#118 このエルフ、プロか? 目指せ、最強の頂!
いつもいつも誤字報告ありがとうございます。
更新優先で見直す時間が厳しいため大変助かっています。
「以前、ゼフィルス殿が言っていた物ですね。どういう意味なのですか?」
エステルがケイシェリアに問う。
まあ、ゲームをしていなければちんぷんかんぷんだろう。
何故そんなものが必要なのか、実を言うとゲームでも明かされていなかったりする。
ただ「エルフ」をスカウトするためのキーアイテムとしかテキストに書かれていなかったからな。だから俺も実は知らない。
「さすが、エステルから聞いていたとおり博識ですね。どこからその情報を仕入れたのか非常に気になります」
ケイシェリアが興味深いと言いたげな視線で俺を見る。
ああ、そういえばエルフって知識欲が強い設定があったな。
この「非常に気になる」発言は文字通り本心というわけだ。
ま、〈ダン活〉については少しずつ、時期を見て、だな。それにギルドメンバーになるかまだ分からないし。
ということで今は適当にごまかす。
「なに、それが「エルフ」にとって重要って聞きかじっただけだ。何故必要なのかとか具体的な事は知らん。できれば詳しく聞いてみたいくらいだ」
実際知らないしな。嘘は言っていない。
「なるほどです。確かに「人間」のあなたでは分からないはず、私も事前情報に舞い上がっていたのです。…別に教えても何の問題もありませんが、聞きたいのですか?」
「是非!」
え? 教えてくれるの? なら是非知りたいんだけど。
俺は〈ダン活〉が大好きすぎてその全てを知り尽くし、データベースとまで呼ばれた男。まだ知らぬ〈ダン活〉の新情報とか食いつかずにはいられない!
「すっごい食いつきです」
「おっとすまん。話を脱線させてすまない。つ、続けよう。…その話はこの後にでもまた」
「ゼフィルス殿? 次はシエラ様のご紹介では?」
……そうだったな。まあいい、焦るな俺。
また機会はあるだろう。あると思う。…あるよな?
「先ほどの話ですが、例の三つの物が無くては確かに年若いエルフは苦労いたします。ギルドに入る以上、出来れば三つとも揃っている所に入りたいのがエルフというもの。ということで、持ってきました」
「え?」
おかしいな、途中まで話を理解出来ていたつもりなのに、最後だけよく理解が出来なかったぞ?
持ってきた? はて? 何を?
「こちらが〈ユグドラシルの苗〉〈赤い実〉〈観葉植物セット〉です。エルフの間ではこの三つを合わせて〈精霊園〉と呼んでいます」
「まさかの持参!?」
〈空間収納鞄(容量:少量)〉から取り出した見覚えのある三つのキーアイテムを机に並べるケイシェリア。あ、実物のアイテムって思ってたより小さいんだな。
じゃなくて!
プレゼントアイテムなのに持ってきちゃったよこのエルフ!? え、こんなのってありなの?(ありです)
リアル、ここに極まれりだ。
ゲームで「エルフ」がプレゼント持参してスカウトされに来たらゲームバランス崩壊しちゃうよ!
「これで私が〈エデン〉に所属出来る条件が整いました。私が在籍するのに否はありません。どうかご検討いただければ幸いです」
待ってくれ。置いて行かないでくれ。
ちょっとこのエルフマイペース過ぎない?
普通に話を進め出したよ。
俺はもう少しこの感動にも似た困惑と驚愕を味わっていたかったのだが…、今は面接中、俺ギルドマスター。やむを得ず気持ちを一旦置いておかざるを得なかった。後で回収しよう。そのまま置き忘れてしまうかもしれないが…。
「お、オーケー。話を続けようか…」
俺をここまで動揺させるとは、このエルフ、プロか?
その後は簡単な自己PRからこのギルドに入りたい目的やケイシェリアが目指す目標などを聞いていった。
彼女の職業は未取得。希望は【精霊術師】。まだ発現条件を満たせず。
ここに来た切っ掛けだが、エステルの【姫騎士】とラナの【聖女】だそうだ。
エステルが【姫騎士】に就いたというのはすでに実家に知られている。相談したし。
すると当然のようにラナも王家に知られる事となる。【聖女】に就いたという事実を。
もうそちらの方面ではかなり有名になりつつあるようだ。【勇者】と【聖女】が同世代に誕生したというのは話題性もあって「一瞬に近い速度で広がっていったわ」とシエラが言っていたのを思い出す。
そして自分も【精霊術師】に就けないかとエステルに相談したところ、こうして面接となったわけだ。
まあ、当然知ってるけどな、発現条件。
「やはり、ご存じでしたか」
「俺に知らない職業は無ぇ。…いや、なんでもない」
とりあえず教える条件として〈エデン〉に加入してもらうのは問題ないとの事。
次に、ギルドに入りたい目的と目標だが、
「【精霊術師】で最強になる事、です」
「へぇ!」
俺はそれを聞いて一気に興味が湧いた。
最強。
それは〈ダン活〉プレイヤーが目指した真の頂。
タイムアップが設定されている〈ダン活〉でどれだけの頂を目指せるのか、日夜やりこみに情熱をかけ続けた〈ダン活〉プレイヤーたちに、例えば「最強ってどうやったら成れるのですか?」なんて聞いた日には嵐じゃ済まない。カタストロフが起きる。
しかし安心してほしい。
俺は比較的穏便派で通っていた。あの時の悲劇は起こさせない。
ああ思い出す。あの純真無垢だったプレイヤーが各方面から染められた結果…………いや、これ以上は思い出さないでおこう。
こほん。
最強になりたい。素晴らしい事だと思う。
分かった。任せてくれ。最強になるために〈エデン〉より適したギルドなんて無い。
俺がしっかりと導いてやろうではないか!
ということで面接の結果、
「採用!」
俺はその場で言い渡した。
名称を一部変更しました〈スロット〉→〈能玉〉