#1063 本拠地攻め。相手の守り手の攻略法。
ゼフィルスとリーナが指示を出し、それに十全に応えるメンバーたち。
ここはBチーム。
ゼフィルスとリーナの的確な指示により相手を出遅れさせたまま、赤本拠地に攻勢を仕掛けるところだった。
しかし、放たれた一斉攻撃は、突如現れた巨大な十の手によって半分以上を防御されてしまう結果になる。
「何あれ!?」
「大きな手ですか?」
それを見てまず叫んだのはトモヨだった。
ロゼッタが疑問の声で手に問い警戒するが、巨大な手は攻撃してくる素振りは見せず、城を守るように展開していた。
赤本拠地の周囲にあった罠はすでにサーチ&爆破破壊済み、ハンナのアイテムが役立っている。
しかしあの手だけは〈四ツリ〉攻撃でも破壊出来なかった。
「本拠地を守るか! その忠義見事なり! だが、押し通らせてもらう! 『二刀斬・炎紅刀華』!」
「シャロンやラクリッテちゃんみたいな城の守りだね! でも、守りが甘いよ! 行っけーウーちゃん! ルーちゃん! ミーちゃん!」
赤本拠地を守る十の巨手を相手にしたときのメンバーの対応は二つに分かれた。
リカのように巨大な手を下し、押し通る者と、フラーミナのように手を避けて本拠地へ攻撃する者。しかし、
「む、この感触。ただの手では無い、これは盾か?」
「わ、わ、本拠地を攻撃すると追い立ててくるよこの手! ああ、ミーちゃんが!?」
攻撃に弾かれてなお破壊されない手。リカの呟いたとおりこの巨手は盾だ。
つまりはシエラと同じ自在盾、それが10個。
シエラとは違い本拠地を守るときなどにしか発動出来ない制限はあるものの、強いものは強い。しかも術者が操っているのではなく、オートガードである。
故に本拠地に攻撃すると素早く反応し、手の平で遮ったり、グーで迫ってきたりしてくるのだ。
巨大な手で掴まれた〈ツルギノニャイチ〉のミーちゃんが放り投げられてしまった。
もちろん人に対してもしてくるだろう。
「不思議な感覚ね。でも、操盾なら私も負けないわよ。前衛は遠慮無く攻撃して! 妨害されそうなら私が守るわ。『クイーンオブカバー』!」
「シエラに任せておけば大丈夫なのです! 行くのです! とう! 『変身・プリンセスメイクアップ』!」
「では遠慮無く行きましょう。『紅蓮爆練拳』!」
巨大な手を防ぐ手段は、割と簡単だ。
相手が妨害してくるのなら、それを妨害し返せばいい。
シエラの四盾がカバーするなら安心だと、ルルとセレスタンが本拠地への攻撃を開始する。
同時に巨手がセレスタンとルルを排除しに来るが、シエラの自在盾がそれを防いだ。
「『イグニス・バースト』! ですが、遠距離攻撃は防がれてしまいますね!」
「『トリプルシュート』! 近距離攻撃も、先回りされて防ごうとしてきます。躱して本拠地に攻撃すると時間が掛かりますよ。時間稼ぎとして優秀ですね」
シェリアとアイギスが唸った。
近距離攻撃ならまだ隙を見て本拠地を攻撃出来るが、邪魔されている現状は変わらず、このままでは陥落に時間が掛かる。
相手の狙いは完全に時間稼ぎだと分かる戦術だった。
「術者を撃破した方が早い!」
「どうやって!? 相手は多分本拠地の中だよ!」
ラウの結論は正しいが、ルキアの言う懸念もまたあった。
先ほどから術者の姿が見えないのだ。
しかし、そこへ朗報が舞い込んでくる。
それはリーナの『ギルドコネクト』だった。
それを受けたカタリナが声を上げる。
「! 通信来ましたわ! ――了解しました。フラウ、ロゼ、行くわよ! カルアさんもお願いします!」
「ガッテンだよ!」
「はい! すぐに準備します! セレスタンさん、〈イブキ〉を出してください」
「術者、探す『ソニャー』!」
「承知いたしました。『こんなこともあろうかと』!」
「パニック行くよ! 『ワンダフルパニック』!」
リーナによって作戦を通達されメンバーが動きだす。
「! 後方敵が来てるわ! 私たちは攻撃再開! あの手はカタリナたちに任せて私たちは本拠地陥落に集中するわよ! 追っ手が追いつく前に片付けるわ!」
シエラが指示を飛ばし、本拠地への攻撃を継続する。
北からは〈ギルバドヨッシャー〉のBチームがようやく迫っている所だった。
