#1214 結氷で釣り! 吹雪で滑ってあ~れ~なルル!?
〈転ばない火の杖〉の出番は、思ったより少なかった。
だって〈エデン〉には〈イブキ〉があるんだもん。
〈イブキ〉にはスキル『環境対策モード』がある。
乗っているとパッシブで発動し、周囲にバリアを張って寒さや暑さを調節、外なのに快適空間を作り出してくれるのだ。
そしてちょっと浮いているので――滑らない。
寒さだろうがスリップだろうが〈イブキ〉にはまったく問題なかったのだ。
さすがは〈イブキ〉。
ちなみにSランク戦で使ったロゼッタの〈ブオール〉は現在仕舞われている。あれは上級ダンジョンではなくギルドバトルでこそその真価を発揮する〈戦車〉だからな。
一応言っておくと、ここでも使えるぞ。
〈ブオール〉のスキルは『空間拡張LV10』『快適列車』『悪路整地ブレード』の3つ。『快適列車』は暑さ寒さ環境に対応しており、『悪路整地ブレード』のおかげで滑ることはない。
なお、〈客車〉バージョンになると『悪路整地ブレード』が『客車モード』にスキルが変更される仕様だ。
閑話休題。
まあ、〈イブキ〉があまりに強すぎるとはいえ〈転ばない火の杖〉の出番がまったく無いわけではなかった。
「見て、モンスター発見!」
「殲滅しますか?」
「いや、せっかくだから戦ってみよう」
「じゃあ私が杖を使って上げるわ!」
とまぁこんな感じで、〈35エリア〉の戦闘にも慣れる必要があって杖の出番はそれなりにあった。今後のために戦闘データの収集もしたかったので初めてのモンスターと遭遇したりしたときはなるべく戦ってもらっている。
「おお! ここってもしかして結氷ですか!?」
「だな。上級釣りアイテムがあれば氷をくりぬいて釣りが出来るぞ」
「〈上級釣りセット〉なら持ってまーす!」
また、ここでは『採取』や『伐採』はあまりポイントがないが、『釣り』や『発掘』は結構出番があったりする。とはいえ上級の採集系アイテムが必要だけどな。
〈アークアルカディア〉の釣り担当、【伝説の釣りキング】のタイチが〈島ダン〉の隠し部屋で見つけておいた〈上級釣りセット〉を使い、グリンッと結氷の一部をくりぬいてそこに釣り糸を垂らし始めた。すると、ものの数秒でフィーッシュ!! どう見てもくりぬいた穴を通れないだろうという魚や水草などの資源や素材が大量に手に入った。
「モナ、アンベル」
「はい。ソドガガ、いつでも大丈夫ですよ」
「今日はあたしも手伝ってやんよ。氷の木を伐採するのも楽しいが、数が少ないからね」
「(コク)――『鉱夫の宴』!」
こっちではソドガガのスキルで盛大に氷を『発掘』しまくっていた。
この氷は食材であったり装備の作製に使ったり、アイテム作製に使ったりとなかなか用途が広いのだ。
特に上級の氷爆弾を作るとなるとじゃんじゃん無くなるため、ガンガン採集してほしいと頼んでおいた。
お、向こうも戦闘が終わったみたいだな。
俺の指示無しでも1層の敵なんて楽勝だ。
しかし油断はしない。何しろ〈35エリア〉だからな。
〈31エリア〉で一番ランクが低かった〈ランク4〉の〈島ダン〉は凶悪仕様だった。
なら、ここも当然凶悪仕様である。
「わっぷ! 突然何!?」
「吹雪、ですか?」
「ん、でも〈嵐ダン〉よりはマシ」
「いや、ちょっと待て!」
「すすすす滑るのです~~」
「る、ルルーー!?!?」
なんと突然横殴りの吹雪が発生。
〈嵐ダン〉ほどではないが、それなりに体が持って行かれそうな風だ。
そしてこの風に煽られたルルが、杖の効果範囲の外でツルツル~~と流されていった。
「アイギス、救出に向かってくれ」
「わかりました!」
慌ててアイギスが〈イブキ〉を走らせて無事ルルを回収する。
そう実はここ、突発的に猛吹雪が吹くのだが、その目的は風で氷の上を滑らせることにある。
踏ん張ることが出来ないので滑ってスリップダウンしたり、そのまま滑ってパーティが分断されたりするのだ。しかも視界がちょっと悪いせいで割とこれがクリティカルヒットするのである。
吹雪は1分くらいですぐ止んだ。
さっきまで猛吹雪が来ていたとは思えないほどの落差である。
そんなハプニングもあったりしたが、ルルは無事だった。今後は気をつけないといけない。
まあ〈転ばない火の杖〉の範囲にいれば問題はないので通達しておく。
そろそろ出発しようとみんなで〈イブキ〉へと戻った。すると。
「あ、あのゼフィルスさん。タイチさんはどこですか?」
「……ん? あれ?」
モナの言葉に気が付いた。タイチがいない!?
