#1125 徘徊型〈音速ロック鳥〉撃破からの――宝箱!
「ギュィィィィィン!!」
「来るぞ! シャロン! まずは防壁集中強化!」
「まっかせてよ! 『防壁召喚』! 『防壁エリア集中強化』!」
「ギュィィィィィン」
高速で突っ込んで来る〈音速ロック鳥〉の前に築かれたのは〈防壁〉。
それもただの防壁では無い。〈防壁〉を強化する『防壁エリア集中強化』によって強化された壁だ。ユニークスキルには劣るもののかなり強力な防御壁となる。
そこに〈音速ロック鳥〉が突っ込むと――「ズドガアアアアン」という音を響かせて強化壁をぶっ壊した。
「ひゃああああ!?」
「シャロンの壁が壊れた!?」
「守ります! 『絶対守護防御盾』!」
フラーミナが驚きの声を上げる中、ロゼッタがすぐにフォローする。
『絶対守護防御盾』は仲間を絶対に守護する防御盾を展開するスキルだ。
全体攻撃に対応できる防御スキルで仲間全員の前に体を覆う程の大きな盾を召喚する。
おかげで衝撃で吹っ飛んできた石やら何やらの直撃は防がれた。
「ギュィィィィィン!?」
そしてあの防壁に突っ込んどいて無事なわけがなく、〈音速ロック鳥〉も漏れなく吹っ飛んできた。それはもうぐるんぐるん回転しながら。
そして当然のようにダウンした。
十分!!
「今だーー! 総攻撃!」
このチャンスは逃せないので総攻撃。
シャロンの強化壁は良い仕事をしたな! 〈音速ロック鳥〉のダウンを取ったぞ!
壁は砕けてしまったが、ギリギリ破壊出来た程度だろう。次はシャロンのユニーク壁をお見舞いしてやるぜ!
それはともかく今は総攻撃!
一気にガンガン大量のスキルや魔法を浴びせると、良い感じのダメージが入った。
「ギュィィィィィン!!」
「おっと飛ばさせはしないぜ。カタリナ拘束結界!」
「はい! 『箱結界』! 『拘束結界術』!」
「ギュィィィィィン!!」
カタリナが小さな箱結界を展開。〈音速ロック鳥〉の足だけを結界で囲み、『拘束結界術』で動くのを封じたのだ。
新しく手に入れた〈防遮の法杖〉の力をフルに使い、結界が破壊されるのを防ぎ、拘束時間を長くする。むっちゃ強ぇ。
「ギュィィィィィン!!」
「逃がしませんわ! ――『箱結界』! 『姫の変幻結界』!」
続いて使ったのは結界の形を自由自在に操るユニークスキル。
これをカタリナは拘束に使った。結界を伸ばし〈音速ロック鳥〉の体に絡ませ何が何でも逃がさないとカタリナが頑張る。
飛ばれると厄介だからと知っているがこその対応だ。
「ギュィィィィィン!!」
「きゃあ」
「カタリナは私が守ります! 『ガードアクション』!」
さすがにこうも拘束されては我慢できず、カタリナにビームを乱射する〈音速ロック鳥〉だが、それはロゼッタが『カバー』系スキルでカタリナを庇って防ぎきった。
「助かりましたロゼ」
「任せてください。カタリナは拘束を」
「ええ! わかったわ!」
カタリナはロゼッタに任せれば良いだろう。
俺たちはその間に攻撃だ。
「『ワンダフルパニック』! 行くよ大技! 『犬力の犬』! みんな出番だよー!」
「『勇者の剣』! 『聖剣』! 『ライトニングバニッシュ』だ!」
「『移動スケールダウン』! 『素早さタイムブースト』! 『シャイニングブラスト』!」
「『百烈獣牙』! はあああああああ――『獣王バスター』!」
「『必殺抜き手』! 『浸透掌底』! 『紅蓮爆練拳』!」
「私も手伝うわ! 『ダークバインド』! 『ダークドレインエナジー』!」
「『大天使フォーム』――――! 一気に行きます『ソニックエルソード』! 『エルデュエルソード』! 『エルライトブレイカー』! 『エルライトブレイカー』! 『エルライトブレイカー』! 『エルライトブレイカー』!」
「ギュィィィィィン!!」
俺たちの導き出した対処法は拘束して逃がさない方法。このメンバーだと飛行相手は自然とこういう対処法になる。
実はこの〈音速ロック鳥〉は『体外耐性』をほとんど持っていないんだ。
その分が、あの速さと強さに回されている。つまりはガンガン〈拘束〉することが可能というわけだ。
さすがボスだけあって〈拘束〉してもすぐに解いては反撃のビームを撃ってくるが、また拘束してガンガン攻撃。
絶対に逃がさない。逃がしたらまた空を飛んで面倒だからだ。下手をすれば逃げられる。
