#1132 他のギルドの目の前で次々倒されるマグメタ。
ラウ以外はLV30となり〈夜ダン〉と〈島ダン〉の周回が一段落したため、今度は〈岩ダン〉に行くことになった。
〈岩ダン〉を攻略済みなのは〈エデン〉で14人。
19人はまだ未攻略なため、周回はともかく攻略者の証だけでも採りに行くことになったのだ。
別に〈岩ダン〉はすでに他のギルドも入っているんだし、スルーしてもいいんじゃないかと思うかもしれない。
もちろんこれには理由がある。上級中位ダンジョンへの進出の条件にこの〈岩ダン〉が必要なんだ。
上級中位ダンジョンの条件、それは「上級下位で〈嵐ダン〉、〈霧ダン〉、〈山ダン〉のうち攻略者の証を2つ、〈島ダン〉、〈夜ダン〉、〈岩ダン〉のうち攻略者の証を2つ、ランク7~ランク10までの攻略者の証を1つ」計5つの証を所有することだ。
ちなみにランク1~ランク3までのダンジョンは、上限LV26までしか育成出来ない通称〈26エリア〉と呼ばれていた。
同じ理由でランク4~ランク6までは〈31エリア〉。ランク7~ランク10までは〈35エリア〉と〈ダン活〉では呼ばれていた。
エリア別に2:2:1の証を手に入れろということだな。
この条件はきっと「上級中位行くならレベル上げをしっかりして行けよ」という開発陣のメッセージだな。段階的にレベル上げするべし、ということだろう。
ちなみに俺はあと〈35エリア〉の証1つで上級中位へ進めるぞ。レベル上げも順調だぜ!
というわけで要は〈夜ダン〉をスルーした人がいるので〈岩ダン〉の証を持っていないと先に進めないということだな。
まあ、そんなわけで戦闘職全員参加で〈岩ダン〉へ入ダンです。
〈岩ダン〉の特筆すべきところは、思った以上に他のギルドが入ダンしていた、ここに尽きる。
「あ、また学生がいたわ。あれは〈サクセスブレーン〉かしら?」
「向こうには〈カオスアビス〉の2陣がいたぞ。だいぶ良い感じらしいな」
俺が2年生ギルドを巻き込んで〈山ダン〉攻略をしてからだいぶ経った。
あれから2年生ギルドは〈岩ダン〉に挑んだり、パワーレベリングをしたりしてギルドの戦力を底上げしている。
これは競争なのだ。
早く〈岩ダン〉を攻略しないとすぐに置いて行かれてしまう。
すでに〈獣王ガルタイガ〉や〈百鬼夜行〉、〈千剣フラカル〉は〈岩ダン〉の攻略を自分のギルドのみで達成している。
ガルゼ先輩とミミナ先輩、ヨウカ先輩、カノン先輩にキリちゃん先輩が卒業してしまっても、ちゃんとギルドメンバーを育成し、自分たちが卒業してもギルドランクやダンジョン階層を存続できるようにしていったのはさすがと言うほかない。
五段階目ツリーを開放できるまでもう少しというところまで来ているらしいとも聞く。
特にエリアボス周回がかなり良い感じらしいな。
おかげで彼らの背中が見えた元2年生ギルドたちも我先に、とは少し違うか。非常に頑張って〈岩ダン〉の攻略に乗り出している。攻略できるのも時間の問題だ。
ふっふっふ、これで良い感じの流れが出来た。
今後はもっともっとダンジョンを攻略して、五段階目ツリーを開放していくだろう。
強い人たちが増えるのだ。楽しみだなぁ。
「ほらゼフィルス、呆けてないで行くわよ」
「今日は真っ直ぐ最奥へ行くのです!」
「おう。ちゃっちゃと〈岩ダン〉の証を手に入れて、次のダンジョンに行くぞ!」
シエラとルルに促され、俺も切り替える。
〈岩ダン〉は入口から出口までの最短距離が描かれた地図が出回っているので、道中他のギルドががんばって〈岩ダン〉を攻略している様子をたくさん確認出来たのはちょっと嬉しかった。
ちなみに地図はユミキ先輩と学園の共同開発品である。
