#135 不思議な不思議な〈銀箱〉の出し方。(迷信)
レビューいただきました!
はにぞう様、ありがとうございます。
今後も頑張って投稿していきますので是非楽しんでいってください。
「勝ったわー!」
「勝ったぞー!」
「え、えっと、わーいわーい?」
初の初級上位ダンジョンのボス戦を無事勝利に収め、ラナと俺で勝ち鬨を上げた。それを見てハンナも付いてこようとしてくるのが健気である。
「ほんと、楽しそうね。あなたたちは」
「シエラ様も混ざりますか? お供しますよ?」
「はあ。いつかは一緒にやっていそうで不安だわ」
ため息を吐くシエラと苦笑するエステル。
なんだ、シエラたちは乗らないのか? 勝ち鬨って結構楽しいぞ?
一通り三人ではしゃいだ後、いつもの恒例行事に取りかかる。
「宝箱ね!」
「今回は〈銀箱〉ですね」
「〈銀箱〉が多いわね。今日は銀しか見ていない気がするわ。こんなに出る物なのかしら? 聞いていた話と違うような」
ラナとハンナのテンションがぐぃーんと上がり、シエラがハテナを浮かべて首を傾げた。
そりゃ君、〈幸猫様〉の恩恵に決まっているだろう。
〈木箱〉とかいらない。
そう〈幸猫様〉にお高いお肉と共にお願いしておけば、あら不思議。
こうして〈銀箱〉が手に入るって寸法よ。(そんな事実はありません。迷信です)
「あ、シエラまだHP減ってるじゃない。『回復の祈り』!」
「ラナ殿下、ありがとうございます」
最後の集中攻撃を一身に受けたシエラはHPをこれまでに無いほど大きく減らしていた。それはラナの『願い』でも回復しきれないほどだ。さすが初級上位のボス、だんだんと手強くなってくる。
しかし、『状態異常耐性LV10』のおかげもあってあれだけの毒攻撃を受けたのにもかかわらず毒状態にならずに受けきれたな。もしそこで毒にもなっていればスリップダメージでどうなっていたか分からない。スリップダメージは割合ダメージなので防御力無視なのだ。
いかに中級装備に身を包んでいるとは言っても関係ないので注意しなければならない。
『状態異常耐性』をMAXまで上げて対策しておいて良かったな。
「今回は厳しかったか?」
「さすがに9体に囲まれる実戦は初めてだったもの、少し驚いたわ。油断もしていたし、また練習しなくちゃいけないわね」
数が多いと言えば〈幽霊の洞窟ダンジョン〉の〈デブブ〉の〈チビ〉たちを思い出すが、あの時は遠距離攻撃が主体だった。
遠くから来る攻撃ということで比較的正面から受ける事ができる。避ける事も可能だった。
しかし、〈チミ〉には完全に囲まれていたからなシエラ。あれは囲まれる前にどうにかしなければいけなかった。防御力や耐性に自信があるからと言って油断していた様子だ。
そんなシエラが周回したそうに見つめている。
周回しますか? 〈はい・イエス〉。
まあ、これについてはまた後で決めよう。決めるまでもないかもしれないが。
ハンナが〈銀箱〉の前でずっと俺たちを待っているからな。
「待たせたなハンナ。早速開けるか!」
「うん! 今回は私の番なんだ!」
なるほど、だからそんなに〈銀箱〉に張り付いていたというわけだ。
「初の初級上位ダンジョン、ボスドロップ。何が来るのかな」
アイテムのグレードは初級中位より高いだろうが、それでも初級ダンジョンの宝箱なので中身はたいしたことが無い場合が多い。しかし、中には大当たりという物もある。
今回はどうかな?
ハンナが一度祈りを捧げてから宝箱を掴んだ。
うむ。開ける前に祈る、これ大事。もちろん祈る相手は〈幸猫様〉だ。
「どうか良いアイテムが出ますように」
出ますように!
ハンナに続いて俺も心の中で祈った。
そしてハンナが〈銀箱〉を開ける。
そっと中からとりだしたのは、黒と紫を基調とした片手用の杖だった。
ほーう。なるほど。ハンナのこの魔女風装備に引かれたのだろうか? 確かにハンナが持つとよく似合いそうだ。性能はそんなでもないが。でもハズレというわけではない。十分使えるものだ。
「ゼフィルス君、杖だよ! それでこれは何かな?」
「ああ、それはな、……いや、そういえば道中に〈メドラ〉ゲットしてただろ? アレ使ってみ?」
いつもの通りハンナが首を傾げて俺を見上げてくる。その動作は大変可愛らしいのでなんでも教えてあげたくなるのだが、今回は少し趣向を凝らして道中発見した『鑑定』用アイテムを使ってみる事にした。
「あ、それ良いね!」
だろ? 新しいアイテムを使うのってワクワクするよな。
それがアイテム系の専門家のハンナならより理解出来るだろう。少しはしゃぎ気味だ。
早速〈メドラ〉を準備して『鑑定』する。やり方は単純にルーペで覗き込めば良い。
そうすれば画面上を見るみたいに何かしらの表示やコメントが見られるはずだ。
その様子を〈姫職〉組にもしっかり見せてやる。あとでやらせてみよう。
これは今後、俺がいない時や別のパーティを組んだ時に役立つからな。何事も経験しておいた方が良い。
「あ、見えたかも。〈幼い魔女の杖〉?」
そう、ハンナが引き当てたのは〈幼い魔女の杖:攻撃力2。魔法力17。『ダークシュートLV6』〉。
〈フレムロッド〉の闇属性版で同じ系統の武器だが、〈フレムロッド〉は初級下位のレアドロップ、〈幼い魔女の杖〉は初級上位のレアドロップなためかなり違いがあるな。
「むむむ? ゼフィルス君、これって当たりなの?」
「当たりかハズレかで言うなら当たりだな。闇属性攻撃は貴重だぞ? それこそ本職の魔法使いじゃないと使う事の少ない属性だしな」
〈ダン活〉では光属性は結構な数の職業が取れるのに対し、闇属性を取れる職業というのは少なかった。
エステルの【姫騎士】が使う『プレシャススラスト』は光属性だが、闇属性のスラスト系は覚えないしな。
そういう意味では価値が高いし、割と貴重なドロップに違いは無い。
ただ、ハンナは〈マナライトの杖:攻撃力7。魔法力28〉があるため出番が無いのが辛いところだな。さすが〈金箱〉の両手杖で貴重な『空きスロット』を持つ激レアドロップ。たとえ格上初級上位のレアドロップ相手でも引けをとらない。
「ええ。じゃあこれは〈空間収納鞄〉行き?」
「いや、何言ってんだハンナ。もっと良い使い道があるだろう?」
まあ普通なら倉庫行きか売却行きになるだろうが、先ほども言ったとおりハンナが装備している武器は『空きスロット』があるだろう。それに貴重な闇属性魔法が使えるようになるんだから躊躇なんてない。
「戻ったらまた『能玉化』を頼むとしような。そうすれば、換装してハンナも闇属性魔法が使えるようになるぞ」




