#1202 キキョウ、早速【神社の守護者】に覚職!
留学生の反応を楽しんでいたらアイギス、フィナ、エリサにシエラも付き添ってドナドナされた。
いったいなぜ!?
「ゼフィルスの話が聞こえたわ」
「い、いいや、それは空耳だ」
「そんなわけないでしょ」
くふぅ、なんとか話を逸らそうとしたが、ダメだった。
俺はシエラからお説教を食らってしまった。
なお、その間クイナダはハンナがギルドを案内していたらしい。
聞いた話によれば、ハンナの正体を知ったクイナダは、ちょっとおっかなびっくりだったらしい。
み、見たかった……。
お説教が終わって見に行ったときはすでにハンナと普通に接していたのだから無念極まる。残念。
ふう、一息吐くか。何か飲み物でも飲もう。
「ゼフィルス先輩、お茶飲みますか?」
「お、用意してくれたのかキキョウ? ありがたく貰うよ」
すると1年生のキキョウが冷たいお茶を持って来てくれた。
なんてありがたい!
一杯飲んで、一息入れる。うん。落ち着くなぁ。
俺がお茶を飲み終えたのを見計らっていたのか、その場でお盆を抱えて立っていたキキョウから報告があった。
「本日アリーナの授業を受けてきました。ゼフィルス先輩に言われていた城を守りながら攻撃を100回受けるも、達成してきました」
「マジで! なら早速覚職しに行こう!」
「はい! よろしくお願いいたします!」
それは朗報。
キキョウが目指す【神社の守護者】は〈城を庇って100回攻撃を受ける〉が条件に入っていたため、アリーナに入れない間は覚職することができなかった。
しかし、1年生はアリーナに参加出来、モンスターを倒すことができる授業が組まれている。それを利用して本日その条件を達成したのだという。
ならば、その後することは決まっている!
俺はキキョウを連れて早速測定室へと向かうことにした。
「ちょっとこれからキキョウを覚職させてくる! 後はよろしく頼むぜ」
「また、例のあれね」
シエラにそう言うとほんの少しジト目で見られた。ちょっとやったぜ!
ふっふっふ、すでに俺がみんなを目的の職業に就かせているのは〈エデン〉では常識。みんないつものことみたいな目で見ていた。
しかし、その中にも新鮮な反応をする者もいて。
「え、ハンナちゃん、ゼフィルスが言っているのはどういう意味なの?」
「あ~、あれはゼフィルス君流です。〈エデン〉がここまで強くなったのはあれが大部分を占めているんですよ」
「そんなに!? 〈エデン〉の秘術ってこと!?」
もちろん留学生のクイナダのことだ。
おっと、ここにはクイナダも居たのか。そうかそうか。なるほど。
「〈エデン〉の秘術……。〈エデン〉がここまで強くなった理由……」
クイナダがとても気になるという視線でこちらを見てきます。
どうしますか? そんなのもちろん――ふはは!
「キキョウ、ちょっと相談なんだが、このクイナダも見学させていいだろうか?」
「え!? 見てもいいの!?」
「私は別に構いませんよ。ジョブ一覧は見られても構いませんし」
俺の相談にクイナダが勢いよく反応し、キキョウはどうってことないように頷いた。
まあ、もうほぼ条件は達成しているようなものだからな。後は覚職するだけだ。見られて困るものは無かったりする。
故にちょっと〈エデン〉のやり方を見せて〈エデン〉に染まってもらおうという魂胆だ。逃がさないぜ?
留学生は転入生ではないため在学は期間限定。しかし、せっかくゲームには無かった留学生という貴重な人材をギルドに入れないなんてあり得るのか? いいや、あり得ない。
留学生という未知。俺、とても気になります!
そんなわけで留学生は最初から〈エデン〉に迎えるつもりだった。
クイナダは合格だろう! ハンナがお世話になったみたいなので性格にも問題は無いはずだ! この貴重な反応、逃せない。
ちなみに留学生のギルド加入は、特例で人数の上限を多少超えても良いことになっている。Sランクギルドでは50人までが上限だが、もし限界までフルでメンバーが入っていてもそれを多少超えて加入させるのはOKとされているのだ。
これも留学制度の特典の1つだな。ギルドに加入して色々と〈本校〉のことを学んでほしいという配慮だ。
また、ギルドへ加入させる留学生に人数制限は無いが、ギルド人数の上限を超えることができるのは5人までと決まっている。ここ重要。
「えっと、それってもしかして遠回しな〈エデン〉の勧誘!?」
「もしかしなくてもその通りだ。クイナダさえよければ〈エデン〉に加入してはどうだ? もちろん合わなければ脱退すれば良いんだし」
もちろん脱退なんてさせるつもりはないが。
「え、えええ!? 〈エデン〉に? なんで私!?」
「ハンナを助けてくれたんだろ? 理由は十分だ」
「えっと、他のみんなもそれでいいの?」
「私は構わないわ。見たところ大丈夫みたいだし」
「大丈夫みたい?」
シエラの言葉にハテナマークを浮かべるクイナダだが、なぜか〈エデン〉の女子たちはそれに頷いていた。
もちろん合格という意味だ。これは〈エデン〉でのみ伝わる事情である。でも面接とは縁のなかったメンバーまで頷いていたのはなんでだろう? まあいい。
とりあえずみんなも大丈夫と思っているのだから問題無し。話を進める。
「まあ、即答はしなくていいさ。これから測定室に行くから付いて来たければ来てもいいぞ」
「え? うーん」
「一緒に行こうクイナダさん」
「ハンナちゃんがそう言うなら」
俺の言葉に少し悩んだクイナダだったが、そこにハンナがナイスアシスト。
こうして〈エデン〉の秘密を少しだけクイナダは知ってしまうことになった。
見たら引き返せないよ? ふはは!