「地図は購入すべきでは無い、自分で作ることで学ぶべきだ」という学園の方針も、「上級ダンジョンまで攻略できる人物であれば地図の作製も学び終えているだろう。購入して良し、むしろ安全のために買うことを学ぶべし」に切り替わっているので上級ダンジョンの地図は普通に売っていたりする。
とはいえそれは許可を得たギルド限定だけどな。もちろん転売や貸し出しは禁止だ。見つかれば重いペナルティが科せられる。
〈イブキ〉で岩の上を悠々と通り過ぎていく俺たちのことを、ポカンと見上げる学生たちを見ながら〈岩ダン〉を攻略していった。
しかし案の定、大人気の狩り場と化している〈岩ダン〉はうま味がほとんど無かった。
守護型ボスは全滅しているし、エリアボスも朝の段階でかなりの数が狩られている。
徘徊型を取り合いしていたところを見たときは驚いたものだ。
なお、取り合いしている間に逃げられていたけど。
徘徊型は特別仕様で、途中から他のパーティに参戦されてもHPなどは回復しないが、分が悪いために逃げられる確率が高くなるのだ。
パワーなどは上がっているので足止め出来ず、逃げられてしまうんだよな。
しかも返り討ちにできると判断すれば逃げずに普通に向かってきて、参戦してきたパーティもボコボコにする容赦のなさも持っているので、取り合いは不毛なのだ。
しかし、逃げられているところを見るに、あの集団はかなりLVが高いのだろう。
よく見れば〈百鬼夜行〉と〈獣王ガルタイガ〉だった。
ヨウカ先輩とガルゼ先輩がいないのがちょっとさみしい。
「……おかしいわね。戦った記憶が無いのにもう最奥に着いちゃったじゃない!」
「俺に言われても!?」
「いや、9割方ゼフィルスが原因だと思うぞ」
「リカまで!?」
ラナから理不尽な矛先を向けられたかと思ったら横でリカがその通りだと言わんばかりに「うむ」と頷いていた。俺の味方はどこ?
俺たちは1日で最奥に到着していた。途中戦闘らしい戦闘なんて無かったので本当に1日で到着してしまったのだ。
「ここにいる〈獣王ガルタイガ〉も〈百鬼夜行〉も他のギルドも、全部ゼフィルスが鍛えたギルドしかいないのだけど?」
「さぁて最奥のボスだな! ここもちょっと混んでるみたいだし、1周したら帰ろうか!」
「ん、ゼフィルスが誤魔化した」
ラナの言葉に気持ちを切り替えた。決してカルアの言うように誤魔化してはいない。本当だよ?
「ここを攻略しているメンバーを各パーティに振り分けよう。攻略メンバーを決めるぞ」
「「はーい」」
とはいえギルドマスターである俺が言えば付いてきてくれるのだから俺はこのギルドが大好きです!
ということでパーティ決めをして最奥のボスへ挑むことにした。しかし。
「うーん、インパクトが欲しいわね。ここで休んでいる人たちに特大のインパクトを与えたいわ」
ラナがそんなことを言い出してから流れが変わった。
現在この最奥の救済場所には3組のパーティが休んでいた。
ギルド〈百鬼夜行〉〈獣王ガルタイガ〉〈千剣フラカル〉のパーティたちだ。
ここに居る理由は明白で、普通に休憩と、ボス戦だろう。
人数も5人ずつしかいないしな。
ハクやリン先輩はいないようだが、〈獣王ガルタイガ〉には新しくギルドマスターに就任した〈覇姉のサテンサ〉先輩とサブマスターの〈冷熱のクエスタール〉先輩がいた。ということはあれは1陣だな。
守護型ボスは狩り尽くされ、エリアボスもほとんど残っておらず、現在は〈フルート〉によるエリアボス周回の最中だろう。
そんな中、何度も甦る最奥ボスに挑みたい人たちが少なからずいるのは当然だ。
もしくはここで休憩したいだけかもしれないし、証が目当てなのかもしれないが。見た感じ、〈百鬼夜行〉や〈千剣フラカル〉は何度か敗北している雰囲気だ。
そんな様子を見たラナが、〈エデン〉の実力を思い知らしてやるわ、と言わんばかりに微笑み、俺に手を差し出した。
なんだろうこの手、俺も手を乗せれば良いのかな? はい、お手?