まあ、逃げても巣がこの階層にあるので寝ているところを襲撃して討ち取れるんだけどな。
しかし、この方法がかなり見事にハマる。
やっぱ杖を更新したカタリナの結界が硬い。
抵抗するボスを封じ込めてしまうのだ。おかげで50%もHPを削ることに成功する。
「ギィィィィィィン!!」
「! 逃げられましたわ!」
「また突っ込んで来るぞ! シャロン、今度はユニークで迎え打ってやれ」
「ふふん! さっきは破られちゃったけど今度はそうはいかないよ!」
「ロゼッタはシャロンの護衛だ!」
「はい! 『ヴァイスシールド』!」
再び〈音速ロック鳥〉の突撃が来る。
ビームを連射しながら突っ込んで来るのでロゼッタとシャロンのタンク二段構えだ。
ロゼッタが誠剛なる白の盾を顕現させてビームを防御。
そして十分に引きつけたところでシャロンがユニークスキルを発動する。
「『ディザイアランパート』! 『プリンセスヴァレション』!」
「ギュィィィィィィ――!?」
ズドンッと衝撃。
ロゼッタの前に突如として建てられた堅固な防壁はユニークスキルで超強化され、見事に破壊されず〈音速ロック鳥〉の突撃を受け止めたのだ。
途中までロゼッタが耐久役をやってくれたため、消耗していない状態の壁を出すことが出来たな。
「ナイスシャロン! カタリナ! エリサ!」
「『箱結界』! 『拘束結界術』!」
「『ダークバインド』!」
「ギュィィィィィィ!」
「アタッカー行くぞ!」
「「「おおー!!」」」
再び拘束して攻撃開始。
結局怒りモードに入るまでこの拘束が続き大ダメージを与えることに成功した。
だが怒りモードが発揮されるととうとうカタリナとエリサの拘束を破って外へと脱出。
しかし、残りのHPは心許ないだろう。相手は怒っているので、怒りモードの間は巣に逃げ帰ることもない。
ここで決めてやるぜ!
おおっと? あいつがビームを溜め始めた。
翼の周りに光る玉がどんどん大きくなる。数秒後にはあそこから極太ビームが何発もぶっ放されるに違いない。させないぜ?
「ルキア、タイムオーバーだ!」
「はい! 『タイムオーバー』!」
「ギュィィィィィン!?」
ルキアの『タイムオーバー』は溜めを無力化する魔法。相手が溜めている最中にしか効果が無いが、スキルや魔法を強制失敗させるのだ。結構強い。
見ろ〈音速ロック鳥〉がせっかく育てたビームが突然消えちゃって訳が分からずといったように戸惑っている。
もちろんそんな隙を逃す俺たちでは無い。
「フィナちゃん今よ!」
「『天落』!」
「ギュィィィィィン!?」
「ナイスフィナ!」
エリサの掛け声と同時に飛び込んだフィナの飛んでいる相手を叩き落とす『天落』スキルが見事に決まる。
フィナはこのダンジョンではハマりすぎるな。超強ぇ!
地面に叩きおとされたものの、2つの脚で見事に降り立ちダウンしなかったことは残念。
しかし、地面は俺たちのテリトリー。もう逃がしはしないぜ?
「『ダークバインド』!」
「『箱結界』! 『五重封印』!」
「あと少しだ! 逃げる前に倒しきるぞ!」
「「「おおー!!」」」
怒りモードでビームをそこら中に乱射してくる〈音速ロック鳥〉だったが、こっちにはカタリナにロゼッタ、フィナにシャロンとタンク系がとても多い。そんな攻撃ではびくともしないぜ!
こうして〈音速ロック鳥〉とのぶつかり合いは、再び逃がすこともなく倒すことに成功する。
「ギュィィィ…………」
「やった倒したー!」
「やりましたねフラウ、カタリナ」
「ふう、ロゼが防いでくれて助かったわ。とんでもない相手だったわね」
〈音速ロック鳥〉からエフェクトが発生するとフラーミナが雄叫びを上げ、そこへロゼッタとカタリナが集まった。
「最初はビックリしたけれど、案外楽勝だったわね!」
「そうですね。姉さまのバインドが思いのほか役に立っていたかと思います」
「へ? デレた? 今フィナちゃんがデレぐへぇ!?」
「そういうことは口には出さないように。鉄則ですよ姉さま」
「あーん。ご主人様~フィナちゃんがいじめるー」
「あ、待つのです姉さま、そんなことを教官に言ってはいけません」
こっちではなぜかエリサとフィナに抱きつかれていた。まあ、分からんでもない。テンション上がると抱きついてクルクル踊るものだからな!
