#1160 ラナたちが激突! 東側にいるギルド判明!
場所は〈エデン〉拠点の東、こちらにはセレスタンを先頭にシエラ、ラナ、エステル、パメラ、ノエルが続き、真っ直ぐに南東にある拠点へと向かっていた。
ラナは基本防衛がメインだが、最初の索敵だけは打って出ることになっていた。
理由は斥候潰しである。ラナほど斥候を潰してきた者はいない。(ラナはヒーラーです)
いくら拠点の位置が割れていたとしても、そこにどんなギルドが居るのか分からない状態、かつ試合開始直後で元気いっぱいのメンバーが全員揃っている拠点へ攻めるギルドなんてそうはいない。
つまり、ラナはこの瞬間だけは防衛をさほど気にすることなく打って出ることが可能なのだ。
だが、それだけだと各個撃破される危険があるため、護衛のシエラにエステル。索敵妨害はセレスタンが担当。五段階目ツリー『私が案内いたしましょう』は索敵をすり抜ける強力なハイド系スキルだ。しかも先頭を進んでいるとき、罠を回避しやすくなる効果まで付く。
奇襲するには打って付けのサポートスキルだった。
「ここらでニン! 『忍法・風読み姿映しの術』デース!」
「私も調べちゃうよ! 『ハミングサーチソナー』!」
索敵はパメラとノエルが担当。
五段階目ツリー『忍法・風読み姿映しの術』はハイド系やインビジブル系など、主に周囲に隠れているスキルを見破り、姿を顕わにしてしまう探知スキルだ。もちろん、普通の索敵としても使える。非常に有用なスキルである。
ノエルの四段階目ツリー『ハミングサーチソナー』は探知と罠発見。ハイド系には弱いものの周囲の地形や動いているものを探知することができる。
ダブルで索敵することで相手の情報を漏れなく把握する狙いだ。
するとパメラの感覚に反応有り。
「前方から集団来ているデス! 距離5マス? 数は10ニンデス!」
「了解しました!」
「盾を展開するわ――『四聖操盾』!」
すぐにエステルが槍を構え、シエラが自在盾を宙へと浮かばせる。
「ではここで打ち払いましょう。『こんなこともあろうかと』! ラナ殿下、こちらをどうぞ」
「苦しゅうないわセレスタン!」
5人はここで立ち止まり準備をする。迎え撃つ準備だ。
セレスタンの懐からドンッと出されたのは〈白の玉座〉。
ラナ専用装備にしてフル強化された強力な装備。
すぐにラナが座り装備する。
「もうすぐ脇道から出てくるデス!」
「ラナ殿下をバフするよー『リ・エール』!」
実はこの時、相手側はちゃんとハイド系を使って索敵を妨害していたのだが、パメラのスキルが五段階目ツリーとかなり強力だったために見破られていたりする。
逆に相手も索敵をしていたが、セレスタンの五段階目ツリーに防がれており、感知に違和感はあるものの、気にならない程度だった。
故に、10人の女子たちは安全だと判断してとある道へ出てきてしまった。
そこはラナの射程内だった。
「『大聖光の十宝剣』!」
「ラナ殿下だ!?」
「〈エデン〉だわ!」
「下がって!」
「結界を張るわ! 『ハイバリア』!」
突然の遭遇に慌てる声が響いた。
通路に出たと思ったらラナ殿下が居て宝剣をぶっ放してきたのだ。そりゃ慌てる。
7人は引き返して脇道へ戻り、3人はスキルで対応しようとした。
しかし、ラナの『大聖光の十宝剣』は五段階目ツリー。しかもリーナやノエルのおかげでむっちゃ強化されていた。
「って!?」
「ちょ!」
「嘘!?」
3人がスキルと魔法を使って防ごうとするも、ラナの宝剣はそれを容易く突破した。
「「「キャー!?」」」
しかし、大きくダメージを軽減できたようで3割減る程度で済んだ。しかし、ラナの宝剣はまだまだ終わらないのだ。
「『アンコール』いくよ~♪ 『リ・エール』♪」
「『大聖光の十宝剣』!」
「う、嘘!」
「またぁ!?」
「ちょ、その戦法ダメなやつ!?」
ノエルの『リ・エール』は次に発動したスキル・魔法のクールタイムをゼロにする。
おかげで連続の『リ・エール』を付与されたラナは『大聖光の十宝剣』をクールタイム無しで放つことができてしまう。
宝剣が再び3人を狙う。体勢を崩し、防げないと分かっている攻撃に対して3人はどうすることも出来なかった。だが。
「『プロミネンス・アイズン』!」
宝剣が再び3人に当たる直前、特大の炎の光線が宝剣の半分を消し去ったのだ。
「「「キャー!?」」」
まあ、5本くらい直撃してしまったが。3人も魔法で迎撃することでなんとか生き残った。
「あれは、〈ミーティア〉のサブマスターよ」
「南東にいたのは〈ミーティア〉でしたか。強力な相手ですね」
そう、そこに居たのは〈ミーティア〉のサブマスター、【ゴッドアイズン】のマナエラだった。
北エリアにある3つのギルドがこれで判明した。
「みんな退くのだわ!」
「手を貸して!」
マナエラの言葉に、2発の宝剣を食らってダウンした3人を救助しようと他のメンバーが出てくる。
「出てきたわね。もう一発よ! 『大聖光の十宝剣』!」
そこへラナがクールタイムがゼロになった『大聖光の十宝剣』をさらにお見舞いした。
「来る! 来ちゃってる!」
「みんな合わせて! 『プロミネンス・バースト』!」
「「「「『プロミネンス・バースト』!」」」」
だが、そこはさすがの古参Aランクギルド。
