#1088 順調。あまりにも順調すぎてアドバイスが捗る
「『ナイトメア・大睡吸』! 『MP大睡吸』! 『夢楽園』!」
道中で遭遇した雑魚モンスターが眠り、MPを吸収されて、光に還っていく。
「『誘いの魅力』! 『誘いの睡魔』! 『夢楽園』!」
クールタイムの調整もあるのでたまにパターンを変えるなどして発動。
こちらは相手を〈魅了〉状態にして『抗えない睡魔の罠LV10』を発動状態に移行。続けて『誘いの睡魔』で〈睡眠〉を付着させて、〈即死〉へと誘うパターンだ。
『夢楽園』は相手が〈睡眠〉状態の時にしか使えない代わりに高確率で〈即死〉させる効果を持つ。さらに〈睡眠〉状態じゃないと使えないのでクールタイムが短く、30秒程度で再使用出来るので、エンカウントの度に発動出来るのが素晴らしい。
しかし、さすがにユニークスキルである『ナイトメア・大睡吸』の連続使用はクールタイム的に厳しいので途中手を変えているわけだ。
ただ〈クーラーユニークアームレット〉があれば1回のエンカウントを挟むだけで大体クールタイムが終わる。
というわけで、本日はエリサが〈クーラーユニークアームレット〉をリーナから借りて装備していた。リーナのユニークはギルドバトルでこそ発揮されるので、通常時は誰かに貸していることが結構ある。
次々光に還っていく、本来なら結構手間取るはずの上級のモンスターを前に、同行していた合同メンバーズは眼を丸く、口も丸くしていた。
〈ギルバドヨッシャー〉の面々なんてハニワみたいになってたからな。
そんな中、とうとう我に返ったインサー先輩が問うてくる。
「ゼ、ゼフィルス氏ゼフィルス氏」
「どうしたんだインサー先輩?」
「なんだ……あの戦法は? 強すぎないか?」
「そりゃ【悪魔】系の最高峰の職業だからな!」
「ぬぬぬ。【悪魔】か。まさか【悪魔】がこれほどまでに強いとは。ギルドバトルAランク戦で筋肉を下した猛威は見ていたが、予想と想像を大きく超えてきたぞ」
ふっふっふ。見れば分かる。
みんなポカンとしているからな。
見ろ、フィナなんてエリサの活躍にとても嬉しそうな表情をしている。
いつもならエリサの前ではしない表情だ。レアだレア。
「あれ? フィナちゃん何か嬉しいことでもあった?」
「なんでもないです。見てください姉さま、次の獲物が来ていますよ」
「あ、本当ね! このエリサちゃんにまっかせなさい! 『ナイトメア・大睡吸』!」
なお、とうのエリサ本人はあまり見たことがない変化だったからだろう。フィナがなぜ嬉しそうなのか気付かなかった様子だ。
フィナは結構お姉ちゃんが大好きっ子なんだぞエリサ?
「また全滅か。たった1人でこの戦果。ただごとではないぞ。我らも【悪魔】を育てるべきではないか?」
「実験してみる価値は大いにある。帰ったら早速試してみよう。〈天魔のぬいぐるみ〉の在庫はあったか?」
「たしか、1つだけあったかと」
「よし。ならば次は選定だ。誰が【悪魔】職業に就くか」
〈ギルバドヨッシャー〉のメンバーがようやく復活したので会議をしていた。
って〈ギルバドヨッシャー〉は〈天魔のぬいぐるみ〉持ってるんだ!?
いいなぁ。うちも持ってるけど。
そこへマナエラ先輩もやってくる。
「いいわね【悪魔】職業。MPを気にしないでどんどん撃てるのはとても魅力的なのだわ」
「ふっふっふ、それだけじゃないぜマナエラ先輩。実はエリサは自分のMPを他人に譲渡できる魔法も持っているんだ。これがどういうことか分かるか?」
「はわ! まさか、相手から奪ったMPで仲間が魔法を使い放題に?」
なんか可愛いリアクション来た!
俺は鷹揚に頷いて言う。
「その通り! いくらポーションを大量に持っているといっても節約したいと考えるのが人情というもの。しかし! エリサさえいればその節約もしなくて良いんだ!」
「な、なんて魅力的な言葉なの。素晴らしいのだわゼフィルスさん」
ふはは!
美人さんから素晴らしいと言われてしまったぜ。
俺はとても気分が良くなった。
「【悪魔】系の職業がこんなに魅力的だっただなんて。2人以上いればもっと回転率が増して、ダンジョン攻略が更に捗りそうなのだわ」
おお! いきなり【悪魔】系を2人以上入れるとか発想がいいね。
ゲーム時代、「悪魔」と「天使」カテゴリーは各1人ずつ制限だったがリアルではそんなこと関係無い。やはり現地人は発想が違うな。
「だが【悪魔】系に就くには〈天魔のぬいぐるみ〉が必要だ。これの入手がなかなか難しいぞ?」
「大丈夫なのだわ。だって〈ミーティア〉には3つあるもの。みんなに可愛がられているのだわ」
衝撃の事実。
〈ミーティア〉には〈天魔のぬいぐるみ〉が3つもあってギルドメンバーに可愛がられているらしい。
このリアル世界、〈天魔のぬいぐるみ〉の使い方が間違っている気がするんだけど!?
