#1250 上級中位ダンジョン門を解放せよ。まずは受付
その日は20層の〈ジュラ・ドルトル〉を撃破して帰還した。
結局〈ゴールデントプル〉のお肉は12個もゲットしてしまったぜ。
〈エデン〉のオカリナは増えに増えて現在8個、うち5個を持って来たのだが、かなりの戦果だったな。
やっぱりサーシャの閉じ込め戦法はよくぶっ刺さる。
その週の放課後も集まれるときは集まり、木曜日には最奥のボス、〈キングダイナソー〉を撃破した。
なかなかの強行軍だったが、途中アイギスが協力してくれたためなんとか行けたな。
途中、俺たちが最初ちょっと苦戦した徘徊型、〈ジュラ・レックス〉も登場したのだが、アイギスの速度には敵わず。十分距離を取ってから下車して待ち構え、奇襲なんてさせない状況から挑んだ。
徘徊型は奇襲されるからパーティが壊滅させられるのであって、挑んでくるボスを返り討ちにするのならフィールドボスよりちょっと強いだけのボスだ。
警戒すべき強力なスキル『フライング・恐竜・キック』も、直撃したはずの上級職クイナダがピンピンしているのでまあドンマイ。
最後は逃げようとした〈ジュラ・レックス〉だったが、サーシャが『氷の大地』から『アイススロープ』のコンボでちゅるんと滑らせ、クイナダとカグヤでトドメを刺していた。俺は指示出ししただけだったよ。
初の徘徊型ボスのはずだが見事なものだった。やっぱタンクのヴァンがガッチリガードして、接近戦型が上級職のクイナダのみというのが良かったな。
後方に攻撃されなければ安定して戦えていた。
翌日の金曜日。
臨時教師ゼフィルス先生による第二回〈育成論〉が行なわれた。
先週の〈スラリポマラソン〉で多くの学生が勉強どころではない心境に陥ってしまったのは不覚だったな。もっと5時間目とか6時間目のコマにやるべきだった。
いや、それだとその日教えたことが全部飛びそう。難しいものだ。
安心してほしい。今日は全コマ〈育成論〉をやるぞ!
「あの、ゼフィルス先生のおかげで私LVが10を超えましたの」
「ずっとLVが上がらなかったのに、ゼフィルス先生が〈スラリポマラソン〉を教えてくださったおかげでLVが6まで上がったんです! それでようやくダンジョンに潜れました! ありがとうございます!」
休憩時間になるとこんな感じで口々にお礼を言う子から。
「ゼフィルス様。あなた様のおかげで〈魔石〉の販売権を手に入れることができました。これで傾いた商会を立て直せます。本当にありがとうございます。いくら感謝してもしきれません。よろしければ今度お礼に食事などを――」
そう深く深く感謝しながら近づいてくる女の子まで、とても感謝の雨を浴びた。
うむ、〈スラリポマラソン〉を教えて良かったと思う。
ちなみに食事などと言い始めたらみんな「わ、私も!」と一斉に手を上げ始めたのでセレスタンが止めた。
悪いな。夜は大体ハンナと食べるので席は埋まっているのだ。
なぜか盛大に警報を鳴らす『直感』にビビっているわけではないぞ?
明けて翌日の土曜日。
「そろそろ上級中位ダンジョンの準備を進めないとな」
「ふえ? ゼフィルス君、今なんか言った?」
朝のハンナとの朝食も終え、まったりしながら今日すべきことを考えていると、うっかり口からこぼれてしまったらしい。
洗面所から歯ブラシを咥えたハンナがちょこんと顔を出していた。
「悪い、なんでもないぞ」
「そぅお?」
そう言うとハンナの顔が引っ込む。
それを見届けてから再び考えに没頭した。
実は現在、上級中位ダンジョンから上、つまり上級中位ダンジョンのある〈上中ダン〉、上級上位ダンジョンのある〈上上ダン〉、最上級ダンジョンのある〈最上ダン〉のダンジョン門は――全て封鎖されている。
理由は言わずもがな、管理できないからだ。
オープンしておいて万が一、何かの手違いでも起きれば大変なことになる。
故に、建物が厳重に閉じられているのだ。
これでは俺たちが上級中位ダンジョンに進出することもできない。
困った。
まあ、これに対しすでに手は打ってある。
管理できないから閉じられているのであれば、管理できるようにしてあげればいい。
つまりは〈救護委員会〉や学園の教員の強化である。
この前のダンジョン週間で俺が教員の育成に参加したのも、実はこれが理由だ。
教員はゲーム〈ダン活〉では戦力にはならなかった。
メンバーにスカウトできないからだ。故に俺は今まで先生を強化してこなかった。
しかし、教員を強化しないと上級中位ダンジョン以降に進めないのであれば話は変わる。
ということで、最近は積極的に情報を送り、強化に励んでもらっていた。
〈エデン〉でも〈フルート〉がドロップしたら教員の強化に使ってもらおうと思っている。
また、来年を見越し、現在の3年生で優秀な人材も目を掛けまくっている最中だ。
〈集え・テイマーサモナー〉のカリン先輩やエイリン先輩、〈ミーティア〉のアンジェ先輩やマナエラ先輩とかな。
すると来年。上級中位ダンジョン以降を管理できるレベルにまで学生の育成を進めておけば、卒業して教員に就職すると同時にダンジョン門を解放できるって寸法よ。
つまり、学生のうちに〈氷ダン〉まで攻略が完了してLV34になっていれば、教員になった瞬間に即戦力! 上級中位ダンジョンも管理できます! いざオープン!
