#1248 今度はヴァン、サーシャ、カグヤのターン!
〈サボッテンダー〉撃破後は、〈エデン〉お得意のボス周回を発動。
まだ他の1年生でここまで来られる者は少ないらしく、周囲は無人。
今のうちにじゃんじゃんレベル上げだ!
途中から俺とカイリも参戦してパワーレベリングをしたおかげで3人とも今日1日でLVが4も上がってたよ。三段階目ツリーが開放できるLV40までもう少しだな。
続いて日曜日。
今日はメンバーをチェンジしてミジュたちをラウやミサトたちに任せ、俺の方はヴァン、サーシャ、カグヤのパーティに参加していた。
そして今日行くのは中級下位の1つ、〈エデン〉でたくさんお世話になった〈丘陵の恐竜ダンジョン〉通称〈ジュラパ〉である。
「3人とも、今日から本格的に中級ダンジョンを攻略するぞ! これから行くダンジョンは想像以上にモンスターが強くなるからしっかり気を引き締めてくれ!」
「「「おおー!」」」
「それと紹介しよう! 前から要望のあった索敵が使えるメンバーだ! 今日からこちらのクイナダがパーティに加わるぞ!」
「「「おお!」」」
「クイナダだよ。留学生組の2年生だけど、遠慮しないでくれると嬉しいなぁ。得意な武器は薙刀で、主にアタッカーを務めているけど、斥候なんかもできるから中級から先は頼ってちょうだいね」
クイナダは昨日リカに取られていたが、なんとか取り返して今日からこのパーティに参加してもらう。
実はヴァンたちは別の中級下位ダンジョンを進めていたのだが、クイナダが加わったことでまた1層からやることになり、どうせだったらということで〈ジュラパ〉に挑んでもらおうということで今に到る感じだ。
「ようこそですの! 大歓迎ですの!」
「罠発見能力とかほんと助かる~。もうヴァンを壁にして進むしかないと思ってたんだ~」
「カグヤさんはそんなことを思っていたでありますか!?」
クイナダを紹介すると3人に快く受け入れられた。
中級ダンジョンからは罠の配置が多くなる。故に『罠発見』や『罠解除』系の技能持ちが必要になってくるんだ。
ヴァンたちもこれまで何度か罠に嵌まったことがあるらしく、カグヤが偉い力業で乗り切ろうと画策していたらしい。ヴァンが驚いていたよ。
また、クイナダは上級職になったばかりで、本来なら俺たちが上級ダンジョンで揉んでレベルを上げてやりたいところだが、本人がまずは本校の中級ダンジョンからやりたいと希望したのでこちらに加わってもらった形だ。色々と学びたいらしい。
ちなみにクイナダは分校の方で攻略した初級上位ダンジョンの攻略者の証を3つ持っているため、中級下位ダンジョンは全て入ダンが可能になっている。
この証って全国共通だったんだな。初めて聞いたときはびっくりしたよ。
閑話休題
クイナダはアタッカーではあるが斥候技能も合わせ持つ。
3人にとって喉から手が出るほど欲しい人材で以前から要望が出ていたんだ。
今までは〈エデン〉のメンバーから誰かしらが参加していたが、今度からはほぼ固定パーティでクイナダが参加することになってとても喜んでいる様子だな。
このパーティに加わってもらって正解だったな。
カグヤがさっき言った通り、『罠発見』技能が無いパーティだと、アイテムを使うか身代わりを壁にして無理矢理突き進むしかない。
身代わり……良かったなヴァン。これで彼も本来の役目に集中できるだろう。
ヴァン、サーシャ、カグヤは少し前にLV40を超え、ついに三段階目ツリーのスキルと魔法、ユニークスキルなどを獲得している。今日はいっぱい見せてもらう予定だ。楽しみだなぁ。
顔合わせが済むと早速〈ジュラパ〉へと入ダンする。
「恐竜が多いでありますな」
「いや、多いとかじゃないですのヴァン、恐竜しかいないですの! アレすっごく強いんですのよ!」
「ヴァンはちゃんと私たちを守るんだよー、あんなのにぶつかられたら私たちなんて木っ端だからねー!」
「心得たであります!」
「この3人は本当に仲が良いなぁ」
先頭を進むヴァンが丘から全体を見渡して発言するとサーシャがすかさずツッコミを入れ、カグヤがヒーラーの意見をちょっと砕けた感じに言ってヴァンは気合いを入れていた。
あれで気合いが入るところが真面目で堅物なヴァンらしい。なんとなく城主というより騎士っぽいんだよなヴァンって。
今回は馬車を使わず、歩きで進む。
まあ、俺がいるので最短距離だ。
「じゃあ早速行こうか、階層門はこっちだ!」
「それ全部覚えているんですのゼフィルス先輩?」
「もちろんだぜ! 〈ジュラパ〉の全階層の地図、暗記済みだ」
「と、とんでもないですの!」
「ちなみに初級と中級ダンジョンの全階層の地図も覚えているんだぜ?」
「それは意味が分からんですの!」
いやぁ、やっぱサーシャのツッコミ、いいわぁ。
理解出来る範疇のすげぇというツッコミと、理解出来ないけどゼフィルスならやりそう、やべぇというツッコミ。
一度で2度美味しい。ごちそう様です。
「ま~たゼフィルス先輩がサーシャを驚かせてツッコミを楽しんでるよ~」
「カグヤ、さんだよね? あれはいつもの光景なの?」
「そうだよ~。あ、私のことはカグヤでいいよクイナダ先輩。それでね、見たとおりだよ。ゼフィルス先輩はね、サーシャが大好きなの。あ、これ他のギルドメンバーの前で言っちゃダメだよ? 特にラナ殿下とかシエラさんの前とか」
「え? うん、わかったよ。でも1年生なのにずいぶん〈エデン〉の内部事情に詳しいんだね」
「ああ、それは入学前から〈エデン〉と関わりがあったからでね――」
気が付けばクイナダとカグヤの話が弾んでいた。
クイナダの性格なら、カグヤと相性はいいのかもな。
ヴァンとも良さそうだが、ヴァンは現在前方警戒しながら進行中だ。
混ざらないか聞いたのだが、どうも前に集中したいと主張している。
サーシャとカグヤの3人パーティの時よりも固い印象だ。
もしかして、クイナダを入れたからかな? 初心発動中か?