このままでは本拠地陥落が間に合わない。陥落するには【ジャイアントハンドキーパー】を排除する必要があった。排除を担当するメンバーと本拠地を落とすメンバーに分かれての行動だ。
その時カルアの『ソニャー』が本拠地に隠れる敵影をキャットした。
「いた。――あぶり出す。『ナンバーワン・ソニックスター』!」
瞬時にカルアがその場から消える。
「ロゼ、準備は?」
「バッチリですよ!」
こちらではロゼッタがセレスタンから〈イブキ〉を受け取り装備し、乗り込んでいるところだった。側にはカタリナが控えており、いつでも魔法を放てる準備が整っている。
その時、本拠地の一部から大きな衝撃音と叫び声が届いた。
「うおおおおおおお! そんなことをしても無駄だ! この〈パーフェクト東檻〉は2分間攻撃を寄せ付けないのだ!」
その声の持ち主は鎧で重装備をした男子。この人物こそ【ジャイアントハンドキーパー】に就くその人だった。しかし、現在はさらに面白いことになっている。アイテムを使い、自らを檻に閉じ込めてカルアの攻撃を防いでいたのだ。
そのアイテムの名は〈パーフェクト東檻〉。自分は身動き取れなくなるものの、2分間ダメージを多少フィードバックする代わりに直撃を防いでくれる自己防衛檻アイテム。しかも、ユニークスキル『城を守りしキーパー』のおかげで本拠地にいる間はフィードバックのダメージをゼロにするおまけ付きだ。
カルアの斬撃に、檻は金属音を返すだけだった。
そう、彼は自らを檻に閉じ込めることで時間稼ぎをしていたのだ。
自分本体が弱点であるとよく分かっている。
意地でも時間を稼いでやるぜという気合いを感じた。
「はははは! 味方が迫っているぞ! その間本拠地は落とさせない! 落とさせないさー! はーっはっはっは! これぞ【キーパー】職の力だ!」
「『箱結界』! 『結界牽引』!」
「――は?」
「どうだ!」というドヤ顔で高笑いしていた男子君だったが、次の瞬間には笑顔が「はへっ?」と固まった。
突如〈パーフェクト東檻〉がカタリナの出した結界に囲まれたからだ。
さらにもう一つ、なんかその結界から伸びた結界のロープみたいなものが〈イブキ〉にくっついていたのだ。まるで牽引するかのように。
「え? 何する気? ちょっと待って!?」
「ロゼ、繋いだわ! 〈イブキ〉を出して! 『結界移動』!」
「はい! 『オーバードライブ』!」
「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――――」
まさに一瞬の出来事だった。
ゼフィルスは少し前にこう言った。
本拠地を守る伯爵を無力化するには攫うのが手っ取り早い、と。
それは【キーパー】職でも変わらない。
檻だって、ダンジョンオブジェクトである地面を貫通出来ないので固定は無理。ぶっちゃけ重いだけの置物なのだ。つまりは牽引は可能。
ゼフィルスの作戦により、『ワンダフルパニック』でオートガード機能が刺激されててんやわんや状態になった巨大な手。こちらは攪乱&囮だ。本命はカルア。
実はカルアの『ナンバーワン・ソニックスター』でも攫うことは出来るのだが、これは成功率があまり高く無い。抵抗されるからだ。
そのためカタリナとロゼッタの力で攫うことを前提に、術者を発見してもらう仕事を頼んでいた。
見つけてもらえればカタリナが『箱結界』で閉じ込め、ロゼッタが牽引して攫うことが可能になる。
カタリナの結界は浮くのだ。ついでに移動もしてしまう。
さすがは【方舟姫】。運ぶのは得意というわけだ。
本来であれば【方舟姫】の力だけでも移動することは出来るのだが、今回は急ぎ。
ロゼッタに〈イブキ〉を使ってもらい、素早く攫ってもらったというわけである。1名様ドナドナ~。
こうして【キーパー】君は連れて行かれてしまったのだった。
【キーパー】君が本拠地から離れてしまったことでユニークの効果が切れ巨大な手も消えて大チャンス。
「今よ!」
迫る〈ギルバドヨッシャー〉に構わず本拠地を攻撃し続け、〈ギルバドヨッシャー〉のメンバーたちの目の前で、ついに赤本拠地が陥落してしまうのだった。
ポイント〈『白38,020P』対『赤17,800P』〉〈ポイント差:20,220P〉。
〈巨城保有:白18城・赤0城・残り1城〉
〈残り時間24分33秒〉〈残り人数:白36人・赤36人〉




