#1196 ノリとツッコミは最重要!?【氷姫】サーシャ!
「ゼフィルス君。サーシャをお願いします」
「よろしくお願いしますの。私、〈エデン〉のみなさんのように強くなりたいですの!」
アリスたちが正式に加入した日の午後。
新たな加入希望者が〈エデン〉に来ていた。
シャロンからの紹介でやってきたのは、入学前の勧誘の時に顔を合わせ、【氷姫】に就くためのアドバイスを贈った――「伯爵」カテゴリーのサーシャだった。
相変らずの小柄。
もちろん即で「オーケーオーケー」を出し、早速一室にサーシャとシャロンを招いて面接を開始。
まずはコミュニケーションを取ってみる。
「あまり発育が良くありませんが、〈エデン〉には私より幼い見た目の方が多数いるとのこと、私もそっち方面で頑張りますの!」
「いや、そっち方面もどっち方面もねぇよ!?」
さすがはシャロンの友達というか、サーシャはなかなか良い性格をしている。
なんだかノリがマリー先輩に似ている気がするのだ。
伯爵は盾を持つ職が多い関係上、体格はそれなりに大きい人が多いらしいのだが、サーシャはロリとまではいかないがカルアくらいには小柄だ。まさか逆に自分の小柄な体型を売りにしてくるとは恐るべし。
え? メルト? メルトはいいんだよ。うん。
性格は、他の伯爵メンバーよりサーシャはかなり開放的に感じるな。
男子との距離が近い? その辺、シャロンの紹介という感じがする。
シャロンも男子との距離が近いんだ。
「とはいえ伯爵の人が入ってくれるのは非常に助かる。伯爵のメンバーに弱い人はいないからな!」
「いえいえいえ、シエラさんにメルトさん、それにシャロンと比べられるのは辛いところですのよ?」
「なーに安心してほしい――」
「出た、ゼフィルス君の安心してほしいという名の安心しちゃダメなやつ」
「それはどういうことですのシャロン?」
「こらこらシャロン。茶々を入れるな。そんなことはないだろう? 俺は常に紳士で誠実だ。そして有言実行、故に〈エデン〉のメンバーはみんな強くなった」
「うーん。確かに? 強くなるなら〈エデン〉は最高の環境だよね。ところどころ怪しいところがあるけれど」
「というわけだサーシャ」
「どういうわけですのゼフィルス先輩?」
「もちろん、その身を完全に委ねてもらえれば、俺がむっちゃ強くしてやるよ! ということだ」
「うーん、怪しさの限界突破ですの!」
「だよね~」
こらシャロン、どっちの味方だ君は。
怪しくないよ? ほんとだよ?
「でもねサーシャ、ゼフィルス君に任せれば全部上手く行くのは本当なんだよ。というか〈エデン〉のメンバーって大半がそうだし。というか全員かな? 上級職の〈上級転職〉の時とかほぼ任せちゃうしね。それで上手くいくし」
「本当にどういうことなんですの?」
シャロンの説明に小首を傾げるサーシャがちょっと可愛い。
「うむ、俺に任せてもらえれば君はなんでも好きな力が手に入るだろう。力が欲しいか?」
「え? えっと、欲しい、ですの。って、それ悪魔との契約とかに言われるセリフですの!」
しまった。思わず口が勝手に……!
無意識だったぜ。これでは怪しまれてしまう。
「……〈エデン〉に身を委ねるか~。確かに間違って無いかも?」
「こほん! つまり〈エデン〉に入れば全て上手くいく。ということだな!」
「なんの説明にもなっていませんの!?」
おお、見事なツッコミ!
