#1133 レアボス〈カマクラ〉戦、リカの新技が光る!
俺たちがボス部屋に入ると、部屋の奥がエフェクトに包まれた。
レアボスポップのエフェクトだ。
「リカ、頼む」
「承った」
今回のタンクはリカだ。サブはパメラではなく俺になる。
ここのレアボスは近距離型なのでリカでもタンクができるのだ。
ただ、手数が多いので避けタンクだと不安が残るため、受けタンク推奨だな。
リカがタンクをするのが難しければ俺がスイッチする予定。
その時は俺の代わりにリカがアタッカーをする。
リカが俺の指示に頷き、エフェクトが発生中の奥へとダッシュした。
そして、まだ見ぬレアボスがついにその姿を現す。
「ジィィィィヤァァァァァ!!!!」
「これは!」
「なんか派手なボスね!!」
「良いドロップしそうデース!」
登場したのはアラクネとカマキリを融合したようなゴーレム。
大きさは5メートルほど、下半身は丸く、脚が6本生えて体を支え、上半身はガッチリとした人型ゴーレム。8本の腕が生えており、カマと盾が合体したような腕が4本、相手を物理で打っ飛ばすためのハンマーを持った腕が4本あった。シズが〈幼若竜〉を持って『看破』する。その名も。
「出ました。このモンスターはレアボス〈強打義装機兵・カママクラス〉というそうです!」
「よし〈カマクラ〉と呼称する! 手数が多そうだ。リカ、下級職の受け技ではおそらく受けきれないぞ!」
「ならば、新技で受けるまで! 我が名はリカ! 〈カマクラ〉よ、悪いが倒させてもらうぞ! 『名乗り』!」
「ジャジャヤァアアア!!」
「む、来るか! 受けて立つ!」
まずはリカの挑発スキル『名乗り』でヘイトを稼ぐ。
すると〈強打義装機兵・カママクラス〉、通称〈カマクラ〉が一気に前に出てリカに向かいハンマーを振りかぶった。
あれは相手を上から四連続で打っ叩く『四連みだれ打ち』だ。
4本のハンマーが振りかぶられ、スキルエフェクトと共にリカへと迫る。
四連続というところがポイントで、リカの下級職の受け技では相殺しきれない。あれは連続攻撃に弱いのだ。
しかし、上級職となったリカならば、その弱点を克服するスキルも所持している。
「『残像双・一太刀』!」
「ジィィィィヤァァァァァ!?」
一瞬ブレたかと思ったリカだったが、次の瞬間には〈カマクラ〉の懐に潜り込み刀を両手で持って一閃していた。
『残像双・一太刀』は攻守両取りスキル。相手の攻撃を残像を残して回避し、反撃の一撃を放つ強力なスキルだ。要は「それは残像だ」を体現したスキルである。
さらに成功すると挑発効果まで付くため、かなりお得なスキルでもある。
「よし、俺たちもいくぞ!」
「イエスデース!」
「援護するわ! 『守護の大加護』! 『獅子の大加護』! 『迅速の大加護』! 『病魔払いの大加護』!」
「後方支援はお任せください。『鋼鉄拘束バインド弾』! 『チェーン』! ――からの『連射』!」
「うお!? いきなりか!」
俺とパメラが走り始めるとラナがバフを放つ。
するとシズがいきなり大技コンボを使い始めた。
『鋼鉄拘束バインド弾』は『バインドショット』の上位ツリー。相手を拘束状態にする〈五ツリ〉だ。〈五ツリ〉なため成功率が高く、ボスでも耐性スキルが低ければ〈拘束〉状態になってしまうほどの強力なスキルである。さすがは五段階目ツリー。
しかし、相手はボス。当然のように〈拘束〉をレジストしたようだが、ここでコンボ。
新しいスキル『チェーン』は使いどころが難しくはあるものの「1回前に使った自己スキル効果を次のスキルにも付与する」という効果を持っている。
例えば〈スキルの威力をアップする〉という効果の攻撃を放ったとして、『チェーン』を発動してから別のスキルを放つと、そのスキルにも〈スキルの威力をアップする〉という効果が付与されているという、強力で特殊な運用スキルなのだ。
ただ『照明弾』のようなバフやデバフなどは、すでに掛かっている効果を上書きするだけなので『チェーン』しても意味が無かったりするなど、対象は選ばなくてはいけないけどな。
そして今回、シズは『チェーン』の後で〈二ツリ〉の『連射』を選択した。
すると、〈拘束〉効果の付いた攻撃が連射されるという、超強力な効果を生み出すのだ。
その連続攻撃を受け、〈カマクラ〉はなんと〈拘束〉状態になってしまう。
シズのスキルは単発が多い。連射系がほとんど無いのはこの『チェーン』のバランスを取っているためとも言われている程強力なスキルコンボである。
〈拘束〉状態にされ一時的に動けなくなった〈カマクラ〉にパメラが大技を放つ。
「新しい忍法をお披露目デース! いきなり大技デス! 『必殺忍法・分身の術』! 『忍法・影分身爆裂丸』!」
