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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第二十三章 2年生応援と3年生卒業式!

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#1072 3学期開始! 金曜日行なうのは研修授業?




 冬休みが明け、初っぱなから〈ギルバドヨッシャー〉とギルドバトルをするなど、3学期も相変わらず楽しい学園生活となりそうな予感がする今日この頃。


 月日が過ぎるのは早いもので、3学期の最初の週は瞬く間に過ぎ、とうとう俺が教師を務める金曜日になっていた。


「う~ん。3年生や教師への授業か……これ普通に学生服でいいのか?」


「え? えっと、私にはちょっとわからないかも」


 朝、いつも通り登校するときになってふと思い至り、ハンナに聞いてみた。

 今回の選択授業はこれまでとはちょっと毛色が違う。

 授業というよりもどちらかというと研修に近いのだ。


 今回授業をする相手はもうすぐ卒業する3年生。

 その中でも卒業後はここ〈迷宮学園・本校〉で教鞭を執ることになっているエリートたちだ。

 他にもすでに本校の教師をしている人たちも幾人か参加する予定となっている。


 フィリス先生からのお願いでそんな人たちに〈育成論〉を教えてほしいと頼まれた俺は、今日から教師(?)としてそんな彼らに授業を行なうことになっていた。


 今までは対象が学生だった。

 授業の一環であり、対象は職業(ジョブ)に就いたばかりの1年生や、〈転職〉したばかりの上級生だった。

 自分を高めるために授業を受けに来てくれるのだから気楽なもので、服装も普通に学生服だった。


 しかし今回は教鞭を執る未来の先生を育てるための授業だ。

 これはもう研修だろう。俺は学園の正式な教師じゃないけれど。

 なので、ふとビジネススーツとかを着るべきなのか? と思ってしまったわけだ。


 まあ、俺は学生。学生服こそ正装と言い張れば通るよな。多分。


「ゼフィルス君、準備出来た?」


「おう。待たせたなハンナ」


「あ、結局学生服で行くことにしたんだね」


「やっぱ俺は学生だからな。学園に行くならこっちかなと思ってな。まあ問題があればフィリス先生が言ってくるだろう」


 気楽にいくべし。

 というか考えてみたら今世ではビジネススーツとか持ってなかったわ。

 なら仕方ないよね。


 そんな感じに完結し、ハンナと共に学園へと向かう日常の一コマ。


「「いってきます」」


 そう言って貴族舎の部屋を出て校舎へと向かった。




「なんだか人が少ないね」


「3年生がいないからなぁ」


「それに、大人の人が多いね」


「あれはおそらく3年生をスカウトに来た企業の方々だな。スカウトマンだ」


 校舎へと登校する道すがら、ハンナの疑問に答える。

 3学期で一番忙しいのは3年生だ。

 なにしろ、就職活動がある。


 ここ〈迷宮学園・本校〉は2万人の学生を収容するマンモス校で、全寮制だ。

 寮から校舎へと続く道は、登校時間になると混雑する。

 しかし3学期になってから明らかに混雑がだいぶ緩和されていた。


 むろん、3年生が登校していないからである。

 3年生は本来3学期に授業なんてない(・・・・・・・)


 まあ例外はあるけどな。例のエリートたちが俺の授業を受けに来たり、高ランクのギルド同士のギルドバトルが開催されれば、それをリアルで見ながら臨時で授業することもあるそうだ。この前俺たちが〈ギルバドヨッシャー〉とギルドバトルをしたときも、このエリートたちを引き連れて解説という名の臨時研修が行なわれたらしい。

 とはいえこれは本校の教師になるために必要な研修というだけで、普通の3年生はもっと別なことをしている。


 じゃあなにをしているかというと、様々な企業へアピールしに行っていたりする。

 ある者は企業へ直接、ある者は学園へスカウトに来た企業へアピールしに。


 まあ大体は企業の方から学園に来る。

 この世界はスカウトが基本だからな。

 とはいえ学生にも希望はあるので、希望の企業の居る場所にアピールしに行ったりする学生もいる。


 アピール方法は様々。

 自分の職業(ジョブ)をアピールするのは基本として、ダンジョンへ行って成果物をアピールしたり、生産力をアピールしたり、学園が用意した数々の罠を解除&採取を実演してみたり、中には他の人と比べてもっとも優秀な人を採用するオーディション形式なところもある。