さっきから思っていたが、サーシャってノリとツッコミが良いな。とても良い。
本当にマリー先輩を相手にしているかのようだ。
ついボケてしまうのはきっとそのせいに違いない。
「安心してほしい。ここに〈上級転職チケット〉も用意してある」
「なんで用意してありますの!? いえ、ほんとになんで用意されていますの!?」
「それはもちろん。サーシャに〈エデン〉へ入ってもらうためだよ!」
「なぜか大歓迎されていますの!? ――シャロン!?」
「あはは~。なんかゼフィルス君、サーシャのこと凄く気に入っちゃったみたいでね。上級職になるまで約束するってことみたいだよ~」
うむ。シャロンの言うとおりだ。サーシャのツッコミは大変心地良い。
これは逃す手はない。まあ半分冗談だけどな。
―――【氷姫】。
サーシャが就いている「伯爵」の〈姫職〉だ。
【氷姫】、欲しい。とても欲しい!
アリスの【雷子姫】に続き、氷属性特化〈姫職〉だ!
氷属性に特化しているだけでその性能は万能。アタッカーからタンク、サポートまでこなせるとても優秀な能力を秘めている。
さらには下級職、高の中である【氷城主】の一部の上位互換まで持っているのだからヤバい。
【氷城主】の場合、地面を凍らせるか、氷の壁を造るくらいしかできないが、【氷姫】は氷のスロープまで造ることができるのだ! これがどういうことか分かるだろうか?
―――氷の坂、相手は滑る(確定)。
「氷の最上位技は地面を凍らせることでも壁を造ることでもない、坂を造ることなのだ!」と〈ダン活〉プレイヤーに刷り込ませたあの【氷姫】がついに仲間になるときがきたのだ。テンション上がるぜ!
滑った相手をそのままスィーと移動させて、待ち構えてパクッと食べるまでがセット。恐ろしい姫さんなんだぜ【氷姫】。
そして俺はこの1週間、サーシャは入れても大丈夫かと根回しして、シエラチェック、セレスタンチェックを入れ問題なし、合格と判定をもらっていたりする。
だからこそシャロンがギルドへ連れてきたというわけだ。
ってシャロンの方を向けばなんだか椅子に横向きに座って背もたれに腕と顔を乗せてくつろいでる! さてはシャロン、後は俺に任せておけば上手く行くと思っているな?
その信用、応えてあげようじゃないか!
「サーシャ。〈エデン〉に加入し、上級職になって共に上級ダンジョンに挑まないか?」
「な、なんて魅力的なお誘いですの。私、とても惹かれてしまいますの」
「(ペラリ)力が欲しいか?」
「〈上級転職チケット〉をペラペラしながら悪魔のセリフを言っていますの!? で、ですが、確かに上級職の確約は魅力的ですの……。〈エデン〉以上のギルドもないですの。うう、私、引き込まれちゃうですの」
「入っちゃいなよサーシャ。入ったら楽になるよ~」
「シャロンからの推薦だしな。話していて問題ないと分かったし、俺は大歓迎だ! 上級職に就くときは俺に任せろ!」
「あ、ゼフィルス君がこう言えば必ず実行するからね。サーシャがうんって言えばいつの間にか学園でもトップクラスの人物になってるから」
「〈エデン〉は恐ろしい所ですの! シャロンがいつの間にかそっちの道に染まっちゃっていましたの!?」
まるで仲の良い友人が悪の道に染まっていたみたいな反応でハンカチを目に当てるサーシャ。さすが、リアクションが良き。
俺はこんな子がギルドに欲しかった!
「さあ、サーシャ。答えを聞かせてくれ」
「うう、よろしくお願いしますの。私を〈エデン〉に入れてくださいですの。精一杯強くなり〈エデン〉のお役に立ちますの」
「はっはっは! 契約成立だな!」
なんだかノリで悪役っぽい妙な面接になってしまったが、許してほしい。
全部サーシャのノリが心地良いのがいけないんだ!
決して俺に悪役の適性があるとかではないとここに表明しておく。
ふっふっふ、新しい〈姫職〉。【氷姫】に就くサーシャが新しく〈エデン〉に加わったぜ!




