#1135 久しぶりのパーフェクトビューティフォー現象!
「〈パーフェクトビューティフォー現象〉キターーーーー!! 全員集合だーーーーー!!」
俺は思わずそうシャウトした。
だって仕方なかったんだ。むっちゃ久しぶりの〈パーフェクトビューティフォー現象〉だったんだ!
うおおおおおお!
〈幸猫様〉〈仔猫様〉! ありがとうございます!
「大変だわ! 〈金箱〉が4つも出たわよ! 久しぶりだわ!」
そういえば〈パーフェクトビューティフォー現象〉が起こったとき、そこには必ずラナが居た気がする。ラナにも感謝しておこう。ありがとうございます!
「シズ! すぐにみんなに知らせるのよ! 素晴らしい恩恵がキタってね!」
「畏まりました」
「いいやメッセージを打つだけじゃダメだ! 直接知らせに行くが吉!」
ラナの指示によりシズが冷静に〈学生手帳〉を取り出すが、この大当たりをメッセージで知らせるなんて勿体ない!
俺が直接知らせてやるぜ!
俺は急いでボス部屋から出て救済場所にいるメンバーに呼びかけた。
「みんなすぐに来てくれ! 〈パーフェクトビューティフォー現象〉が発生したんだー!!」
「なんですって!」
「さすがは教官です。もうレアボスを倒したのですね」
「パーフェクトなのです!? ルルは直ぐに行くのです! こうしてはいられないのです!」
近くにいたエリサ、フィナ、ルルの幼女組が驚きの声を上げると、ギルドメンバーたちがすぐに集まって来た。
さすが、これがどれだけ素晴らしい現象かというのをみんなちゃんと分かっている。良いリアクションだ。
あと、なんか周りが騒がしいな。
「パーフェクト?」
「パーフェクトビューティフォーって言ったか? それはいったい?」
「また〈エデン〉が凄いものを発見したの!?」
「〈上級転職チケット〉が2枚出たとか?」
「あの、レアボスは?」
「パーフェクトビューティフォー現象、直訳すると完全で素晴らしい現象?」
「くっ、名前からじゃどんな現象か分からないわ。私たちもボス部屋を覗いてもいいかしら……」
「いやダメでしょ。それはマナー違反よ」
「なんとなくまた〈エデン〉との距離が開いた気がする」
「レアボス、倒しちゃったの!?」
あ、そういえば他のギルドさんも居るんだった。
〈金箱〉4つは〈幸猫様〉と〈仔猫様〉の『幸運』がないと起きない現象。
他のギルドでは〈幸猫様〉たちのことを全く聞かないし、飾っているところを見たことも無いのでこの現象は知られてはいないはずだ。
しかし、それが今日をもって広まることになった。
「〈金箱〉が4つドロップなのです! なにが入っているのか、ルル、すっごく楽しみなのです!」
そんなとあるギルドメンバーの言葉に周りがとてもざわめいたのだ。
「〈金箱〉4つ? 今〈金箱〉が4つドロップしたって言ってなかった?」
「わ、私も確かに聞いたわ」
「うそだろおい!? ただでさえほとんどドロップしない〈金箱〉が4つもドロップしただと!?」
「そ、それだけじゃないわ。確か今〈エデン〉が挑んでいたのって、レアボスじゃなかったかしら?」
「レアボスを初見突破……」
「つ、つまり、レアボス〈金箱〉が4つ!?!?!?」
「激レア決定じゃないの!? それが4つも!?」
「な、何をしたらそんなに〈金箱〉が増えるんだ!?!?」
「え、えええええええ!?!?」
おっと、周りが混乱の極地に陥ったな。
俺はひょいっとルルを抱っこしてすぐにボス部屋の中へ戻った。
ルルを抱っこしたのには他意は無い。だからそんな目で見ないでシエラ。でもジト目なら歓迎です。ふはは!
