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#127 オークション出品。リアルのアイテムは良い物だ




「1億ミールは、さすがにまだ出せないな」


 ルルが見つけたぬいぐるみ、その希望落札価格を見て首を振る。


 〈天魔のぬいぐるみ〉は中級ダンジョンのレアボスドロップだ。

 故にこの金額も納得だろう。


 俺たちはまだ初級上位ダンジョンにすら届いていない。

 この金額を購入すれば破産する。恐ろしい。


「では買えないのです?」


「ああ。まだ無理だな。というかFランクの俺たちがバイヤー(買い手)になるのはまだ早いぞ。そういうのは最低でもDランクくらいからだな」


 Eランクでもできなくはないが、非常にでかい金額が飛んでいくため攻略が停滞する。稼ぐために無駄に周回しなくちゃいけないからだ。効率的に進みたければここは無理をする場面ではない。


 それに俺たちには〈レアモンの笛《ボス用》〉だってある。

 ならレアボスドロップを狙った方が効率が良い。

 オク場で売られている〈天魔のぬいぐるみ〉とは、どうしてもドロップせず上級へ進んでしまった時に買うものであって初級の時に買う物ではない。その後たくさん当たったら目も当てられないし、「天使」と「悪魔」はそれぞれスカウト1人までなんだよ。


 というわけで今回は見送りだ。

 しかし、良い物が見れた。

 やっぱりリアルのアイテムは良いものだ。

 ゲームの画面上の物と違い、立体というのが素晴らしい。


 ルルが「残念」と呟いてディスプレイケースに視線を戻した。

 聞き分けが良いな。もっとごねるかと思ったけど、そう思って聞いてみる。


「手に入らないけど良いのか?」


「良いのです。ぬいぐるみは愛する物であってコレクションする物ではないのです。できるなら傍で愛でたいですが、できなくても愛を感じる事はできるのです」


 彼女の持論のようなものか?

 ギルドの時も思ったけど、意外にルルはぬいぐるみを絶対自分の物にしようとはしない。くださいとはよく言うけど。ぬいぐるみは愛でる物、というのが彼女の持論らしい。

 さすが、ぬいぐるみ愛好家を自称するだけあって彼女にもこだわりがあるのか。いいね。そういうこだわり好きだぜ俺は。




 それからオク場をみんなで回った。


 俺もゲーム画面上では見ていたが、それがリアル化した世界に興奮が止まらなかった。

 ラナやハンナも興奮しているようであっちこっち行っては解説、行っては説明を求められた。俺も〈ダン活〉の広い知識を(もと)に語ってやる。


「ほんと、呆れるくらい物知りね。どこでそんな知識を蓄えてきたのよ?」


「すばらしいですね。これでは執事の面目が危ういです」


 一歩引いた位置で付いてくるシエラとセレスタン、君たちも〈ダン活〉の知識が知りたいか?

 いいぞ、いつでも聞いてみろ! そして深みにハマるが良い。ふはは。



 途中ルルが居ないと思ったら最初のディスプレイケースに張り付いていたところを発見したのでシエラが回収してきた。どんだけぬいぐるみが好きなんだこの子?

 おかげで他のお客さんディスプレイケースよりルルを見てたよ。出品物に目もくれていなかったよ。最後に見た時〈トパーズ〉は初期設定の10万円のままだった。大丈夫かなこれ?


 ついでにラナも、


「ゼフィルス、これ、これ欲しいわ! 買いなさい!」


「はっせんはっぴゃくまんみーる……」


「却下だ却下。欲しけりゃ自分で買えよ、王女だろ?」


「王女がお金持ちだなんて思わない事ね!」


「なぜこのタイミングで威張る?」


 ラナが指さしたアイテムの金額をハンナが呆然と読み上げて俺が却下する。

 王女は意外とミールを持っていないらしい。

 さもありなん。俺が国王でもラナに大金を持たせたくはない。

 何故かまだ見ぬ国王と心が通じ合った気がした。(気のせいだ)




 そんなハプニングもあったがオク場見学を無事終える。

 やはり買える物なんて無かったので今回は見学だけだ。


「為になったかシエラ?」


「ええ。面白いところだったわ。ギルドランクが上がればシングルオークションにも行けるのよね?」


「ああ。こいつは一月に一度しかやらないんだが、ちゃんとシングルオークションも開催されているぞ。こっちは中級以上のレアな品だけが出品可能だ。当然、落札額は毎回すんごいぞ」


「そう。楽しみね」


 本当にな。

 どうやらシエラはオークションが気に入った様子だ。

 へたをすると破産するのでその辺後で言い聞かせておこう。




 ギルドに戻ると昨日の続きでステータスの調整を行う事にした。


 〈小狼の浅森ダンジョン〉から帰ってきてからずっとやろうと思っていたのだが、なかなか時間が取れなかった上に新メンバーの方に掛かりきりだったからな。

 今日のダンジョンアタックは本当に無しにするつもりだし、時間も余っているのでちょうど良い。


 エステルは居ないが、帰ってきたらやってもらおう。


「あとちょっとで上限だったわね。今【聖女LV32】よ! ゼフィルス、何か言う事は無いの!」


「あーすごいレベルだね~。あ、俺は今【勇者LV34】だから」


「ちょっと、軽いわよ! もっとちゃんと褒め称えなさい! 私王女で【聖女】様よ!」


 まったく【聖女】らしく見えないんだよなぁ。レベルが上がれば【聖女】っぽい性格になっていくのかと少し期待したが、今のところそんな兆候(ちょうこう)は欠片も無い。いつものラナだ。


「みんな同じね。私も【盾姫LV32】よ、エステルも昨日LV32だと言っていたわ」


「ほへぇ。みんなすごーです。ルル、まだ職業(ジョブ)にも就いていないのですよ?」


「これはぼくも、うかうかしていられませんね」


「そうだぞセレスタン。このギルドで怠けるならすぐに置いてきぼりを食う羽目(はめ)になる。ま、そうならないよう俺がしっかりレベル上げを手伝ってやるから安心しろ」


「それは心強いですね」


 昨日までLV2だったセレスタンがいつもの笑顔に焦りを見せたため協力を約束しておく。


 ま、でももう少し待っていてほしい。まずはEランクに上がるのが優先だから、セレスタンたち新メンバー組のレベル上げはまた今度だな。

 ま、やり方だけは伝授してやるからしばらく自習していてくれ。


「私は【錬金術師LV35】になったけれど、本当に何も振らなくて良いの?」


「ああ。ハンナは三段階目のツリーが解放された時のためSPは貯めておいてくれ。ステータスは【RES】を中心に振ってくれ」


「うん。分かったよ」


 ハンナはこのまま行けば1年生で初の三段階目ツリー解放者になるな。それがまた波紋を生むかもしれないが、うん。知らない方が幸せだろう。


 みんなにもステータスを見ながら色々とアドバイスを送る。

 夕方前にはエステルたちも帰ってきたのでそちらにもアドバイスだ。

 うーん。忙しくなってきた。ゲーム時代の〈ダン活〉を思い出すなぁ。





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