#1246 〈サボッテンダー〉戦! 3人だけで初攻略!
〈孤島の花畑ダンジョン〉ボス――〈サボッテンダー〉。
初級上位ダンジョンで待ち受ける最奥の主にして、初の遠距離攻撃が主体のボスだ。
さらに状態異常〈毒〉を使い、広範囲攻撃を使用し、タゲを取っていないメンバーも攻撃が当たってしまうという厄介な性能を持っている。
その代わり下半身が地面に埋まっていて立ち上がるどころかその場から動くことも出来ないので、状態異常の〈毒〉を何とかする方法と単純に防御力を上げておけば普通に善戦できるボスである。
「特に気をつけなくちゃいけないのが眷属召喚だ。9体の眷属に囲まれると一気にHPが削られてタンクでもやられることがある。眷属が出てきたらアタッカーはボスのことは放っておいて眷属を素早く倒すこと。この基本を遵守しておけば勝てる」
「「わかりました(っす)!」」
「うん」
3人とも超素直! 素直なことは良いことだ!
元々〈エデン店〉であの忙しさを経験していたからなのか、こういう指示やアドバイスを受けるととても素直に吸収する。
3人とも、ランランと目を輝かせて尊敬するような視線を向けてくるのだ。
ナキキはともかく、意外にもミジュも、である。
このアドバイスのおかげで今まで苦戦らしい苦戦もせず、俺たちのアドバイスを活かしてここまでストレートに攻略してきたらしい。たった3人なのに、凄いことだ。
あの〈デブブゴース〉や〈バトルウルフ〉も3人で切り抜けているというのだからどれだけ凄いか分かるだろう。
まあ、上級の〈木箱〉産装備は貸しているのでそのおかげも多少はあるけどな。
「ボス戦、今回も勝ちますよ2人とも」
「「おおー(っす)」」
シュミネの声に2人が声を上げそのままボス部屋の門を潜る。
俺とカイリもそれに続いた。
俺たちは見学なので壁際で背中を預けて見守った。
全体攻撃に近い広範囲攻撃もある〈サボッテンダー〉だが、俺とカイリのLVだと直撃を受けたとしてもどうということはないので自然体。〈毒〉も『リカバリー』すればいいしな。
「まずはヘイトを取るっすよー!」
「フーフーフー!」
「あ。今こいつなんか鼻で笑わなかったっすか!? 今すっごくバカにされたように感じたっす!」
「よく見る。ボスに鼻は付いてない。花なら咲いてるけど」
「くふぅ。ちょっとミジュ、笑わせないでください。気が抜けてしまったではないですか」
うーむ。3人とも初の〈サボッテンダー〉戦だというのに超余裕だな。良い雰囲気だ。
アレやっぱり挑発してるよね〈サボッテンダー〉。ナキキの訴えがよく分かる。
確かに〈サボッテンダー〉の顔は穴が3つ空いているだけなのでミジュの言うとおり鼻はないな。頭のてっぺんに花は咲いてるけど。シュミネは、もしかしたら笑いの沸点が低いのかな?
「うわぁ、なんか予想していたより全然余裕そうだね。なんというか、普通なら増長したり、余裕と油断をはき違えていたりするものだけど、3人ともおしゃべりしつつもしっかり警戒してる」
「そう教え込んだからな」
とはいえただ教えただけではそうそう身につくことはない。この子たちが超素直なのだ。
俺たち〈エデン〉メンバーのアドバイスなら大抵素直に吸収する。
「なるほどね。彼女たちは〈エデン〉のことを本当に尊敬しているんだ。なんとなく分かる気がするよ」
「カイリは分かるのか?」
「まあね。多分、私が〈エデン〉に加入したときや、〈救護委員会〉へ助っ人に行ったときと同じ心境なんだと思うよ。人間、とても気高い存在には憧れるものさ。それが自分たちもこうなりたいって行動力に直結しているんじゃないかな」
なるほど、憧れか。
憧れの〈エデン〉の言うことだからガンガン吸収しよう。というだけではなく、自分たちもこうなりたいと思うことが原動力だったようだ。
おっとカイリと話している間に始まったな。
「食らえっすー! 『脛打ち』!」
おっと出ましたナキキの挑発スキル『脛打ち』。
相手の足、向う脛をハンマーで強打してヘイトを稼ぐエグいスキルだ。
ドワーフが小さいからこそのスキルだな。
とはいえ〈サボッテンダー〉は下半身が地面に埋まっている植物モンスター。
果たして『脛打ち』は効くのか!?
ガツンッ!
「フゥゥゥゥゥ!?!?」
効いたーーー!!
