#1128 〈金箱〉回!じゃんけんで勝って平和的解決?
「〈島ダン〉攻略お疲れ様&〈金箱〉ありがとうございまーす!」
「相変わらず〈金箱〉になるとテンション高いわね」
「そりゃもう〈金箱〉だもの、仕方ないんだよシエラ。だって〈金箱〉だもの!」
「そうね! 〈金箱〉だもの、仕方ないわね!」
「仕方ないのです! これは仕方ないのです!」
「えっと、はい。仕方ありません」
「クワァ!」
「そう……」
俺、ラナ、ルルの発言にアイギスが戸惑いながらも同意すると、シエラも納得してくれた。
シエラは自分の手に現れた〈島ダン〉の攻略者の証をチラチラと見せてくるが、それは俺も持ってるぜ? キランッ!
「そうじゃないでしょう」
「?」
シエラがなぜか溜め息をついていたが、その謎を解明する前にボス扉から続々とメンバーが現れる。
「ご主人様攻略おめでとうー!」
「さすがは教官です」
そうお祝いの言葉を口にしながら入ってくるメンバーたち。
負けた場合は門の前に「ペッ」てされるからな。それが無く門が開いた時点で攻略したという意味になるんだ。
「それで誰が開けるの?」
「「「はい(なのです)!」」」
「えっと、はい」
「はいはい」
エリサの純粋な質問に俺とラナとルルの手が真っ先に挙る。あ、ルル両手を挙げるのは反則だぞ!
続いて遅れてアイギスが手を挙げて。シエラは流した。譲ってくれるということだろう。
ということで立候補は4人。〈金箱〉は1つ。
譲れないためじゃんけんで決着を付けることに。そして。
「「「「じゃーんけーんぽい!」」」」
パーが2つにチョキが2つ。
パーはラナとルルだった。
「な、な、なああああ!?」
「エリサお姉ちゃーん! フィナお姉ちゃーん!」
自分の手が信じられないと言わんばかりに見つめるラナ。
双子姉妹の胸にダイブして癒してもらうルル。
やっべ、スクショ撮らないと! これは見逃せない――カシャリ!
「ゼフィルス様、その写真、あとでいただけませんか?」
「お、おう。もちろんいいぜシェリア?」
スッと近づいてきたシェリアが俺を様付けで呼ぶ。
そんなにこの写真が欲しいのか……? 頷かなかったらどうなっていたか気になるところだ。もちろん頷いておいたよ。
こほんこほん。じゃんけんに勝った! しかし、まだアイギスが残っている。
ここで負けたらラナ以上に悔しい思いをするに違いない。
負けられないな。
「あの、ゼフィルスさんにご提案なのですが」
「お、なんだアイギス」
まさか、予告グーか?
「私と一緒に共同作業をしてくださいませんか?」
「採用! 超採用!!」
誰も不幸にならない幸せな解決法がそこにあった。
俺は二つ返事で飛びついた。誰だ予告じゃんけんなんて警戒したのは!
「な! アイギス、なんて提案を!」
「羨ましいのです!」
「勝者の特権です」
「クワァ!」
さすがは勝者。貫禄があるんだぜ。
「ではゼフィルスさん、どうぞこちらへ」
〈金箱〉の左側にしゃがんだアイギスが右側をぽむぽむする。
もちろん俺はアイギスの隣にしゃがむんだぜ。
あれ。そういえばアイギスとこうして共同作業をするのは初めてかもしれないな。
「で、ではゼフィルスさんせーので行きますよ?」
「待て待て、その前にお祈りが先だ」
「あ、そうでしたね」
どうやらアイギスもテンパっているらしい。
〈金箱〉を開けるには順序があるのだ。
俺とアイギス、周りに居るメンバーたちで〈幸猫様〉と〈仔猫様〉に祈った。
「どうか良いものお願いします!」
お祈りも済んで。いざ解錠。
アイギスと一緒に〈金箱〉を開く。いざ!
