロー〉戦が超ビビルクマ~
「ビビルグマ~~!!」
信じられるか?
この即死トラップもどきのコロがる岩、その正体はクマなんだぜ?
横幅だけで5メートルを超える岩のような物体、通路では通れるギリギリのサイズだ。
こいつ、太りすぎ!
ゲフンゲフン。冗談だ。体格が良い、だな。
アルマジロの鱗甲板を持っているところはさすが〈ビビルクマジロー〉の進化系列。ただ進化して名前にますますアルマジロ要素が無くなっているんだが、もうこれクマで良いんじゃないの?
そんな〈ビリビルクマサブロー〉、通称〈クマブロー〉が広場へと入ってくる。
正面に立つのはシエラとシャロンだ。
「止めるわよ――シャロン合わせて! 『アジャスト・フル・フォートレス』!」
「はいよ~『プリンセスヴァレション』!」
そこに現れたのは並ぶ巨大な5つの盾。盾を連ねて城壁の如くとするシエラの強力な五段階目ツリー。
そこへシャロンのユニークスキルを発動。〈城〉系統カテゴリー限定の超強化を施し、シエラの『アジャスト・フル・フォートレス』の力をさらに高めてくれる。
聞いた話では、これにカタリナの最強防御結界を合わせ、〈カオスアビス〉20人の一斉攻撃をたった3人で受け止めきったというのだからこの防御スキルがどれほど硬いか分かるだろう。
そして激突。
「グマ!?」
そして当然のようにぶつかって停止する〈クマブロー〉。
この時を待っていたぜ!
「今だ!」
総攻撃!
止まった巨体に〈エデン〉2パーティ分の攻撃が叩き付けられる。
転がってくる〈クマブロー〉を相手に気をつけなくちゃいけないのが、実は防御勝ちしてしまうことだ。
防御勝ちは相殺の上位、たとえ格的に負けていたとしてもタイミングがバッチリ合えば格上の攻撃だって弾き返してしまうタンクの奥義だ。
だが、これをすると弾かれた〈クマブロー〉はそのままゴロゴロ転がってさよならしてしまうため、こうして一度受け止める必要があったわけだな。じゃなければシエラの『アジャスト・フル・フォートレス』ですでに弾かれてる。
シエラってああいうまっすぐ向かってくる系に防御勝ちするなんて容易いから。
というわけで、転がっていなければこっちのものだ!
今回のパーティメンバーは俺を中心に、シエラ、ルル、シェリア、リーナ。
もう1つはラナを中心に、エステル、シズ、パメラ、シャロン、だった。
ギルドメンバーの中でも古参メンバーが多く、連携はばっちし。
正直指示を出さなくても問題ないほどのレベル――はちょっと言い過ぎか?
そんな総攻撃を大量に受けて初っぱなから大きなダメージが入ったな。
「ビビルグマーー!!」
「『完全魅了盾』!」
「ビリビル!?」
「狙いはエステル! エステルは一旦攻撃中止だ! 『勇者の剣』!」
総攻撃を浴びて怒った〈クマブロー〉が〈イブキ〉に騎乗したエステルに向かおうとするが、それはシエラがタゲ固定で防ぐ。
〈エデン〉トップの物理ダメージディーラーはやはり〈イブキ〉に騎乗したエステルだな。
『姫騎士覚醒』によるスラスト砲連射は威力が段違いだぜ。おかげでヘイトを取ってしまったらしいエステルは一旦攻撃をストップしてもらう。
「『魔弾』! 『ジャッジメントショット』! 『マルチバースト』! 『フェニックスショット』! 『バードデスストライク』!」
この中で2番目のダメージディーラーシズが代わりにガンガン撃ちまくってダメージを稼いでいく。こちらも攻撃力が段違いだな。
「『オーラポイント』! 『シールドフォース』! 『グロリアススマイト』!」
「『防壁召喚』! 『ライトアピール』! 『城上スプラッシュ』!」
シエラがどんどんヘイトを稼ぎ、シャロンも防壁を召喚してボスの後ろの通路を塞ぐとヘイトを稼ぎ始めた。
これで総攻撃で混迷していたヘイトの乱れが正されタゲがタンクに向いたな。
基本はシエラがメインタンクだが、相手はあの〈クマブロー〉だ。
全長が12メートル近くあり、クマラッシュが危険。威力が高い。
「シエラ、援護するわよ! 『守護の大加護』! 『耐魔の大加護』! 『病魔払いの大加護』! 『天域の雨』!」
ただこっちにはラナが居る。ラナの支援回復が輝いているためシエラが崩れることはないだろう。
だが万が一のためにサブにシャロンが入りサポートする構え。
また、アタッカーたちがあの巨体の攻撃に巻き込まれないよう援護するのもシャロンの役目だ。
「『物見台召喚』! シズちゃん」
「助かりますシャロンさん」
「それで『城門召喚』! 『防壁召喚』! 『迷宮通路』! ラナ殿下は迷宮通路へ!」
「助かるわ!」
「私も迷宮通路へ入ります――『大精霊様二大降臨』! お願いします『テネブレア』! 『サンクトゥス』!」
「私も隠れる場所があるのはありがたいデース! 『必殺忍法・分身の術』デース! そして5人連続攻撃の~『忍法・影分身爆裂丸』デース!!」