ついでにアリスがくっついて来たが些細なことだろう。一緒にキキョウが職業に就くところを見に行こう!
俺たちは5人、測定室へと向かった。
「キキョウ~、ファイトだよ~」
「あ、ありがとうアリス」
測定室へと入室したところでアリスが発破を掛ける(?)。
さすがのキキョウも測定室に来ることには緊張の面持ちだった。
クイナダとハンナはそんなキキョウの邪魔をしないよう静かにしているようだ。
自分はあくまでも見学者ということだろう。
なら、いつも通りやらないとな!
「さぁて、条件はすでにほとんど満たしている。後は〈依り代〉カテゴリーを持って〈竜の像〉へ触るだけで現れるだろうぜ。〈依り代〉も用意してきたぞ」
「あ、ありがとうございますゼフィルス先輩」
俺は〈依り代〉カテゴリーが含まれているぬいぐるみを渡す。
【神社の守護者】はタバサ先生と同じく式神が使えるため、〈依り代〉カテゴリーを持つのが条件なのだ。そして〈依り代〉カテゴリーと言えば、その多くはぬいぐるみである。
小さいもので十分だったので俺が用意したのは小鳥タイプだった。
実はこれ、ランク4〈島ダン〉でドロップしたぬいぐるみである。非常に強力な効果を持っているぞ。今は内緒だけど。
それを受け取るキキョウを見てクイナダがポカンと口を開けていたがスルーする。もしかしてこのぬいぐるみのこと知っていたのかもしれないな。
ぬいぐるみに目をキラキラさせるアリスとは反応が違うんだぜ。
ぬいぐるみを片手に持ってお礼を言うと、キキョウは振り向いて〈竜の像〉の前に立つ。
「ふー」
多分高まった気持ちを落ち着かせるためだろう。
一度深呼吸したキキョウが〈竜の像〉へタッチする。すると、そこには【神社の守護者】がしっかり現れていた。
視界の端でクイナダの目が見開いたが今は置いておく。
「わ! あった! ありましたよゼフィルス先輩! アリス!」
「良かったなキキョウ。さ、後はタッチするだけだ」
「慎重にね? 焦っちゃだめだよ?」
「う、うん……っ!」
キキョウは緊張した面持ちのまま、しかししっかりとした意思を持って【神社の守護者】にタッチした。
他の一覧がフェードアウトして消え、【神社の守護者】がクローズアップしてキキョウの上に載る。
「キキョウ、おめでとう。これでキキョウも【神社の守護者】だ」
「おめでとうキキョウ」
「先輩、アリス。ありがとうございます。これでアリスを守ることが出来ます! ―――アリス、アリスのことは私がしっかり守ってあげるからね」
そういえばキキョウがタンク系の【神社の守護者】に就きたかったのはアリスを守りたかったからって言ってたっけ?
ギルドバトルでは城を守ったりもできる職業ではあるものの、ダンジョンではかばう系が頼りになるタンク職でもある。
成長したときが楽しみだな。
その後、キキョウに最強育成論のメモを渡す。
ここまでが〈エデン〉だ。
「え、ハンナちゃん、あのメモ何?」
「あれは最強育成論メモですね」
「最強育成論メモってなに!?」
後ろでついに我慢できなくなったクイナダがハンナに小さな声で尋ねては、小さな声で驚愕するなど器用なことをしていた。
うん、やっぱり俺が見込んだとおりクイナダはリアクション凄く良いわぁ。
こりゃ絶対〈エデン〉に入ってもらわないとな。
俺はキキョウを祝いつつ、新たなターゲットをロックオンした。
後書き失礼いたします。お知らせ!
本日11時、ついに大望のコミック第11話が投稿されるらしいです!
イエス〈幸猫様〉初登場バンザイ!!
これにて小説第1巻分のストーリーが完結です!
是非読んでみてください!
TOブックス コロナコミックス 〈ダン活〉で検索!
よろしくお願いします!
クイナダ「(ぬ、ぬいぐるみ? 〈エデン〉の秘技はぬいぐるみだった?)」
また〈エデン〉=ぬいぐるみが凄いギルドと勘違いした人が増えてしまいました。
ゼフィルスは相変らず気が付きません。




