#1124 〈島ダン〉後半! 40層~56層のボスたち。
〈島ダン〉攻略も2日目。
今日も元気にダンジョンです! と40層のショートカット転移陣に乗って転移する。
「ってまだ2日目かよ。順調だな!」
「ああ。ここは鳥型モンスターに囲まれてすぐ戦闘不能になる凶悪なダンジョンだと聞いていたが、こうも対策が整っていると楽なものだ」
俺の自画自賛にメルトが反応してくれる。
やっぱ1日で40層ってすげぇよな。
「何が恐ろしいってランク3までのダンジョンとほぼ同じペースでここまで来られているのがとんでもないんだよ!」
「ミサトの言うとおりだ。俺も〈島ダン〉の情報は集めていたが、どれもこれも後悔したという情報ばっかりだったぞ」
そうミサトとメルトは語る。
「足下は水浸しで動きづらいし」
「上からはモンスターがひっきりなしに襲ってきて回復する暇も無い」
「倒すペースが遅れるとどんどんモンスターが周りに増えていって」
「最後は戦闘不能になって〈転移水晶〉で帰ってくる。というパターンだな」
「息ぴったりだな2人とも」
ミサトとメルトの熱いセリフがちょっと可笑しい。
そう。ミサトたちの言うとおり、〈島ダン〉はランク3までのダンジョンとは一線を画す。
対策無しで入ると痛い目に遭うのはもちろん、対策があっても痛い目にあうダンジョンだ。
鳥型モンスターがアクティブ化するパーソナルエリアはかなり広く設定されているので、無闇に歩くとモンスターに群がられて骨までしゃぶりつくされてしまう。
しかも倒す速度も問題だ。モンスターがどんどん群がってくるので一定の速度で倒さないとモンスターが飛び込んでくる数の方が上回ってしまう。
それなのに鳥型モンスターはただでさえ飛んでいるから攻撃は当たりづらいし、足場は水で速度低下のデバフを与えてくるしで、最終的にモンスターを捌ききれなくなってやられるパターンが多い。
〈海塗りのベール傘〉がどれだけ有用か分かるだろう。なぜかほとんど使わなかったけどさ。
まあ、そんなわけで〈嵐ダン〉〈霧ダン〉〈山ダン〉のエリアボスで力を付けた学生が、「〈山ダン〉のエリアボスは楽勝だった、俺たちなら〈島ダン〉もイケる!」と調子に乗ってしまって、相次いで挑んでは分からされて帰るということが頻発したのだ。
というわけで現在〈海塗りのベール傘〉の販売を始めるべく動いていたりするが、それは別の話。
ちなみに昨日倒し、今日復活していた40層守護型ボス〈気高きエリートグリフォン〉君はすでにさようならしている。
俺とメルトとミサトの出番は無かったので喋りながら観戦していたというわけだ。
二丁目の〈デザートグリフォン〉を期待したがドロップせず。残念! ニーコに二丁拳銃の【トレジャーハンター】になってもらうのはもう少し先になりそうだ。
「よし! みんなお疲れ様! 今日は最奥まで進むぞ! 準備はいいかー!」
「「「「おおー」」」」
ということで華麗に40層ボスを屠ったその足で階層門を潜った。
45層守護型ボスは〈超エリート双頭グリフォン〉という、40層ボスの〈気高きエリートグリフォン〉のパワーアップ版だ。
頭が2つあって上空から二属性のブレスをまき散らしてくる。それ以外は〈気高きエリートグリフォン〉とほぼ同じ行動パターンという相手なのでラナがドカンと倒していた。
ドロップは――〈銀箱〉!?
こっちも残念!
