#1178 ラウVSレイテル。獣王の理不尽が止まらない。
◇引き続きレイテル視点
「相手にとって不足無しだな」
「相手は7人です。大丈夫ですか?」
「これくらい相手に出来なければ【獣王】には就けないさ」
「それは頼もしいですね」
私たちがゼンダダとハミミの部隊と合流してもラウ君たちは退くことは無かった。
むしろやる気満々になってる。
相手は2人、こっちは7人。
拠点が落とされそうになっている現状、長引かせることは出来ない。
「みんな、速攻でここを突破して拠点へ向かうわよ!」
「「「「応!」」」」
「行かせませんよ。『ブリッツストレート』!」
「今度はこっちが行くぜ『獣速牙狼』!」
「な!」
退くどころか仕掛けてきた!?
2人の技は両方とも素早い移動からの攻撃系――必要なのは壁!
「『氷壁』!」
間に合うかギリギリだったため選択したのは発動の早い〈二ツリ〉の壁。
「ふっ!」
でも、次の瞬間にはラウ君の拳で氷の壁が砕け散る。いや、セレスタンも攻撃していたみたい。敢えて氷の壁を破壊させることでスキルを終了させることに成功。次はこっちの番。
私が指示をしなくても、すでにゼンダダとハミミはハンマーを振りかぶりながら跳躍していた。
「覚悟! 『ウェポンクラッシャー』!」
「受けれるものなら受けてみぃ! ――『レインボーハンマー』!」
狙いはセレスタン。
ゼンダダの盾ごとノックバックするほどの威力を持つ強力な一撃と、ハミミによる七色に回転するハンマーが叩き付けられる。
ゼンダダとハミミの職業は【破創金剛ハイドワーフ】。破壊と創造の両方を得意とする、上級職でも格上の職業。
2人は足りないところをお互い補うという方法で攻撃も生産も両立していて、戦闘力も2人揃えば並の戦闘職を軽く超える。
2人とも上級職でかなりの力があると知っているからこそ、この一撃は絶対に入ったと思った。でも。
「はっ! ――『獣王バスター』!」
「いいでしょう――『カウンタースマッシュ』!」
「何!?」
「きゃあ!?」
攻撃後の終わりだったのにもかかわらず、ラウ君はすぐに援護に入り、セレスタンも即対応してきた。
ゼンダダのハンマーとラウ君の拳がぶつかり、相殺。
ハミミのハンマーは空振り、その隙を突いてカウンターで吹っ飛ばされた。
うそ!? マズい!
「援護ー!」
「「「うおおおお!」」」
「『雹氷柱雨』!」
追撃に出ようとするセレスタンに牽制し、ハミミを確保。
たった一撃で5割近くもダメージを受けていたことに戦慄する。
素早くポーションを出して飲ませた。
「う、助かったわ」
「ハミミいける?」
「ちょい厳しいが、いったる! セレスタンとラウはこっちに任せとき。レイテルは抑えている間に拠点へ」
「うん!」
6人でセレスタンとラウ君を抑えている間に私が突破を狙う作戦。しかし――。
「甘いですね。ラウ様は向こうへ。こちらはお任せください」
「任せろ――『高速移動』!」
「くっ、抜かれた!? 待つでありますな!」
ラウ君が移動系のスキルを使って躱し、私の方へ向かってきてしまう。
慌ててゼンダダが追いかけるが他のメンバーはセレスタンに足止めされてしまった。
「なっ! 『氷波』!」
「『連拳・ストリーム』!」
追いかけてきたラウ君に氷で出来た波で足止め。
でも拳の連打で波を砕きながら回り込まれ進行方向を塞がれてしまう。
くっ! あくまでも足止めに徹するってことね!
そこへ追いついたゼンダダがハンマーを振りかぶりながら飛び掛かる。
「『スチールクラッシュペッタンコ』!」
「『バースト・スマッシュ』!」
でも拳で迎撃されて相殺。
「ゼンダダ!」
「! これは!」
「気が散ってるぞ、『百烈獣牙』!」
「ぐうううっ!?」
ハンマーを盾に使い、ラウ君の連打に耐えるゼンダダ。
完全に分断されてしまっていた。ゼンダダだけではラウ君を抑えるのは厳しい。
ゼンダダたちは純粋な戦闘系ではなく生産職でもある。
生粋の戦闘職、それもラウ君のような強敵が相手だとハミミとの連携が必要だけど、他の5人はセレスタンによって完全に足止めされこっちに来ることができない。
私はすぐに魔法で援護した。ラウ君を突破するには私も戦って隙を作るしかない!
「『氷の大地』!」
「地面を凍らせる技か、これは踏み砕くと良いんだったな。『獣太震』!」
「ぐっ!?」
範囲攻撃返し!?
