#1172 実況席。大波乱に盛り上がったり叫んだり。
「と、とんでもないことが起こったー!!」
「大波乱です! 僕たちは今いったい何を見ているのでしょうか! あのBランクでは敵無しと言われたギルド〈筋肉は最強だ〉がまさかの8位! それに続き、今回のAランク非公式ランキングでは3位という非常に高かった順位予想の〈ミーティア〉が7位という結果です!」
「〈筋肉は最強だ〉と〈ミーティア〉、それぞれ陥落したのは僅差ね。どっちが8位でもおかしくは無かったわ。これは大きく予想を裏切る結果になったわね」
「おっとーーユミキちゃんでもこれは予想出来なかったかー!?」
「ええ。筋肉たちが何やら神輿の練習をしていたという情報は入ってきていたのだけど、いつもの筋トレだと思ってスルーしていたわ。それがまさかあんな怪物を生み出すなんて」
「そりゃそうだ! 誰もあんなの予想出来るわけねーー!」
「神輿の練習からあんな戦法が生まれてくるとは……、相変らず〈筋肉は最強だ〉ギルドの発想力には驚かされますね」
「発想の方向が全部筋肉関係なんだけどね!! あれってどう見てももっと効率的な、別の形にできたでしょう!」
「それこそ筋肉たちの特色よ。知ってる? 彼らに脳筋って言うとね、鍛えた筋肉全てが頭脳だって意味に捉えられて、お礼を言われるのよ」
「脳まで筋肉じゃなくて!?」
「筋肉が全て脳ですか。……あの光景を見るとあながち間違いと言い切れないのがとんでもないところですね。彼らは様々なことを筋肉で察するとも聞きます」
「どんな方向に鍛えればそんなことになるのー!?」
「でも、Sランク戦ではさすがの筋肉も通用しなくなってきたわね。最初に〈氷の城塞〉を攻めていたときはやはり筋肉の勘は侮れないと思ったものだけど」
「ここで〈筋肉は最強だ〉の試合風景を振り返ってみましょう。まず彼らは試合開始と共に20人近くが北へ向かい、〈氷の城塞〉を強襲しました」
「〈氷の城塞〉はまだ防壁の展開もままならずサブマスターも退場させられて、このまま陥落までいってしまうのか!? Sランク戦の最下位はまさかの〈氷の城塞〉かと思われたところで〈集え・テイマーサモナー〉が筋肉を挟撃する形で襲来!」
「あの展開は痺れましたね。まさかあの筋肉たちを引かせるとは」
「空を飛んでいるというのをよほど筋肉が嫌がったのね。彼ら最強の切り札〈筋肉ビルドローラー〉も飛んでいる相手には当てられないし。むしろあそこで撤退を選ぶ潔さは上位ギルドにふさわしかったわ」
「確かにー! 今まで全戦全勝、とはいかなくても筋肉はとりあえず仕掛けて魅せるギルド! 攻撃的な反面、ファンを沸かせるために敢えて危険な敵陣に飛び込むことはこれまで幾度もあったよね!」
「まあ、大半はそのまま敵を蹴散らしてきましたね」
「そんなギルドがおとなしく撤退を選んだというのだから今期の〈筋肉は最強だ〉は、前よりも頭脳的にパワーアップしていると見て良いわ」
「やっぱり筋肉は頭脳なの!?」
「話を戻しますね。〈筋肉は最強だ〉が撤退したところで〈氷の城塞〉と〈集え・テイマーサモナー〉が手を組みました。そして合同で〈筋肉は最強だ〉へと挑んだのです」
「これも凄いよね! 今まで手を組んで〈筋肉は最強だ〉に挑んだギルドは数居れど! そのほとんどは筋肉に蹴散らされてきたからね!」
「その戦法も見事と言うほかないわ。〈氷の城塞〉は防御に秀でたギルド。防御は〈氷の城塞〉に任せて引きつけておき、〈集え・テイマーサモナー〉が攻めて一気に手薄の拠点を落とす作戦。これが見事に決まったわ」
「はい。しかし、途中で〈筋肉は最強だ〉も魅せました」
「魅せたね~。あれはなんだったのかなユミキちゃん!?」
「あれはもうすぐ一般発売予定の〈馬車〉装備、〈無人腕車ガンゴレ〉よ。とあるギルドがレシピを手に入れBランク生産ギルド〈彫金ノ技工士〉へ製作を依頼した、上級でも使用できる〈馬車〉らしいわ」
「そ、それだけ聞くととんでもなく有用そうに聞こえるけど!?」
「筋肉たちはこれを、何を思ったのか前ギルドマスター、ランドルさんの顔像を乗せて改造してしまったのよ。その名も〈ガンゴレ・マッスルバージョン〉、らしいわ。希望者にはオプションでランドルさんの顔像を取り付けてくれるみたいよ」