どう考えても腹よりちょっと上辺りをどつかれたはずなのに怒ってタゲをナキキに向ける〈サボッテンダー〉!
両手を振り上げてーー!? 棘発射ー! 両手を振り上げた意味はどこにあったー!
「痛た!? でも負けないっす! 『頑鋼』!」
てっきり何かしてくると思って振り上げた腕を警戒したナキキ、やっぱり最初は騙されて棘直撃ー!
しかし、すぐに自分の大盾に隠れて防御スキル発動!
「ドワーフは小さいから大盾に全身すっぽり隠れるね」
「ちょっと羨ましいよな。あれ絶対体格でダメージ数変わるぞ」
あ、でもちょっと食らったところから〈毒〉入ったな。
当然シュミネがそこへ状態異常回復を飛ばす。
「『アロマ』!」
タンクがタゲを取りヒーラーがそれを支える。
なら次に来るのはアタッカーの攻撃だ。
「『強力クマパンチ』!」
「フー!?」
おっとここで強力なクマパンチが刺さったー! なお棘には刺さってません!
「抉り込むように打つ――『スクリュークマブロー』!」
今度は抉り込むようなクマブローだー! 完全にボディに突き刺さったー! 〈サボッテンダー〉選手、これはキツいか!?
「ナキキ、ヘイト!」
「うっす! 『足の小指打ち』っす!」
あっとさらに追加で足の小指を強打するハンマーが炸裂したー! 直撃すれば悶絶間違いなしのこの挑発攻撃! しかし〈サボッテンダー〉に足は無ーい! 果たして効くのか!?
ズドンッ!
「フゥゥゥゥ!?!?」
効いたーーー!!
どう考えても胸くらいの位置に振り下ろされていましたがちゃんと効いています!
ミジュに向きそうだったタゲが再びナキキに向きなおるが、おっとまた〈サボッテンダー〉が両手を振り上げる! これは!
「2度目は効かんっす! 『ドワーフの意地』!」
ナキキは防御スキルの体勢に入ったー。しかし、これは単体スキルではなーい!
「フー!」
「きゃあ!」
「うにゅー!?」
「2人とも!?」
周囲範囲攻撃!
タゲ以外にも攻撃が行く範囲攻撃だー!
これは初級上位のボスから出始めるため初見。さすがの3人も予期せぬ攻撃にダメージを受ける! しかし、シュミネが回復ですぐに立て直すー!
「やってくれましたね。『リーフヒール』! ――ミジュは」
「大丈ぶい。『熊打多連打』!」
おっとミジュは範囲攻撃でも装備のおかげでへっちゃらだー!
やっぱり〈木箱〉産でも上級装備が強ーい!
そのまま連続攻撃に移るー!
そこからはだんだんと範囲攻撃にも慣れていく3人。
ふう、なんか途中で実況者みたいな感じでお届けしてしまったぜ。
だって出番がなさそうなんだもん! よし、一旦落ち着こう。
眷属召喚もされたが、俺があらかじめ言っておいたからミジュはすぐに眷属を倒しまくり、ナキキもハンマーで攻撃して屠ったり、逃げ回ったりして集団攻撃を回避していく。
その間の〈サボッテンダー〉の攻撃は結界使いのシュミネが担当するという連携だ。
素晴らしい! 初めての〈サボッテンダー〉戦とはとても思えないぜ。
「『アルフの加護』を!」
「フー!」
結界で攻撃が通らず、余裕を持ってミジュとナキキが眷属を撃破。
そのままボスへと向きなおって攻撃を開始。
「『脛打ち』っすー!」
ガツンッ!
「フゥゥゥゥゥ!?!?」
効いたーーー!!
『脛打ち』って脛じゃなくても結構効くんだ!? 新しい発見である。
あとちょっと痛そう。
怒った〈サボッテンダー〉が両手を挙げて――ナキキに棘発射!
大盾にすっぽり収まって完璧に防御するナキキ!
しっかりヘイトを稼ぐことでより安定したボス戦を繰り広げる!
そして何度か眷属召喚を乗り切ったところでそれは来た。
「トドメ! 『強力クマパンチ』!」
「ガッ、フー…………」
ミジュの強烈なクマパンチが突き刺さり、ついに〈サボッテンダー〉のHPがゼロになる。
膨大なエフェクトに消えていく〈サボッテンダー〉。
そしてその後には〈金箱〉が残されていたのだった。
「あ!?」
「わ!」
「金!」
おお! 実はナキキ、シュミネ、ミジュの3人は〈金箱〉が初めてだったりするらしい。
これは――俺が正しい〈金箱〉の開け方を指導しなくてはなるまい!!