ドゴーンという破砕音が響く。地面を踏み潰すようにして『氷の大地』を砕くと共に、地面を揺らす攻撃!?
あんなのどうやって防げば。いえ、そんなことは後ね! まずはラウ君を氷の檻に閉じ込める!
「ゼンダダ、合わせて――ゼンダダ?」
「――――!」
ゼンダダに指示を出すと共に杖を前に向けて構えたが、ゼンダダからの返事が無い。
それもそのはず、振り向くとゼンダダがダウンしていたから。
あ、あの揺れは私じゃなくてゼンダダを狙っていた?
マズい!
「遅い! 『獣王烈震咆哮牙』!」
「――『ブリザード』!」
ラウ君がダウンしたゼンダダにスキルを使う。あれが直撃したら、多分ゼンダダは退場すると直感で分かった。
とにかく距離を取らなくちゃとゼンダダを巻き込むことも承知で吹き飛ばす〈氷属性〉魔法を放った。でも、
「悪いな【獣王】に吹き飛ばしは効かないんだ」
ラウ君は当然のように『ノックバック耐性』を持っていたようで、吹き飛ばすことは叶わず、ゼンダダは強力な拳の一撃で吹き飛んでそのままHPがゼロになる。
「!」
「ふっ!」
ラウ君がこっちを向く。ゼンダダが退場したら、当然次狙われるのは私。
動揺する暇すらないわ! 切り替えるのよ私! ゼンダダごめん!
「『氷河の崖壁』!」
もうこうなったらハミミたちがセレスタンを倒すか抜いてくることに望みをかけて防ぐことに集中するしかない。
ラウ君の前に氷河の壁を作り進行を阻害する。これで――。
「『ガオークラッシュ』!」
ガコンッという音が響いたかと思ったら氷河が裂けていた。
何を言っているか分からないって? だって私自身なにが起こっているのか分かってないんだもの、当然じゃない。
え? 氷河を裂いたの? 素手で? 正面にはラウ君の顔が氷河の裂け目からこんにちはしていた。冗談じゃないわ!
「『氷河崩落』!」
氷河よ崩れて、雪崩になれ!
これは私の最強攻撃魔法。
氷河の壁があるときのみしか使えないけど、それを敢えて崩すことで強力な範囲攻撃になる。これで押し流すわ!
そう思っていたけど。
「『獣王に引き裂けぬ物は無し』!」
「だから冗談でしょ!?」
ラウ君は崩れてきた氷河の雪崩も、裂いた。意味が分からない。モーゼ? モーゼなの?
なんで雪崩が引き裂かれるのよ! おかしいでしょ!
通り道が出来たことでラウ君が前へと踏み込んできた。だから来ちゃダメだって!
「『クリエイトフリズドウォール』!」
さっきセレスタンに破られた氷の壁。でも今目の前に居るのはラウ君だけだからきっと大丈夫!
そんな希望も次の瞬間には取っ払われていた。
「フンヌ!」
氷の強大な壁までも引き裂かれたことによって。
え? そのスキルって1回で終わりじゃないの? 冗談でしょ?
「さて、レイテル、これで終わりだ」
「いやー!」
もう目の前にラウ君がいた。理不尽! 理不尽の権化よ!
【獣王】の五段階目ツリーって強すぎるわーー!!
そう心の中で叫ぶ。だけど、そこで希望が現れた。
「あーーー!!」
「む?」
「え? カリン!」
拠点の南東から〈ワイバーン〉に乗って現れたのは、同盟関係にある〈集え・テイマーサモナー〉のギルドマスター、カリンだった。
ま、間に合った! 〈集え・テイマーサモナー〉は気付いてくれたのよ!
カリンはまだ状況が把握しきれていないのかキョロキョロ見渡していたけど、拠点が襲われているのを見つけると、そこへ向かって行った。これで、さらに時間稼ぎが出来る!
ひょっとしたら生き残ることが出来るかもしれないわ!
そう思っていたら私の足下に転移陣が現れた。
「え?」
「あ」
私の理解出来ない声とラウ君の呆気にとられた声が重なった。
え? だってこれ、退場の転移陣。私、まだHP残ってるよ?
つまりこれって。
「〈氷の城塞〉、落ちちまったようだな」
「そ、そんなーーーー――――――」
が、頑張ったのに、間に合わず――拠点は残念ながら陥落。
私たちはそこで退場してしまったのだった。
後書き失礼いたします。
今年もこの時期がやって来ましたね。もうすぐクリスマスです!
読者のみなさん! クリスマスプレゼント、欲しいですか?
作者はむちゃくちゃ欲しいです!(3回目!)
というわけで大企画! クリスマスプレゼントに投稿数増量するので★くださいキャンペーン第3弾を開催したいと思います!
23日土曜日から開始します!
楽しみにしていてください!
よろしくお願いいたします!