それから数十秒でギルドメンバーが〈金箱〉の前に集まった。みんな迅速だ。
ふっふっふ、なにしろ〈パーフェクトビューティフォー現象〉だからな。これも当り前だ。
「では〈金箱〉を開ける前に、共同作業のメンバーを決める!」
俺はメンバーの前で高らかにそう宣言した。
〈金箱〉は4つ、しかしパーティは5人。故に1組は共同作業で開けるのが最近のルールになりつつあった。これなら誰も開けられないという人は出ない。
しかしカルア、そんな手を挙げてリカを見ても共同作業には参加出来ないぞ。
「では私がパメラと開けましょうか?」
1人1箱開けたいでしょう? というシズの気遣い(?)が出た。
「待ちなさいシズ、それは早計よ。ここは私がゼフィルスと開けるわ」
「しかし――」
「まあまあシズ、落ち着くデース。ここは主の希望に添うのが従者というものデスよ?」
「む、むう」
シズが俺を難しい顔で見つめてきたが、結局はラナの意見が通って俺とラナが一緒に開けることになった。ラナは何か持ってるからな。一緒に開けると大概いいのが当たるんだ。俺もラナと一緒に開けたい!
「こ、こほん。ではまず私から開けるとしよう」
「リカ、がんば」
「ああ。良いのが当たるといいのだが。〈幸猫様〉と〈仔猫様〉、どうかよろしくお願いします。いざ――」
そう意気込んだリカが開けた〈金箱〉に入っていたのは。一本の小太刀だった。
「なんと!」
「「「おお~!!」」」
刀系の装備というのは当たりにくい。
それがドロップするだけでも驚きだが、それを当てたのが刀使いのリカだったのだから驚きも一入だ。
「ああ! リカに先を越されたデース!?」
同じ刀使いのパメラがそれを見てガーンとなっていたが、これはまあ、うん、残念。
「ではリカ殿刀をこちらへ、『解析』しますよ」
「頼むエステル」
「はい。〈幼若竜〉で――『解析』! これは、〈張防刃・カマラ〉というそうです。スキルは『張防刃LV7』と『膜張滅閃LV6』ですね」
ほう、小太刀〈カマラ〉か!
そういえばここのボスって〈カマクラ〉だったな!
なるほど、こりゃいいのが当たったぜ。
「リカ、ちょっと抜いてみてくれ」
「分かった。ほぉ――見事な刀身だ」
リカが刀身を見て思わず感嘆の息を吐く。
「ああ、〈カマラ〉か~。良い武器だな」
「うむ。私も気に入った」
〈カマラ〉は小太刀ということもあって防御に強い武器だ。
『張防刃』は防御スキル。あの〈カマクラ〉が使っていた盾カマのような形の透明の盾の膜が刀に張られて範囲攻撃だって防御してくれるようになるんだ。
要は盾にもなる刀だな。
『膜張滅閃』は攻撃のアクティブスキルだが、同時に防御スキルでもある。
攻撃するとき使用者の前方に薄い膜の盾が張られ、使用者を守ってくれるスキルだ。
反撃スキルやカウンターに強い攻防一体の強力なスキルだ。
リカにぴったりな性能だな。
「次は、私デス! リカにも負けない刀をどうかよろしくお願いするのデス!」
続いて開けたのはパメラだった。
〈カマラ〉はリカが使うことになったので、パメラも負けじと挑んだのだが、パメラそれは悪手だ。刀が来て欲しいと願えば願うほど来なくなる。〈妖怪・物欲センサー〉が仕事をしてしまうぞ!
そして案の定。
「これは!? ふ、〈フルート〉がドロップしたデース!?」
「おお! 良い当たりじゃないか!」
ビックリ仰天というパメラをみんなで褒める。パメラが当てたのは、今かなりの話題を生んでいる激レアアイテム〈フルート〉だった。むちゃくちゃ当たりだ。
まあ、刀は来なかったようだけどな。パメラは複雑な表情だ。
「では私も。よろしくお願いいたします」
3人目はシズ。
シズは見た目がクールだからな。妖怪はあまり寄せ付けないイメージがある。
ひょっとしたら、とんでもない物を当ててしまうかもしれない。
俺はそう期待して〈金箱〉の中を覗き見た。
「あ」
誰かの、そんな声が聞こえた。
中に入っていたのは、どこかで見たことがあるような――召喚盤だった。え? また?
「『解析』! これは、間違いなく〈強打義装機兵・カママクラス〉、通称〈カマクラ〉の召喚盤ですね」
「またまたボスの召喚盤かよ!!」
「しかもレアボスデス!?」
「あの攻撃にも防御にも秀でた〈カマクラ〉が味方になるのか。心強いな」
もうすぐ始まるSランク戦〈拠点落とし〉。
だからだろうか。またまた〈召喚盤〉が落っこちちゃった!