50層ボスは〈デンジラスファルコン〉という危険で電気を身に纏った3メートル級のハヤブサだ。
特徴的なのはやはりその速度。かなり速くて遠距離攻撃が当たりにくい。
さらに近距離攻撃をすれば纏っている電気でビリッときてスリップダメージを受けるという厄介過ぎる特性を持つ。さらに運が悪いと〈麻痺〉るのだからとんでもない。
威力は下がるが遠距離範囲攻撃で確実に当てたり、命中率バフ系を使ったりして対策するのが吉。ということでシズを中心としたパーティで挑んでもらう。
つまりはメルト、ミサト、シズ、パメラ、トモヨのパーティだ。
トモヨなら状態異常には絶対にならないので優秀。
そしてあまりにここでは強すぎて使ってこなかったが、さすがに50層ボスとなると強敵なのでついにメルトを解き放ってしまう俺。許せ〈ファルコン〉。
「やったれメルト!」
「いいだろう『十倍キログラビティ』!」
「グエェェェェ!?!?」
ビターンと空からハヤブサが降ってきた。否、落ちてきた。
お察しかもしれないが、メルトのこれは体重を10倍に増やすエリア魔法。
特定のエリアを重力10倍にするというだけの魔法だが。飛んでいるとこれが超ぶっ刺さる。普通に落下するからだ。
故に飛行型特効。さらに地面に居るモンスターは強制的に〈束縛〉にして動きを遅くしてしまう。素早い〈デンジラスファルコン〉にはぶっ刺さる魔法である。
墜落してダウンしたら総攻撃。
みんな遠距離攻撃が良い感じなのでガンガン攻撃してもらった。
「ギャアアアアア!!」
エリア魔法なのでしばらく消えない。その間はやりたい放題だ。
うむ。やはりメルトの魔法はここまで使わなくて良かった。あの強敵〈ファルコン〉がちょっと可哀想なことになってしまったぞ。みんな離れた所から一方的に撃ちこんでる。
その後はエリア魔法が解けてもシズが『冥王の威圧』で回避力を下げ、『照明弾』で味方の命中率を上げて攻撃を当てまくり、クールタイムの終わったメルトがまた『十倍キログラビティ』で墜落ダウンさせて総攻撃。
その繰り返しで楽勝だった。〈宝箱〉は〈木箱〉。中身は〈ファルコンなりきりマスク〉だった。特に効果は無い。
むう。〈ファルコン〉の無念さが伝わってくるようだ。後で少し被ってあげよう。
そして宴会の時にみんなの前で「トリサンニナリターイ」と叫ぶのだ。
一発ネタとして、有りかもしれないな。
55層の守護型ボスは〈テンペストペガサス〉。
鳥? 馬? 果たしてペガサスは鳥なのだろうか?
そんな疑問が湧いてくるが、〈ペガサス〉自体が〈ユニコーン〉と〈ボスコッコ〉で卵を作ってから進化させなくては手に入らないので、まあ鳥とも言えなくもなのだろう(?)。
常に暴風を身に纏って飛ぶので、生半可な遠距離攻撃だと逸らされて明後日の方向へ飛んで行ってしまう。これは回避しているわけでは無いのでシズの『照明弾』でも当てられないのだ。
こいつだけはメルトが叩き落としても普通に駆けてくるので〈ファルコン〉の時の戦法は使えない。
ということで、普通に近距離攻撃で倒す。
幸い相手は〈ペガサス〉なのでよく突撃してくるのだ。
送り出すメンバーはラウ、セレスタン、フィナ、エリサ、そしてシャロンだ。
「こっち来ちゃえー『受け止める』! そしてカウンターの――『激槍ファランクス』!」
「ブルワァ!?」
ゴチンと衝撃。
シャロンが『受け止める』でこっちへ誘導。接近してきたところをカウンターのファランクスで大ダメージを与えたのだ。
やっぱり馬の突撃にはファランクスだよな。
「今です!」
カウンターが決まったことで突撃も止まり、それどころか横転してダウンしてしまった〈ペガサス〉に総攻撃。
ダウンしたらさすがに暴風も使えない。
「空に逃げたわね。フィナちゃん!」
「逃がしません――『天落』!」
「ブゥゥゥゥルワァ!?」
「飛んで火に入る夏の虫だ」
「ええ。しっかりと光に還して差し上げます」
このパーティに突撃は効かないし、空中でもフィナの『天落』でたたき落とせる。フィナの〈聖銀の天盾〉にはLVは低いながらも『ノックバック耐性』があるので多少の暴風は突破出来るのだ。
そうすれば後は肉弾戦のラウとセレスタンが仕留めてくれる。
ちなみにエリサはヒーラーでサポート。
うん。上手く決まったな。
「「あ!!」」
宝箱は――なんと〈金箱〉!
