#1187 ブオールの真価、〈サクセスブレーン〉戦決着
クリスマスプレゼント大企画2日目!
3話目! まだ読んでない方は2回バック!
カリン先輩と〈集え・テイマーサモナー〉に作戦を伝え終えた俺たちは、次の作戦に移ろうとしていた。
「さあ行くぞロゼッタ! ここで〈頑装甲車・ブオール〉――解禁だ!」
「はい。〈ブオール〉――召喚!」
さぁてここからが本番だ。
つい先ほどリーナから連絡が入った。
予想通り三ギルド同盟は〈エデン〉の拠点を包囲しつつ接近しているという。人数は60人、ヤバい数だ。てっきり50人前後と思っていたが、出せる人数のギリギリを出してきたって感じだな。
正直なところ、野戦で60人を相手に戦うのは〈エデン〉でもリスクが大きい。
相手は〈サクセスブレーン〉、〈獣王ガルタイガ〉、〈カオスアビス〉だ。
退場者無しでの勝利は難しいだろう。
故に、敢えて道中は手を出さず、むしろ拠点に攻撃してきてもらったのだ。
誘いだな。
〈ミーティア〉にこそ城壁を破壊されたが、あれは〈ミーティア〉の度胸と作戦があっぱれというところ。あれほどの強烈な攻めはなかなかできないだろう。
本来なら城壁が破壊されることすらさせないのが〈エデン〉だ。
〈エデン〉は三ギルド同盟が仕掛けてくると予測し、念入りに準備をして待ち構えている。
〈ミーティア〉の時とは何もかも違う。
例え60人規模の攻めであろうが、城壁と防衛モンスターを上手く使えば時間稼ぎは可能だ。
そして、時間は俺たちの味方。
援軍という名の俺たちが城壁を攻めているギルドの背後から奇襲し、逃げ道を塞いで各個撃破する作戦だ。
相手は3ギルドが固まらず、分かれて侵攻しているらしい。となればこちらの援軍が奇襲したらあっという間に他の2ギルドが集まって来て取り囲み、各個撃破する作戦なのだろう。まあ、そう上手くはさせない。
そのために重要なのが、相手の索敵圏外からの電撃的な奇襲と、相手を逃がさない能力。ついでに取り囲まれないようにする能力。
その3つを兼ね備えた超優秀装備を紹介しよう。
「わぁ!」
「大きい!」
「とても強そうね」
ロゼッタが取り出した〈ブオール〉を見てサチ、エミ、ユウカが声を上げて感激する。
それもそのはず、〈ブオール〉は珍しく――列車型の戦車だ。
上級ダンジョンをさらに進んで行くと、だんだんと攻略に連れて行く人数が多くなっていく。
だが戦車には乗車人数が決められていて、乗せることの出来る人数に限りがあった。
それを大きく改善したのがこの列車型戦車だ。列車には当然客車が付きもの。
〈ブオール〉本体は装甲やブレードを搭載した頑丈な雪かき車のような見た目で、そこに3台の客車を連結する。
乗車人数は客車1つにつきこれも10人で、3台連結すれば30人まで運べるのだからとんでもない性能なのが分かるな。
だがこの客車を高速で引くにはロゼッタの職業【天守護の騎士姫】の五段階目ツリー『連結・装甲列車解禁』がいる。
当然覚えてもらったさ。客車が3台しか完成していないためまだ3台しか連結できないが、十分。
「みなさん、乗ってください。全力で行きますよ!」
全速力ではなく全力というところがポイントだな。
ちなみに〈イブキ〉は16人乗りなのでここにいる〈エデン〉メンバー15人は全員乗れたりするわけだが、今回は〈イブキ〉ではなく〈ブオール〉の方へと乗車する。
理由はすぐに判明するぞ。
「全員乗車完了!」
「行きます! 『オーバードライブ』!」
瞬間、〈ブオール〉の車輪が回転し、一気に最高速度まで上げて突っ走る。
そしてすぐに迫る曲がり角。90度カーブ。
「えい!」
しかし〈ブオール〉はまるで車のように曲がりきった。
ロゼッタの「えい」の掛け声がちょっと面白い。
この〈ブオール〉は列車のような見た目だが、中身は車に近い。線路を走っているわけじゃ無いのだから当然だが。
にもかかわらず、後ろに連なる客車たちはカーブの遠心力で飛ばされることもなく、列車の様にしっかりと後ろを付いてきているのだからほんと不思議。
そんな感じで猛スピードで一度フィールドの中央へ出て、そのまま一気に北へ向かう。
ここからは2択。リーナの情報では〈エデン〉の南側からは〈サクセスブレーン〉と〈獣王ガルタイガ〉が侵攻してきているとのことだ。
さーてどっちに行こうかな。そう考えた時、リーナから通信。
「『こちら〈エデン〉拠点リーナですわ! 現在〈獣王ガルタイガ〉へ防衛戦力を集め対抗中です、ゼフィルスさんは〈サクセスブレーン〉をお願いいたしますわ!』」
「オーケー! 作戦通り――」
「『それと〈サクセスブレーン〉は20人中6人を既に仕留めてありますわ!』」
「え? もうそこまで進んでんの!?」
あれ? 〈サクセスブレーン〉に3分の1近くの被害が出ているのですが、それって潰走寸前でない?
