#1120 〈島ダン〉最初のボスは鳥(?)ですか?
「ん。敵影発見」
「あら? まだかなり遠いですわね。あんなところからこちらを捕捉してくるなんて――『大号令』! 『みなさん敵性モンスターが接近中ですわ! 集まってくださいまし』」
カルアが『ピーピング』で周りを見ていたところ、どうやらこっちに接近するモンスターを捉えたようだ。
この門のある島は救済場所だが、湖はそうじゃないからな。
「キャッキャ」「うふふ」しているとモンスターが「僕も混ぜてー」と寄ってくるのだ。もちろん「ダーメ」と言いながら撃ち落とす。混ざろうだなんてとんでもないことだ。
リーナが大きな声を上げて味方を集めバフを掛けるスキル『大号令』で危機を知らせると、みんな武器を取り出して臨戦態勢を取った。
発見したときはまだ遠かった敵影も、空を飛んでいるため速い。気が付けばもう間近まで迫っている。
「ラナ様、お下がりください。『バードデスストライク』!」
「シズが一番槍を決めたぞー! シズと同じパーティのメンバーは戦闘に参加! 無闇やたらに攻撃しないようになー!」
先制はシズの〈五ツリ〉『バードデスストライク』だった。撃った瞬間に銃弾が漆黒の大きな鷲に変化してそのままストライクを決める。飛んでいる敵には特効効果だ。
「「グエェェ!?」」
おお! 一撃で2体も光に還ったぞ! さすがは五段階目ツリー!
ていうかオーバーキル! 1層のモンスターに使うスキルじゃねぇ! どんどん撃っていこう!(矛盾)
そんなことを考えながら眺めているとシズのパーティメンバーが集まってくる。
前回の〈山ダン〉の時とはメンバーが違うぞ。今回は〈島ダン〉仕様にチェンジしてあるからな。
何しろここは飛行するモンスターが多いため、通常の雑魚モンスター戦専用パーティを組んでしまった方が効率が良いのだ。
ということで、シズのパーティには遠距離攻撃が得意なメンバーが多く配置されていた。
「カモメ型か? 〈フレイム突撃カモル〉だな。炎に身を包んで突撃してくるカモメだ。なら、氷が有効。『ブリザードテンペスト』!」
冷静に分析しながら〈氷属性〉の〈五ツリ〉を使って殲滅するのはメルトだ。
猛吹雪の竜巻に身を巻かれ、大ダメージを受けて〈カモメ〉たちがどんどん光に消えていく。というか全員消えた!
たかだか1層のモンスターに〈五ツリ〉とか、贅沢な倒し方だった。どんどん撃っていこう!
「ううーん、私の出番は無いかな」
「あれ? もう終わっちゃった?」
「私たちの出番は無かったようデース」
一瞬で片付けてしまったことで、せっかく前に出てきたトモヨ、ミサト、パメラがありゃ? となっていた。
たった2発の〈五ツリ〉で戦闘終了。速すぎるぜ。さすがは〈五ツリ〉!