「違うわよ! 〈笛〉を出して頂戴って意味よゼフィルス! レアボスに挑むのよ!」
「ああレアボスか!」
なるほど~。その発想はあったりなかったり。
確かに周りの視線がある中で〈公式裏技戦術ボス周回〉はできないのだから〈マグメタ〉よりも質の良いものを求めたい、というのはわからんではない。
「だが、ここのボスに初挑戦のメンバーもいるぞ?」
「それならレアボスと戦いたいメンバーだけでパーティを組みましょう? とにかく私はレアボスとやりたいのよ!」
「ラナ様、本音が漏れております」
「――んん、そういうことよ。わかった?」
「どういうことだってばよ?」
思わず本音が漏れてしまったラナがシズに諭されて取り繕っていたが、まあ言いたいことは分からんではない。
結局、〈マグメタ〉をやりたい人と、まだ見ぬレアボスをやりたい人で分かれた。
〈マグメタ〉戦が初めてのメンバーも多いが、もうラウ以外全員が五段階目ツリーの開放者である。俺たち経験者と一緒にパーティを組まなくても〈マグメタ〉くらいイケそうだということになった。
俺たちが〈マグメタ〉を突破したとき、まだ五段階目ツリーを開放していなかったことを考えると余裕かもしれないまである。
そんなわけで、〈マグメタ〉攻略法を伝授のうえ、最初に未経験者5人、オールLV30メンバーで送り出したのだが、余裕で勝利して帰って来た。
周りで休憩していたギルドたちがどよめいていたよ。
まあ、あの人たちは負けたっぽいからな。
攻略者の中からセレスタンだけ転移陣で帰って、ボスが復活したので今度は経験者2名、カイリ、LV30だけど未経験者2人で挑んでもらい、これも勝利。
また周りで休憩していた人たちがどよめいていた。
そんな感じで4回ほど挑み、その全てで勝利した俺たちは次のステップに移った。
「ふふん。ついに私の番ね! 〈笛〉を吹くわ!」
「おう、いったれラナ」
「すぅ。~~~~♪」
もちろんレアボスを起こすための〈笛〉だ。
軽快なホイッスルが鳴り響き、周りのギルドたちがさらにどよめく。
ここのレアボスはまだ突破されたことは無いらしいからな。
俺たちが一発突破すればさらなる衝撃が彼ら彼女らを襲うだろう。ちょっと楽しみだ。
「ではまず、私から行って参ります」
「気をつけてな」
まず入るのはシズだ。対レアボスメンバーは募集とバランスを加味した結果、俺、ラナ、シズ、パメラ、リカとなっている。
ただ、〈笛〉は成功率が70%、外す可能性もあるのでまずは1人が門の中に入り、レアボスかどうか調べてもらうのだ。その後、外に居るメンバーに〈学生手帳〉でメッセージを送るという手段。
これも最近思いついた。リアルって結構色々裏技あるぞ。
そんなわけで、一度入ったら出られないので、もしレアボスじゃなかった時用に他に4人のメンバーが控えている。
そして俺のメッセージに「ピロリン♪」と着信、8人が注目する中見てみると。
「ふ、どうやらレアボスを引き当てたらしい!」
「やったわね!」
「おう、レアボス戦、行くぞ!」
「「「おおー」」」
シズから来たメッセージには、「ボス無し」の文字が。
これが初めてなら天井にくっついた〈マグメタ〉を見逃すこともあるだろうが、シズは先ほど〈マグメタ〉戦をこなしたばかり、見逃すということはあり得ない。
つまり100%レアボスということである。
というわけでテンション高らかにレアボス戦メンバー、俺、ラナ、パメラ、リカはボス部屋の門を潜ったのだった。
後書き失礼いたします。大感謝!
たくさんのお★様ありがとうございます!