〈サクセスブレーン〉は、〈エデン〉が罠に仕掛けた〈間欠泉罠〉と似たような戦法を〈学園出世大戦〉の時に〈世界の熊〉に使っている。
見抜かれている可能性は高く、だからこそ〈エデン〉拠点に注目させたところへ後ろからドーンして戦況をひっくり返そうとしたのに、俺たちが到着する前に戦況がひっくり返っているんだが? これってつまり俺たちの助けがいらないということだから〈獣王ガルタイガ〉もこれか、これよりも被害甚大ってことだよね? あれ? おかしいな?
「『ゼフィルスさんたちは南西からきてくださいな! ここから一気に〈サクセスブレーン〉を全滅させますわ』」
「……だな! 了解!」
細かいことはあとでいっか。
というわけで俺たちは〈サクセスブレーン〉の方へと挟撃することになった。
◇
夢かな?
「カイエンさん、指示を!」
なあ、カララ? あれってなんだろう? 知ってるかい?
俺には列車に見えるんだ。列車がね、俺たちの後方を塞いじゃっているんだ。
あんな横滑り見たこと無いよ。というか横移動できる列車ってなんだろう?
列車、なんかすっごい装甲しててさ、あんなのが横向いて止まってたら一種の要塞だよね。
後ろには〈エデン〉拠点の防壁、前には列車型の要塞?
え? 今度は客車のドアがパカッと開いて〈エデン〉メンバーが飛び出してきたんだけど。
マジいったいどういうこと? 誰か説明して!?
南西エリアの三ギルドによる〈エデン〉三方向攻め作戦は――見事に失敗した。
いやだってさ、この城塞、防衛力が高すぎるよ。というか俺たちを守るはずのタンクと攻撃の要の攻城兵器がどっか行った時点で撤退すべきだった。
うちが主催した総攻撃だからできないのが辛い。
いや、わけわかんなかったけど、多分地面に巧妙に隠された罠を使われた。
〈サクセスブレーン〉も前回の〈拠点落とし〉で〈世界の熊〉にやったあれ、あれで俺たちの前を進んでいたタンクと攻城兵器が吹っ飛ばされて、城壁を飛び越えて拠点へ入って行っちゃったんだよ。
「いや、先行き過ぎ!?」って思ったね。
え? 攻城兵器を破壊するなら分かるけど、こんな方法で奪取、もしくは鹵獲? されるなんて思ってもみなかった。完全に予想外だった。どんな手品だよぉ。
しかもタンクが消えて「へっ?」ってなった瞬間遠距離攻撃の嵐が来て、これを防ぐためのタンクがいないものだから防ぐ手段に乏しくなっちゃってほとんど直撃。
これでも頑張って迎撃したんだ。宝剣の方は想定内だったしね。
だけど攻撃が収まった時には4人が退場。2人のタンクが城壁の内側に吹っ飛ばされていて、後は体勢を立て直そうとしたところで通信。索敵に放ったメンバーからだ。
内容は「要塞接近」だった。とても急いで書いたのだろう。第一報はこういうこともよくある。でも全然意味が分からないんだけど? 思わず「???」ってなったよ。
だけど警戒はしないと。そう指示を出そうと思ったら退路から列車がご到着。
もの凄いドライブで道を通せんぼうするように横移動してきたかと思うと、中から〈エデン〉が飛び出してきたってわけ。え? 何これ?
「カイエンさん、後ろから追撃の四宝剣が!?」
ああ、後ろからもまた宝剣の連射が来ちゃったかぁ。
ああ、うん。うん。
「全員方円陣形を組め! 防御しながら撤退する! 目指すはあそこ、列車の先頭に人が通れる空間がある! あそこから脱出するぞ! 死力を尽くすのだ!」
「「「「おおー!!」」」」
もうやるだけのことをやるしかない!!
士気だけは高いのが救い。
それから必死に指示を出していたんだけど、俺は気が付いたら、〈敗者のお部屋〉にいたんだ。




