#1186 〈集え・テイマーサモナー〉対〈カオスアビス〉
クリスマスプレゼント大企画2日目!
2話目! まだ読んでない方は1回バック!
こんにちは、私は〈集え・テイマーサモナー〉のギルドマスター、カリンだよ!
現在、やむを得ない、深い事情でとある場所に潜伏中!
「〈カオスアビス〉接近!」
「みんなしっかり隠れててね! 合図があるまでジッとしているんだよ!」
あ、来たよ! しっかりとみんなに指示を出す。
うんうん。ゼフィルス君の作戦通りだね~。本当にこっちから来たね~。
ふぅ。
うん、しっかりしないとね!
私は頬を両手で打って気合いを入れ直した。
アニィが「ほっぺ赤くなってますが大丈夫ですかカリン先輩!?」と聞いてくる。
うん。ちょっと強く叩き過ぎちゃった。痛い。ヒリヒリするよ~。
で、でも気合いは入ったかな。
とある悲しい事故、〈エデン〉の中心に飛び込んで捕まってしまったあれからなんとか生還を果たした私は、メンバーのほぼ全員、25人で〈カオスアビス〉の拠点に向かったのよ。
え? そんなに部隊を出して防衛は大丈夫なのかって?
ゼフィルス君曰く、もう〈集え・テイマーサモナー〉の拠点を攻撃できるギルドは〈エデン〉以外にいないんだって。
そして、〈エデン〉とは同盟を組んだから襲われない。
つまり、今だけは守りを気にすることなく攻めに出られるんだよ!
ゼフィルス君の作戦はこう、自分たちが〈エデン〉拠点に戻り、攻めてきている南西エリアの3ギルド同盟のうち〈サクセスブレーン〉と〈獣王ガルタイガ〉へ強襲をかますから、私たちは〈カオスアビス〉の拠点を攻めろというもの。これが成功したら次は〈サクセスブレーン〉の拠点、最後は〈獣王ガルタイガ〉の拠点も落としていいと言われているけれど、そこまで落とせるかはちょっと怪しい。
ゼフィルス君は〈カオスアビス〉の拠点が攻められたら、彼らは退くしかないって言ってた。
うーん、あの〈カオスアビス〉を相手に私たちが単身で正面から戦うとなるとちょっと怪しい。でも〈カオスアビス〉の拠点近くの地形を活かし、挟撃して粉砕する作戦を教えてもらったから何とかなりそう。ということでなるべく多くの戦力を連れてきて〈カオスアビス〉の拠点の西側(図D-24)で潜伏していた。
ここまで来るのには道中ちょっと手こずったわ。何しろ南西エリアの周囲は罠だらけだったんだもの。
走れば正面に罠、迂回すればそこには隠された罠、『罠耐性』ありきで突っ込めば爆発に巻き込まれるなど、結構凶悪な罠がそこら中に仕掛けてあった。
しかも分かりやすい罠の中に巧妙に隠された本命が仕掛けてあるのがいやらしい。
対する私たちの手は簡単で、サモナーが召喚した機械系モンスターを大量に先行させたの。
この罠って〈拘束〉系の罠だったから、引っかかって動けなくなったら送還して。罠があった場所は〈ピュイチ〉でジャンプ。もしくは迂回して安全なルートが判明したらそっちを進む。それを繰り返して駆け抜けたのよ。もし〈ピュイチ〉が引っかかってもテイマー本人は動けるから〈ワイバーン〉で助けたりしてね。
〈ピュイチ〉がいないと危なかったシーンがいくつもあった。
ほんと〈ピュイチ〉に全員騎乗させて大正解! まさか相手もジャンプで切り抜けるとは思わないでしょ! 〈ピュイチ〉は飛べないけど羽ばたけばちょっと滞空時間が長くなるのよ!
〈カオスアビス〉の拠点に近づくと別の罠が結構張られてたんだけど、これも機械系召喚モンスターが一斉に踏んで発動済みにして切り抜けたわ。
そして、〈カオスアビス〉の拠点を強襲。
相手は10人しか居なかったけれど、防衛モンスターが結構手強くて、倒しているうちに伝令が行っちゃった。さすがは〈カオスアビス〉ね。
ということは本隊が戻ってくるわ。準備しないと。罠を仕掛けて待ち伏せよ!
私たちは2部隊に分かれて、戻ってきた〈カオスアビス〉本隊を受け止めるエイリンの部隊と、その後ろを強襲する私たちの部隊で配置に付いてしばらく待った。
そこへゼフィルス君の予想通りに本隊が戻ってきたってわけ、今ここね。
あ、エイリン率いる部隊に突撃していったみたい。
「今よ!」
「「「「――――!!」」」」
作戦開始、エイリンたちが受け止めている隙に私たちが背後から挟撃よ!
