#1069 ギルドバトル〈ギルバドヨッシャー〉戦、決着
リーナの通信に動揺したところを見事に突かれた。
オサムス先輩の『メガ・エクスプロージョン』とそれに合わせて攻撃がいくつも直撃し、だいぶHPを持って行かれたな。すでにHPが半分を切って残り3割強になってしまっていた。
しかし、残念。
俺をサポートしてくれるのはリーナだけでは無いのだ。
「『特大回復の奇跡』!」
そんな言葉が聞こえたような気がした瞬間、俺のHPが全て回復する。
「なんだと! この回復は! 〈白の玉座〉か!」
「ご明察だ」
【エウレカカオス】の『カオスコネクトジャミング』は通信系にのみ効果を発揮する妨害スキル。〈竜の箱庭〉に映った俺たちをジャミングすることはできない。
つまり、ラナは〈竜の箱庭〉を見ながら俺を援護することは可能というわけだ。
さらにいくつかの攻撃が届くが、直撃した側からガンガン回復して俺のHPはゼロまでいかない。
そして、ついにその時は来た。
「オサムス先輩、今の攻撃で倒せなかったのは痛手だったな。俺の仲間が揃って登場したぜ?」
「! いつの間にこんなに混沌が!」
さらに追撃しようと構える〈ギルバドヨッシャー〉だったが時すでに遅し。
「待たせたな。ゼフィルス」
メルトたちを始め、約半数のメンバーたちが集まっていたからだ。
「なに、この数は! オスカー君、周囲への警戒はどうなっていた!?」
「……『カオスレーダー』に反応が無かった」
「それには俺が答えよう、オサムス先輩。簡単なことだ。〈ギルバドヨッシャー〉に優秀な索敵マンがいることは分かっていた。だからこそこっちはシズやラクリッテに索敵をジャミングしてもらいながら、カイリに『パーティインビジブル』でメンバーを隠してもらい〈ギルバドヨッシャー〉を囲ったというわけだ」
要はジャミング系と隠密系の重ね掛けをしまくったのだ。
いくら【エウレカカオス】と言えど複数人のジャミング持ちで妨害されたらこちらを捉えきれなくなる。
「気付かれずに近づくのは骨が折れた」
「リーナさんの通信を妨害できるとは思わなかったもんね。混沌さんがヤバいよ~。まさか正体がこんな強い人だったなんて……」
動揺の激しいオサムス先輩へ俺が懇切丁寧な説明をしてメルトとミサトがその感想を言う。
悪い悪い。〈ギルバドヨッシャー〉の追い込みが予想以上だった上にリーナの通信を混沌にされて目的地にたどり着けなかったからな。
おかげでメルトたちも〈ギルバドヨッシャー〉を囲うのに手間取ったようだ。
だが、これでジ・エンドかな。
形勢逆転だ。
「楽しかったぜ〈ギルバドヨッシャー〉これで王手だ」
もう王はいないけどな。
「総攻撃!」
「オサムス先輩!」
「やむを得ない。撤退だ!」
「てったーい! てったーい!」
「囲まれてるぞオサムス!」
「オスカー君、どこから突破すればいい!?」
「あそことあそこの混沌が薄い!」
「よし、あそこだ、行くぞ! 一点突破! 作戦デルタの2だ!」
「こんとーん!!」
「ぷぎゅらー!?」
「きゃあ!?」
「ああ!? チルミちゃんがやられた!?」
「宝剣が降ってきたぞ!? 対策のバリアを張るんだ!」
「ロード兄弟に続いてチルミちゃんまで!? やっべぇぞ!?」
「いいぞ! 次はあのハンマー使いを狙うんだ! あれは攻城破壊武器だ!」
「くぅ、ゼフィルス氏、こちらの痛いところを。――反撃しろ! 牽制するんだ!」
インサー先輩がやられたことでオサムス先輩がリーダーになったようなので、囲って狙うが、これは防がれた。
さすがは〈ギルバドヨッシャー〉、囲まれても冷静に対処してくる。
しかも、こっちの囲みの弱い部分を的確に突いてこようとした。オスカー君の危機感知能力は本当にどうなってんだって程すげぇな!
