#1075 〈採集無双〉ランクアップ! 全員上級職!
「ほ、本当に僕が〈上級転職チケット〉をいただいても良いのでありまするか!?」
「タイチ、言葉が乱れまくっているわよ。――でも本当にここまでしてもらってもいいの?」
「私たちを選んでいただき感謝いたします」
「構わないさ。ギルドメンバーの許可はもう取ってあるしな。〈採集無双〉には期待しているしタイチとアンベルさん、そしてサティナさんにも上級職に就いてもらいたいんだ。そして協力してほしい」
ラウンジに呼んでもらったのは、〈採集無双〉のメンバーである釣り担当【フィッシャー】のタイチと、伐採担当である【コリマー】のアンベルさん、そしてアイテム担当である【アイテム士】のサティナさんだった。
タイチは麦わら帽子が似合う釣り師の少年という出で立ち。黒髪黒目でやや田舎風の純朴系だ。
アンベルさんは金髪の髪をポニーテールに纏めたお姉さん系。斧使いなのが信じられないくらいスラッとしている。
サティナさんはブラウン系の短い髪を黄色いカチューシャで留めたややロリ気味のダウナー系。言葉遣いはとても丁寧なのだが、感情の起伏が乏しい感じだ。
3人とも、連絡したらすぐに来た。それだけ〈上級転職チケット〉の効力が強いということだろう。
「任せてくださいゼフィルスさん。僕が大物を大量に釣り上げて来ますよ!」
「私も期待に応えられるよう頑張るわね。伐採なら任せて頂戴。〈集え・テイマーサモナー〉や〈青空と女神〉と連携できるなんて光栄な話、喜んで受けさせてもらうわ」
俺の話を聞いたタイチが腕まくりをしてやる気を表し、アンベルさんも胸に手を置いてしっかりと頷いていた。
「頼もしいな!」
……タイチは寒かったのか腕まくりをすぐに戻していた、冬だしな。
「それで、私はなにをすればよろしいのでしょう?」
「それなんだが、サティナさんには別のことを頼みたい」
この中でサティナさんだけは〈採集課〉ではない。〈採集無双〉の中・遠距離攻撃役であり、同時に護衛も務めていたのがサティナさんだった。
サティナさんの職業は【アイテム士】。
【投擲士】に近い系統で、アイテムを使って戦う職業だ。ハンナの錬金砲などを強化して撃つことができたりする。
この3人にモナとソドガガが加わった5人が〈採集無双〉のパーティだな。
「別のこと、ですか?」
「ああ。実はサティナさんには採集とは別でお願いしたいことがあってな。上級職に就いたら『魔道具使用回数増加』と『魔道具回数消費軽減』、そして『アイテム成功率上昇』をLV10まで伸ばしてほしいと思ってる」
「それは……」
俺の言葉にサティナさんがやや目を見開いて驚いていた。
今までアイテムで〈採集無双〉が採集している間の護衛などをしていたサティナさんだが、もう上級ダンジョンではなかなか活躍が難しくなってくると思われる。主に金銭面で。
しかし、【アイテム士】はサポートが非常に優秀なんだ。なにも攻撃だけが【アイテム士】の能力じゃない。
【アイテム士】はアイテムを使うスペシャリスト。
アイテムを使う時に補正が掛かり、威力向上や飛距離アップ、即時使用を始め様々な恩恵をもたらしてくれる。
そして上級職のスキル『魔道具使用回数増加』は回数の付いているアイテムの回数を増加させるスキル。
上級スキル『魔道具回数消費軽減』は確率で使用回数が減らなくなるスキルだ。回数消費アイテムを使用すると普通は減る回数が、確率で減らなくなる効果を持つ。
さらに『アイテム成功率上昇』は読んで字のごとく、確率系のアイテムの成功率を上昇させるスキルだ。
これがどういうことか分かるだろうか?
「もしかして、例の〈フルート〉を!?」
「さすがはAランクギルドのギルドマスターだ。カリン先輩は知ってたか」
「知らないでか!」
ずっと俺と〈採集無双〉の3人のやり取りを見ていたカリン先輩が興奮した。
しかしその表情はふざけてはいない。むしろ驚愕に染まっている。
同時にエイリン先輩やソフィ先輩も驚いていた。
察しが良いなぁ。
そう。アイテムの回数を増加、消費を軽減するというこのスキルを使えば、〈フルート〉などの〈笛〉系アイテムの使用回数も増やせるということだ。
使用するのがサティナさんという制限はあるものの、成功率70%で5回しか吹けないフルートで呼べるボスの回数を格段に増やすことができる。
さらにLVが上がり五段階目ツリーに至れば、希少ボスを呼び出せる確率まで上げられるのだからとんでもない。
まずは現在かなり損耗が激しい素材やミールの節約で負担を軽減してもらい。
LVを上げてもらったら希少ボス祭りだ! 夢が広がるな! ふはははは!
もちろんそれだけではなく他にも頼りになることは多い。
しかし、それもサティナさんが頷けばだ。
今まで歩んできた道とはだいぶ変わってしまうため、かなり苦労があるだろう。
タイチとアンベルさんとは違い、サティナさんだけは時間が掛かるし、SPは回数系アイテム特化に振ることをお願いしなければならない。そのためもしかしたら断られるかもしれないと思っていたのだが。
「構いませんよ」
案外あっさり頷いた。
「いいのか?」
「はい。そもそも上級ダンジョンに進出するのでしたらそれだけ強力なアイテムの使用代もばかになりませんし、むしろ大量出費という地獄から抜け出す道があるのでしたら是非抜けたいです」
「ああ~。サティナの出費は本当に大きいからね。いつもプルプルしてたもんね。よしよし」
「アンベルさん、ちょっと、子ども扱いはやめてください」
【アイテム士】とはアイテムを消費してモンスターと戦ったりする職業だ。
つまり【剣士】や【魔法使い】などとは違い、戦う度に出費が嵩む。
聞けばサティナさんは高位職の【アイテム士】に就いたはいいものの、その支出額の高さに最初は満足にダンジョンすら潜れなかったそうだ。そこで出会ったモナたち〈採集無双〉に入れてもらい、採集した素材を格安で譲ってもらう代わりに護衛をしていたらしい。
そして、中級以降、支出額がどんどん上がるにつれてサティナさんも震え上がっていたらしい。その地獄から抜け出せるなら是非抜けたいと即決したようだ。
正直、ありがたい。
ならば期待に応えよう!
「オーケー任せろ! じゃあ早速〈上級転職〉に行くか! 今から!」
「「「今から!?」」」
元々〈採集無双〉のメンバーには上級職に就いてもらいたいと思っていたのでなんの問題も無い。
準備は出来ているしな!
「タイチには【フィッシャー】の上級職、高の下、【伝説の釣りキング】に。アンベルさんは【コリマー】の上級職、高の下【大旋風コリマー】に。そしてサティナさんは【アイテム士】の上級職、高の下、【アイテムエンハンス】にそれぞれ〈上級転職〉してもらいたい」
「おおおおおお!! も、もちろん構わないです! 高位職とか勝ち組ですよ!」
「なんだか、職業名がどんどん物騒になっていくわね。いいけれど」
「私の職業は、なんだかかっこいい名前ですね」
「異論無し、ということでいいかな?」
俺の言葉に3人ともコクリと頷いた。
カリン先輩たちはそれをやや目を丸くしながら見ていたよ。
「じゃあ、早速測定室に行ってくる。すぐに戻ってくるからー」
そう5人に言い残し、俺は3人を連れて測定室へ向かい。無事3人を目的の上級職へと〈上級転職〉させることに成功したのだった。




