#1197 待望の男子登場! 伯爵家の男子が仲間入り!?
新しく「伯爵」のサーシャが加わり、ギルド受付へ向かうシャロンを見送ると、入れ替わりで今度はメルトが個室に入ってきた。
「ゼフィルス、良いか?」
「おう、丁度終わったとこだ」
「それは運が良かったな。実は頼みがあって来た。この間、入学してきた俺の知り合いを紹介しただろう?」
「もちろん覚えてるぞ! 貴重な男子を忘れるわけがない」
メルトの言葉に純朴という言葉が似合いそうな伯爵男子の姿が思い浮かぶ。
名前をヴァンといい、貴重な〈エデン〉に加入させても大丈夫そうな男子である。
忘れるわけがない!
「それでだが、ヴァンにも〈エデン〉の面接を受けさせてやってはもらえないか? もちろん性格面は俺が保証する」
「もちろんだ!」
もちろんだ! もちろんだともメルト! 待望の男子だ!
むしろ来なければ俺から行こうと思っていたくらいだ!
無論セレスタンチェックも済ませてある。シエラチェックはまだだが、メルトの推薦ならば問題ないだろう。
「前に見てもらったとおり、真面目かつ、女子に免疫の無い今時珍しい初心なやつだ。〈エデン〉に入れても問題はないだろう。当面は俺が面倒を見る」
「それにしてもよくそんな人材がいたな。いや、マジで助かる。実はさっき3人目の女子に加入の許可を出したところでな。〈エデン〉の男女比が開く一方だったんだ」
「今日だけで、もう3人も女子を入れたのか……」
ノーアとクラリスも入れば5人だ……。
マジでそろそろ男子を入れたい所。
「これで〈エデン〉メンバーは36人、内男子が俺、セレスタン、メルト、レグラム、ラウの5人、後はみんな女子だ。できれば男子を何人か入れたいんだが……」
もちろん1人でも入ってくれるだけで色々助かる。
後は〈アークアルカディア〉だな。あそこは12人中、男子はサトルだけだし(モナたちのことはうっかり忘れている)。
「では近くに居るから呼んでくる。悪いが少し待っていてくれ」
「近くまで来てるのか? 分かった。お茶を入れておくな」
さすがメルトだ。手際が良い。
ギルドから出ていったメルトは1分もせずに戻ってきた。
まだお湯も沸いてないぜ。
「ゼフィルス、連れてきたぞ」
「ゼフィルス先輩! おはようございます!」
「おう、おはようヴァン」
「今は午後だけどな」
元気の良いヴァンの挨拶についおはようと返してしまうとメルトから茶々が入った。
まあまあ。メルト的に、ヴァンのこの堅苦しい緊張を解きほぐそうとしたのだろう。
あまり効果は無い様子だが。メルトはその辺結構不器用だからな。
しかし、見れば見るほど素直で純朴そうな姿だ。この見た目で、この口調だからな。
これで女子に免疫が無いとか、いつ誑かされてもおかしくはない。
うちのギルドで囲わないといけないな。
「メルトから〈エデン〉の加入面接に推薦されているんだが、ヴァンも〈エデン〉に加入したいと考えていると思っていいのか?」
「もちろんであります! 名高き〈エデン〉の末席に加えていただけるなら、これ以上の名誉はありません」
「堅い堅い。もう少し柔らかく、肩の力を抜いて、な?」
「は……はっ!」
いやまあ。うん。
いきなりは難しいか。相当厳しく躾けられてきたのだと分かる。
しかし、なんか伯爵というより騎士っぽいな。誰かに仕えることを前提に教育を受けてきたかのようだ。
「ヴァンは伯爵家だが四男でな。歳の離れた兄たちによく仕えていたことでこんな性格になった。しばらくは慣れないだろうが、大目に見てやってほしい。俺からも指導してみる」
そこにメルトの補足が入った。
なるほど? どうやら小さいときから誰かに仕えて働くうちにこんな性格になったということらしい。
なるほど、伯爵は城を守る【城主】系。
城と人という違いはあれど、守ると言う意味では伯爵も騎士も変わらないと。
そういうことなら納得出来る。
「じゃあ早速だが、〈エデン〉加入の面接をさせてもらうな」
「お願いいたします」
一応、男子だ。
色々と聞いておかなければならないことがある。
「ヴァン、恋人はいるか?」
「ぶはっ!?」
もちろん、主に女性関係の話だ。
しかしそれを問われたヴァンは顔を赤くして吹きだした。
「い、いったい何でありますか!?」
「ヴァン、真面目な話だ。〈エデン〉には可愛い女子が多い。というか魅力的な女子しかいない。男女間での問題を起こす者を入れるわけにはいかないんだ」
ここには男子しかいないということもあって、ちょっと口が滑る。
だが、それ故に俺の思いが伝わったのだろう。色々葛藤しているような表情になったヴァンが小さく答えた。
「い、いないであります」
「許嫁とかも?」
「はい……」
「そいつは良かった。もし彼女がいたら〈エデン〉の女子に目がいってしまって刃傷沙汰になりかねないからな」
「あ、いない方が良かったんでありますね」
ヴァンが複雑そうに溜め息を吐く。
「続いての質問だ。女性と一緒に行動したことは? もちろん女子と一緒にダンジョンに潜ることになるが、出来るか?」
それからも女性関係の質問が続く。
ヴァンは女性に初心な所があるためその辺どうなるかわからない。
初心すぎて女子に触ることも触られることもできないとかならともかく、一緒に行動すると緊張するほどだと色々対処が必要だ。
しかし、どうやらヴァンは初心とはいえ日常会話や団体行動に関しては問題無いとのこと。
ただ、男女の雰囲気や話題がダメなだけらしい。
それを聞いて安心した。
「最後に〈エデン〉を希望した動機は?」
「は! 〈エデン〉では最高峰の環境が整っており、自分を成長させるならここ以上のギルドは無いとメルトさんから勧められ、加入を希望したく思ったであります!」
「ほほう~。いいね!」
俺は思わずグーを出す。
もちろん親指を立てる方のグーだ。じゃんけんの方じゃない。
自分の成長に繋がるというところがとても良い。
〈エデン〉に入るにはそういう向上心を持つ者じゃないといけない!
そして男子。
おいおい、これいいな。最高の人材じゃないか!
「じゃあこれが本当の最後の質問だ」
「先ほどから最後の質問ばかりであります」
「はっはっは!」
さらにちょっとしたツッコミまでできるのだ。これは入れるしかないだろう?
ということで、聞いてみた。
「ヴァン。君は自分がなんでも好きな職業に就けるとしたら、なんの職業に就きたい?」
そう、〈エデン〉に加入するというのなら、これを質問せずには終われない。
さて、ヴァンの答えは?
「は、はっ! 自分は【一国一城の主】を目指したいと思っております!」
「ほほほう~?」
なるほどな!
上級職、高の上【一国一城の主】。良いじゃないか~。
男子が到達できる中では最高峰の職業の1つだ。
そうなると、下級職は高の中、【賢国守】か。
オーケーオーケー。もう分かった。任せとけ。
俺が【賢国守】に就かせてやる!
「採用! 良し、行くぞヴァン! 今から条件を満たす! 俺に付いてこい!」
「へ??」
「良かったなヴァン」
〈エデン〉に男子が増えたぞ!
やったぜ!