タイチは1人で釣りをしていると回収し損ねることがある。隠密しているため、風景の一部みたいに溶け込んでしまうのだ。でも大体はモナが気が付くので今の所回収し損ねたことは皆無である。
危ない危ない。結氷の上に1人残して出発するところだったぜ。
そんなわけで吹雪のせいで雪男のオブジェみたいになっているタイチを回収する。
「『夢楽園』はご入り用かしら?」
「やめてあげなさいエリサ」
本当に「寝るなー」の事態になりかねん! まあ冗談だ。
タイチはいつの間にか効果範囲外に出ていたようで〈氷結〉状態になっていただけだったからな。ペちんとひっぱたけば氷は砕けて元通りだ。不思議すぎる光景。
そんな感じでゆっくりと楽しみながら〈氷ダン〉を進んで行く。
1層の通常モンスターは推奨LV10の雑魚ではあるが、5層のフィールドボスは推奨LV15だ。あれ? やっぱり雑魚じゃない?
うん。〈エデン〉にとってはとっても雑魚だった。
10層のボスは推奨LV17で〈パンチマンイエティ〉というパンチグローブを着け、なぜか真っ白な裸体を見せつけるボスだった。良い筋肉をしている。
ちなみに下半身は白い体毛に覆われていたりする。上半身が毛で覆われてないのはなぜだろうか? もしかして剃ったの?
「イッッエーーーイ!!」
「この寒いフィールドでむちゃくちゃ陽キャだな!!」
「イエイ!!」
ちなみに顔面もフサフサの白い体毛で覆われているため表情は分からないが、笑っているのは分かった。
「イエイエイエイエイエイエーーーーーイ!!」
「おっしゃボコるぞ! 遠距離攻撃だ!」
「イエーイ!?」
まあどう見てもボクサーだったので、遠距離攻撃一択だよな!
実際は飛ぶパンチを放ってきたり、氷の大地をパンチで粉砕したりと自分の筋肉は伊達ではないというところを魅せてきたのだが。とはいえ遠距離攻撃に弱いのは変わらないので楽勝だ。
「イ、イエーイ…………」
うむ。消えるときまでにこやかな笑顔(多分)。少し、見習うべきところがあるかもしれないな。
宝箱は〈金箱〉!
なんと〈氷属性〉の手甲武器、〈ブリザードン・ツー〉という装備だった。
スキル『ブリザードンブロー』は中距離攻撃で吹雪のナックルを打っ飛ばす。中距離、遠距離攻撃に乏しい【闘士】系にとって非常に有用な武器だ。
これはラウが装備することになる。とはいえ〈氷ダン〉では『氷属性耐性』持ちのモンスターしかいないので、ここ以外のダンジョンで活躍してほしい。
11層からは吹雪の間隔が少し短くなり10分に1回は猛吹雪が襲ってくるようになった。
とはいえ『環境対策モード』のある〈イブキ〉にはなんの関係もないのでそのまま進み、20層のボスを撃破、21層へと突入した。
そしてそこは、今までのだだっ広い雪の大地とはまったく異なる、氷の建物の中だった。
うむ、迷路っぽくなってきたな!
後書き失礼いたします。
最近ポイントが少し多くもらえるようになってきて、とっても嬉しい作者です。
嬉しいなぁ、でもどうして増えているんだろう? と首を傾げていたら、ランキングがリニューアルされていたんですね。
そして「注目度ランキング」というものが新たに増えていて、なるほど~これに載ったからなのか~と納得し、自分が何位なのかと調べた結果、なんと名前が――ありませんでした。
あれ!? どういうこと!? と調べたら総合累計ランキングの方も「連載中」ランキングと「完結済」ランキングを選べるようになってて、「連載中」の226位に〈ダン活〉の名前がありました。
こっちだったか~。
ですが総合累計ランキングに載れたのはとても嬉しいです。
これも読者さんが〈ダン活〉は面白いと評価をつけてくださったおかげです!
ありがとうございます!
今後も〈ダン活〉をどうか楽しんでいってください!




