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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第二十五章 2年生クラス替えと〈学園春風大戦〉Sランク戦!

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1319/2115

#1153 マリー先輩、Aランク戦出場で大忙し。




 交流という名の久しぶりの情報交換を済ませているとチャイムが鳴りロングホームルームの終わりを教えてくれる。

 続いて学園長のありがたいお言葉が学園放送で流れたがすぐに終わり、これで進級式は終了となった。


「はい。では今日はこれで解散にしますね。最後にいくつか連絡事項があります。まず今週末の金曜日から行なわれる予定の、空席のギルドランクを賭けた〈拠点落とし〉、通称〈学園春風大戦〉ですね。ここにいるみんなからするとSランク戦と言った方がいいのかな?」


 そう、フィリス先生が話したとおり今週末の金曜日には学園名物の〈拠点落とし〉が開催される。


 学園名物と言っているのは、そもそも〈拠点落とし〉が行なわれるのは毎年この4月と10月の2回だけだからだ。

 4月は最上級生が卒業し、解散して席が空いたギルドランクを埋めるために行ない、10月はクラス対抗戦で行なわれる。

 大きなイベントだ。


 まあ、去年はそれにプラスして〈学園出世大戦〉というのもあったが、それは例外。

 基本的に空席が出来たこの時期にしか行なわれないため割と貴重なイベントで、学園名物として広まっているというわけだ。

 今年は4月の方にSランク戦という大きな目玉が出来たため〈学園春風大戦〉と命名されたと聞いている。


 そしてここ2年1組は強者揃い。ほぼ全員がAランクかSランクギルドに所属しているという強者のオンパレード。フィリス先生が敢えてSランク戦と言い直したのも頷けるというものだ。


「Sランクの空席は1つ。うちのクラスからは〈エデン〉と〈集え・テイマーサモナー〉が出場です。悔いの無いよう精一杯がんばってくださいね」


 フィリス先生の励ましのお言葉が身に染み渡る。ちょっと元気が出た気がするぜ。

 先月、Sランクギルド〈キングアブソリュート〉が解散したためその席を取り合うSランク戦〈拠点落とし〉。フィリス先生によれば、全ての戦闘ギルドから応募があったとのことだ。

 楽しみになってきたぜ。


 ちなみにAランクギルドでは戦闘ギルドは解散していない。〈新緑の里〉だけ怪しかったが、あそこは解散するとエルフが行き場をなくしてしまうからな。継続だ。

 今は続々と1年生エルフが集まっていてこのままいけば30人は集まる予想らしい。


 ただ1ギルドだけあったAランク生産ギルドの方は解散してしまったので今はてんやわんやらしいぞ。


 他にもBランクギルドで2つ、Cランクギルドで42のギルドが解散し、現在〈拠点落とし〉が組まれているそうだ。

 て、Cランクギルド解散多いな!?

 実はこれ、〈学園出世大戦〉で無理して勝ち上った元3年生(赤世代)ギルドが大量に解散した結果らしい。無事名誉あるCランクで卒業できてむせび泣く卒業生も多かったそうだ。良かったな。


 しかし、ふっふっふ、解散したギルドが多いのか。楽しみだな。今週末か。

 この春休みにがんばって仕込んできたものを今こそ発揮するときだな。




 進級式も終わって一度解散し、昼食を取った後、俺はマリー先輩のお店、〈ワッペンシールステッカー〉に来ていた。


「マリー先輩いるか~」


「マリーなら奥にいるよ」


「おおメイリー先輩。助かる! 入らせてもらうな」


「どうぞ~」


 店番はメイリー先輩だった。お店は相変らず忙しいらしく、ちゃんと起きてたようだ。

 ただマリー先輩の返事が無くてちょっと寂しい俺がいる。

 勝手知ったるギルドハウスを進み、マリー先輩専用の工房へと入った。


「マリー先輩いるか~」


「いるで~」


 うむ。やっぱりマリー先輩の返しはこうじゃないと。


「て、相変らず忙しそうだなぁ」


「まぁな~。理由は分かってんやろ~?」


 中に入ると、マリー先輩が高速で手を動かし、スキルでいくつもの布を空中に持ち上げて加工と仕上げを両方進めていた。まるで魔法のようだ。まあ、職業(ジョブ)が【マギクロスアデプト】だからな。魔法で複数同時進行で編むことが可能なんだ。

 だがあのマリー先輩がこっちに視線すら向けず、作業を緩めないということはそれだけ忙しいということだろう。もちろん、心当たりはある。


「おう。週末の〈拠点落とし〉だろ?」


 週末に迫った〈拠点落とし〉に参加するギルド群が〈ワッペンシールステッカー〉に依頼をするなんてわかりきったことだ。さすがにマリー先輩だけだと厳しいので少し前に4枚の〈上級転職チケット〉を渡してサポートしてしまったのは記憶に新しい。