そこへラナの宝剣が遠距離からズドンと降ってきた。俺たちの攻撃に対応していたところを突く素晴らしいタイミングだ。そのおかげで羊皮紙を持っていた【ワールドマッパー】の女子が退場したな。さすがだぜ。
続いて狙ったのはハンマー使いの男子2人。あの持っているハンマーは〈防壁〉や〈城〉に特効を持っている武器だ。当然ながら、そっち方面の特化職業と考えて良いな。おそらく、シャロンの防壁を破壊する担当だったのだろう。
またこのまま野放しにすれば、硬い巨城を少人数で陥落させてしまえる人材だ。優先して退場させたいところ。
「えい! えい! えーい! ――“錬金砲”発射!」
「うちらも参加するわー。爆弾ほいほい投げるで~」
「僕はこっそり狙い撃つよ」
いつの間にかハンナとアルル、ニーコまで来ていた。
おそらく最後の激突だと思って本拠地から出陣したんだろうな。
ミサトのバリアの後ろからホイホイ爆弾を投げまくる。
「ちょ、まっ――あびゃるばー!?」
「やったよー!」
あ、ハンナがハンマー君を1人やっちゃった。
さすがだ。
こうして〈ギルバドヨッシャー〉と〈エデン〉が激しい衝突を起こし、〈ギルバドヨッシャー〉側が大きな被害を出した。
しかしさすがの〈ギルバドヨッシャー〉。〈エデン〉に囲まれたはずなのに凄まじい連携で乗り切り、狙って退場させた人材以外は全員守り抜いた。凄い。
〈エデン〉のメンバーたちなんか、すぐにその連携から学べるものの多さに気が付いて観察していた人もいたほどだ。
大丈夫だ、ここで倒しきる必要は無い。
俺たちがするべきことは、時間稼ぎ。
残り時間は6分を切り、すでにここから全力で本拠地へ向かっても落とせない時間となった。
地図屋の女子も、攻城系のハンマー君2人も、ロード兄弟も退場させたからな。あとインサー先輩も。
ここからは俺たちも積極的に行く!
〈ギルバドヨッシャー〉はちゃんと本拠地まで行けなかったときのことは考えて手を打ってたようだ。
すぐに白本拠地に見切りを付けて巨城獲得へと乗り出す。
しかし、現在のポイント差は7000弱。
〈ギルバドヨッシャー〉が試合再開時からここまでで9城を確保して、〈エデン〉とは巨城1城分の差しかないのにこの点数の開き。
これは〈エデン〉が試合再開時から〈北東の0〉に加え小城をたくさん確保したが故の点数差だった。
7000ポイント弱。
巨城を4箇所ひっくり返せば逆転はできる。
〈ギルバドヨッシャー〉の別働隊が白本拠地を襲うフリをしていくつかの巨城を襲っていたため、すぐに落とせる巨城が2城あった。
オサムス先輩率いるこの部隊が巨城のひっくり返しに参加すれば2城なんてあっという間に落ちるだろう。
「だけど、それまでだ」
しかし、それは〈エデン〉も同じこと。
〈エデン〉のBチームも〈ギルバドヨッシャー〉が巨城を攻撃しているうちに2城、〈北東の3〉と〈東巨城〉のHPをほぼ削っていた。
相手が巨城をひっくり返すのなら、こちらも同じ数だけひっくり返せば良い。
それだけで勝ててしまう。
遠いんだ。4城というのがとてもとても遠い。
それから〈ギルバドヨッシャー〉は追加で5城をひっくり返し、〈エデン〉も5城をひっくり返した。
そこでビーーーというブザーが鳴り響き、試合が終了する。
ポイント〈『白54,390P』対『赤47,460P』〉〈ポイント差:6,930P〉。
〈巨城保有:白10城・赤9城〉
〈残り時間00分00秒〉〈残り人数:白35人・赤30人〉
結果、〈エデン〉の勝利!




