#1234 〈世界の熊〉からギルドバトル打診!? 了承!!
ギルド〈世界の熊〉が〈決闘戦〉をやらないかと打診してきた。
もちろん俺はOKした。しないはずがないな!
これはミジュ関連の話なのだろうか?
ちなみに〈新緑の里〉は〈エデン〉に〈精霊園〉があることを知っているので「〈エデン〉ならば安心です」と素直に引き下がり、〈ハンマーバトルロイヤル〉は〈学園春風対戦〉で〈エデン〉に呆気なく蹂躙されたことがあったためか、アディ以外が壊れたブリキのようにコクコクと頷いて了解を示していた。アディが割と本気で残念がっていたのが印象的だった。
結局〈新緑の里〉は方向転換して〈ハンマーバトルロイヤル〉の防衛実績明けのランク戦を申請し、それが通ったことで、お互いのギルドはそっちに集中することになったようだ。
防衛実績明け、最初の試合はAランク戦!?
これは盛り上がることだろう。
それを受けてアディがとても長い溜め息を吐いていたのが印象的だった。
そして俺はというと、〈決闘戦〉をOKした勢いでそのまま〈世界の熊〉さんのギルドにお邪魔していた。
「いやぁ、〈決闘戦〉を打診してくれてありがとう! 改めて、俺が〈エデン〉のギルドマスターゼフィルスだ。仲良くしような!」
「いや待て、〈決闘戦〉を打診して仲良くするのは違うんじゃないか?」
そう手で待ったのポーズをしながら口にするのは、学生服の上からなぜか熊の毛皮、〈歴戦の熊鎧〉という装備品を身に着けている男子。
〈世界の熊〉さんギルドのギルドマスター、ガロウザス先輩だった。
脇には俺と同学年の中でも大男で知られるナイヴス君が立っている。2人とも「熊人」の男子だ。
「おっと、そうだった。いやぁすまない。ちょっとテンション上がってしまって」
「なぜ、〈決闘戦〉を打診されてテンションが上がるのだ?」
「それはもう語るも涙の物語でな、〈エデン〉はこうも〈決闘戦〉ウェルカムなのに全然挑んでくれるギルドがいないんだよ」
「全然涙ながらに話す話ではないな。というか、さもありなんとしか言えん」
見た目の割に意外にもノリの良いガロウザス先輩。ナイヴス君はとても複雑そうにそれを見ているが、俺はガロウザス先輩と仲良くなれそうだと思った。
「ガロウザス先輩、そろそろ本題に入られては?」
「ん。こほん。そうだな」
話の主導権を握られたとでも思ったのか、ナイヴス君からの忠告で咳払いして襟を正すガロウザス先輩。
襟よりも正すものがありそうな見た目だ。突っ込んでもいいのかな? ということで、聞いてみた。
「その〈歴戦の熊鎧〉を取らないのは何かのこだわりなのか?」
「! これが分かるか! ふふ、これはな、我らが熊人のみで構成されるギルドの象徴よ。熊人男子は耳が小さく体格が大きいため、下から見上げると耳を確かめることが出来ず、よく人間と間違われる。しかし、これを着ていれば間違うことはないだろう?」
「確かに!」
ガロウザス先輩は熊人に誇りを持っているらしかった。
〈世界の熊〉という「熊人」専門ギルドを作ってしまうくらいだしな。
〈獣王ガルタイガ〉や〈新緑の里〉のように特殊な環境のギルドというわけではないのに、わざわざ熊人のみで固めているのにはガロウザス先輩なりの誇りがあったわけだ。
なるほど~。
「…………」
そこからはナイヴス君が何か言いたげにこっちへ視線を向けるのに気が付かず、ガロウザス先輩とちょっと盛り上がった。
「こほん。だいぶ話が逸れてしまったな」
「いやぁ、結構楽しかったぜ」
「ふ、俺もだ。しかし、いつまでも世間話に興じてばかりいられるほど俺もゼフィルスもヒマではないだろう? そろそろ本題に入るとしよう」
「だな」
ガロウザス先輩とかなりうち解けてしまった。
しかし、ようやく本題に入る。
えーっと、なんの話だっけ?