あとボス戦が終わってゆっくり近づいてくるエステル号とアイギス号に乗ったシエラとラナの目が大変ジト目だった。
ありがとうございます!
そしてとても大切なこと。そう、宝箱だ。
〈音速ロック鳥〉が消えた後、そこにはなんと〈金箱〉が2つもドロップしていたんだ!
「イエス! 〈幸猫様〉〈仔猫様〉バンザイ!!」
相手は徘徊型ボスだ。ニーコが不参加の今回、宝箱が2つになるのは〈幸猫様〉たちの恩恵。
ありがたく、とてもありがたーくいただきます。もっとください!!
ゲフンゲフン!
「これは俺が開けるしかない!」
「もう、ゼフィルス暴走しないの。ちゃんと自分のパーティと相談しなさい」
俺が〈金箱〉に暴走することが想定内だったのか、シエラの返しが早い。
「徘徊型の〈金箱〉ね。何が入っているのかしら?」
「楽しみだね~」
「あの〈音速ロック鳥〉のドロップです。何か速さに関係するものでしょうか」
そんな憶測をしつつも、開けたいというより早く中身が見たいと思っているだけのパーティメンバーたち。俺はそれを確認していい笑顔でシエラに微笑んだ。シエラは溜め息を吐いた。
ルキアも「ゼフィルスさん、開けて良いよ」と言ってくれたので遠慮無く開けることにする。
最近は超団体行動が多かったから、〈金箱〉を開けるのも久々だ(?)。
早速お祈りする。
「ああ〈幸猫様〉〈仔猫様〉! 徘徊型ボスでのご褒美とてもありがとうございます! 是非良いものをください!」
「相変わらず感謝を捧げているのか欲望を唱えているのか分からないお祈りね」
いいんだよシエラ。
ちゃんと言っておかないと、俺たちは〈金箱〉がドロップしただけで満足する人たちと思われてしまうかもしれないだろ?
〈金箱〉は激レアドロップが入っているから良いものなんだ。それを忘れてはいけない。
ということでいざ、オープン!
俺の宝箱に入っていたのは――レシピだった。
「レシピだー! レシピ来たーーー!!!!」
枚数1枚。つまりは上級中位級。なんのレシピかな!?
確かめるべくすぐにエステルが前に出て〈幼若竜〉で『解読』を掛ける。
そして出てきたのは。まさに欲しかった装備の一つ。
ゲーム〈ダン活〉時代、ギルドバトルで猛威を振るったとんでも装甲戦車。
―――〈頑装甲車・ブオール〉だった。
〈乗り物〉――〈馬車〉〈戦車〉カテゴリー。
つまり〈イブキ〉と同じカテゴリーの装備品だった。
「うおおおおおおお! うおっしゃーーー!! ロゼッタの〈装甲戦車〉来たーー!」
これであの〈装甲列車〉戦法が出来る! 今日は素晴らしい日だ!
「あ、ゼフィルスが暴走したわ! 押さえてみんな!」
「エリサちゃんに任せて!」
「姉さまだけでは頼りありません。私も行きます」
「あ、ずるい! 私も行きますわ!」
「大チャンスだー」
「これが噂のクルクル踊りというやつですか?」
「ちょっとみんな?」
暴走する俺をシエラが押さえようとしたようだが、目論見が外れてなんだかみんなでクルクル踊ることになった。
自ら俺の胸に飛び込んでくるエリサとフィナを抱きしめてクルクル回ると、続いてカタリナ、フラーミナ、ロゼッタともクルクル~と踊る。
見ろシエラ! みんなクルクル踊りたいんだ! シエラもどうだ? そんな気持ちを込めて見ると、シエラからはジト目だけが返って来た。
俺のテンションはさらに上がった。ふはははは!!
ちなみにもう一つの〈金箱〉はシャロンが開けることになり、〈不壊鬼の金剛盾〉という〈大盾〉が手に入ったので、これはシャロンが装備することになった。
どんどんSランク戦の準備が整っていくな! 笑いとテンションが止まらん!
ふははははは!!




