#1152 新クラス2年1組交流。男子の結束を強めよう。
「ラムダ、久しぶりだな」
「ああ、ゼフィルスたちも元気そうでなによりだ」
ホームルームが挨拶だけで終わると、今度は学生間の交流の時間となった。
少なくなってしまった俺たち男子組はすぐに集まって交流する。
男子に至ってはクラスに5人しかいなくなってしまったからな。結束は大事なことだ。友情を育まねば。
「とりあえずは全員知ったメンバーで良かったな。男子の結束を強めよう」
「そっちは全員ギルドが同じだから俺が溶け込めばいいだけか」
男子は俺、セレスタン、メルト、レグラムが〈エデン〉所属だ。
ラムダだけ違うが、元々俺たちとは仲が良いのですでに溶け込んでいるようなものだろうけどな。
「……ラムダはあのあとどこかのギルドに所属することにしたのか?」
「それは俺も気になってたな」
レグラムの言葉にメルトが便乗する。
というのも、ラムダが所属していたギルド〈キングアブソリュート〉が先月をもって解散してしまったからだ。
学園も春休みに突入してしまったし、ラムダとは1ヶ月ぶりの再会だった。
この1ヶ月、ラムダはどこで何をしていたんだろう?
「俺は〈キングアブソリュート〉が解散した後は父――〈救護委員会〉に所属させてもらってな。春休みはずっと研修をしていたよ」
「ああ、ラムダも〈救護委員会〉に入ったのか」
〈キングアブソリュート〉に所属していたメンバーはそのほぼ全員が優秀な人材だったため、その多くが学園公式ギルドに籍を移したと聞いていたが、ラムダも〈救護委員会〉に加入したらしい。
〈救護委員会〉にはラムダの父、シグマ大隊長がいるからな。
しかし、ラムダの話を聞くに親子だからって手加減はされず、むしろシグマ大隊長の息子だからこそ厳しいスパルタな研修メニューを受けるハメになったそうだ。
「春休みなのに休み無しだぞ。半分以上地獄だった」
おお、普段騎士らしく胸を張っているラムダが弱気な発言をするなんて珍しい。
研修は相当キツかったらしいな。〈キングアブソリュート〉の育成でLVが30になっていたラムダは〈救護委員会〉でも期待の新人だ。育成に力を入れたくなる気持ちも分かるぜ。
その後は明るい話題で盛り上がった。入学式の話や、今週末に予定されているSランク戦について語り合う。
男子の交流を終えると続いて女子との交流だ。
「レグラム様はこっちですよ?」
「……またなみんな」
雰囲気を察したオリヒメさんがすぐにいらっしゃってレグラムを引っ張って行った。
さすがは正妻。隙が無いんだぜ。
続いてやってきたのは〈百鬼夜行〉のハクだった。
「メルトはーん久しぶりどすなぁ」
「うっ。ああ、久しぶりだなハク。ゼフィルスから聞いたがLV30になったそうじゃないか」
「あら? もうゼフィルスはん言わんといてぇな。うちが言って驚かせたかったのに」
「そいつは悪かった。だが、メルトは自分から聞きに来るくらいにはハクが気になっていたみたいだぞ?」
「え、そうなんかメルトはん?」
「ゼフィルス、余計なことを……」
「んもう、そうならそうと言うてぇなぁ。メルトはんなら色々詳しく教えたるぇ」
相変わらずハクはメルトが大好きだな。これがライク的な意味なのかラブ的な意味なのかは未だに分からんが。
だがメルトも嫌がっては……いや、割と嫌がっているように見える。
「こらー! ハク、メルト様に何してるのよ!」
「あん、ミサトはんのいけずぅ、もうちょっとメルトはん貸してぇなぁ」
「ダメだよ! メルト様のお身体はとっても繊細なの。こんなに小さいんだよ!」
「おい」
「だからそんな邪な手で触っちゃいけないの!」
「うふふ、相変らず可愛いなぁ。ならミサトはんごと一緒に抱きしめちゃいましょ」
「ちょ!?」
うーん。ハクは相変らず、いや1ヶ月ぶりに大好きなメルトとミサトに会えた影響かいつもよりスキンシップ過多だな。
ちなみにハクは先ほど言ったように〈3年生合同攻略〉に参加した後も〈岩ダン〉でレベル上げをし、メキメキ実力を上げてついにLV30に至ったそうだ。
以前からそうだったが、〈エデン〉とため張れる貴重な同級生なんだよなぁ。
さて、メルトは捕まっちまったし、俺たちは〈ハンター委員会〉所属のミューのところへでも行こうか。
「……カルアが、いない」
「すまない。私がもう少ししっかりしていれば」
「ううん、リカのせいじゃない。全てはカルアの自業自得」
「どうしたんだ?」
そこではミューとリカが悲壮な表情だった。
どよーんとしていた。
「カルア、いない」
「ああ……」
ミューの一言で全てを察した。
カルアは2組へ行ってしまったのだ。
そういえばミューってカルアと仲良かったな。
リカもカルアがいなくてとても寂しそうだ。
カルアは頑張ったが。なんとなく2組へ行きそうな気はしていた。リカはよく頑張ったよ。カルアのテストの点が平均点を超えたからな。マジ快挙だった。
惜しむらくは〈青世代〉の〈戦闘課〉って8400人の学生がいるところである。平均点をちょっと超えたくらいだと順位としては4000位くらい。1組入りは難しかった模様だ。