「それと、空席を賭けたギルドバトルや!」


 しかし、マリー先輩は軽く首を振って言い直す。

 その意味を、俺は正確に察した。


「おお? ということはやっぱり、マリー先輩のギルドも参加するのか!?」


「せやで! 初のギルドマスターの大仕事――Aランク戦出場や!」


「おおー!!」


 そう言ってマリー先輩は作業を止めずに胸を張った。俺はそれに大げさに驚く仕草で拍手を贈る。実は知っていたけど、こういうノリが大好きな俺たちです。


 ギルドバトルは何も戦闘ギルドだけで行なわれるものではない。

 もちろん生産ギルドも行なわれる。そっちはギルドバトル〈作品コンテスト〉だ。


「つうわけで今大変なんよ。用意すべきものがありまくりや! ちゅうわけで兄さん」


「おう。ふっふっふ、注文にあったもの、色々持って来たぜ?」


 俺が〈空間収納鞄(アイテムバッグ)〉を差し出すと、そこで初めてこっちを向いたマリー先輩がバッグの中身を覗き込んで――ニヤリと笑う。


「にゅふふ。これで勝ったも同然やな!」


「おう! 圧倒的に勝っちゃうな!」


「「ふはははははは!!」」


 2人で怪しく笑い合った。ふははははは!!


 生産ギルドでは、Sランクは〈青空と女神〉が継続しているので空席は無いが、その下、Aランクギルドに空席が出来てしまったのだからさあ大変だ。


 元々あそこは〈青空と女神〉の下請けみたいなポジションで最上級生のみで構成されていたらしいからな。

 その全員が卒業したことにより解散となったのだ。


 その後釜に〈ワッペンシールステッカー〉が入ろうということで、今は準備に大忙し。〈エデン〉は〈ワッペンシールステッカー〉の依頼を受けて色々と上級ダンジョンの深層でしか採集出来ないようなものを大量に持って来たというわけだ。

 ボス素材もいっぱいあるぜ? ついでに〈金箱〉産レシピもつけちゃうぜ!


「今回はランクもそうやけど、絶対に勝ちたかったんや。兄さんおおきに!」


「おう。また何かあれば〈エデン〉を頼ってくれ。〈ワッペンシールステッカー〉とは持ちつ持たれつだからな!」


「助かるわぁ。これで新しくチケットが手に入るで!」


「例の〈ハンター委員会〉から回ってくるチケットだな! 学園もようやく生産ギルドまで回せるようになったかぁ」


 そう、マリー先輩が今回ばかりは力を入れまくっているのには理由があった。

 Aランクの生産ギルドともなれば、それは学園を代表する顔とほぼ同義。

 故に、学園からのサポートも手厚くなるし、〈上級転職チケット〉が回ってくるのも基本的にAランク以上が先だ。


「学園はなぁ、Aランクギルドに昇格した生産ギルドに2枚の〈上級転職チケット〉を配ることを正式に決めたんや! これはうちら〈ワッペンシールステッカー〉がいただくで!!」


「よ! マリー先輩素敵!」


 とうとう〈ハンター委員会〉が集めたチケットが生産ギルドにも出回るときが来たのだ。

 なかなか長い時間が掛かったが、支援職だけではなく生産職にもチケットを回す辺り良い感じの認識が共有されているな。


 学園の方針は支援職を優先とするという話だったが、支援職だけにチケットを回すのもよろしくない。

 だから今回のギルドバトルに(かこつ)けて景品を用意したのだろう。学園も考えてる。


〈エデン〉がさらにチケットを援助しても良かったがせっかくマリー先輩がやる気なのだ。せっかくのギルドマスター初の大仕事を俺が邪魔するのはよくない。

 ということで俺はサポートとしてマリー先輩の依頼品を納品に来たのだった。


 生産ギルド(こっち)も盛り上がってんなぁ。


 なお、俺がついでに入れておいた上級〈金箱〉産レシピたちを後々になって発見したマリー先輩が悲鳴をギルド内に(とどろ)かせたらしいが、それはまた別の話だ。




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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[良い点] レシピ解読の時に驚きのあまり幼若竜を投げてしまってさらに悲鳴を上げるマリー先輩が見えた。
[一言] >なお、俺がついでに入れておいた上級〈金箱〉産レシピたちを後々になって発見したマリー先輩が悲鳴をギルド内に轟かせたらしいが、それはまた別の話だ。 納品時にアイテムバックをのぞき込んでたから…
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