#1205 〈エデン店〉の子は1年生トップを独走中。
無事、ノーア、クラリスが〈エデン〉に加入した。
ギルドのみんなに挨拶しつつ、スラリポマラソンでLV6まで上げた後、ギルド申請受付所で登録し、初心者ダンジョンへと送り出す。
さーてそうなると、次の問題に取りかからないとな。
「カグヤ」
「あ、ゼフィルス先輩! どうかした?」
「実は新しい加入者が増えてきているんだが、ヒーラーが足りなくてな。カグヤが空いていれば5人パーティを組んでもらいたい」
訪ねたのは【巫女狐】のカグヤだ。
新しく加入した中でカグヤは唯一のヒーラー。
アリスが【雷子姫】アタッカー。
キキョウが【神社の守護者】タンク。
ノーアが【革命姫】アタッカー。
クラリスが【剣姫】アタッカー。
なので、ここにヒーラーのカグヤを入れるとバランスが良い、と思ったのだが。
「あ~。実は今はヴァン君とサーシャさんとパーティを組んで初級ダンジョンに行こうって決まったところなんだよ~」
「ありゃ、間が悪かったか。まあすでにパーティを組んでいるのならそっちを優先してくれ」
ヴァンは【賢国守】タンク。
サーシャは【氷姫】アタッカー。
なのでカグヤを入れるとバランスの良いパーティだ。
ここからヒーラーを引き抜くわけにはいかない。
やっぱりヒーラーが不足気味なんだよなぁ。
そう思っていると、カグヤから提案をもらった。
「ヒーラーが足りてないの? ならシュミネちゃんたちを入れるのはどうかな?」
シュミネとは〈エデン店〉で売り子をしてくれていたカグヤの同期でエルフの子だ。本名はハイシュミネ。みんなシュミネと愛称で呼んでいる。
〈エデン〉にはシェリアが持って来た〈精霊園〉があるので、お店で働いても苦にならない、貴重な職場だと喜んでいた子だ。
シュミネが就いたのは【アルフの守り手】。
【アルフの守り手】はがっつりヒーラーだ。精霊を使った回復と結界を得意としている。
「そうだ、シュミネが居たな。固定パーティとかは組んでないのか? というか連絡取れるのか?」
「まっかせてよ! 固定パーティっていうか、今はシュミネちゃんとナキキとミジュの3人でいろんなことして修業を楽しんでいるみたいだよ」
今年は〈エデン店〉で働いていた10人の内、4人が入学した。
だが俺たちも忙しくなってしまい連絡が取れずにいたのだが、カグヤは〈エデン店〉の同期。バッチリ連絡がつくとのことだ。
ということでお願いしておく。もちろんシュミネだけじゃなく他の2人についてもだ。
「ちなみにだけど、3人ともパーティを組んでスラリポマラソンでLV6までレベルを上げて、もう初級下位ダンジョンに潜っているみたいだよ」
「マジで!? 早いなぁ」
「というか1年生のトップを独走中だね!」
カグヤたち売り子ちゃんたちは無事に目的の職業にも就かせてあげられたし、育成論メモも渡してある。さらに育成論の基礎知識からスラリポマラソンまで教えてあるので心配はしていなかったが、シュミネたち3人は普通にすくすく成長中のようだ。
まだ学園では覚職した新入生も少なければ、LV5に到達している新入生なんてほとんどいないため、スラリポマラソンでレベルを上げた3人はなんと1年生の中でもトップの速さでダンジョンを攻略しているらしい。
さすがは〈エデン店〉の子だな!!
既にいくつかのギルドから熱心に誘われているとのことだ。これは急がなければなるまい。
とりあえず、カグヤに頼めたしヒーラーの件はこれで良し。
シュミネたちが来てくれるなら、ノーアたちが初心者ダンジョンを卒業する頃には初級ダンジョンで一緒にパーティが組めるだろう。
人数的にもこれで10人だ。2パーティ分。良い数字だな。
じゃあ、早速シエラたちに相談しにいくか。
◇
カグヤと別れてやって来たのはシエラのところ。
ちょうどセレスタンもギルドハウスに居たため3人を入れることについて相談に乗ってもらった。
「よろしいかと」
「あの子たちはもう身内も同然だもの、もちろん構わないわよ」
するとあっさり許可が出た。もちろん想定内だ。
〈エデン〉の枠はSランクギルドになって17枠あり、そのうちすでに7枠が埋まっている。
残りは10枠。そのうち3枠を〈エデン店〉の子たちにすることにはなんの問題もないようだな。
「懸念するとしたら来年、かしら。多分、来年学園に入学する子の枠はないわよね?」
「そうなるでしょうね」
問題がないというのは早とちりだった。シエラ的には、現在も〈エデン店〉に務めてくれている、来年学園に入学する6人の子のことも考えているようだ。
確かに、シュミネたちを入れれば〈エデン〉は残りは7枠に減る、1年後、その枠が無くなっていたとしてもまったく驚きはないだろう。むしろ埋まっているだろうな。(確信)
「今年の子たちは全員加入させたのにそれでは、来年の子たちが可哀想ね……」
「来年の子たちは〈アークアルカディア〉に入れるしかないでしょう。枠はまだ8枠あります。〈エデン〉に合流することは出来ませんが、我々の卒業後に昇格してもらえれば良いかと」
「俺たちがSランクギルドに君臨し続けることが前提だが、全員を入れるにはそれも想定しておかないとな。……俺たちの卒業後か」
〈アークアルカディア〉はギルドバトルに参加しないメンバーで統一してあるし、万が一〈エデン〉がランク戦に負けた時用の救済場所でもあるんだが、セレスタン的には「負けなければいいのでは?」という意見らしい。うむ。一理ある。
しかし、卒業か。もう卒業のことを考えるなんてなぁ。
〈ダン活〉では主人公が学園を卒業した時点でエンディングだった。
だから卒業後のことなんてあまり考えてこなかったが、ここはリアル。
俺たちが卒業した後もこの世界は続くんだ。だからその準備もしておかなければならない。
〈エデン〉は残り7枠。〈アークアルカディア〉は8枠。
来年には、この枠がいっぱいになっていることもあるのかもしれないな。
そんなことをしみじみ思いながらさらなる相談をしていると、部屋にノックの音が響いた。
「アイギスです。ゼフィルスさんは居ますか?」
「アイギス? 入ってくれ」
「失礼します。あ、良かった。ゼフィルスさん居ました」
少し慌てた感じに扉を開いたのはアイギスだった。珍しい光景だ。
何か問題でもあったのかもしれない。そう、俺とシエラ、セレスタンはアイギスに注目した。
「あ、お話中でしたか?」
「いいや、丁度終わったところだ。それよりもアイギスがそんなに慌ててくるなんて珍しいな、どうしたんだ?」
そう聞くと、アイギスも自分が慌てていたのを自覚したのか、息を少し整えてから俺たちに言った。
「実は、学園に来るのが遅れていた妹がようやく到着したのです。ゼフィルスさん、どうか職業の面倒を見てもらえないでしょうか?」
〈エデン〉の残り枠がまた1つ減る気がした。
そしておそらく、それは気のせいじゃないのだろう。
「すぐに行こう!」
俺は元気に返事した。