とりあえず話を変えよう。
「ミュー、〈ハンター委員会〉の調子はどうだ? あれから〈岩ダン〉でレベル上げをしていると聞いたが」
「うん。1陣は全員LV30になった」
「マジか! やったな!」
「ぶい」
驚きの報告が来た。ずいぶんと早い。
いや、〈ハンター委員会〉は学園公式ギルド。〈フルート〉だって手に入れたし、主にエリアボスを討伐するギルドだ。最近は〈岩ダン〉で周回しているらしいし、学園のバックアップ込みならこれくらいはいけるだろう。
「今は2陣を連れて、〈岩ダン〉の49層でレベリング、あとチケ集めしてる」
「〈ハンター委員会〉もずいぶん成長したなぁ」
2年生合同攻略の時に誘って良かったと思う。
〈ハンター委員会〉のおかげでちょくちょく〈上級転職チケット〉が回り始めたらしいからな。
とはいえまだ学園公式ギルドなどの身内ばかりで、それ以外だと〈支援職〉を優先しているらしい。おかげで上級ダンジョンの安全性が更に増したとかで、最近では上級ダンジョンに挑めるBランクギルドも増えてきているとのことだ。中には上級職の多いCランクギルドまで潜っているとも聞く。
近況報告になってしまったが、ミューもいつも通りでなにより。
最後、1組に所属する学生の中で〈エデン〉に所属していない4人の最後の1人、アイシャの元へ行く。
「アイシャ、久しぶりだな」
「はい。ゼフィルス君、セレスタン君、ラムダ君も元気そうね」
〈集え・テイマーサモナー〉に所属するアイシャは2年生合同攻略の時に上級職【イモータルシャダウン】に〈上級転職〉している上に、テストでは毎度10位以内に入ってくる秀才で無事1組入りを勝ち取った1人だ。LVは、こっちも30だという。まあ、あの時はエリアボス周回しまくってしまったからな。
見た目は文学少女というか委員長タイプで、メガネと三つ編みがよく似合うのにこの戦闘力である。怒らせてはダメなタイプの委員長だな。お説教されないよう気をつけねば。
冗談だ。それはともかく、世間話。
「〈集え・テイマーサモナー〉はどんな感じだ? 4月と言えばギルドバトルが激化する期間らしいが」
「あ、それはね――」
俺は気になっていたことを聞く。
4月と言えば最上級生が卒業してしまったことで弱体化してしまったギルドを狙い、ランク戦が活発化する時期だ。
なお、〈エデン〉はどこからも挑まれていないのが悲しいところ。
おかしい。〈エデン〉はこんなにウェルカムなのに。
そして〈集え・テイマーサモナー〉は以前〈学園出世大戦〉でAランクに昇格したギルドのうち、最弱と言われていたギルドだった。故にかなり狙い目と思われていたらしい。
しかし、現ギルドマスターのカリン先輩がギルドを大改革し、2年生合同攻略でビビらせることに成功。2月になって〈ハンマーバトルロイヤル〉がランク戦を挑んできたがこれを返り討ちにして評価が大きく変わったのだ。
俺としては〈集え・テイマーサモナー〉が好きなので是非ランク落ちなんかせず、このままがんばってほしいところだ。
「今月も挑まれているよ。確か〈サンダーボルケーション〉だったかな。ランク戦は明日の予定よ」
「余裕そうだな」
「負けるわけ無いって先輩たちは言っていたわ」
「ま、俺も今の〈集え・テイマーサモナー〉がBランクギルドに負けるとは思わないけどな」
唯一良い勝負をしそうと言われているのが〈弓聖手〉、あそこは対空射撃に優れているからな。あと可能性がありそうなのは〈中毒メシ満腹中〉くらいだろう。
「〈世界の熊〉は?」
「静観しているわ。〈ハンマーバトルロイヤル〉は〈新緑の里〉とギルドバトルをすることに決まったみたいね」
「ああ、そりゃ〈ハンマーバトルロイヤル〉がAランクに上がってくるな」
〈世界の熊〉は熊騎兵が有能な、現Bランク非公式ランキングで第一位のギルドだ。
こちらは自分の強さでのし上がりたいと思っている、つまり弱体化したギルドに挑むのを良しとしていない男気溢れるギルドである。
〈ハンマーバトルロイヤル〉は現Bランクで第二位。そして弱体化が激しい〈新緑の里〉に挑んだとのことだ。
〈新緑の里〉は「エルフ」カテゴリーしか所属していないという特殊なギルドで、本来ならエルフのみで構成された非常に強力なギルドなのだが。人数が圧倒的に不足している。
現Aランクギルドで、最上級生の卒業により一番弱体化したのが〈新緑の里〉だ。
あそこは元々23人しかエルフがおらず、そのうち3分の1である8人の3年生が卒業していったため現在は15人しかいない。(現1年生は除く)
Aランク戦は〈25人戦〉だ。まず、〈ハンマーバトルロイヤル〉が上がってくるだろう。
「どうも〈世界の熊〉はSランク戦によって空いた空席を巡るAランク戦〈拠点落とし〉でトップに立って、Aランクギルドにのし上がりたいみたいなのよ」
「あそこもこだわりが強いなぁ」
俺たちがSランクに昇格した後に出来る空席を狙うのか。
弱体化した〈新緑の里〉は狙わず敢えて難易度の高い方へ進もうとするのは好感が持てるな。今年も4月は荒れそうだ。
そんな感じに情報交換しつつ交流は進んでいったのだった。