正面を見れば話を切り出そうとしたガロウザス先輩も腕を組んで目を閉じて何かを思い出そうという仕草をしていた。
「〈決闘戦〉の話です」
「「それだ!」」
ナイヴス君の言葉にスッキリ。
うっかりテンションが上がった理由を忘れるところだった。
「そういえば〈決闘戦〉ってやっぱりミジュが欲しかったからなのか?」
俺は単刀直入に聞いてみた。
ミジュに熱心な勧誘を掛けていたが、別のギルドへの加入を決めてしまった。というわけでミジュを賭けて決闘戦をしよう。そんな流れもありうるかと思ったのだが、ガロウザス先輩と話した限りそんなことをしようとする人ではないと分かる。
だが、一応聞いてみる。
「ミジュ殿を勧誘していたのは事実だ。彼女の職業は大変珍しく、我ら〈世界の熊〉にも在籍していなかった。ミジュ殿には俺たちに足りない部分を補ってほしかったのさ」
「おや? その様子ではもう解決はしたと?」
「ああ。今年はとても豊作でな。運命の日に実に4人の【熊掌者】が現れたのだ。ミジュ殿を〈世界の熊〉に勧誘できなかったのは残念だが、他の4名に関しては〈世界の熊〉に加入することを決めてくれてな」
なるほど。ミジュは入学式の日に【熊掌者】に就いたため、同じ職業に就いた子たちの中では一番早かったのだ。故に勧誘が集中した様子だった。
しかし、すでに【熊掌者】を4人も確保していたとは驚きだ。確かに、それだけ仲間にいればミジュにこだわる必要もないだろう。
「じゃあ〈決闘戦〉を打診してきたのは」
「単純に〈エデン〉と手合わせしてみたかったからだ。俺たち〈世界の熊〉はちょっと特殊なギルドでな。〈カオスアビス〉との関係を知っているか?」
「ああ。そのことについては聞いたことがある」
元々〈カオスアビス〉と〈世界の熊〉は1つのギルドだったが、加入希望者が増えすぎたため2つに分けたという話だ。
そこから〈カオスアビス〉は順調に出世してAランクギルドになるが、〈世界の熊〉は幾度も躓き、かなり出遅れて先月ようやくAランクギルドにたどり着いた。割と知られている話だな。
「12月の〈学園出世大戦〉では大きなチャンスだったはずが、〈サクセスブレーン〉に足を掬われて敗北した。あの時は熊騎兵をしっかり揃えていたし、練度も高かった。かなりの仕上がりだと自負していたが、結果はあの通りだ。あれには堪えたぜ。それで、俺たちにはまだまだギルドバトルの経験が足りていないのだと思い知ったのだ」
なるほど。話が見えてきたな。
なぜ今回の〈決闘戦〉が挑むではなく打診だったのか。
「つまり、ギルドバトルの経験を積みたいという話か?」
〈世界の熊〉は〈カオスアビス〉に追いつくために切磋琢磨している、上昇志向の高いギルドであるとも知られている。つまり〈エデン〉に〈決闘戦〉を打診してきたのはそういう理由だったということだ。
「ああ。この前の〈学園春風大戦〉は――正直温かった。〈学園出世大戦〉で上位のBランクギルドが軒並みAランクに昇格した関係だろう。残ったBランクギルドはどれも色々足りていないギルドばかり。半分はCランクギルドという実力だった。あれでは勝っても得られるものは少ない。むしろ自分たちの成長もあまり感じ取れなかった」
〈学園春風大戦〉ではそもそも最上級生が卒業してしまい、各ギルドの戦力がガタ落ちしていた。
そして〈世界の熊〉は去年まで2年生中心のギルドでほとんど戦力は低下していなかったという。
Bランクギルドに残ったギルドはすでに〈世界の熊〉の敵では無く、〈学園春風大戦〉〈拠点落とし〉では実に8つのギルドを陥落させて〈世界の熊〉が優勝を飾っていた。
「つまり?」
「ああ。俺たちに本当にAランク並の実力があるのか、それを確かめたい。〈エデン〉と戦い、抗うことができたならば、俺たちは自分の成長を認められると考えた。さらにギルドメンバーの気を引き締め、大きな経験も得られて一石で三鳥を得る策だ」
〈世界の熊〉は〈学園出世大戦〉の時、〈サクセスブレーン〉によって戦うこと無く罠によってほぼ壊滅させられたと聞く。要は自分たちの実力に自信が無いというか疑心を抱いているようだった。
また、〈学園春風大戦〉で圧勝しすぎたせいでギルドの気が緩んでいるのであろう。目標だったAランクになれたことも起因しているかもしれない。そこで圧倒的格上と戦うことでギルドメンバーの気を引き締め直し、メンバーの向上心を煽るのも狙いの様子だ。
なるほど。それが〈決闘戦〉を打診してきた理由か。
ミジュの報告と重なったのは、今まで〈エデン〉と接点が無かった故に、この機会が切っ掛けになったかららしかった。
そんな切っ掛けなんか気にしなくてもいつでも来ていいんだよ?
「よく分かった。〈エデン〉としてはその〈決闘戦〉、受けさせてもらおう」
「おお! 助かるぜ!」
「ついては何を賭けるか決めようか。〈世界の熊〉は何か欲しいものはあるのか?」
「いや、そちらについてはあまりこだわりは無い。俺たちの目的はギルドバトルをした時点で達成されているからな。賭けるものについてはレートさえ釣り合えばなんでもいいと考えている。そして俺たちが出せるのはこれくらいしかないのだが、どうだろうか?」
そう言ってガロウザス先輩が出したのは、大量のレシピ。
「〈エデン〉は多くの生産職を抱え、さらには援助もしていると聞いている。色々有用なものを揃えてきたつもりだ」




