#1145 メルト紹介で念願の伯爵男子現る。
急なお誘いだったのでとりあえずサーシャとは後でまた詳しい話をしようと部屋番号だけ聞いて別れ、俺たちはその後も勧誘を続けた。
「あ、アレ見て! あの有名な〈エデン〉よ!」
「! しかも噂の勇者さんじゃないかしら!」
「あ、あれが勇者さん!? 噂よりかっこいいじゃない!」
「ねぇ、声かけてみない?」
「で、でも後ろで目を光らせている方がいるわ。伯爵家の姫が2人よ、分が悪いんじゃないかしら」
「あ、あそこに居るのはシャロンさんでは? シャロンさんに取り次いでもらうのはどうでしょう?」
「それよ! 王都のパーティで私、約束したもの! 行きましょう!」
遠巻きにこちらを見つめる人も居れば、シャロンを経由して紹介してもらおうとするご令嬢もいて、昨日までと全く違う展開に多少戸惑いを覚えつつも縁を結んでいく。
俺が自ら勧誘しに行くことはシエラとシャロンに禁止されてしまったので、俺はシャロン経由で紹介される人を待つ役目で固定された。
シエラ? シエラはずっと俺の側にいたよ。なんだろう、ストッパーと言っていたんだけど、俺を守ってくれるという意味のストッパーじゃない気がするんだ。
また、ミサトやノエルからも何人か紹介された。
そのほとんどが女の子なのはまあ、仕方ない。男子なんて話しかけに来ようとしたところでなぜか突然Uターンして帰っていくんだ。
どこ行くの? こっち来ても良いよ!?
ううむ。〈エデン〉に男子が欲しい。こりゃメルトに期待大だ。
そのメルトはと言うと、なぜか色々な女性から声を掛けられていた。
学生服を着ているのに新入生と間違えられたりしている。
ショタの悲劇だ。
新入生とか、まだ学生服の襟の色の意味とか知らない人も多いので仕方ない。
だからって腕を組んで如何にも不機嫌ですというオーラを放つのはやめた方がいいぞメルトよ。なぜか余計女性が集まってきているから。ミサトはなぜかニヤニヤしながらそれを眺めていたが。
「ふう。ちょっと休憩にしよう。今何人だ?」
「えっと、28人だね。ゼフィルス君の希望通り、貴族出身や貴族の分家、あと獣人の人やエルフ、ドワーフさんをメインに絞ったから」
俺の言葉にミサトは手帳を出して確認する。
さすがはスカウトマンのミサトだ。しっかり記録を取っている。
じゃないと、誰に声を掛けたとか、連絡先とか覚えきれないからな。
なお、絞ったのは仕方なかった。ノーカテゴリーの人は1人許すととんでもない事になるというのは昨日のあれで分かったからな。あと、純粋にシエラとシャロンを見て話しかけてくる子がいなかったのもある。
「でもシエラさんやシャロンちゃんが来てくれて良かったよ。昨日までの大混雑だと誰に声を掛けたとかわっかんなくってさ」
「それはそうでしょうね」
「うん。ミサトちゃん苦労したんだね」
なぜかしみじみとミサトに共感するシエラとシャロン。
午後には更に到着する人も増え、シャロンやノエル、ミサトを経由して俺に紹介してもらうという構図が出来上がりつつあった。
それに違反して俺に直接話しかける者は問答無用でシエラが却下していたよ。
「周りが見えていないような人はただ反感を買うだけよ。学園で学び直すべきね」
うむ。学園は学ぶ場だ。
しっかりと教養を身につけてシエラから合格をもらったらまた来てほしい。
言葉にはできないので、そう心の中で伝えて見送った。
ああいう人には絶対に俺が直接声を掛けてはいけないと厳命されているので仕方ない。
案内も無いのだからちょっと厳しすぎる気がしなくもないが、貴族の子弟であれば誰かに紹介してもらうという行為の方が通常なので、そういう雰囲気を感じ取ることはむしろ当然なのだという。
それが分からないなら注意を食らうと。
「貴族社会って大変だ」
「というより、全員採用できないのだからこうやって厳選しているのよ。ゼフィルスも非常識な人が来るより常識的な人が来た方が良いでしょ?」
「まあ、そうだな。多少型破りでも実力があれば受け入れるが、まだその実力が無いからな」
多少のことに目を瞑るほどの実力があれば受け入れる用意はあるが、まだ入学式前だ。
新入生はまだ誰1人職業に付いていないので実力を見せてもらうこともできない。つまり礼儀を知っているか否かがポイントになってくるというわけだ。
「世の中には環境に甘えすぎて勉強が疎かになっている子女だっているの。赤点を出す子なんてメンバーに加えたくないでしょ? とはいえ、そういう人はあらかじめ学園の審査で弾かれているはずなのだけど」
まあそんなわけで、シエラたちの厳しいチェックが進む。
今回縁を交わした人は全員〈エデン〉に採用されるわけではない。枠もそんなに無いしな。セレスタンチェックだってしていないので、今回は顔を繋ぐだけだ。
顔を繋ぐことは重要。貴族社会でも大切な事だってシエラも言ってたし。