これは現在のパメラの最強技だ。
〈四ツリ〉でパメラが最弱脱却の切っ掛けとなった最強技『忍法・炎・爆裂丸』の上位ツリー、『忍法・影分身爆裂丸』。
ユニークスキルで分身した4体のパメラ全員も一緒に『忍法・炎・爆裂丸』を放つというとんでもスキルである。
五段階目ツリーを開放したパメラの戦法はだいぶ変わった。
今まではパメラ本人がアクロバティックな動きで相手を翻弄しながら攻撃して、避けタンクとダメージディーラーをこなしていたが、それだと1つのミスで崩れてしまう、超玄人好みの戦法だった。
しかし、五段階目ツリーからは分身にスキルを使わせることができるスキルが増える。
そうなるとパメラ自身が危険を冒すことが極端に減り、戦況が安定するのだ。
例えば分身にヘイトを集めて自分は攻撃したり、自分を囮にして分身にアタッカーを任せるということが可能なのである。
これが、職業の力が発揮される段階と言われている五段階目ツリーの能力だ。
そして本体と4分身の5連同時爆裂丸が直撃する。
「ジィィィィヤァァァァァ!?」
「『大聖光の十宝剣』!」
「拘束ナイス! 『勇者の剣』! 『聖剣』! 『ライトニングバニッシュ』!」
「撃ちます。――『フェニックスショット』! 『バードデスストライク』!」
〈拘束〉で動けなくなった〈カマクラ〉をボッコボコにする。
パメラに続いてラナの『大聖光の十宝剣』がぶっ刺さり、俺もぶった切り、シズもバンバン〈五ツリ〉スキルを放って大ダメージを与えていく。
シズの銃口からは、どう見ても弾ではないのが出始めたな。
『フェニックスショット』では不死鳥が、『バードデスストライク』では漆黒の大きな鷲が銃口から発射され、敵に大きなダメージを与えていた。
やっべぇ、かっこいい。
「ふ、『二刀斬・雷鳴麒麟』! 『二刀斬・陽光桜嵐』!」
リカも負けじと攻撃スキルで斬り込んだ。〈四ツリ〉では〈火属性〉と〈氷属性〉の斬撃スキルを習得していたが、〈五ツリ〉では〈雷属性〉と〈光属性〉の『二刀斬』を習得している。
『雷鳴麒麟』は二刀を重ね合わせると雷が刀に降り注ぎ、刀身10メートルの大太刀に変化して敵をぶった切る。
『陽光桜嵐』は乱舞だ。桜の花びらが嵐のように巻き上げられる様子を幻視したかと思うと、何十何百もの斬撃が刻まれて大ダメージを受ける、強力なスキルたちだ。
「ジィィィィヤァァァァァ!!!!」
とそこでようやく〈拘束〉状態が解除される。
〈カマクラ〉は怒り心頭の様子でタゲをシズに変えてきた。
シズはちょっと容赦なくやり過ぎたな。
「行かせんさ! 『制空権・乱れ椿』!」
当然のようにその間にはリカがいる。
〈カマクラ〉はリカに4つのハンマーと4つのカマで躍りかかるが、リカはここで新たな〈五ツリ〉を発動。
『制空権』系の『乱れ椿』は防御&切り落としスキル。
〈四ツリ〉の『制空権・刀滅』は相手の攻撃を相殺することを目的にしたスキルだったのに対し、『乱れ椿』は攻撃を弾き、相手にダメージまで与えるという反撃スキルの一面も持っているスキルだ。
「ジィィィィヤァァァァァ!!!!」
「はあああああああ!!」
リカを潰そうとする〈カマクラ〉だが、リカの攻撃範囲に踏み込むとその度に弾かれ、さらに斬られて手傷を負わされる。完全に止められた形になった。
いやぁ、相変らずめちゃくちゃ強ぇ。相手の攻撃によってフィードバックはあるものの、直撃は無し。なのに反撃が全部直撃しているからな。
見た目はだいぶ違うが、攻守一体、俺の『ガードラッシュ』と同系統の技だ。
しかも相殺すれば挑発効果まで乗る。さすがは五段階目ツリー。
「ここで――『制空権・先流』!」
「ジィィィィ!?」
さらにリカはここから攻撃に転じた。
『先流』は相手の攻撃を流しながら懐に入る防御スキルだ。要は防御しながら移動もできるスキルである。
そして〈カマクラ〉の懐に入ったリカが一閃する。
〈カマクラ〉も慌てて下がりながらカマの盾で防御するが、リカは防御をすり抜けてぶった斬るスキルを放った。
「『時空斬・一閃』!」
「ジィィィィヤァァァァァ!?!?」
防御をすり抜けて受ける大ダメージに〈カマクラ〉が絶叫しながら大きくノックバックした。
「討ち取ったりデース! 『忍法・影分身雷竜落とし』デース!」
「『フィニッシュ・セイバー』!」
「ジィィィィ!?」
フィニッシュ!
ボスがノックバックしたら攻撃する。
そんな反射的行動でズドンしたところ、〈カマクラ〉はなすすべ無くダウンした。
「おっしゃー! 総攻撃だ!」
「『優雅に的確に速やかに制圧』!」
おっとシズもユニーク発動、二丁の銃を取り出してきたな。俺も一気に行くぜ!
そこから集中攻撃を続ければ、あっという間に1つ目のHPバーが消え去った。