昨日シエラたちが〈炎帝鳳凰〉の召喚盤を当ててきたばかりだぞ!?
マジかよ。こりゃ面白いことになりそうだな!
【傲慢】の『コストを下げよLV10』と『上限を上げよLV10』を使えばこれまで上級で当たった召喚盤を全召喚することも夢では――ふはは!
〈クジャ〉、〈アリドレン〉、〈炎帝鳳凰〉、〈カマクラ〉――ふははははは!
「さ! 次は私たちよ!」
「おう! 良いのを当ててやろうぜ!」
最後は大トリ、無論ラナと俺の共同作業だ。
今までラナと共同作業で開けて外した試し無し。
俺の『直感』さんもこの〈金箱〉は良いものだと言っている。
ふっふっふ、どんなものがドロップするのか楽しみで仕方ない!
俺はすでにスタンバっているラナの横にしゃがみ込む。
最近は共同作業も慣れてきて、一緒に開ける相手を意識しないようになってきた。
冗談だ。ラナと開けるときはいつも少し緊張する。
「じゅ、準備は良いかしらゼフィルス。せーので開けるのよ?」
「おう、もちろんだ!」
おっといけない。皆の前だ。俺はキリッと表情を改めた。
さっきまで〈金箱〉に意識を吸い取られていたラナもなんだか緊張しているように見えなくも無い。
さあ、お祈りだ!
「〈幸猫様〉〈仔猫様〉、パーフェクトビューティフォー現象ありがとうございます! また素晴らしいものをお願いいたします!」
「お願いします〈幸猫様〉〈仔猫様〉!」
2人でお祈りして準備完了。
「せーの!」
「せっ!」
パカリと〈金箱〉が開かれる。
その中に入っていたのは。
「あ!」
「これは」
「うわ~なんか凄いの出ちゃった」
それを見た瞬間からメンバーがざわめいた。
特にざわめいているのはシャロンである。その理由は、中に入っていた物の形状。
「ドリルね」
そう、ラナの言うとおりドリルだったのだ。
しかもどう見ても腕に装着するような、パイルバンカーに近い形状のロマンドリルである。
「『解析』! 名称は――〈城掘突貫ドリル〉。――え? これは本当なのでしょうか、武器カテゴリーで、対象が〈拳〉となっていますが」
ああ、合ってるよエステル。
そう、これは攻城兵器ではない。〈拳〉カテゴリーの武器なのだ。つまり〈エデン〉ではセレスタンとラウが装備できるということになる。
そしてこの効果だが、これまた凄いんだ。
「えっと、どうやら装備している間、武器依存のスキルしか使えなくなるというデメリットがあるみたいです」
そう、この武器にはかなり重いデメリットが存在する。装備したら職業スキルが使えなくなってしまう。
そして武器スキルしか使えなくなってしまうのだ。
しかし、武器スキルはそのデメリットを補ってあまりある超強力な能力。
「えっと武器スキル『突貫』スキルの効果は〈城塞〉への大特効ダメージ? 攻城兵器効果? え、これ本当なのですか?」
「やっぱり! なんかこの武器からすっごく苦手な感じのオーラが出ている気がするもん!」
『解析』の結果を読み上げるエステルと引きつった顔のシャロン。
どうやらシャロンはこの武器から発せられている、対【城主】系とも言えるスキルの波動を感じているらしかった。
そう、これは対〈城塞〉破壊武器。これでぶん殴れば〈城塞〉の耐久値は一気に減って、簡単に破壊出来てしまうといえばどれだけヤバい武器か分かるだろう。それは〈防壁〉アイテムだけではなく、『防壁召喚』などで呼び出した防壁にも有効だ。
本来なら複数人が運用しなくては使えない〈攻城兵器〉カテゴリーを内包する1人用装備。――〈城掘突貫ドリル〉。
ゲーム時代こいつに破壊された〈防壁〉や〈城壁〉は数知れず。
この武器は、ゲーム〈ダン活〉でも猛威を振るった。対【城主】系への特効武器なのだ。
〈張防刃・カマラ〉、〈フルート〉、〈カマクラの召喚盤〉、〈城掘突貫ドリル〉。
やっべぇ! 今回の〈パーフェクトビューティフォー現象〉も超大当たりだ!