お得意の横一列隊列を組み、全員が揃っての一斉攻撃を放つことでなんと『大聖光の十宝剣』を防いで見せたのだ。
「! 防がれた! やるじゃないの! さすがは古参ね!」
このラナの十宝剣3連射は以前のAランク戦でBランク非公式ランキング、当時第七位だった〈弓聖手〉へ試合開始直後に致命傷を与えた強力なコンボだ。
あの時とは状況が違うとはいえ、誰1人倒せなかったことにラナが賞賛を送る。
「ですが、懐に入ってしまえばこちらのものです」
「同意します――『ハイパーセカンドドライブ』!」
「うそ、いつの間に接近を!?」
「速い!」
「合わせて!」
「「「「『フレアバースト』!」」」」
「『アジャスト・フル・フォートレス』!」
「「「「!? 防がれた!?」」」」
「〈三ツリ〉ではいくら束になってもこの盾は打ち破れないわよ」
ラナの中空から迫る宝剣に気を取られていると、セレスタンとエステルが高速で接近していた。
エステルの足装備はこれまた新しい〈戦車〉装備で、1人乗り用の〈イグニッションローラー〉。コンパクトな見た目にかかわらず推進力が高く、非常に小回りの利く上級下位〈金箱〉産レシピから生み出された乗り物装備だ。
急速な接近に〈ミーティア〉が『フレアバースト』の4連発で迎撃する。
普通4連続も魔法が直撃すれば下手すれば即退場するような強力な戦法だが、そこに割り込んだのはシエラの城塞のような巨盾。
シエラの言うとおり、〈三ツリ〉ではいくら集まってもびくともしなかった。
その脇を通る形でエステルとセレスタンが接近する。
「『スラストゲイルサイクロン』!」
「『不動高遠爆』!」
「「「「キャー!?」」」」
2人の五段階目ツリーが炸裂した。
周囲範囲攻撃で吹き飛ばすエステル。
だが、本命はセレスタン。
『不動高遠爆』は高い位置だろうが遠い位置だろうが当てる中距離攻撃スキル。そして当たると爆発する。
圏内に入ったのだろう。セレスタンが誰も居ない正面へ拳を放つと、最初に宝剣でダウンしてようやく復帰した3人の位置が、爆発した。これぞ【闘神執事】の武練の粋。
しかし、そこにはいつの間にかマナエラが割り込んで3人を庇っていた。
防御スキルを使ったようだが、一歩遅かったのかダメージをそこそこ食らっている。
「! やってくれたわね。反撃よ!」
「「「「おおー!!」」」」
「食らうのだわ――『魔神の睨み』!」
「むっ。なんと」
しかし、そこでマナエラが反撃する。
マナエラもゼフィルスと共に〈山ダン〉で合同攻略に参加し、最終的には〈岩ダン〉のエリアボスを周回してLV30に到達した者の1人だ。
ゼフィルスのアドバイスに則り、LV20辺りからSPを貯め続けて五段階目ツリーのスキルを大量に獲得している猛者である。
マナエラが可愛く睨むと、セレスタンが動かなくなった。
これは〈麻痺〉。
『状態異常耐性』を貫通し、強力な〈麻痺〉攻撃で動けなくしたのだ。
セレスタンに一撃入れるとか、何気に偉業である。
「あのセレスタンが!?」
ラナも驚いていた。しかし。
「ふっ『無念無想』! なかなかの攻撃でした」
セレスタンは自己回復スキルで〈麻痺〉を解く。
本来〈麻痺〉の最中はスキルや魔法は使えないが、『無念無想』は状態異常中でも使用可能という非常に有能な自己回復スキルだ。状態異常の回復はもちろん、HPとMPも少し回復する。
しかし、マナエラはそれに動じず、セレスタンが次の行動に移る前にさらなる魔法を放とうとしていた。
「これならどう――『エクスプロージョン・アイズン』!」
これも五段階目ツリー。
マナエラが右目をパチンとウインクすると、セレスタンの真後ろが光を放ち、次の瞬間には大爆発した。
「セレスタン!? 『大回復の祝福』!」
「大丈夫ですラナ殿下。大事ありません」
だが、大爆発の中心地にいたセレスタンは普通に無事だった。
回避スキル『残像回避』を使い直前で避けたのだ。真後ろからの攻撃をどうやって察知したのかはわからない。
「ですが、見事に逃げられてしまいましたね」
セレスタンが目を向けると、すでに〈ミーティア〉は全員が撤退し終わっていた。素早く優秀な撤退だった。
反撃すると言って、実は撤退のための行動だったということだ。
「むう、警戒して護衛に戻ったのは失敗でした」
「エステルは心配性なのよ。私がしっかり守っているからあなたはもっと前に出なさい」
「はい。シエラ殿、精進いたします」
「でも、その装備速いわね。本当にあの位置からここまですぐに戻れるなんて」
反省するエステルだったが、シエラはそれよりもエステルの新装備が気になる様子だ。
「でもセレスタンが攻撃を食らうなんて初めて見たデース」
「いえいえ。彼女たちが上手だったのですよ。それに練度も高く、連携も良い。敵ながらあっぱれと賞賛を送るところです」
『魔神の睨み』はセレスタンでも初めて見た攻撃だった。
高い耐性を持っているはずのセレスタンを〈麻痺〉させたことといい、こちらに悟らせないほど上手い撤退の連携といい、セレスタンは素直に彼女たちを賞賛する。
「一旦戻りましょう。相手のギルドが分かっただけで収穫です」
「そうですね。よろしいですかラナ様?」
「苦しゅうないわ。深追いは禁物よ! みんな戻るわよ!」
こうして〈エデン〉と〈ミーティア〉の初の邂逅は終わったのだった。




