#1191 Sランクギルドハウス!〈エデン店〉を建てる!?
学園が誇る一等地。
そこに立ち並ぶ5つの頂点たるSランクギルドハウス。
そのうちの1棟、元〈キングアブソリュート〉のギルドハウスがあった場所に俺とハンナは来ていた。
「ここに来るのも久しぶりだね」
「と言っても1ヶ月ぶりだけどな。あの卒業パーティ以来になるか」
思い出すのは〈キングアブソリュート〉の関係者が集まった卒業パーティ。
あれにはギルドメンバー全員で参加したため、ハンナも来たことがあったりする。
しかし、ギルドハウスはあの頃とはまったく違うスタンダードにリフォームされていて〈キングアブソリュート〉の名残は残っていない。
それが少しだけ寂しい。
「鍵開けるね。えっと、あれ? 鍵穴ってどれ?」
「ハンナ、これは認証式だからそこに鍵を翳せばいいんだ」
「え? えっと、こう? わ、開いた!」
Sランクギルドのスタンダードは洋風のお屋敷。
柵に覆われた金属製の門構えが俺たちを出迎える。
その一部にある黒いプレートに先ほど〈ギルド申請受付所〉でいただいた鍵を翳すと、門扉が勝手に開き出す。うーんハイテク!!
「ね、ねぇゼフィルス君。今更なんだけどここって本当に私たちが使っても良いのかな?」
「本当に今更だなハンナ。このギルドハウスは〈エデン〉が勝ち取ったんだから好きに使っても改装してもいいんだぞ?」
「本当に良いのかな!?」
どうやら門扉の豪華さに圧倒されて今更ながらハンナがビビっていた。
とはいえAランクギルドもそれなりの豪華さだったのだ。あれをすぐ使いこなしていたハンナである。こっちもすぐ慣れるだろう。
「よーし入るぞ」
「あ、待ってよゼフィルス君!」
ハンナが俺の服をちょこんと掴むのがなんか良き。
2人で屋敷に到着すると、また鍵で承認させて中に入る。こっちは自動ドアじゃなかった。
「で、でっかいね~」
「学園トップの50人が不満なく過ごせる広さになっているらしいからな。そりゃデカいぜ」
Sランクギルドになれるのは本当に一握りのエリートだ。そして学園はSランクギルドをとても優遇する。加えてこんな豪華なお屋敷で優雅に過ごしたければSランクになってみろと学生に言っているのだ。それに触発されて上を目指す学生も多い。
そのためSランクギルドハウスもかなり豪華な作りとなっている。
本当、ここに改装の手を入れるのが勿体ないくらいだ。
入れるけど。
一通り部屋を散策すると、俺たちはお屋敷の中心たる大ホールへやって来た。
基本的にギルド部屋でもギルドハウスでも、全員が集まれるように巨大な部屋が設置されており、そこを中心に様々な部屋が各所に用意されているという作りをしている。
ここもめちゃくちゃ広いな。Aランクギルドハウスの大部屋はあまりに広すぎて半分〈エデン店〉にしちゃったくらいなのに、Sランクギルドハウスはさらに大きい。
まあ、多くのギルドを招いてパーティができるほどだからな。そりゃあ大きいわ。
さて、まずは〈幸猫様〉たちの神棚をどこに構えるか決めなければ。
「うう~ん、ねぇゼフィルス君~、〈エデン店〉ってどこに出店するの~?」
「ん?」
気が付けばハンナとかなり距離が離れていた。
さっきまで俺の学生服を掴んで離さなかったのに、ちょっと寂しい。
それはともかく、遠くに居すぎてちょっと大きな声じゃないと届かないとか、やっぱりこの大ホールデカすぎだ。
とりあえずハンナの下に向かう。
「お待たせハンナ」
「全然だよ。それでゼフィルス君〈エデン店〉の場所なんだけど」
このSランクギルドハウスは柵に覆われている。そこにお店を開くにはどうすればいいか、ハンナは首を傾げている様子だ。
まあ、門から屋敷までも結構距離あるしな。
今までのようにギルドハウスを改装して〈エデン店〉にしても、あの門構えを潜って来店してもらうというのは抵抗感があるようにハンナは感じているのだろう。
確かに門構えを開きっぱなしにして商売してたらなんのための囲いなのか分からないからな。
だが、ちゃんとやり方はある。
「〈青空と女神〉は新しく敷地内に建物を建ててたな」
「え! 建物建てちゃっても良いの!?」
「Sランクギルドだけの特権だな。この柵に囲まれた敷地内なら施設だけじゃなく、建物を建てても別に問題無いんだ。まあ、景観についてはあまりに悪ければ学園が介入くることもあるそうだが」
そう。Sランクギルドになると敷地内での自由な建築が許可されるのだ。
さすがはゲームの世界。
ゲーム〈ダン活〉時代はお屋敷すら潰してテーマパークを作ったり、〈スクショ観覧会〉のスクショを撮るためだけに大自然風へと大改造をしているユーザーもいたな。
とはいえ土地がありすぎて建材の確保だけで日数を相当使うこともあり、こっちの道も一筋縄ではいかない難易度になっている。
あれ? なんの話だっけ?
「じゃあじゃあ、〈エデン店〉はどこに建てれば良いかな?」
おっとそうだった。〈エデン店〉の話だな。
「少し庭に出てみるか」
そう言って正面玄関から外に出る。
うん。広い。門から玄関まで割と距離があるな。噴水でも置こうかとちょっと迷った。
「うーん。正面は私たちが出入りが出来なくなっちゃうし、やっぱり柵を取り払って右か左かな?」
「左右両方に建てるというのもいいぞ? そして特別な通路で両棟を結ぶんだ」
「あ! それ凄く良いね!」
ハンナが求める〈エデン店〉をアドバイスする。
これでもそれなりの〈スクショ観覧会〉を視聴してきた俺だ。シンメトリーが美しいお店から、なんじゃこりゃという奇想天外のお店まで数多くのSランクギルドハウスのお店を見てきた。
右か左、どちらかというのは景観がやや悪い。しかし正面は門があって俺たちの通行の妨げになる。脇や裏道からこの屋敷に帰還する住人ってどうよ? あまりかっこよくない。
ここまでのお屋敷となると正面から堂々と帰って来てこそ華がある。
俺のオススメとしては、シンメトリーで左右両方に、まるで巨大な門のような作りで店を作ってしまうのが良い。ちなみにこれはとある〈スクショ観覧会〉の作品を参考にしている。
「正面門をさらに大きくしたようなイメージだね。うわぁ、それ凄く良いかも。従業員しか使えない渡り廊下とか、凄くかっこいいよ~」
イメージが膨らんだのかハンナの目がキラキラしていた。
「2店舗の〈エデン店〉だからな。ポーションなどの消耗品売り場やアルル製装備品の売り場で棲み分けも出来るぜ」
「うん。いいかも! それで行こうよゼフィルス君!」
どうやらハンナの中でどういう感じで〈エデン店〉を運用するか決まったようだ。
具体的に改装するのはギルドメンバーの採決を取ってからになるだろうから、それまでに図案でも作っておくかな。
「じゃあ次は錬金工房と、鍛冶工房、倉庫、料理場、温泉、神棚の場所なんかも決めていくか」
「おおー!」
こうして土曜日はSランクギルドハウスの改装案に精を出した。




