#1181 〈エデン〉の一方的な防衛力VSカイエンさん。
ここは〈エデン〉拠点内。ゼフィルスさんが南東エリアで遠征部隊を率いているため、拠点防衛の指揮はわたくし、ヘカテリーナが任されておりますの。
そしてわたくしが操作する〈竜の箱庭〉に動きがありましたわ。
「三ギルド同盟が動き出しましたわ! 3方向から攻めてきます!」
「ふふん! 腕の見せ所ね!」
「私もコールの準備はできてるよー」
三ギルドから同時に攻められているという普通なら割と絶望的な状況のはずなのに、なぜか悲観するどころか明るい雰囲気なのは〈エデン〉の特色ですわね。
ラナ殿下もノエルさんも〈竜の箱庭〉を見ながらほくそ笑んでいますわ。
今〈エデン〉の拠点に居るのは15人。
攻めてきている南西エリアの3ギルド同盟は私の能力とシズさん、カルアさんの話を統合して60人で間違いないようですわ。4倍差ですわね。
すでにみなさん配置に付いて防衛準備は完了しています。
3方向からの侵攻はどうやらギルドごとに分かれていますわね。同盟を組んだとは言え、ギルドメンバーの命運を任せるなんてことはなかなか出来ないことですからこれは想定内ですわ。
なら、わたくしたちがするのはそのギルドの特色に合わせた防衛。
要は相性が良い方を配置すれば良いのですわ。
こういう時はまず弱いところから狙うのがセオリー。なのですが、私たちがするのはあくまで防衛ですわ。攻撃に打って出るということはしなくても大丈夫。援軍が来るまで粘るのがわたくしの仕事ですわね。すでにゼフィルスさんには通達済みです。
というわけで〈カオスアビス〉のところにはシエラさんとカタリナさん、シャロンさんに行ってもらいました。〈エデン〉が誇るタンク3人です。完全に時間稼ぎ目的ですわね。
そして〈獣王ガルタイガ〉、獣王子ガルゼ先輩がご卒業してなお強力なギルドのこちらにはエリサさんを始め、シズさん、ルルさん、シェリアさん、アイギスさん、エステルさん、カルアさん、という強力な7人の戦力を投入しましたわ。
最後の〈サクセスブレーン〉、ここが上手く見通せない厄介なギルドですわね。ここはラクリッテさんが要ですわ。そしてわたくし、ラナ殿下、ノエルさんが遠距離攻撃で援護します。
わたくしの五段階目ツリー、新たに使えるようになった『〈兵砲〉の経典』は『兵砲』系スキルのマスの減退を軽減します。つまりラナ殿下のようにマスを気にせず超遠距離攻撃が可能になるのですわ。とんでもない強スキルですわね。
故にここにいながら援護することが可能となっていますの。
ただスキルレベルがまだ低いのであまり遠すぎると減退がキツくて狙撃ができません、まだ3マス先くらいが限界ですわね。
最後にフラーミナさんが操る防衛モンスターが3箇所全ての援護ですわ。
防衛モンスターも〈セントフェアリー〉さんの回復で〈ミーティア〉戦の傷も癒えたみたいですし、準備万端と言って良いでしょう。〈クジャ〉だけは復活するまであと7分ですが、7分くらいなら問題なく耐えられる範囲だと想定してますわ。
「そろそろですわね、戦闘開始ですわ! ――シャロンさん合図を」
「はーい! ――『警報』!」
「『全軍一斉攻撃ですわ』!」
合図はシャロンさんのスキル『警報』。辺りにサイレンの音が鳴り響きました。
開始の合図ですね。また、これには別の意味も込められています。
わたくしは〈サクセスブレーン〉に狙いを向けて、まずこちらが先制攻撃を放ちます。
「『超長距離兵砲・グングニル』ですわ!」
瞬間、大きな大砲のようなものが目の前に召喚されると、続いてドンと重い音を響かせて遠距離砲撃が発射されました。
この発射音が厄介で、音で攻撃がバレてしまうんですの。超遠距離攻撃で奇襲できるというメリットを潰しかねない非常に大きなデメリットですわ。そのための『警報』スキル。これで音を誤魔化し、超長距離砲撃の奇襲を成功させたのです。
また、『警報』は大きな音で相手を慌てさせる効果も期待していますの。
この『グングニル』は5マス先まで届く超遠距離攻撃、わたくしの『プラスレンジ』はLV1なので合計6マス先まで届きますが、狙いは3マス先です。この距離ならさほど減退を気にせず着弾させることが出来ますから。
そして結果を〈竜の箱庭〉で確認すると――。
「『状況把握』ですわ! ――って、え!? 防がれましたわ!?」
「初めての攻撃を防ぐなんて、やるわね!」
ラナ殿下が唸ったとおり、誰もやったことがない方法というのはまず防げません。
それを防いでくる? しかも防御スキルを2つ出していたことから指示があったことが分かりました。そして〈サクセスブレーン〉の指揮系統は【ブレイン】――ギルドマスターに集約されています。あの方の指示と見て間違いないでしょう。
ギルドマスターカイエンさん、噂に違わず侮りがたしですわね。評価を見直さなければなりませんわ。(評価上方修正)
この時カイエンさんはゾクリと冷たい汗をかいていたらしいのですが、それは別の話ですわ。
「第二波、行きますわよラナ殿下」
「まかせなさい!」
「『ギルドコネクト』! ラクリッテさん、罠の調子はいかがですか?」
「『はい! こっちも準備オーケーです。シズさんの『偽装』と私の『ジャミング』の二段構えで隠れた罠はまだ発見されていません!』」
「了解しましたわ。では第二波行きますわよ!」
「おっけー! 『リ・エール』!」
「『大聖光の十宝剣』!」
「『殲滅兵砲・エクスプロージョンノヴァ』!」
続いて第二波。ギルドマスターカイエンさん、これは防げるでしょうか?