「こほん。初の戦闘だったが、思いのほか上手くいったな。先に進もうか。またモンスターが来るかもしれない」
「そうだな」
そう、咳払いして誤魔化したメルトの言葉に同意し、俺たちは出発することにした。
ただ、予想外が1つ発生。
「水を歩くの? 〈イブキ〉に乗ればいいじゃない」
そんなラナの一言に俺が用意した〈海塗りのベール傘〉はお役御免。
みんなで〈イブキ〉に乗って出発することになったのだった。
「うん。良いんだ。この傘はボス戦で使うし」
「『アクセルドライブ』!」
「キュオ――「ゴツン」オキュン!?」
また突撃してきた鳥型モンスターが光に消えた。
うん、このフィールドってさ、浮遊する〈戦車〉の類いは無敵なんだよな。いや、今までのフィールドもそうだったけど。
普通の〈馬車〉だと水中に車輪を取られて進みが遅くなったり止まったりして立ち往生、そこへモンスターからの襲撃を受けてしまうという厳しいダンジョンなのだが、〈イブキ〉にとってはどうということはない。
水の上をすいすいーっと進む。
「あ、あれは〈サーファーペンペン〉です!」
「ペンペンーー「ゴツン」――ぺギン!?」
サーフボードに乗ったペンギン型モンスターが仕掛けてきたが、サーフボードじゃあ戦車には勝てなかった。
こんな感じで立ちはだかるモンスター全てを蹴散らしながらも〈イブキ〉は進む。
ここって見晴らしが良いからどんどんモンスターが集まってくるんだ。
しかも飛んでいるものだから速い速い。
水に足を取られる並の馬車なら物量にやられてしまうのだが、〈イブキ〉は快適だ。
なら、〈海塗りのベール傘〉が無くてもいいや。そうだろ? うん。
それに活躍の場所はある。
それこそボス戦だ。
ボス戦だと〈イブキ〉から降りなくてはいけないからな。
「あ、ありました。6層への階層門です」
「ということは、あの階層門を守っているのがフィールドボスね。……ここって鳥系のダンジョンじゃなかったかしら?」
「……多分鳥のつもりなのさ」
「鳥のつもり……」
そこに居たのは無機物の鳥(?)。
翼っぽいような、でもそれ翼じゃ無いだろう的なオブジェを背中に背負い、背中から何かを噴射して空を飛んでいる無機物の人型ボスだった。
うん。鳥じゃ無いな。ちなみに男の子が好きそうなロボットっぽい作りをしているぞ。
「『看破』! なるほど? あれの名は〈鳥になりたかったロボット〉というらしい。機械系のモンスターのようだ」
「? 機械なら、最初から鳥型にすれば良かったのに」
「カルア、それを言っちゃあおしまいよぉ」
リカが〈幼若竜〉で『看破』すると、カルアから適切なツッコミが入った。
完全に人型のロボットが鳥になるには変形するしかない。しかし、このモンスターは変形出来ないのだ。通称〈鳥ロボ〉と呼ばれていただけに、名前の不憫度が天元突破していて泣ける。
「〈鳥ロボ〉って鳥じゃねぇじゃん!」と何度もツッコミを入れられては笑いを提供してくれたボスだった。
「名前が長いから、とりあえず通称〈鳥ロボ〉と名付けよう」
「鳥じゃ無いわよゼフィルス!?」
「ブハッ!」
ラナのツッコミがツボに入った。ナイスツッコミ。
「ビビビ、トーリサーン!」
「今鳥さんって言った?」
「カルアも聞こえたか。私の幻聴では無かったようだ」
機械なので、変な言葉を喋ります。
「トリサン! トリサン! トリサンニナリターーイ!」
「くぅ泣ける!」
開発陣よ。なんでこんなの作っちゃったのか。
「うむ、ならば私が斬ってみよう。上手く行けば来世では鳥型ロボットになれるかもしれないぞ」
「ん。やる」
「なら私たちの出番ですね。ゼニス、出番ですよ」
「クワァ!」
よく分からない理屈だが、リカ的に介錯してやろう的な意味なのだろうか?
リカがやる気満々で前に出た。さらにリカのパーティであるカルアとアイギス、ゼニスもやる気満々だ。
「レグラム様、私たちがボス戦の先駆けになりましたわ」
「任せるがいい。空での戦いは望むところだ」
意外に勇ましいオリヒメさんのセリフにレグラムが剣を抜いて前に出る。ちょうどオリヒメさんを庇うような位置だ。
「じゃあ、今回はリカのパーティが相手だな。あ、この傘は俺が持ってます」
ちなみに俺はすでに〈海塗りのベール傘〉を差してスタンバイ中だ。
これで水に濡れても大丈夫。
問題は、ここが島で、すでに足下が陸という部分だ。最初から濡れる心配なんて無い。
良いんだ。俺は傘が差したいんだ!
そういえば守護型ボスには〈海塗りのベール傘〉はいらなかったなぁ。
今度はエリアボスを見つけたときに差そう。




