#116 最近〈エンペラーゴブリン〉の幻覚をよく見る。
「勝ったぞーーー!!!」
思わず天空の剣と盾を放りだしてガッツポーズを決めてシャウトを叫ぶ。
「あ~。やばい。〈エンペラーゴブリン〉戦。クセになりそうだぜ」
あの時の感動再び。
なんだろう、やっぱり強敵とソロで戦うからだろうか。
充実感がすっっっごいんだ!
すごく気持ちがいい。
今回の戦闘を振り返る。
やはり、あの防御勝ちからの流れ。
すぐに終わってしまうノックバックを逃さず、しっかり『勇者の剣』を決めることが出来た。
あの決めに行くべき大チャンスをしっかり物にできた感動、充実感、達成感。
そして手に残る大きな手ごたえ。
俺は今、最高に満たされている!
「リアル〈ダン活〉、すっげぇ楽しいぃ…!」
そのまま感動に身を任せてバタンと寝転がった。
「ゼフィルス君、お疲れ様~」
「おう。今回も決めてやったぜ!」
しばらくすると門が開き、ハンナが歩いてきた。
両手にマグカップを持っている。飲み物を用意してくれたらしい。
起き上がって片方を受け取る。
「はい。どうぞ。冷たくて気持ちいいよ」
「サンキュ。…ん~。レアボス戦の後の一杯は最高だな!」
ただの冷たい麦茶! これが何故かむちゃくちゃ美味く感じるから不思議だ。
少し落ち着くと、なんだか視線を感じる。
ハンナがチラチラ。何かを催促しているように見える。
うん。知ってた。
むしろハンナは門を潜った瞬間から俺とその後方にあった金色の箱に素早く視線を走らせたのが見えたし。楽しみなんだよな。〈金箱〉。
「一つ開けていいぞ」
「大好き! ゼフィルス君」
はい。大好き頂きました!
なんだ、俺がカルアから大好きって言われたことが筒抜けか?
嬉しいけど! もっと言ってほしい。
やばいな。宝箱を貢ぎそうで少し怖い。
もし〈パーフェクトビューティフォー現象〉来てたら3個は開けさせてたね絶対。
こほん。それはともかくだ。
「今回は何かな? 〈幸猫様〉お願いします」
ハンナがまず宝箱を開ける。〈幸猫様〉にお願いするのも忘れない。
そして中からは、見覚えのある剣が出てきた。
「おお! 〈エンペラーゴブリンの魔剣〉か!」
例の〈エンペラーゴブリン〉が右手に持っていた剣だ。
ボスは片手で振り回していたが、両手剣だな。
レアボスで武器ドロップはかなりの大当たりだ。何しろ同レベル帯の装備ではトップレベルに強いことが多い。
その例に洩れず、初級中位で手に入る装備群の中で〈エンペラーゴブリンの魔剣〉は間違いなくトップクラスの武器だった。
惜しむらくは、使う人間がいないことだろう。
俺かエステルに適性はあるが、俺は盾を持ちたいので使う気はないし、エステルも『スラスト』構成だからなぁ。
ま、もしかしたら新メンバーで使うこともあるかもしれないし、とっておこう。
これで中級下位ダンジョンまでなら戦えるからな。
「さて、次は俺の番だな。さて、何が出るかなぁ」
先ほどのバトルのテンションのまま、ワクワクしながら〈金箱〉を開ける。
そして現れたのは、笛。
「〈レアモンの笛(ボス用)〉ダブったーーーー!!!?」
宝箱から現れたのはまたもや〈レアモンの笛(ボス用)〉だった。ダブりだ!
どんだけ俺と再戦したいんだ〈エンペラーゴブリン〉!?
俺の目には何故かムキっと筋肉を唸らせて歯をキラリと輝かせる〈エンペラーゴブリン〉の幻覚が見えた気がした。(きっと気のせいとは言い切れない)
むちゃくちゃ暑苦しい!
また遊ぼうってか?
いいぞ! またやろうな!
俺はまた時間が有るときにでも〈エンペラーゴブリン〉と再戦しようと約束したのだった。
「でも今日はもう時間無いから帰るけどな」
時刻はもうすぐ12時。
帰還の時間だ。
幻覚の〈エンペラーゴブリン〉が驚愕に目を見開いた気がしたがきっと気のせいに違いない。ドロップを回収。そのまま転移陣で帰還した。
またな~。