#1203 お早いご到着! ノーアとクラリスが即加入!?
ギルドに戻ると、早速〈最強育成論メモ〉を見てからぷるぷるしていたキキョウにはSPを振ってもらい、その後に行なうのはもちろんスラリポマラソンだ。
これでLV6まで上げるのが〈エデン〉流。
「キキョウは盾をベースに杖、もしくは本を装備するのが本来の姿だが、今回はこれだな」
「メイス、でしょうか?」
「うん! スライムを叩くにはメイスが一番なんです! 私が使っていた中でも使いやすいものを選んでおきました」
「あ、ありがとうございますハンナ様!」
そう言って快くメイちゃん二世を貸すのはハンナである。
スラリポマラソンの超越者であるハンナのお勧めだ。キキョウはおっかなびっくりしながらメイちゃんを受け取った。
後はハンナに任せれば良きに計らってくれるだろう。
その間に俺はクイナダを――。
「ゼフィルスさん、ちょっといいでしょうか? お客様が来ておりますの」
「俺にか?」
これからハンナ主催スラリポマラソンが始まろうとするとき、話しかけてきたのはリーナだった。しかも俺にお客だという。
珍しい。俺にお客が来るなんてことはあまり無いし、あったとしても大体はセレスタンが対応してしまうから、俺の出番は無いんだ。昨日はいっぱいあったけど。
しかも公爵の姫であるリーナが俺を呼びに来るということは、そのお客さんは相当な人物であると予想出来る。
誰だろう? 候補がいっぱいいすぎて分からない。
クイナダのことは一旦置いておき、リーナに付いていく。
「こちらですわ。――ゼフィルスさんをお連れしましたわ」
「どうぞヘカテリーナ様」
リーナがある部屋の扉をノックするとすかさず中から扉が開いてセレスタンが一礼する。
さすがは執事。対応力が高い。
リーナが当然の様に扉の中に入っていくのに付いていくと、中には学園長のお孫さんであるノーアとその従者のクラリスが待っていた。
来るの早いなっ!
内心驚いていると2人とも立ち上がり、一礼する。
「ゼフィルス様! 昨日ぶりですわね!」
「こんにちはゼフィルス様」
「ノーアにクラリス。いらっしゃい」
リーナから道中聞いておいたとおり、お客様とはノーアとクラリスのことだった。
ということはその目的も見えてくる。もう説得できたのか。
少しばかり世間話をした後、ノーアが本題に入った。
「それで昨日の話を学園長にもご相談しましたの。そして決断しましたわ! 私、やっぱり後衛の【姫軍師】は合わないと思うんですの! ゼフィルス様、どうか私を【革命姫】に就かせてはもらえないでしょうか?」
出たな「公爵」カテゴリーのもう1つの〈姫職〉――【革命姫】!
よく学園長に就くことを飲ませたな!
「学園長が良しとするなら、俺に否はないぞ!」
「いいえ、学園長は反対されました」
「あれ?」
俺がキリッとしてうむと頷いたところでクラリスが横から妙なことを呟いた。
「ですがお嬢様が押し切りました」
押し切っちゃったの!?
「ほほほ。心配ご無用ですわ。【姫軍師】は今後も生まれてきますもの、なら私は【革命姫】に就いて前線にて活躍しても問題ないはずですの。適材適所ですわ!」
「はぁ。お嬢様、適材適所でしたら侯爵家の侍の方が」
「そういうことではないのですわクラリス! というか、わかっていますわよね?」
「ええ。お嬢様がおとなしく後衛で指示だししている姿なんて、想像も出来ません」
「ちょっとは想像してくれても良いんですのよ! 私も想像できませんけど」
どうやら学園長の懸念は的中したようだ。
性格が完全に前衛向きなんだよなぁ。
そして「公爵」カテゴリーの中でも、【大尉】などの上位互換であり前衛の姫職であるのが――この【革命姫】だ。
【革命姫】は前衛物理アタッカーの装備ならなんでも使用できるマルチウェポンタイプの職業で、二刀流はもちろん、右手に剣を、左手に槍を持たせて両方のスキルを使わせることも可能。
左手装備の能力が落ちないスキルも完備し、むしろ両手にそれぞれウェポンを持っていた方が能力が上がるスキルまで持っている。
単純にして明解。強力なダメージディーラー系の職業だ。
2人の言い合いを傍観するのも楽しいが、そろそろ話を進めよう。
「ノーア、本当に【革命姫】で良いのか?」
「もちろんですわ。お爺さまのことはお気になさらず。私は自分の長所を伸ばすのですわ!」
「よっ、それでこそお嬢様です」
「ババン!」とテロップが背景に出そうな勢いで立ち上がるノーアと、それに花びらでもパッパと撒いてそうなクラリス。
うむ。良い主従コンビだ。
「クラリスはどうする?」
「私はお嬢様の従者兼護衛です。当初の予定通り【剣姫】を所望します」
「ということは、2人とも前衛アタッカーか」
うーむ、やはりアタッカーを希望する人は多い。
できればもう少しヒーラーが欲しいところなんだが。
クラリスには今から【人魚姫】に……はちょっと難しいかな? 【人魚姫】は護衛というより援護向けの職業だし。
それに決意も固い様子だ。
俺は一度頷いてから2人の意思に応える。
「オーケーだ。〈エデン〉には2人を【革命姫】と【剣姫】に就かせる用意がある! だがそれにはもちろん条件があるぞ? 〈エデン〉への加入だ」
「無論ですわ! ゼフィルス様と同じギルドに加入出来るなんて、夢のようですの」
「お嬢様を守り、ある程度制御するのが私の役目ですので、もちろん構いません」
俺の言葉にノーアがキラキラした視線のまま手を組んで空を見上げ、クラリスがクールにそう告げる。
クラリス、今お嬢様を制御するって言わなかった? いや、きっと気のせいだろう。
セレスタンを見れば1つ頷いていた。
リーナは、何やら複雑な表情だ。【姫軍師】という同系統の職業が被らなくて良かったという安堵を含む色々な葛藤が見えた。
だが、俺の視線に気が付けばリーナも1つ頷く。
ふむ。2人は合格だということだろう。
決まりだな。
「ノーア、クラリス。ようこそ〈エデン〉へ、俺たちは2人を歓迎する! 早速職業の発現条件を満たしに行こうか!」
「! はい! ゼフィルス様、よろしくお願いいたしますわ!」
「お嬢様共々お世話になります」
こうしてノーアとクラリスも無事、〈エデン〉に加わることになる。
まずは覚職からだな。