これはそろそろ〈エデン〉の枠も上限が見えてきたことが関係している。ここからは誰でも入れて良いというわけには行かない。ポジションなどを考えて職業を厳選しなければならないのだ。故にここで顔を繋いでおき、この職業が必要だと感じたら〈エデン〉に誘うという方針だ。
まあ、この人は逃したくないという貴重な学生がいればその限りではない。男子とかな。
そんなことを続けていると、メルトが戻ってきた。新入生の男子を1人連れて。
「ゼフィルス。紹介したい者がいる」
「お、おお! 待ちわびたぞメルト! その人がメルトが待っていたという人か?」
「ああ。紹介しよう、伯爵家の子息で俺と幼馴染のヴァンだ」
「メルトさんからご紹介に預かりました、ヴァンと申します。〈エデン〉の勇者さんのお話はかねがね。会えて光栄です!」
「それは嬉しいな。俺はゼフィルス。よろしくな」
「はい! ゼフィルス先輩、よろしくお願いします!」
メルトが連れてきたのは意外にも普通の男子高校生らしい風貌の真面目系男子だった。腰に伯爵のシンボルである〈白の羽根飾り〉を身に着けている。伯爵だー!
でもそれ以上に男子がやってきたのが嬉しい。
「見たとおり実直な性格でタンクとして優秀だ。俺も幼い頃から特訓に付き合ってもらっていてな。対遠距離攻撃の対応力はシエラ女史に次ぐと思っている」
「マジか! それほどかよ!」
「ははは、メルトさんにそう褒められると照れますね」
学園に入ったばかりの学生できっちりタンクを務められる者は少ない。いやほとんどいない。
俺だって最初の頃はタンクをしてもよく〈ウルフ〉たちに噛みつかれたし、他の盾士にしても学園に入った当初はお世辞にもタンクが上手いとは言えない者がほとんどだった。
シエラはその例外中の例外で、家が盾士の名家らしく、実家でタンクとしての動きを叩き込まれたからこそタンクが上手かった。
伯爵家は通称〈守りの伯爵〉とも言われる盾士の専門家だ。
メルトはこの体格のせいで大盾や両手盾が上手く扱えず、やむなく魔法使いに転向することになったと聞いているが、シャロンも含め、本来伯爵というのは幼い頃から盾の使い方を叩き込まれるため、タンクが上手いんだ。
いいねいいね。タンクが最初から上手いとかマジありがたい。
「それと、メルト。ヴァンの女性関係は大丈夫か?」
「じじじじ自分の女性関係でありますか!?」
「ヴァン落ち着け。その初心っぽい所、まだ直ってないのか」
どうやらヴァンは女性に免疫が無いらしい。
なんかそんな見た目しているもんな。
かっこいいというより真面目で純朴そうな見た目、黒髪は短く整えられていて、同色の瞳が安心感を誘う。
なんとなく一目で〈エデン〉に来ても大丈夫だと思わせる。一応聞いておいたのだが、うん、大丈夫そうだな。
「まあ、ヴァンのことは俺が保証しよう。こいつが恋愛沙汰のトラブルを起こすことは考えにくいが、俺の方でも指導しておく」
「え? あの、え?」
メルトの言葉に困惑するヴァンだが、今日は顔合わせということでこれで解散となった。
掴みはオーケー(?)。
あれなら〈エデン〉に来てもらっても大丈夫だろう。
後でメルトから色々教わっておいてほしい。
……いや、女性関係ならメルトよりレグラムの方が適当かな?
まあ、メルトならすぐに気が付くだろう。
こうして数日間。俺たちは多くの人たちと縁を結んだのだった。
後書き失礼いたします。お知らせ。
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発売日は11月20日です!
今回の表紙及び口絵は大変力が入っております!
口絵なんて〈エデン〉メンバー15人が全員集合のイラストです!
是非書籍をお手にとって見てみてください!
挿絵では、ついにシエラのジト目も……。
再び小説7巻の特典SS情報!
書籍書き下ろし4本!
セレスタン視点:新しい制度のご案内がされた後のセレスタン。
カルア視点:エクストラダンジョンの不思議なドロップ肉。
ミサト視点:ミサトは顔が広くて人気者。
メルト視点:メルトの小さい頃の練習風景。
(各2000字)
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リーナ視点:リーナの〈ジャストタイムアタック〉の練習風景。(約10000字)
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ハンナ視点:メルトさんとミサトさんの歓迎会と昔の思い出。(約10000字)
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今後も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!