実は城壁の前には罠が仕掛けられていました。以前〈島ダン〉で大量に回収された〈間欠泉罠〉の改良版ですの。あの深い水深のところに足を踏み入れたが最後、ポーンと空へ吹き上がる罠ですわね。
これは凄いんですわよ。ハンナさんたち上級錬金職の方々が改良し、威力を削り隠密性と噴射力をより高めておりますの。これにより、ダメージこそ出ませんが発見されにくさと打ち上げ力が増していますの。
そしてシズさんの『偽装』スキルとラクリッテさんの『ジャミング』スキルにより相手の『索敵』や『罠発見』を躱したのですわ。
またそれでも『危機感知』や『直感』で看破される恐れがあるため、この〈間欠泉罠〉は真上や敵の方へ向けているのではなく、敢えて〈エデン〉拠点の方向に向けられています。これにより、自分たちに向けられた罠ではないことが『危機感知』を鈍らせるんですの。反応したときには時すでに遅しですわ。
さらに上からはラナ殿下の光の宝剣と私の爆発する巨大な砲弾が迫ってます。
足下にある罠を回避することは不可能に近いですわ。
その結果。
「『タンク釣れました!』」
「フィーッシュ!」
先頭にいるタンクが気付かずに踏み込み、吹き上がってしまうんですわ。
ラクリッテさんの報告とノエルさんの気持ちの良い声と共に、ここからでも城壁を超える水柱が見えました。吹き上がるタンク2名も一緒に。あと攻城兵器までおまけで打ち上がっていますわね。これはラッキーですわ。
タンクが一瞬で消え盾を無くした〈サクセスブレーン〉、そこへラナ殿下の光の宝剣とわたくしの砲弾がタンクをスルーして〈サクセスブレーン〉本隊へ降り注ぎました。
直撃ですわ!!
「第三波ですわ!」
「『アンコール』行くよー!」
そう、狙いは最初からタンク無力化からの本隊への攻撃。
タンクが邪魔するのならどこかに行ってもらえばいいのです、という作戦ですわ。
「『リ・エール』!」
「『大聖光の十宝剣』!」
「『援護兵砲・タクティカルキャノン』!」
ノエルさんによって『リ・エール』が掛けられたラナ殿下が次の宝剣を発射し、わたくしも同タイミングで攻撃を発動します。
続いて第四波!
「いっくよー威力3倍! 『ハイテンションエール』!」
「これでトドメよ! 『大聖光の十宝剣』!」
「『決戦兵砲・ノヴァブレイカー』!」
ラナ殿下とノエルさんの宝刀、『大聖光の十宝剣』3連発に加えわたくしの兵砲スキルを叩き込みましたわ。
結果、〈サクセスブレーン〉本隊に降り注いだ光の剣と兵砲の一方的な攻撃は、見事相手を4人巻き込んで退場にしました。
「やりましたわ!」
一見4人は少なく見えるかもしれませんが、〈サクセスブレーン〉20人中5分の1を削ったのですから大きな成果ですわ。むしろあの状況でここまで被害を抑えたギルドマスターカイエンさんを褒めるべきですわね。
なお、吹き飛んできたタンクさんは、無事〈エデン〉の城壁をスポーンと越えて拠点の前に落ちて来ましたわ。そこへ防衛モンスターがこんにちはですの。
追加で2人退場ですわ!
これがゼフィルスさんの新しい罠〈間欠泉罠〉を使ったもう1つの作戦。
―――〈拠点内にご案内戦法〉ですの!
ゼフィルスさんは転移罠みたいなものだとおっしゃっていましたわ。
各個撃破できないなら、できる状況を生み出すまで。素晴らしい作戦です!
なお、完全に孤立するのでお帰りは不可能ですの!
◇
一方その頃カイエンさん。
「(ちょ、え、待っ、そんなのってありぃぃぃぃぃぃ!? タンクと攻城兵器が壁の向こうにさらばしたんだがーーっ!?!?)」
一瞬で大ピンチに陥っていた。