「あっれえええ!? 後方! 後方! 後ろから第3波接近――!! 挟撃だーー!?」
「「「「なにぃぃぃぃぃぃ!?!?」」」」
気付かれたけどもう遅い。
「いっけーバンちゃん! 『ビーストキングの誕生』! 『覚醒スキル開砲』!」
「ギャワアアア!」
「後ろにもワイバーンだ!」
「火を吹い―――ほんぎゃーー!?」
「な!? 避けきれずに1人やられたぞ!?」
「ロデン、どうする!?」
「マズいのだね! 基本は正面突破! ハイウド、ジェイたちは後ろを任せるのだね!」
「了解!!」
「全て倒してしまってもいいのだろう?」
ロデンはエイリンとアイシャの方へ向かったわ。こっちに来たのはハイウドとジェイ他3人。完全に足止め狙いね。
でも残念、私は〈ワイバーン〉のバンちゃんに乗って空を飛べる。制空権を取れば、空を飛べない〈カオスアビス〉では足止めなんてできない。
このままロデンの背中にワイバーンの大火球を撃ち込んでやるわ!
――そう思っていたら。彼らはとんでもないものを持ち出してきた。
「ハイウド! 今がアレを使う時だ!」
「もちろんだ! ――新装備、装・着!」
それは機械の翼っぽい何か。
それを背中に装備したハイウドが、ジェット噴射をしながら飛んできたの。
「トリさんモード!!」
「飛んだ!?」
「これぞ〈カオスアビス〉が〈冠水の島鳥ダンジョン〉で得た新しい力! ―――〈鳥さんの翼(偽物)〉だー!」
「鳥さんの翼!?」
どう見ても機械の翼だけど!?
「空がそちらだけのものとは思わないでもらおう。食らえ! 『パーフェクトマグナムスペッシャル』!」
「!! 『スピードアップビースト』!」
そしてハイウドが片手をパンチのポーズにして一直線に突っ込んで来た。背中のジェット噴射が強烈に光り、もの凄い速度で突っ込んで来る。私はギリギリで速度を上げてこれを回避。
瞬間、ハイウドがほんの少し横を勢いよく通り過ぎていった。あぶなっ!
「ハイウドは!?」
「うおおおおおおおお、まだまだ――グバジャ!?」
「え?」
「後ろを取られた!?」と慌てて振り向くと、ハイウドはなぜか何もない空中で見えない壁に激突して止まっていた。
「え? え? ちょ、ハイウド!? どうしたーー!?!?」
「大チャンス! こいつら、進入不可マスのこと分かってないわ!」
―――進入不可。
それは障害物の観客席なんかに張られる絶対に破壊出来ないバリアのこと。
観客に流れ弾が飛んだら危ないものね。よって進入不可のバリアが張られていて飛び越えることも潜り抜けることもできなくなっている。
そしてここはまさにそこら中に進入不可のバリアが張られているSランクフィールド。
見た感じ、山を上って飛び越えればいいじゃないみたいに思えるけれど、進入不可というのは上空も進入不可ということ。当然の禁止ね。飛び越えるとか障害物の意味ないし。
そしてハイウドは多分飛ぶのに不慣れなんでしょうね! 〈集え・テイマーサモナー〉は飛行系モンスターをたくさん使役しているから当然のように分かっていたけど、ハイウドはそれを分からずに進入不可バリアに勢いよく激突したのよ!
そして墜落したわ!
「かかれーです! モンスターの波で飲み込むの! 〈ベビーベヒモス〉を使うのです!」
「う、うおおおお!? こうなったらユニークスキルで一掃する! 『暗黒物質・ギャラックス』! ――な、しまったMPが!?」
「突撃――!!」
「おぎゃあああ!?」
下ではアニィが陣頭指揮を執って突撃していた。
見た感じ〈カオスアビス〉はMP的にかなり疲弊している。
ハイウドは墜落の途中でなんとか体勢を立て直したみたいだけど、もう飛べないみたい。やっぱりあの翼は偽物ね。
私はそのままロデンの方へと向かうわ。
そして向かったそこで見たのは、激戦だった。
「『食腕鞭』!」
「くっ! またサモナーが食べられました! 被害多数!」
「モンスターは後回しでもいいんだね。なるべくテイマーかサモナーを狙うんだね! キール、あれだけは倒すんだね」
「死神の力は一発退場の力さ。――退場せよ! 『サクリファイス・デスカッター』!」
「なっ! 〈ワイバーン〉が一撃ですって!?」
〈カオスアビス〉と言えばこの人、ギルドマスター〈悪食のロデン〉。
その闇の触手に捉えられたサモナーの1人が闇に取り込まれてしまった。
現状、アレを救出する術はないわ。
そして〈死神〉のキール。
〈集え・テイマーサモナー〉の2大巨頭、〈ワイバーン〉を一撃で屠った!?
