#1131 満天の星。リッチなデブブと二丁拳銃ニーコ
「あ、月明かりが消えましたね」
「わぁ! 空、お空を見てくださいなのです!」
「あら、夜空が綺麗ね。すっごい星だわ」
「星を見ながらご主人様からなでなで、なんて贅沢なの」
「今日は素晴らしい日です」
救済アイテム〈打ち上げ月光雨〉が切れ、月明かりが元に戻ると、満天の星が現れた。
おお~。こりゃ凄いなぁ。
夜空いっぱいに煌めく星々がまるで別のダンジョンに切り替わったかのようだ。
最奥の夜空はすげぇ。さすがは〈ダン活〉で一番の夜空と言われただけはある。
こりゃスクショを使わないとな。上手く撮れるかな? カシャリ。お、フラッシュ機能もあるのか。なら夜でも人が撮れるな。ローアングルから星々を背景にしてみんなでピース。
カシャリ。
「ちょっと距離が近いな。今度は台かなんかに乗ってもらってもうちょっと高さを」
「ではステージを用意しましょう」
夢中になって撮影しているとセレスタンが小型のステージのようなものを取り出していた。
どうしてそんなもの持ち歩いていたのかは不明。
「ゼフィルス様は最近スクショにハマっていますからね。これくらいは予想の範囲内です」
「さ、さすがはセレスタンなんだぜ」
執事が超有能です。5、6人しか乗れないステージに乗ってもらいローアングルからカシャリ。うむ、良い感じのが撮れたぞ!
「では、お茶にしましょう」
「いつの間にか用意が済んでいる!?」
見れば白いテーブルクロスが被せられたテーブルと椅子が用意されていた。
星見しながらティータイムだと? すごくいいじゃないか!
そんなこんなで休憩しながら。ティー系アイテムで料理バフを身に着けてしまった。有能な執事が頼もしいぜ。
たっぷりと夜空とお茶会を楽しんだら、いざ最奥のボス戦へと意識を切り替える。
「切り替えるぞ。ボス戦行くぞーー!」
「「「「おおー!」」」」
ここの最奥のボスは〈リッチデブブ〉。
覚えているだろうか。初級中位ダンジョンの1つ、〈幽霊の洞窟ダンジョン〉の最奥ボスをしていた〈デブブゴース〉、通称〈筋肉殺し〉を。
あれがパワーアップしたレアボスの〈デブブスペシャル〉をさらにパワーアップさせたのが〈リッチデブブ〉だ。
筋肉だけではなく、リッチーとしての魔法の力まで加わって強化され、なんか金持ちみたいなリッチ感溢れるマントや杖などを装備している。体長7メートルほどのボスだ。
あの〈デブブ〉が偉くなったものだ。ちなみにスケルトンではなく幽霊系のボスである。
「デブブ♪ デブブ♪ デブブデ デデブデブ♪」
ほら、なんかリッチ感出して歌い出してる。あれがリッチなデブブだ。
今回は俺とフィナがタンクをして、ラナとシェリアをメインアタッカーに置き、エリサにヒーラーを務めてもらうという変則的なパーティで挑んだ。
おかしいな、ラナはヒーラーのはず。なぜアタッカーに? と思うかもしれないが仕方なかった。
「行くわよ。その太った体を縮ませなさい! 『レクイエム』!」
「デブアアアアアア!?!?」
だってラナが幽霊特効を持っているから。
その名は『レクイエム』。『ターンアンデッド』などの上位版だ。
その効果範囲や威力はかなり高く、例え上級ボスクラスと言えど発動中は動けなくされてしまうほど理不尽な効力を持っている。
この〈リッチデブブ〉も〈子分デブブ〉を大量召喚してくるのだが、召喚した瞬間ラナが『レクイエム』を発動。
聖属性の強力な光が天から降り注いでデブブたちを照らし、親分ごと浄化されて〈子分〉たちは即全滅。
後はお好きにどうぞとばかりに残ったデブブを平らげて勝利した。
は、早すぎる!
これ、デブブが第一形態の時から最終形態の時まで全タイミングで使える戦法だからな。マジとんでもない。さすがは【大聖女】の魔法だ。〈鳳凰〉や〈マグメタ〉が泣くぞ。
本当ならこのデブブは姿を消したり、強制的に状態異常にしてきたり、デバフをばらまいて大量の物量攻撃を仕掛けてきたりと結構強いボスなんだが。
普通に戦えば「上級モンスターがあの激高な物理耐性もっちゃあかんて」なんて呼ばれてたのに、不憫。
正直、徘徊型よりずっと楽である。ラナがいれば『プレイア・ゴッドブレス』で〈金箱〉も出やすいし、人は来ないし、上級職LV30まで育てられるしで、デブブはかなり周回に適したボスなんだ。ゲーム時代もよくここで上級職LV30を量産したなぁ。
ということで、ここに残ったメンバーには周回してもらった。
そして3日間で無事にラウ以外のメンバーがLV30に到達したのだ。
ラウは元々LVが低かったのと、物理系なので〈デブブ〉と相性が悪かったためLV26止まりだ。
これは別のダンジョンで周回した方が良いと判断した。
俺たちが〈夜ダン〉周回でラウ以外をLV30にしていると、〈島ダン〉に行っていたメンバーもなんと全員LV30になってた。
さすがシエラ! 周回向きではないはずの空飛ぶ敵を相手に全員LV30にして帰ってくるとか。
「シエラさすが!」
「あなたもね」
シエラが俺の胸に光る〈夜ダン〉の証を見ながら言う。
いやぁ、ふははは!
〈島ダン〉で飛行型を相手に特訓してきたメンバーたちはかなり成長した様子だ。
飛行型を相手に色々とやりやすいやり方を学んだ結果だろう。
ニーコなんて〈デザートグリフォン〉を二丁も持ってたよ。あれ? なんで持ってるの?
「なんで〈デザートグリフォン〉がもう一丁あるんだ?」
「あ、しまった! ぼくとしたことが隠し忘れた!」
「ほほう? 今更隠しても無駄だ。観念するんだニーコ! ――それでシエラ?」
「当たったのよ」
「当たったのか!」
左手の〈デザートグリフォン〉をサッと隠そうとするニーコだが、すでに遅し。
バッチリ目撃したからな。というわけでシエラに振ると簡潔に答えが返って来た。
そして観念したニーコが言う。
「鳥を相手には盾より銃の方が効率よくってね。というよりシエラ君が全部防いでくれたからぼくは攻撃するだけで良くなったんだ。そしたら、じゃあ盾いらないね、とこうなった」
「それは良いことだな!」
ニーコが二丁拳銃になって帰って来た。
まさか〈デザートグリフォン〉をもう一丁当ててくるとか、さすがはニーコ! これは二丁拳銃の【トレジャーハンター】になるしかない! 俺はニーコをとても褒めておいた。
ニーコはとても喜んでいたよ(主観)。
後書き失礼いたします。
作者にもお★様いただけるとくださると、とても嬉しいです!