 だが、やはりその花形はギルドバトルだ。

 この3学期に入ってから、ギルドバトルが盛んに行なわれるようになった。

 1年生と2年生が授業中のとき、臨時で3年生だけのチームを組んでギルドバトルを行ない自分の実力をアピールする。


 そんなわけで、最近は優秀な人材を見逃すまいとする企業勢の大人たちが急ぎ足で歩いている姿をよく見かけるようになった。


 なにしろ、優秀な人材というものは最初の方で大体どこに行くかを決めてしまう。

 優秀なのでスカウトが集まるのも当然だからだ。後から声を掛けても時すでに遅し、なんてことは多いらしい。


 そのため就活が解禁されたこの3学期の初めの週は、もう戦いかというような状態だった。スカウトマンの競歩(きょうほ)がもう凄いんだよ。ベテランの域だった。あれで歩いてるのかよってレベルで速いんだ。それほど急がないと良い人材のスカウトというのは間に合わないということだろう。


 逆に言えばこの週でどこからもスカウトを受けていないような学生は、とても頑張らなくてはならないから必死だ。

 今まで貯めてきたQPをここぞとばかりに使いまくって学園に協力してもらい、アピールしまくっている。

 がんばれとエールを送りたくなった。


「ま、俺たちは邪魔せずスルーしておけばいいさ。とはいえあれが自分たちの番になることも覚えておかなくちゃいけないけどな」


「ふえぇ」


 就活を邪魔すると、結構重いペナルティを食らう。

 そのため3年生の邪魔をしてはいけません。

 だが、将来自分の身に起こることだからしっかり覚えて覚悟しておきましょう。ということだな。

 ハンナはかなりあわあわした顔をしていたが。ハンナは大丈夫だと思うぞ?


「あっと、じゃあハンナ、今日は俺こっちだから」


「あ、そっか。がんばってねゼフィルス君!」


「おう。ハンナもな!」


 俺は今日、専攻や課とは別で授業を行なう関係で向かう場所がいつもの〈戦闘3号館〉ではない。

 いつもより少し早いとある分岐点でハンナとはお別れだ。

 手を振って送り出してくれるハンナに表情が緩むのを感じつつ、俺は〈戦闘1号館〉の校舎へと向かった。


「あ、ゼフィルス君、こっちですよ」


「フィリス先生。おはようございます」


「はい。おはようございます」


〈戦闘1号館〉の校舎に入るとフィリス先生が出迎えてくれる。

 実はフィリス先生も俺の授業を受ける1人なのだ。

 今回の研修は本校の教員向けとなる予定なので、現在教員の方も参加可能という訳だ。とはいえメインは3年生だけどな。


「今日からお願いしますね。がんばってくださいゼフィルス君」


「引き受けたからには任せてください。しっかり教えて見せますよ」


「頼もしいですね。では案内しますね。こっちです。セレスタン君はすでに到着して待機してますからね」


「了解です。しかし、なんか人の少ない校舎は少し不気味ですね」


「ふふ。私もそれ思いました。静かですよね」


 先導するフィリス先生が振り向いてクスリと笑う。

 ここ〈戦闘1号館〉は〈戦闘課3年生〉の校舎だ。

 3年生は現在授業無し。

 そのため校舎はしんとしていて、少し不気味感が漂っている気がしなくもない。

 それはフィリス先生も思ったらしい。


 せっかくなのでフィリス先生とおしゃべりを楽しみつつ緊張をほぐしながらとある教室にやってくると、中にはセレスタンが待機していた。


「おはようございますゼフィルス様」


「セレスタンおはよう。今日もビシっと決まっているな」


「ありがとうございます」


 セレスタンは相変わらずの執事服だった。

 そういえば学生服のままでもいいのかな?


「フィリス先生、そういえば俺の格好って学生服のままでもいいんですか?」


「全然構わないですよ。ゼフィルス君は学生なんですから学生服でも大丈夫です」


 あ、やっぱり学生服で問題無かったらしい。

 ならよかった。


 ちなみにこの教室は控え室としてフィリス先生が押さえてくれていたものだ。

 実際授業を行なうのは、1学期の途中から2学期まで授業をしていた大学の講演会場みたいなあの巨大な教室で行なう。


 しばらく控え室で授業の打ち合わせをしていると、一度様子を見に行っていたフィリス先生が戻ってきた。


「もうほとんどの席が埋まっていました。時間も迫ってきましたので、ゼフィルス君、そろそろお願いしますね」


「はい! ――セレスタン、行こうか」


「畏まりました」


 優雅に一礼するセレスタン。

 相変わらず、絵になるなぁ。俺も気を引き締めなければ。


 フィリス先生に案内され、とある教室に入ると、多くの視線が俺へと降り注いだ。

 しかし、1学期と2学期で経験を積みまくってきた俺だ。

 その視線を涼しく受け止め壇上へと向かい、教室内へと振り向く。


「今日からみなさんに〈育成論〉を叩き込むゼフィルスだ。よろしくお願いする」


 さて、ここにいる全員に教員として恥ずかしくない知識を叩き込もうか。





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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
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