「クールタイム明けの~『物見台召喚』! こっちはリーナちゃん!」
シャロンが次々地形を整えてはメンバーが隠れ潜んでいくな。
特にこのパーティには遠距離射撃を持つシズとリーナや、魔法使い系のラナやシェリアがいるため、守りや障害物が充実するのはありがたいのだ。
『防壁召喚』で防壁が組まれると、その後ろに物見台が設置され、シズとリーナの固定砲台が完成。
『城門召喚』で鉄壁の門が置かれると、その後ろにはちょっとした『迷宮通路』が設置されてヒーラーのラナやアタッカーのシェリアを容易に狙えなくなった。これで事故が減るな。
だだっ広い広場を戦いやすいフィールドに変えていく、これがダンジョンでのシャロンの戦い方だ。
「グマアアアア!!」
「シャロン吸引!」
「『吸引防壁』!」
さらには〈クマブロー〉が口から火炎放射の雷撃版みたいなもので範囲攻撃してきたのでシャロンが城壁へ吸い込み防御する。
そこへ突っ込む小さな影。
「とう! 『ヒーロー・バスター』なのです!」
「グマアアアアア!?」
「シェリア、ここだぁぁ! 『聖剣』!」
「テネブレア様お願いします――『大地の怒り・エレメントテラ』!」
ルルが側面からほっぺにバスターを食らわせてたたらを踏んだ〈クマブロー〉。
体勢を崩したところを見逃さず俺が『聖剣』でさらに動きを止めシェリアが地面を揺らしてスリップダウンさせた。よっしゃ成功!
「ナイスシェリア! 総攻撃だー!」
「とう!」
一斉に総攻撃を叩き込み、大ダメージが入った。いいね!
ダウンが終わってヘイトが乱れたが、またシエラが『完全魅了盾』でタゲ固定。
乱れたヘイトをタンクへ整える。
〈クマブロー〉は巨大な両腕に電撃を纏わせて殴る『ビッグサンダービビレビビレパンチ』を放つが、シエラはそれを難なく盾で受けていく。体格差が偉いことになっているが、シエラは涼しい顔だ。防御力が高いぜ。俺、〈ビビルクマジロー〉時代にあのパンチをモロに食らってダウンしたことがある。ちょっとビビるわー(棒)。
「ビビレグマーーーー!!」
「怒りモードだ! 一旦距離を取るぞ!」
HPバーがレッドゾーンへ踏み込み怒りモードが発動。
すると全身に雷を纏わせてぐるんと包まって雷ボールになった〈クマブロー〉が、なぜかシャロンのいる城門の方へと向かう。
シエラを無視し、2番目にヘイトが高い者に向かう『2番手コロコロ』だ。
名前は可愛いが、それ絶対コロと書いて殺と読むってやつだろう!
転がる度に雷がゴロゴロ鳴ってるのも可愛くない。
しかし残念。2番目にヘイトが高いのも――タンクでした!
「シャロン!」
「私の城門は硬いよ~『プリンセスヴァレション』! 『ファランクス』! 『受け止める』!」
「ビビルグマァァァ!?」
シャロンが大活躍。
転がってきた〈クマブロー〉に対して城門をユニークスキルで強化。さらに城門から槍衾が生える『ファランクス』で攻撃しながら防御し、さらに『受け止める』で文字通り転がりを受け止めてしまう。
これがなかなか強いスキルで移動攻撃したら受け止められて移動スキルが消えるのだ。
「そこに――『城門開放・炎上』!」
さらに城門がガコンと開いたかと思うと、大炎上。
「グマアアアア!!」
これはレイテルがやっていたという防壁から雪崩へと変換するコンボスキルと同系統。
城門を大炎上させることで大ダメージを与える攻撃魔法だ。
本来なら開いた扉に勢いよく兵が飛び込んで来たところを大炎上で一網打尽にする魔法だな。〈クマブロー〉はデカすぎて門に入らなかったけど。
結局『受け止める』によって『2番手コロコロ』が封殺された〈クマブロー〉はダメージだけを受けて撤退。そのままシエラに襲いかかるが。
「今度は弾くわよ『アジャスト・フル・フォートレス』!」
「ガッ!?」
何か溜まっていたのかな? 怒りのままに飛び込んで来た所をそのまま平手打ちするかの如く城盾で弾き返して防御勝ち。シエラがパナいです。
「ナイスシエラ! 『フィニッシュ・セイバー』!」
「とう! 『デュプレックスソード』! 『フォースバーストブレイカー』!」
「『大聖光の十宝剣』!」
「『バードデスストライク』!」
「『インパルススラストキャノン』!」
「『決戦兵砲・ノヴァブレイカー』!」
「おっしゃダウン! 総攻撃ー!」
そこへすかさず俺、ルル、ラナ、シズ、エステル、リーナが素早く攻撃を叩き込んでノックバックダウンをもぎ取った。
これでフィニッシュだ!
10人全員による総攻撃を叩き込むと、ついに〈クマブロー〉のHPがゼロになり、エフェクトの海に沈んで消えていったのだった。
そしてもちろんラナの『プレイア・ゴッドブレス』を掛けていた俺たちの前には〈金箱〉がドロップしていたのだった。
おっしゃー!!