「前方、モンスター発見。4体!」
「おっと、〈トルトル〉4体だな。ヴァン、あいつらは足が速く結構な距離から飛び掛かって爪で攻撃してくる。取り付いたら噛みついてくるから、弾け」
「承知! 『国防の城主』!」
「「ギャーウ!」」
唐突に戦闘開始。
俺の指示に、まず【賢国守】であるヴァンが三段階目ツリーの『国防の城主』を発動する。
これは開幕早々に使うには非常に有効なスキルで、挑発効果と自己防御力をアップする効果を持つ。
4体の〈トルトル〉が全てヴァンへとタゲを向けると、先頭の2体が飛び掛かってきた。
しかし、ヴァンはこれを冷静に盾で受け止める。防御力が上がっているのでダメージはかなり軽微。
さらに盾にしがみつき、取り付いた〈トルトル〉に向け、ヴァンはさらにスキルを発動する。
「『防魔衝撃』!」
「「ギャーウ!?」」
盾から衝撃波。否、よく見ればヴァンが盾の裏側に杖の先端を当てていた。攻防に適性のある吹き飛ばし系の魔法である。
これにより取り付いていた〈トルトル〉たちが吹っ飛ばされた。
良い判断。
ヴァンも切り替えられている様子、戦闘に支障はない感じかな?
「まずは足を止めますの――『アイススパイクバインド』!」
続いて【氷姫】のサーシャが地面をトゲトゲの氷で凍らせ、範囲内に敵がいる場合は氷で拘束する『アイススパイクバインド』を使い2体の足を〈拘束〉。残り2体は回避したが、トゲトゲの地面は走る度にスリップダメージを与え続けた。
「狐の式神、出でよ~『狐召喚・二の陣』!」
「―――!」
「援護援護ー!」
そして【巫女狐】のカグヤが二段階目ツリーで呼び出した狐で援護する。
【巫女】系に連なる【巫女狐】は当然のように式神召喚と回復使いだ。
【巫女】が鬼を使役するように、【巫女狐】は狐を使役する。
そして様々なバフを付与したり、時には攻撃に加わってくれる便利な存在だ。
「『我が国はここにあり』!」
「わぁ、ヴァン君って凄いんだね。あれ全部受け止めちゃってるよ。確かあのモンスターって結構強いんだよね?」
ヴァンが4体の攻撃を同時に受け止めたことで、クイナダが絶賛の声を上げた。
おいおい、ヴァンがなんかグラついてるぞ、大丈夫かな? 大丈夫っぽい?
ダメージは全然少ないからクイナダの絶賛に反応したのか?
早く仕留めちゃった方がよさそうか?
「ああ……。ここに出てくるモンスターはどれも結構強いぞ。単純な戦闘力で言えば中級下位で一番モンスターが強いダンジョンだからな。だがヴァンは【賢国守】。非常に堅い受けタンクだ。しっかり防げばあれくらいはわけない。クイナダはそろそろ入ったらどうだ?」
「う、うん。行ってみる!」
今まで上級職なため攻撃に参加していなかったクイナダもここで投入、突撃。
「クイナダさん、もう少し右へずれてくださいですの、そっちに放ります!」
「! わかりました」
「では行きます。『氷の大地』! 『アイススロープ』!」
出たな斜めの氷の大地!!
相手は滑る!!(確定)
氷を斜面にしちゃダメだって!
サーシャの魔法はあまりにもとんでもないぜ……。
「「ギャーウ!?」」
スパイクがいつの間にか取り払われ傾斜がついたツルツルの氷に、〈トルトル〉たちはなすすべもなくスライドした。そう、クイナダの方へ向かって。
「わー! 丁度良い感じ。行くよー『ブレイドバーン』!」
ただの強力な横一閃。
しかし、それだけで十分だった。
クイナダのスキルが終わった時、〈トルトル〉4体はまとめてエフェクトに還っていた。