ロデンも危険だけど、こっちも危ない。すぐに対処しないと!
「バンちゃんロデンにブレス! 『ハイビースト爆誕』!」
「ギャアアアアス!!」
「次にあそこを狙って! 『モンスターバーストテンペスト』!」
私はバンちゃんの能力を上昇させロデンのガラ空きの背中に大火球を放った。その後暴走スキルを使って一気に降下して速度を上げ、そのまま地面と水平に軌道を修正、速度を維持しながらキールに突っ込んだ。
「なっ!?」
「キール! 『アックス・大防御』! ――ぐおあああ!?」
「ハーネス!!」
「……俺の名は、ハーラル、だ」
「サブマスがやられたぞ!」
くう、惜しいわ! あと少しのところでハーネスというサブマスが出てきてキールを庇った! 誰この人!?
ううん、でもサブマスはこれで退場よ! 大きなダメージになったはず!
「エイリン!」
「カリン!」
「あれは! 〈リンリン〉コンビなんだね! 組ませてはいけないんだね! ――『蟒蛇』!」
サブマスとの激突で速度が削がれたのでそのままエイリンの下に着陸する。
ロデンはあの大火球をものともせずにすぐに襲ってきたけれど、他のメンバーがこれを防御、でもまた1人が闇に取り込まれた! でも、それもここまでよ!
「行くわよ、新、ケルベロス戦法!」
「の、竜版。出でよ」
「「――〈ヒュドラ〉!」」
「ギャワアアア!!」
「ヒュド!? ってヒュドラじゃないんだね!? 偽物なんだね!」
「さあ、本物の首がどれか分かるかな?」
〈ワイバーン〉の長い首と見た目同じものを4本追加!
これがエイリンと組み合わせた新しい戦法。〈ヒュドラ〉召喚だよ!
フラーラ先輩、ありがとう!
これで決める!
「必殺のドラちゃん5連ブレス! 『本能全開』!」
「『模範ドール全解放』!」
「全て飲み込むのだね――『アバドン』!」
私たちの〈ヒュドラ〉のドラちゃんとロデンの召喚する闇の化身、『アバドン』がぶつかる。
こっちは5人分の力なんだから絶対押し込める、って嘘!? 押し込まれてるのはこっち!?
ドラちゃんのブレスがどんどん飲まれて迫ってくる!
あ、やばい! 飲まれる!? そう思った時。
「ドラ君!」
「アイシャ!?」
アイシャがドラちゃんの前に飛び出してきた。
そして〈ブレス〉と『アバドン』に向けユニークスキルを発動する。
「攻撃の無敵化! 『イモータルシャットダウン』!」
「!!」
不死身の絶対攻撃。
アイシャの職業、【イモータルシャダウン】のユニークスキル『イモータルシャットダウン』は援護バフ。バフを掛けた攻撃を不死身化し、相手の攻撃を強制的に停止させる、別名『絶対攻撃』とも言われている超強力なスキル。
「ギャワアアア!」
「な、なんだってなんだね!?」
アイシャのユニークスキルの結果、アバドンが停止し、そのままブレスに削られていく。行ける、行けるわ!
そしてもう少しで粉砕というとき、今度はキールが飛び出してきた。
「やらせないよ!」
「キール君!?」
「悪いけどアイシャ、君には退場してもらう――『レベルアッパー』! 『ソウルチョッパー』!」
「きゃ――!」
「「アイシャ!?」」
キールは確かアイシャと元同じクラス。警戒していたのかすぐに飛び出してきてアイシャをユニークスキルの一撃で倒しちゃった!
これによりアイシャのユニークスキルで不死身化されていたブレスと停止していた『アバドン』が復活。でも。
「「このまま、行っけー!!」」
「ぬっぬっぬ、うおおおおおお―――!!」
「ロデン先輩!?」
削られて弱体化していた『アバドン』はそのまま粉砕され、ブレスはロデンを一撃で葬った。
「ろ、ロデンがやられた!?」
「やったーー!!」
「次はキールの番。ドラちゃん!!」
「くっ! こいつは僕が抑えるよ! 他はとにかく拠点へ合流――ぐはぁ!?」
「そこにベスがドーン!」
ギルドマスターやサブマスターが退場して残されたキールだったけど、エイリンの〈ベヒモス〉ぬいぐるみ、ベスちゃんにのしかかられて、そこへドラちゃんが加わって退場。
〈カオスアビス〉の主要陣がこれで退場したことで連携ができなくなって各個撃破。
最終的に〈集え・テイマーサモナー〉は〈カオスアビス〉を落とすことができた!
やったけど。なんかすっごい数退場したよ!?