「そんなオプションってある!?!?」
「明らかに方向性を間違えて、いえ、これが正しいのでしょうか? 〈氷の城塞〉の防壁を攻略した〈ガンゴレ〉は違和感がありませんでした」
「スティーブン君毒されてるって!!」
「あんな使い方をするのは筋肉だけ、と思いたいのだけど、その戦法はとても優秀だったわ。もしかすると今後さらに進化して何かが取り付けられることも……。とりあえず、あれは今後一般学生でも買えるようになるわ」
「あ、あの馬車を買う人は果たしているのかーー!! そっちも気になるけど今はギルドバトル! 続いて〈ミーティア〉の方を見てみようーー!!」
「コメントに困って話題を方向転換したわね」
「ではユミキさんとしては、〈ミーティア〉が7位ですが」
「あれは〈エデン〉のお隣になったことが不幸だったわ。以上よ」
「簡潔!? 簡潔に完結すぎるよユミキちゃん!? もっとなんかプリーズ!!」
「あのボスラッシュは、いったい何だったのでしょうか?」
「あ、いっちゃう!? そっちの話題についにいっちゃうスティーブン君!? いいよ付き合うよどこまでも!!」
「テンション高いわね」
「こんくらいテンション上げておかないと受け止められないんだって!」
「割と分かるわ。〈エデン〉は上級ダンジョン、そのランク1の最奥ボスである〈クジャ〉の召喚盤を持っていたことは〈学園出世大戦〉の時から知れ渡っていた」
「あれから3ヶ月半。最近〈エデン〉の上級ダンジョン攻略ラッシュの噂は聞こえてはいましたが……」
「あれは〈エデン〉ギルドマスターゼフィルスさんの声をなんとか拾い、私の『トゥルーアイズ』で確認したところ、ランク3のレアボス〈樹精霊・アリドレン〉、ランク4の最奥ボス〈炎帝鳳凰〉、そしてランク6のレアボス〈強打義装機兵・カママクラス〉と言うそうよ」
「レアボスと絵本に出てくる伝説の鳥! いったい全体どうなってんのーー!! そんな召喚盤どこで手に入れたーー!!」
「ダンジョン攻略してゲットしたのでしょ」
「そうだけども!! そうだけどさ!? 違うんだよ!? そう言う意味じゃなくて、この際なんでどうやってゲットしたかは置いといて、なんてもんを召喚してんのさってところなんだよー! これが叫ばずにいられるかーー!!」
「〈ミーティア〉はよく奮闘しました。〈エデン〉のあの重厚な城壁を破壊したギルドは、初めて見ました。それだけでもかなりの偉業と言えるでしょう」
「あの時の観客席の大歓声は凄かったものね。その後の〈クジャ〉を倒した時なんか盛り上がりは最高潮だったわ」
「その後追加が3体出てきて一気に静まりかえっちゃったけどね!? あの落差! あの落差だよ!! もうなんじゃありゃーーなんだよ!?」
「しかも連携、回復、形態変化に、ユニークスキル発動ですか。〈ミーティア〉は本当によく奮闘したと思います」
「分かる! あれに挑むだけでもなんか涙が出てくるくらい感動した!」
「順位こそ7位だったけど〈ミーティア〉にはとても賞賛を送りたいわ」
「ちなみにあれのコストとかどうなってんのかな!?」
「あれはフラーミナさんの職業【傲慢】のスキルね。召喚コストの上限を上げて、モンスターのコストを削減するスキルを持っていたはずよ」
「【大罪】系が強すぎるんだけど!? というか、なんでそれだけの強さを持っていてヒラ構成員!? 普通はギルドマスターとかサブマスターとか務めているレベルじゃない!?」
「〈エデン〉だもの」
「納得しかない!?」
「! お二人とも、北を見てください。〈エデン〉がまた!」
「〈エデン〉が動いたわね! 追いかけるわ!」
「あ、あ、あ、あああああっとーーーー!! 〈エデン〉南下していく! 〈ミーティア〉の元拠点から一旦戻らずそのまま南下ーー! その先にあるのは、〈氷の城塞〉の拠点だー!!」
「せっかく〈筋肉は最強だ〉を下したばかりだというのに……〈氷の城塞〉から目を離せないわ」
「なんと〈氷の城塞〉、先ほどまでの〈筋肉は最強だ〉との激闘故か〈エデン〉の接近にまだ気付いていません!」
「あああああああああーーーーー!?!?」