〈金箱〉来たーーー!! 今日初! 待ってましたー!
中身はなんと――〈ペガサスの暴走杖〉という片手杖。
おお~、なかなかの当たりだ。遠距離攻撃を逸らす防御スキルと回避スキルが組み込まれている。紙装甲の後衛からシャロンみたいな城主系まで幅広く使える良武器だ。
これはシャロンの武器に進呈した。
続いて56層でついに遭遇したのが徘徊型ボス。
ここの徘徊型はまあ、どこかしらで絶対に遭遇する。
だって逃げられないから。
ボスの名は〈音速ロック鳥〉。
名前からしてやべぇボスだ。
徘徊型の十八番は奇襲だが、こいつはもうなんて言うのかな。ジェット機が突撃してくるみたいな奇襲を仕掛けてくる。上手く避けるかタンクが止められなければみんなまとめてホームランされて壊滅だ。
壊滅は大げさかもしれないが、壊滅的ダメージは受けると思っておくべし。
しかもこいつが来るタイミングは予想が難しい。普通の通常モンスターの相手をしていたら、こいつが飛び込んで来た、という笑えない展開が一番事故率が高かった。
とはいえ〈音速ロック鳥〉が出てくるのは大体この56層なので、この階層だけ気を張っていれば良いのがせめてもの救いだな。理由は徘徊型が休む巣があるのがこの階層だからだ。え? 他の階層で出てきたら? まあ、頑張れ。
後、音速と名が付いているが、別に本当に音速を超えてくるわけでは無いのと、接近すれば「ギュィィィィィン」というジェット機のような音が聞こえてくる。それが聞こえたら他のモンスターなんか放っておいてすぐに防御か回避だ。
どうせモンスターは〈音速ロック鳥〉の突撃の余波でみんな綺麗に光に還るので放置していい。
ちなみに俺たちは〈イブキ〉で移動しているので最初からモンスターは光に還ってるけどな。あはははは!
さて、〈音速ロック鳥〉だ。
俺は「『直感』がこの階層をやべぇと言ってる」とか言ってみんなの警戒度を上げて陣形を作り、いつも以上に警戒しながら〈イブキ〉で進んだ。
「!? 何か来ます!」
最初に気が付いたのはロゼッタだった。おそらくパッシブスキル『ヘブンズナイツカッション』の警戒スキルが警報を鳴らしたのだろう。そして次の瞬間にはジェット音がし始めたので即で指示を出す。
「全機オバドラ!!」
「「「『オーバードライブ』!」」」
「ギュィィィィィン!!」
俺が警戒を促していたからか、エステルもアイギスもロゼッタも欠けること無く即で高速移動。瞬間、翼を広げれば10メートルを超えるような巨大鳥が俺たちの居た場所を通過していった。
「どらっしゃー! セーフ!!」
「ちょ、何あれ!?」
「そんなの後だ! 戦闘準備! 今回は2パーティで行くぞ! シャロンと俺のパーティが相手をする! 他のメンバーは見学だ!」
「ええー!」
「ロゼッタ、頼む!」
「承知しました!」
俺のパーティはロゼッタ、カタリナ、フラーミナ、そしてルキアだ。
シャロンのパーティはさっき言ったようにラウ、セレスタン、エリサ、フィナ。
俺たち10人はロゼッタ号に乗っていたのでそのまま下車。エステル号とアイギス号には離れてもらって戦闘開始。
〈音速ロック鳥〉はこいつレーザー戦闘機か? という感じで爆発するビーム魔法を体の周囲から連射してくるので、タンクでよく防ぐのが重要。
シャロンにメインタンクになってもらい、まずは相手の攻撃を受け止める。