とそこでインサー先輩が帰ってきた。まだまだ聞きたいことがある様子だ。
「! そうだゼフィルス氏、まさかそちらの【天使】系フィナリナ氏も何か持っているのではあるまいな?」
「そんなの、当り前だろう?」
「そうだな。さすがにこれほどの職業がそうポンポンあるわけが――」
「フィナはこれと同じくらいすごい可能性を秘めてるぜ?」
「――あるのか!?」
どうやらあり得ない風に感じていた様子のインサー先輩。
しかし、俺の言葉に再度驚愕に目を見開いた。
「まあ、それをお見せできるのはもう少し後だけどな」
一応〈ギルバドヨッシャー〉にはフィナのスキルをギルドバトルの時に色々見せてはいるが、あれはまだ序の口だ。何しろ〈四ツリ〉だからな。
本番はまだまだ先だ。せめて〈五ツリ〉にならないとな。
また、休憩時はアイギス用の〈イブキ〉を取り出し、そのデッキを開放した。
恐る恐る、もしくは興味津々に〈イブキ〉のデッキへ上がってくる合同メンバーたちの表情が大変良き。
その後は〈イブキ〉を紹介した。
休憩のつもりが、思わぬ〈イブキ〉の内装紹介回になってしまったぜ。
再び移動を開始すると振り返ったインサー先輩が唸る。
「凄まじかったな。あれが〈馬車〉、いや〈戦車〉なのか?」
「カテゴリー的には〈馬車〉〈戦車〉カテゴリーだな。〈馬車〉のみや〈戦車〉のみとは違い、この両方のカテゴリーを兼ね備えているからこその凄さだ」
「ぬう、なるほど。〈馬車〉だけでは上級ダンジョンは走破できないと聞く。しかし、ほんの少し浮いているこの〈イブキ〉であれば上級ダンジョンでも走行が可能なのか」
「興味深いな。確か〈総商会〉の方で最近〈馬車〉を売り出していたが、あれは上級ダンジョンに適応していないという話だからな」
オサムス先輩が会話に入ってくるが、興味深いことを言っていた。
お? 馬車が売り出されているだって?
「オサムス先輩、どんな馬車なんだ?」
「ああ。名前は〈馬乗ケンタル〉。ゴーレムのケンタウロス、とでも表現すれば良いのだろうか。ケンタウロスの馬の部分、つまり胴体がくりぬかれ、乗車できるようになっている馬――ゴーレムだった。ああ、ちゃんと四足だ。車輪が無いのが特徴だ」
今〈馬車〉と言いかけてゴーレムと言い直したな。分かる。
インサー先輩がその話を引き継ぐ。
「まさか馬に引かせるどころか、その馬自体を車両にしてしまう〈馬車〉なんてものがあるとはな。かなりユニークだった。惜しむらくは上級ダンジョンでは使えないところだろう」
「〈ケンタル〉か。確かに上級では使えないな。あの馬車ではこの荒れ地は進めない。脚が引っかかって進めないらしいからな。中級馬車だ」
もちろん〈ケンタル〉は知っている。
俺たち〈エデン〉以外のところからついに〈馬車〉を販売すると言ってたから期待していたけど、想像以上にユニークな〈馬車〉が来たな!? もっと普通の馬車っぽいものは無かったのか!?
「だな。やはり〈イブキ〉のような上級〈馬車〉〈戦車〉がほしい」
うむ。よく分かる。
どうやらインサー先輩たちはこの〈イブキ〉の性能を一発で見抜いたらしかった。
お目が高いぜ。
なら、俺が少しアドバイスしてあげよう。
「それなら一つ良いことを教えてあげよう。〈ケンタル〉には他にも使い道があってな。実は上級ダンジョンの中でも〈霧ダン〉だけは中級〈馬車〉での走行が可能なんだ」
「!! なんだと!」
「いや待て、確かに考えてみれば〈キングアブソリュート〉はダンジョン馬車を持って〈霧ダン〉に突入していたはずだ。使うことは出来るぞ!」
そう。上級ダンジョンでは使えないと言われているただの〈馬車〉ではあるが、1箇所だけ使えるダンジョンがあるのだ。
これを広めた瞬間から〈馬車〉の価値が急増すること間違い無しだな。
今度〈エデン〉と〈彫金ノ技工士〉の連名で〈無人腕車ガンゴレ〉を売り出すことになっている。〈ケンタル〉と〈霧ダン〉の情報は〈ガンゴレ〉の購買欲を煽ることにも繋がるだろう。……多分。
「ちょっと待ってください。興味深い話をしていますね。私たちにも教えてくださいゼフィルスさん」
「僕もなんだね。強くなるにはダンジョンの奥に行くのが一番なんだね。ダンジョン馬車にはとても興味があるんだね」
「ゼフィルス、俺も詳細が知りたい。こちらは対価を払う用意がある。教えてはくれないか?(ギルドマスターらしいことが出来るチャンスだ。この交渉、絶対に成功させないと!)」
〈ギルバドヨッシャー〉と話していたら他のギルドも集まって来た。
みんな興味津々の様子だな。
〈集え・テイマーサモナー〉だけは来ていないが、彼女たちは〈馬車〉よりも頼りになる子がいるからな。
よしよし、そんなに教えてほしいなら教えてあげよう!
「――『夢楽園』! ふう、良い仕事したわ! ねえ見た? またエリサちゃんの活躍、見ちゃった? って誰も見てないじゃない!?!?」
「姉さま。私が見ています。がんばってください」
「フィ、フィナちゃん~」
「あれ? これ私が『渡り隠し』スキル使ってエンカウントを防ぐ意味って無いんじゃ?」
ナギが気が付いてはいけないことに気が付きかけていたけれど。気のせいということにしておいてほしい。
「混沌!」
俺たちはこのままワイワイ楽しみながらも真っ直ぐに次の階層門を目指し、〈岩ダン〉の時よりも若干時間を掛けながらもその日は5層まで進めることが出来たのだった。
やはり〈トラン・プリン〉の存在が大きいぜ。
そしてとうとう5層で待ち合わせをしていた〈ハンター委員会〉のギルドマスター、アーロン先輩と再会する。