「「せーの!」」
パカリと〈金箱〉を開くと、全員の視線が集中した。
「これは、盾ですか。煌びやかで、美しいです」
「お、おおおお!!」
〈金箱〉に入っていたのは、今戦った〈炎帝鳳凰〉のごとく赤を基調とした煌びやかな装飾を持ち、鳳凰の尾羽のような飾りが非常に映える盾だった。分類は小盾。
アイギスが取り出すと、なかなかに大きく、小盾の中でもかなりの大型の分類であることが分かる。
すぐにエステルが〈幼若竜〉で『解析』する。
「これは――〈炎武・鳳凰盾〉と出ました。すごい……火属性のダメージカット率がかなり高いですね」
エステルが読んでいる途中で思わず感想を呟いてしまうほどの一品だ。
なにしろその〈火属性〉ダメージのカット率、驚異の70%カットだ。これ1つで、である。ヤバい。
このカット率は単品の防具の中でもトップクラスで、上級下位級の装備の中では最高峰を誇る。
しかも見た目がこれでもかというくらいかっこいいのだ。
言いたい! でも言っちゃダメだ! これは対火山ダンジョンの竜対策の盾なんだって!
俺はグッと我慢してなるべく平静を意識してアイギスに促す。
「アイギス、それちょっと装備してみてくれ」
「は、はい。構いませんよ」
アイギスが左手にある〈ナイトヒーター・シールド〉を外すと、〈炎武・鳳凰盾〉を装備する。すると。
「こ、これは」
「浮いてる、わね。え、自在盾なの?」
「はい、自在に動かせます。すごい。いえ、でも遠くには動かせないみたいですね」
そう、〈炎武・鳳凰盾〉は見た目左手に装着されていない。尾羽の1つが左手に絡まっていて、それに繋がっている盾自体を自在に動かすことが可能という、自在盾に似た動きが可能なのだ。
尾羽の伸びる範囲までだからシエラのように仲間を守るために遠くへ飛ばしたりは出来ないが。しかし、大型のモンスターに騎乗しながら全身をカバーすることくらいは出来る。
飛んでいる時下からの攻撃にも対応出来るため、飛行型に騎乗する騎士にとってかなりありがたい盾なんだ。例えば【竜騎姫】とかにはな。というわけで。
「これはアイギス行き決定だな!」
「あい! すごくいいと思うのです!」
アイギスの盾は中級品。『ノックバック耐性』が強くて変えていなかったが、〈炎武・鳳凰盾〉も『盾受けノックバック無視』というスキルを持っている。
これは盾で受けた場合ノックバックにかなり強い耐性を得る能力だ。まあ、盾浮いているからな。盾で受けたって盾が吹っ飛ぶだけだ。しかし左手に尾羽の鎖が付いているため盾はどっか行かない。すぐにリカバリー出来る。
よってこの度アイギスの盾は換装されたのだった。
「おお! アイギスかっこいいぞ! ゼニスに乗るとより映えるな!」
「クワァ!」
「ありがとうございます、ゼフィルスさん、ゼニス」
アイギスの槍は〈ドラゴンランス〉、そして盾は〈炎武・鳳凰盾〉。
その姿はかなりかっこよかった。
これもスクショだな。カシャリ。
「少し、恥ずかしいですね」
「まあまあ、もう1枚撮るぞー」
「クワァ!」
記念写真は重要。超重要!
スクショをくれたユーリ先輩に改めて感謝を贈った。
その後は初戦勝利を飾った俺たちの情報を元にパーティを組んで33人、全員を入れ替わり立ち替わりボス戦をこなしてもらい、不安の残るパーティにはタンクとしてシエラが、ヒーラーにはラナが加わったりして最終的に全員分の攻略者の証をゲットすることに成功した。
ついでにまたエリアボス周回もあわせて行ない、まだLV30になっていないメンバーのレベル上げも手伝った。
〈金箱〉もいっぱい出た。ふはははは!




