#1243 上級職ランクアップ! クイナダ編!
クイナダが無事〈エデン〉に加わった後、〈幸猫様〉にご挨拶して〈ギルド申請受付所〉でギルド加入手続きを済ませた俺たちは、そのままクイナダに〈上級転職〉してもらうことにした。――というかした。
「じ、上級職、【大軍一将之真神】に就いてしまった……」
「おう。クイナダ、〈上級転職〉おめでとう!」
「え、ええ? ええぇ~~~…………わぷ!?」
未だ今見たことが信じられないような声を出すクイナダだったが、それも黄緑色のエフェクトに囲まれたことで中断される。あれだ、覚醒の光だな。
「やっぱり出るのね」
「おう。というかSUPが36以上の職業はほぼみんな出るな」
「…………」
おっと、素直に話したらシエラがジトーッと見つめてきました。
ありがとうございます!
覚醒の光は高位職、高の上でSUPが36以上の者に現れるエフェクトだ。
高位職のSUPは高の下で31から32、高の中で33から34、高の上で35から38。(〈上級姫職〉は36、【大聖女】などは37、【救世之勇者】は38。筋肉は中位職なので該当せず)
つまり、覚醒の光とは上級職、高位職の中でも最上位の職業にしか現れない特別な演出なのだ。
ちなみに高位職、高の上でも35になる職業は、下級職時代が高の中で、〈上級転職〉したときに高の上に上がった職業や、生産系の上級職などが該当する。
生産系は特に戦闘職よりもSUPが低い傾向にあるのだ。
戦闘をしないのだし、そんなにステータスはいらないだろうってことなんだろうな。
「あわわわ!? 何これ!? ひゃ!? 浮いてる!? それになんか、わひゃってなる!?」
「あ、そういえばクイナダは覚醒の光にあまり縁がなかったっけ」
「! クイナダ、落ち着いてそれは覚醒の光と言って、祝福に近いわ。しばらくすると落ち着くから、今はその感覚を楽しみなさい」
「これ祝福なの!? な、なんだかすっごくこそばゆいんだけど!?」
うっかりうっかり。
〈エデン〉ではかなりのメンバーが〈上級転職〉の時に覚醒の光を体験しているので、〈エデン〉では覚醒の光は割と高確率で起こりうると知られていたわけだが、クイナダは〈エデン〉に加入したばかりか、本校に来たばかりの留学生。こちらの常識に疎いんだった。パシャパシャ。
「へ? なにそれ!?」
「これはスクショと言ってな。カメラみたいなものだ」
「ス、スクショ? カメラ?」
「記念撮影だ! クイナダ、ちょっとポーズをとってくれ!」
「え、えええ!?」
「落ち着いてクイナダ。これは記録を残すアイテムよ。未来の自分がこの記録を見て恥ずかしくないポーズを心がけるの」
「ちょっと待って何そのアイテム!? 情報過多! 情報が多すぎるんだよ~!?」
そんなやり取りをしながらスクショを撮りまく――じゃなくて見守っていると、徐々に光が消えていき、演出が収まっていく。
「び、びっくりしたよ~」
覚醒の光が収まり、フラフラと壁に手を突くクイナダ。
「ごめんなさいね。言うのを忘れてたわ。クイナダは留学生だったから、こっちの話にまだ慣れていないのだったわね」
「本校の人たちはみんなこれに慣れているってこと!?」
「…………いえ、慣れているのは〈エデン〉だけよ。安心してね」
「えと……安心ってなんだったっけ?」
どうやら衝撃が強すぎてクイナダの安心が迷子になってしまったようだ。大丈夫、ちゃんと俺たちが捕まえてきてやるからな。入れ替わっているかもしれないが。
「はぁ。なんだか落ち着いたら思い出したよ。極々稀に〈上級転職〉の時に現れる覚醒の光、とんでもない強い職業に就くと現れるっていう」
「そう、それよ」
「なんだ、知ってたんじゃないか」
「いやいやいや!? ちょっと噂で聞いたことがあるくらいの話だよ!? 眉唾だと思ってたんだから!」
「……ちょっとカルチャーショックだわ。本校と分校ってそんなに違うの? 〈エデン〉ほどじゃないにしろ、本校では覚醒の光についてはそこそこ聞くことがあるわよ?」
「え?」
つまり本校だと割と身近な話。分校だと遠い馴染みのない話らしい。
確かに、シエラがカルチャーショックを受けるのもわからんではない。本校では割とありふれているからな覚醒の光って。(※ありふれていません。それは〈エデン〉だけです)
「だいぶ落ち着いたか?」
「えっと、だいぶ?」
「そうか。改めてだが、〈上級転職〉おめでとう。これでクイナダは【大軍一将之真神】だ」
「おめでとうクイナダ」
「あ、ありがとう……?」
お祝いの言葉を贈ったが、お礼を言いつつもどこか戸惑い気味のクイナダ。
うむ、クイナダはこのパターンか。
高位職の発現などを手伝うとたまに見るやつだな。今見たものの現実味がなさ過ぎて未だ心の中では実感できずにいるパターンだ。
そういうときは――自覚させてあげれば良きだ。うむ。
「じゃあ早速【大軍一将之真神】のSP振りをご教授しようじゃないか!」
「え?」
「…………始まったわね。クイナダ、覚悟を決めておきなさい。ゼフィルスがこうなったら。もう何があっても強くなる道以外ないわ」
「強くなる道以外ないってどういうこと!?」
「まず四段階目ツリーだが、このメモのスキルに振っておいてほしい。強いぞ。あ、全部1ずつだぞ? 2振っちゃダメだぞ? それは五段階目ツリーになってからだ」
「何このメモ!? 五段階目ツリーって何!?」
「はぁ、なんだか久しぶりに見た気がするわこの光景」
「もちろん今から説明するぞ! 詳しく、くわ~しくな!」
クイナダが今回就いた【大軍一将之真神】は純粋なアタッカーの職業だ。
【ソルウル】が全体的にパワーアップした感じだが、そのパワーと破壊力は桁違い。
大軍一将と名の付いている通り、リカとは近い位置にいる武将系だ。
立ち回りという観点で見ると、多くのモンスターをなぎ倒しながら無双し敵を討つ一騎当千の活躍と、タイマンで相当強い能力を誇ることからかなりの人気があった職業だった。
眷属モンスターがわんさか出るボス戦で、眷属モンスターをなぎ倒し無双しながらボスにたどり着き討つ動画とかもあって、とてもバズりまくっていたのをよく覚えている。
対人戦では【大軍一将之真神】をここぞという場面で投入したことで、形勢すら逆転してしまえるほどの力を持っているからマジヤベぇ。
端的に言うと、必殺技があるんだ。
それをまともに食らうと一発でアタッカーが退場するレベル。こうして形勢は逆転してしまうというわけだな。さすがは武将だ。恐ろしい。
さらに下級職では斥候技能も持っていたが、武将になってからは直感が冴え渡るようになり、危機に対する察知能力が大変高まっている。そんな職業だ。
しかし、この様子からクイナダはまったく【大軍一将之真神】の能力を理解していない様子。
覚醒の光も忘れていたくらいだから、【ソルウル】になったことも偶然で【大軍一将之真神】になんて就ける訳がないとか思って何も調べていない感じかな?
オーケーオーケー。それなら俺に全て任せておけ。
俺がしっかり教えてやる!
俺以上に職業を知っている人はいないよ?
こうして教育すること2日間、クイナダは【大軍一将之真神】の特性と立ち回り方を、大いに理解したのだった。