となるわけだ! 完璧な計画!
故に優秀な3年生もガンガン育成しては学園長にそっと根回しをしておく予定だ。
ふはは!
〈エデン〉にも3年生を入れておけばよかったとちょっと後悔してるのは内緒。
とはいえ上級中位ダンジョンの解放は1年も待てないので、そろそろ開けてもらいたいと思っている。1年あれば上級上位ダンジョンくらいまでは解放できるだろう。
ということで卒業生の出番がくるのは最上級ダンジョン門の時になるかもしれない。
年を取ってLVが上がりにくくなった先生の代わりに、新卒の先生たちに最上級ダンジョン門を開けてもらおうという計画!
つまり、現在の先生方にはなんとか上級上位ダンジョンを解放できるところまで育成し、〈エデン〉や上位ギルドの方々には上級上位ダンジョンでも攻略出来る実力をこの1年で身に着けてもらいたいと、そう考えている。
その実力を身につけてもらうため、どうすべきかのスケジュールを今から練っておくのが重要となるわけだ。
これも学園長に伝えておこう。俺はやると言ったらやるよ。
目指すは本校のダンジョン、全制覇だ!
その第一歩として、まずは上級中位ダンジョンの解放をしなければならない。
ということで、俺は今日、上級下位ダンジョンの受付長である、ケルばあさんを訪ねることにした。
方針を決めてからハンナと別れ、〈上下ダン〉へと向かう。
その受付には、今ではもう見慣れてしまったレンカ先輩が座っていた。
「む、また来たんだねゼフィルス君! 今日は〈フルート〉の回復かい? それとも〈笛〉かい? それとも〈オカリナ〉の回復かい!」
「おはよーレンカ先輩! 実は今日は別件なんだ。ケルばあさんっている?」
「ん? 笛の回復じゃないなんて珍しいね。ケルばあさんなら奥にいるよ」
「おおそうか! じゃあ悪いけど呼んでもらってもいいか? あ、〈オカリナ〉の回復もついでに頼む」
「やっぱり持ってきてんじゃないか!」
うーむさすがレンカ先輩。良いツッコミしてるんだぜ。
この前の〈ゴールデントプル〉の乱獲で大変活躍した〈オカリナ〉をついでに出すと、レンカ先輩はそれを持って奥の部屋に入っていった。
するとちょっとしてケルばあさんが出てくる。
「ケルばあさん! おはようございます!」
「おやおや、おはよう。珍しいね。今日はどうしたんだい?」
「実は、これを見てほしいんですよ」
挨拶もそこそこに俺はランク7〈氷ダン〉の攻略者の証を含む、ランク1からランク7までの上級下位ダンジョン、全ての攻略者の証を取り出した。
上級中位ダンジョンの本来の条件は、「〈26エリア〉の攻略者の証を2つ、〈31エリア〉の攻略者の証を2つ、そして〈35エリア〉の攻略者の証を1つ」だ。
その条件に当てはめると、すでに俺は条件を満たしているとなる。
そして、以前まで上級下位ダンジョンを1人で管理していたのは、言うまでもなくケルばあさんだった。
ケルばあさんは特殊な眼力の持ち主で、人の数刻後の死期が見えるらしい。それで入ダンする学生を見きわめていると以前言われた覚えがある。
上級中位ダンジョンのダンジョン門の受付を任せられるとすれば、ケルばあさんしかいないだろう。
まず必要なのは受付人。受付できないとパーティが組めない。
ケルばあさんならぴったりだ。
それにレンカ先輩を始め、〈私と一緒に爆師しよう〉のメンバーも受付人として育ってきているという話だし、すでに〈上下ダン〉の受付はレンカ先輩たちに大体任せっきりだ。
ケルばあさんも、この前「わたしゃそろそろ引退かねぇ」とか言ってたし、なら引き抜きたいという判断だった。
そう熱意を持って伝える。
「〈エデン〉はそろそろ上級中位ダンジョンの攻略を開始したいと考えています。そのため上級中位ダンジョンのダンジョン門の受付をどうかケルばあさんにお願いしたいんです!」
「構わんよ」
あれ?
ケルばあさんの答えは、とてもあっさりとしたものだった。




